タイトル:【観察】 焼却
ファイル:仔実装......②.txt
作者:kobeUS 総投稿数:45 総ダウンロード数:3260 レス数:6
初投稿日時:2017/05/19-02:43:46修正日時:2017/05/22-06:45:30
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 焼却







季節は真冬。

黒髪市内の公園に住んでいる実装達は、今日も人間の出した生ゴミを漁りに行く。

早朝出された生ゴミは、実装達によって袋は破られ、又、家の傍らに置かれている生ゴミバケツは倒されて、ゴミがむき出しの状態で不潔極まりない。

実装達も寒い冬を越す為には、それなりに餌を食って体力をつける必要もあるし、とにかく慢性的な餌不足で他者より少しでも多くの餌を取りたい。

質の良い餌を多く取って自分達は『特別だ!』と言う優越感を味わいたい。

その様な実装特有の性質もあるが、例え実装の事情を最大考慮したとしても、後片付けもしない実装達の行動に市民は怒り、次いで市役所も防衛に立ち上がった。

生ゴミ置き場には頑丈なフェンスで囲いを作る。更にゴミ置き場の地面は、コンクリートで成体実装の身長以上の壁を作る。

生ゴミ収集の作業員は、ゴミ収集が終わると水で薄めたコロリをバケツに2〜3杯撒いて帰った。

ゴミの汁を舐める為に、作業員が帰ってからあらゆる手段を使ってフェンスの隙間から入った仔実装、親におぶって貰い入った仔実装、そつらは≪猛毒のコロリ≫を口に入れると激痛に襲われる事になる。

お腹や頭を押さえて転げまわって苦しみ「テチャァァァ〜!ママァ〜!お腹がお腹が......痛い!」<パキン!>、「痛いぃぃぃぃ〜!頭が割れるテチィ〜!」<パキン!>。

「ゲボ〜ゥ!」口から血を吐いて<パキン!>喋る事も出来ずにもだえ苦しむ死ぬ者が続出した。

ゴミ置き場では、「何故デスゥ〜?!ワタシ達がどんな悪い事をしたのデスゥ〜?!」「こ......子供が大事な子供が、死んでしまったデスゥ〜」地面を叩いて嘆き悲しんだり、茫然とする親実装で溢れた。



『生ゴミ置き場は危険だ!』そう学習した?実装達は、今度は人間の自宅に置いてある生ゴミバケツにターゲットを変更した。

しかし、事前にそれ位の事は予測していた人間達は、成体実装でも届かない様な台の上にゴミ箱を置き、ゴミ箱の蓋も実装では開ける事が出来ない物を取り付けた。

更に『念には念を』と言う事でゴミバケツに強力なコロリを塗って対策したり、実装が餌取りに来る時間に箒や棒を持って待ち伏せして、来た実装は全て叩き潰して始末した。

「二......ニンゲンは!ニンゲンは!何故ワタシ達をこれ程迄、邪見するデス!捨てるごはん位くれても良いじゃないデスか!」餌を取り損ねた実装達は、怒りに怒った。

しかし怒るだけでは事態が変る訳でもない。

更に人間達は、実装が餌を取れない様に次々と防衛手段を改良して実装達は、遂に人間の捨てる生ゴミを漁る事が出来なくなってしまった。




別の日、一人の男がゴミを捨てる為にゴミ捨て場に向っていた。男の前に1匹の仔実装が飛び出して自分の方に向かって来た。

「な......何だお前は?」男はリンガルを起動して仔実装に問いかけた。

「ニンゲンさん、ワタチはもう1週間も何も食べてないテチ!食べる物を......食べる物を!」そう言って男のズボンを掴んで摺り寄ってきた。

≪早くゴミ出しして会社に行きたいのに!≫男はそう思ってポケットからチョコレートを出し少し離れた場所に放り出した。

「た......食べ物テチィ〜!」仔実装は、慌ててチョコレートの包み紙を破り口に入れた。

「あ.....甘いテチィ〜!甘いテチィ〜!この甘い匂いは、飼い実装がワタチに見せびらかしながら美味しそうに食べていた物......。

これがママに言っていたチョ.....チョコレートテチィ〜!美味しいテチィ〜!美味しいテチィ〜!夢じゃないテチィ〜!ワタチは.....ワタチは幸せ者テチィ♪

生きていて良かったテチィ〜♪ニンゲンさんは、こんな美味しい物を食べて居たテチィ〜!」仔実装は、涙を浮かべながらチョコが口の中で溶ける数秒の間、実装生最大の至福の時間を過ごした。

