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— 冬のデパートと実装石 (2) — 五女のゴォと六女のムゥが潜んだ段ボール箱が運び込まれたのは、5階の日用品・雑貨売り場であった。 段ボール箱は、売り場に到着しても、すぐに は開梱されず、奥の在庫置き場に一時積み上げられた。人の気配がなくなった のを確認して、そっと箱から出る二匹。在庫置き場を一通り歩いてみるが、 洗剤やトイレットペーパー、なべや食器など、雑多なものが積まれているだ けで、食べ物も、隠れるのに適当な場所もない。 「テェェェ・・・こんな所にいたら飢え死にしちゃうテチ・・・。手分けして、食べ物や 隠れる場所を探すテチ!」 二匹は、扉が開きっぱなしの在庫置き場の出入り口から顔を出して 周囲の様子を確かめると、タイミングを見はからって 一気に売り場へと飛び出した。 . ******************************************************************* . ゴォは、商品棚の陰に隠れながら、広い売り場をチョコチョコと走り回った。 「食べ物なんか、どこにもないテチ・・・。ここのどこが楽園なんテチ?」 不満たらたらのゴォ。夢見がちなゴォは、 「デパートは楽園デス」 という母親の言葉に、暖かい太陽の光がさんさんと降り注ぎ コンペイトウやステーキの実る木があちこちに生えた、花咲き乱れる草原をイメージしていた。 しかし、実際には、空調のおかげで寒くはないものの、固い石の床に、 食べられもしない商品の棚が列を作る、面白くもない場所である。期待外れもいい所であった。 その時、ふとゴォの鼻腔をくすぐるような、甘い香りが漂ってきた。 「テチュ?」 思わず立ち止まるゴォ。その香りは、すぐ側にある、贈答観賞用の生花売り場 に置かれた、色とりどりの花が発するものであった。興味を抑えられず、生花 売り場へ向かうゴォ。 「テェェ・・・!」 生花売り場の中は、ゴォが想像していた、楽園そっくりの景色であった。 売り場の入り口では、アネモネ、ベコニア、クロッカスが、鉢の中 で満開の花を咲かせていた。 奥の方には、ドラセナ、ベンジャミンなど、大きめの室内観賞用の樹木が所狭しと並ぶ。 非耐寒性植物のために、売り場の中は夏のように暖房が効いている。 シャンデリアのように頭上にぶら下がる、大ぶりのフクシアの花の下を通っ て、ゴォは売り場に入り込んだ。 咲き乱れる花々の間を、うっとりとしながら歩き回るゴォ。 「ここはとてもステキな所テチ・・・。きっとここが、ママの言っていた楽園テチ!」 その時、ゴォの小さなお腹から、 「キュルルルル」 と可愛らしい音が鳴った。 誰が聞いている訳でもないが、思わず顔を赤らめるゴォ。 食べ盛りの仔実装である。 すぐに気を取り直すと 「ここが楽園なら、きっと食べ物もいっぱいあるテチュ!」 とつぶやき、散策を続行する。 . きょろきょろと周囲を見渡しながら歩き回ることしばらく、果たして ゴォは、木の実が生った鉢植えの一群を見つけ出した。ハウスものであろ う、ヒメリンゴ、イチゴ、ラズベリー、さくらんぼ、トマト、キンカン、 キゥイなどが、季節外れにもかかわらず、小ぶりながらたわわな果実を付けていた。 ゴォは、手近にあった、ユスラ梅の丸くて赤い実をもいで口に含んだ。 甘酸っぱい味と、爽やかな香りが、胸いっぱいに広がる。 「テェェ・・・。」 しばらくその余韻に浸っていたゴォだが、すぐに手当たり次第に周囲の 果実をもいで食べあさり始めた。ひとしきり満足すると、膨れたお腹を 抱えて、鉢植えの土の上でコロリと横になり、少し休む。 「間違いないテチュ、ここがママの言っていた楽園テチュ・・・。ここで春まで過すテチュ♪」 腹がこなれると、ゴォは、弁当代わりにさくらんぼの実を 一つもいで小脇に抱え、鉢植えからピョンと飛び降りて、散策を続ける べく売り場の奥へと歩いて行った。 . 売り場の奥には、花を付ける植物はほとんど置いておらず、緑の葉が生い茂っていた。 鉢の大きさも、ソテツ、カポック、ナンヨウスギなど、 入り口付近よりよほど大きなものが置いてある。 仔実装にとっては、さながらジャングルのような景色になってきた。 湿度も入り口付近より高い。 「何だかおっかないテチュ・・・。」 何となく不安を感じるゴォ。そんな 木々の合間から、今度は、ふんわりと優しい乳のような香りが漂って来た。 「何の香りテチ?」 ゴォは、香りの元を探して、鉢の隙間を潜り抜け ながら進んで行く。辿り着いた香りの元は、高さ150センチはあろう かという、背が高く太い草の鉢植えであった。 その草の根元からは、何本もの細い枝が生えており、枝の先には、二枚貝のような形をした広い葉が上下に付いていた。 その下の方の葉の中にたまった乳液から、不思議な香りは漂っていたのだ。 鉢の上に這い登り、その不思議な草に近づくゴォ。 葉の上に乗ると、たまった乳液に、恐る恐る舌を近づけて舐めてみる。 それは、間違いなく蛆実装の頃に母の胸から啜った乳の味だった。 「テチュ~ン♪」 懐かしい香りと味に、夢中になるゴォ。 しかし、時を忘れて乳液を舐めている間に、そっと上の方の葉が降りて来て、乳液 の溜まった下の葉と合わさり、葉と葉の間の空間に、ゴォを閉じ込め てしまった。 「テ?」 その事に気づき、きょとんとするゴォ。
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