でも味を占めた仔実装は、もう1個チョコレートが欲しくなった。「ニンゲンさん!いや、食べ物を貰ったからゴシュジンサマテッチィ!あれ、ゴシュジンサマが居ないテチ!ゴシュジンサマ〜!ゴシュジンサマ〜!

もう1個......もう1個......チョコが欲しいテチィ〜!」仔実装は、もう1個チョコレートを貰う為に、くれたニンゲンを探し始め町を徘徊した。

この仔実装の様に運よくニンゲンの食べ物を口に出来る者も居れば、生ゴミの欠片さえ手に入らない者もいる。


『この町にいてもごはんは食べれない』そう思った実装達は、冬のこの寒い時期に家族全員で他市に無謀な渡りを行う者、『渡りをしても死が早まるだけ』と思った者は、玉砕覚悟で託児をしたり

店先で食糧を販売している所、「八百屋」「魚屋」「果物屋」「駄菓子屋」などの店舗等の商品を盗む様になった。

更に全く行動力が無い他者に依存している者、只々嘆いているだけの者は餓死した。とにかく腹さえ膨れれば死んでも良いと言う奴は、そんな事に知恵を使いコロリ塗ってあるゴミ捨て場に入り込みゴミを漁り死んでいった。

凍死、餓死、事故死、コロリによる中毒死、仲間に襲われバラバラになって転がって居る死体等、それらが、自分(ニンゲン)の家の周辺に有ると言うだけでも気が悪い......例えその全てを市に委託された業者が、回収に来るのが解っていても。


コンビニも実装達が、餌も取る事が出来ずに町から締め出されている事は100も承知だ。成体実装は目立つから店の周囲をうろついていたら駆除も出来る。

だが、小さな仔実装は、目立たないし、店に入って来られても気が付かない場合もある。その対策として店内に仔実装が、入って来れない様に店の入り口にある靴の泥落しの網目の枠を広げて、店に入ろうとする仔実装を全て穴に落す様にした。

コンビニからも完全に締め出された殆どの実装達は,ガードが緩い食品を店頭販売している店を徹底的に狙った。	

「あそこに美味しそうなリンゴやみかんが有るデス、これを少し貰うデス!」「こっちも美味そうな寿司ネタが有るデス!」「あそこに置いてあるにんじんや大根を取れば、少しの間は餌を探さずとも良いデス!」

「甘くて美味しそうな飴やお菓子がが置いてあるデス!」そう言っては、こっそり店に入り盗もうとするが、警戒している店主に見つかり棒で殴り殺される。

それだけ警戒していてもまんまと盗まれてしまい更に、臭い臭い実装臭が、店の周辺にただよっているとそれだけでも客は寄りつか無くなる。

その為、臭いを消す為に時間を取られとてもじゃないが、営業なんかできず死活問題になる。

被害に遭った店、被害に遭いそうな店は、当番を決めて見回りを強化したり、高価であるが実蒼石を数匹買って来て見張らせたりするが、たいした成果も上がらずイタチごっこになるだけだった。


市役所にも以前にも増して相談が殺到する。

市役所は、市議会で実装を捕獲する為の予算決議をして、最新型の罠を大量発注して、町の至る所に設置した。

どの様な罠かというと、箱型の罠で周囲を鉄の柵で囲い、柵の内側には断熱材付のラバーを取り付けている、見た目は真っ黒な箱状である。

入り口は、ネズミ取りの形状にし成体実装が、通れる広さの三角錐の先の尖った銛が内側を向いて設置されている。

罠の中は、内部隅々に暖かい温風が行き渡る様なファンが取り付けられ、罠の奥には1口食べれば熟睡してしまう程の強力なネムリが、山盛りに積んである。

中には、子供思いの実装がネムリを餌として持って帰ろうとしても、出口は尖った銛が行く手を阻み出る事が出来ない。

更に眠りを促す様に室内は、17度に設定されている、寒さと空腹で疲労困憊の実装が、一旦この中に入ネムリを1口食えば起きる事はない。


ネムリを仕掛ける事により、罠から何とか脱出する方法を考えたりしない様にする為もある。(頭の悪い実装では到底無理だが)

更に、ネムリの代わりにコロリを置いたとしたら、コロリをフードと思って一気に大量食いする者が出るとも限らない。

そうなると餌になるものがなくなり、腹を空かせて中に入ったもの同士が、共食いを始める可能性も考えられる。

周囲には民家もあるし、実装が死んで臭い死臭が周囲に漂ったら、周辺住民から苦情も来るだろう。

ただでさえ汚く、臭い実装肉が飛び散った罠の掃除は、機械を使っての洗浄では落ちないし、綺麗に汚れを落とさないと時間の経過と共に、悪臭が漂ってくる。

結局、人間の手で掃除しなければならない。誰もがそんな作業は敬遠する。


ある寒い風の吹く夕暮れ、家族全員餌を探しに来た実装家族がいた。彼女らは、もう3日も何も食べていない。

「デスゥ〜!「寒い!寒い!」手を擦りながら親実装が戦闘を歩く。長女、次女、四女、六女の4匹が後に続く。

三女と五女は、寒さで飢えて死んでしまった。早く何とかしないと子供が全滅、自分の命も危うい。

そんな事を思いながら歩いていると......。

「デッス!あれは何デス?」親実装が真っ黒な箱を見つけた。

薄暗くなった公園のど真ん中に置いてある黒い箱を見つけた実装は、この寒さを凌げるならと一旦中に入ってみようと......。

中は、ふかふふかマットが敷いてあり室温も暖かい。更に目の前には、美味しそうなフードが山積みになっている。

「み......みんな、ごはんデス♪神様がワタシ達を救ってくれたデス♪」「テチャーァ!ごはんテチ!ごはんテチィ〜♪」

一家は喜んでフードを食いだした。一口、二口食べると<コテン!>全員あっさり眠ってしまった。

夕方になると実装達が餌を探しに出る。市内のあちこちにある罠には次々に入っていった。

明け方に餌を取りに来た実装達も、結局罠の中に閉じ込められた。

午前9時になると市に委託された業者が、一斉に罠の回収に向かった。

罠を覗くとぎっしり実装が捕まっていた。

「実装を捕まえる罠と解っていても、1度にこれだけの実装を見たら......やっぱり吐き気がするぜ!」

そう言いながら、業者は罠を車に積み込み『動物愛護センター』へ向かう。

愛護センターとは、捨て犬、捨て猫を一定時期預かって時期が過ぎれば、殺処分する所である。

野良に限らず、躾が出来ない奴やら飼い主から愛されて生を全うした実装も、死ねば此処へ運ばれて焼却されるのである。(市の条例で決まっている)

しかし、それが生きていようが、死んでいようが、実装であろうが犬猫であろうが、個人の持ち込みは、一律500円と定められている。


センターには市内から回収された実装が入った罠が到着すれば、直ぐに焼却炉に入れられ燃やされてしまう。

『害虫でしかない実装石等問答無用で、直ちに燃やしてしまえ!』と言う訳である。

焼却炉に入れられた実装は、苦しむ暇も無く息絶えて、僅か10分で全てが灰になってしまう。

実装の体がそれ程脆いのと焼却炉の炎が、実装の臭いを吹き飛ばす程強力だからである。



ネムリを食べているから熟睡しているのだが、今迄、寒い場所で腹を減らせ疲労困憊の状態だった実装達は、少しでも飯が食えかつ暖かい場所に入ったのだから、ちょっとやそっとでは起きる事は無い。

炉に入る前に「付属品解除」の操作ボタンを押すと、罠の付属品であるカバー、温風機等が自動で全て外されて、罠が鉄格子の檻の状態に剥き出しになる。

職員は、モニターで内部を確認しながら「運搬」ボタンを押す。すると付属品を外された檻が、炉内に送られていく。1度に10台の檻を炉内で燃やせる。

次に「遮断」のボタンで防熱扉が上から下りて来る。「点火」ボタンで800度の高熱炎が、設置されているバーナから一斉に吹き出す。

「テッ!」「デッ!」実装達は、一瞬にして燃えてしまい声を出せてもこの程度、殆どの実装が、寝て居る状態で炎に襲われるので苦しむ暇も無い。

偶々、目が覚めた実装は、燃やされる恐怖、死ぬ恐怖を味わう。でも一番怖いのは、焼かれる苦痛<多分寝ぼけているので、何が起こったか理解出来ないだろう>である。

10分後、燃えカスになった実装達は、焼却炉下のゴミ箱に捨てられる。 檻は機械で綺麗に洗浄されて、罠としての仕様にされ出荷される。


センターで働く職員は、基本3直2交代制である。

午前8時から午後3時迄が早番、午後2時30分から10時30分が遅番の2交代勤務である。

罠は、1日4回、午前中2回、此処3時以降2回に罠が運び込まれてくる。

この寒い時期に運び込まれる罠の中は熟睡した実装で満杯になっている。


しかし、同じ様に寝て居る実装を焼却炉に入れて燃やす事の繰り返し、仕事とはいえマンネリ化してきて、ダレ出した。

飽きも来るし、誰でも変化や刺激が欲しいと思う様になって来た。

そんな時、毎月行われる班長が集まる会議で、「仕事は楽しくなくては.....。」で意見が一致した。

捨て犬や捨て猫を殺処分するのであれば「可哀想!」「出来れば助けてやりたい!」「心が痛む!」等、同情もする感情も湧く。

しかし。「害虫』である実装を燃やすのであれば「殺すのが楽しい」「ワクワクする」等、仕事も楽しくなる事だろう。

「害虫」は、苦しみもがいて死ぬこれが1番、それではどうするのか。

『罠に入って運ばれて来た実装を焼却炉に入れてから、ネムリの中和剤を掛け一旦起こす、そこに致死量に満たない二酸化炭素を入れて

意識の有っても動けない状態にして燃やしてしまう方法』

もう1つは、『ネムリ中和剤で起こして、元気な状態の実装を高温で燃やし、苦しませるだけ苦しまして殺すと言う方法』の二つの方法で処分する事になった。



次の日の朝、センターに多くの罠に掛かった実装達が運ばれて来た。

職員達は、事前の打ち合わせ通りにネムリの中和剤を掛けると、実装達はゴソゴソ起き出した。

「デッ!ここは何処デス。さ......寒いデス!そ.....それにワタシは、何故檻の中に閉じ込められているのデス!」

「マ......ママ!一体どこテチィ〜!暗くて寒いテチィ〜!それにここは、なんだか怖いテチィ!ママァ〜抱っこしてテチィ!」

そう言って親実装に縋り付いた。

少し機転の利く実装であれば『もしかして......殺される......かも?!』と思っていた。

トロくて感の鈍い実装達は『ワタシ達は、檻の中に入ったつもりはないのに.....どうして?』

自分達は、暖かくて、美味しいフードがある所に来たのに、こんな所に入った覚えはないのに......。

実装の頭の程度で処理し切れない事が一度に起きている。


今回の殺処分の予定は、二酸化炭素を注入して体が動かせない様にして意識の有る状態で炎で燃やされる事になっている。

一体、どれだけの実装が罠の中に入っているのか、2人の職員が、覗き扉を開けて中を確認した。

すると1匹の仔実装が、「ゴ......ゴシュジンサマ、ワ......ワタチテチ!助けてテチィ!早く......早くここから出してテチィ〜!」

それは、覗き扉から覗いた職員の片方が、今朝、自分にチョコレートをくれたニンゲンだったからである。

「ゴシュジンサマァ〜!、ワタチテチィ〜!チョコレートを貰ったワタチテチィ〜!早くぅ〜!ここから出してテチィ〜!」

そう叫んだが、リンガルを持っていない作業員には「テチ!テチ!」としか聞こえていない。

又、仔実装の言ってる事が解ったとしても、無視されて殺されてしまうのには変わりない。

「確認OK!二酸化炭素注入開始!!」「注入開始!」そう言って注入と書かれたボタンを押した。

≪シュー≫と言う音がして二酸化炭素が、注入されると僅か30秒で仔実装がバタバタ倒れ出した。

「ママァ〜なんだか体がだるくなってきたテチィ!」<ポテン!>そう言って眠り打す仔実装も居れば、「く......苦しい!」<ポテン!>と首を押えて苦しみ出す仔実装もいる。

「ど.....どうしたデス!二.....ニンゲンさん子供が苦しんでいるデス!助けてあげてデスゥ〜」

「子供が......子供が急に倒れたデス!意識が無い!ニンゲンさーん!ニンゲンさーん!」

この後に及んで未だ殺される事が理解出来ていないバカ親は、ひたすら助けを求めた。

「長女ぉ〜!長女ぉ〜!ママは此処に居るデスよ!しっかりするデスよ!」

しかし未だ二酸化炭素が、致死量に達している程の濃度になっていないのだが、体の脆い仔実装は「ハア!ハア!」苦しそうして、もう親の問いかけにも答えようとしない。

例の仔実装も床に仰向けに倒れて「ゴ......ゴシュジン......サマァ〜どうして......どうしてこんな酷い事をする.....テチィ〜?どうして?どうして?助けてくれないテチ?」そう言いながらぐったりしている。

その他の仔実装も「ママ.......なんだか苦しいのを通り越して......眠くなってきたテチィ〜」そう言って目をつむりだした。

「本当に弱いな!仔実装はよぉ〜!」

「弱い!弱すぎる!これから時間が有る時は、親と子を別々にしないと面白くもなんともねえ!」

「ホント!ホント!親は未だピンピンしてるのに仔実装のあのザマは何なんだ!」

モニターを見ながら作業員も少し拍子抜けした。

「しかたない、二酸化炭素の注入を止めて、蓑踊り(=火に焼かれる苦しさでのたうち廻る状態を指す)を見た方がおもしれーぜ!」

「だな!」そう言って、二酸化炭素注入を中止した。しかし二酸化炭素が!充満していると火が着かない。

すぐさま「換気」のスイッチを押して二酸化炭素の排気を行い、外の空気(酸素)と入れ替えた。

「ママァ〜!なんだか体が楽になって来たテチィ〜!」

「眠く無くなって来たテチィ」

「ママ、泣いたら駄目テチよ!」

暫くして二酸化炭素が排出されて、炉内に新鮮な酸素が充満してくると。ぐったりした仔実装も元気に起きてきた。

「ママは、お前がぐったりして呼びかけにも反応しないから心配したデスよ!」

例の仔実装も「あれ?急に体が軽く成ったテチィ、一体何テチィここは?」

何が起こったのか解っていない仔実装は、きょとんとしていたのだが。

「じゃあ!ぼちぼち火炙りにしてやるか!」

炉内の2重になっている防火扉が下に降りてきて<ガシーン>と言う音で扉が降りた。

「一気に火力を上げて燃やしてしまうのは、面白くないぞ!じわじわ苦しめて焼殺せ!」

「じゃあ!少し弱目の火力で様子をみるか!」

作業員は、火力が下がる様に設定して「点火」のボタンを押した。

炉内には、実装が入っている檻が10台2列縦隊で並んでいる。

炎の出るバーナーは、右側に有る檻には、右側の壁側と檻の上部に各2つ付いている。

左側は、それとは逆側に付いている。

そこから弱火だが、炎が出た。弱火の炎は、檻の鉄格子に当たり徐々に熱せられていった。

「デッス!少し暖かくなってきたデスゥ〜!」

「ママァ〜!ワタチも少し元気になって来たテチ!もう大丈夫テチョ!」

「ママも随分楽に......でも少し暑くなってきたようデスゥ〜」

すると、檻に寄りかかっている実装が「熱っつ〜!あちちちちちぃ〜!」大騒ぎをした。

実装達が周囲を見渡すと、炎に包まれた実装が暴れ回っている。(もう少し早く気が着いても良さそうなもんだが)

「デジャーァ!熱いデス!熱いデス!火傷するデス!助けてぇ〜!」

体に火が燃え移った実装が、大騒ぎをして転げまわっている。

実装達は、炎の出るバーナーから離れた左側に集まったが、転げまわって苦しむ実装の火が、同族に燃え移り、檻の中は火の海になった。

「デジャー!」「デスゥー!」真っ赤な炎が実装の体を舐める様に燃え広がる。

職員も「すげえな!」「こんな弱火であれだけ激しく燃えるとは!」と半笑を浮かべて、モニターを食い入る様に見入った。

「デギャー!熱い!熱い!」と叫んでいた実装も<パキン!><パキン!><パキン!>次々に燃えていった。

例の親子実装も最初は、「長女ぉ〜!早くこっちにママの陰に隠れるデスゥ〜!」守ろうとしていた。

しかし、いざ自分に火が燃え移ると「熱いぃぃぃぃぃぃぃ〜!」と庇うつもりの仔実装を「テチャァァァァ〜!」盾にした。

まあ、実装らしいと言えばそれまでだが。

チョコレート仔実装も「ゴシュジンサマァ〜!ゴシュジンサマァ〜!熱い!熱い!どうしてぇ〜!どうしてぇ〜!こんな事をするテチィ〜!ワタチを......ワタチだけは助けて......」

チョコを1個貰っただけで既に飼い実装気分になっていて、自分だけ特別な存在と思っていたのだろう。

「餌を貰ったワタチは、飼い実装だ!飼いにして貰った!」そんな馬鹿げた事を死ぬ直前まで思っていた。(おめでたい存在である)

約10分後、炉内の実装は、骨まで灰になり、炉の下に有る廃棄ボックスに落された。


「今度は、昼前にもう1便来るなぁ〜!今からワクワクするぜ!」

「暫くはこの調子で楽しめそうだな、今度は成体と仔実装を別々にして処分しても面白いな!」

「それとも二酸化炭素を全く使わず、燃やしてしまおうぜ!おもしれぇ〜ぞ!」
                                                                                                                                                                                                                                             

今後もこの様にして実装達は、苦しむだけ苦しめられて、殺され続けるだろう。

全ては、実装自らがその様な仕打ちを受ける事を望む様な行動を取っているのだから。


FIN

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1 Re: Name:ジャケットの男 2017/05/19-13:07:35 No:00004691[申告]
新作ありがとうございます^^

実装石の日常のよくある一コマを、
可愛さと醜さと愚かしさを渾然一体にした喜劇として描き切っており、
とても楽しく読ませて頂きました。
2 Re: Name:匿名石 2017/05/19-18:53:04 No:00004692[申告]
火をつけるためには二酸化炭素を薄めて酸素に変えなければならないので1度仔蟲が覚醒するというのがいいな
上げ落としは最高だ
3 Re: Name:匿名石 2017/05/22-09:46:23 No:00004707[申告]
すみません。
投稿した後読み直すと、不自然は文章になっている
所がありました。
少し訂正しました。

4 Re: Name:匿名石 2017/05/22-12:32:26 No:00004708[申告]
おう戻ってきたかおかえり
5 Re: Name:匿名石 2017/05/25-13:38:21 No:00004723[申告]
どうせなら実装燃やして発電できれば
実装石も少しは役に立つのにな
6 Re: Name:匿名石 2017/05/25-18:40:43 No:00004724[申告]
石炭どころじゃない排気ガス汚染が見えるぞ
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