タイトル:【塩】 ワタチがやりました マルカジリmay投下スク
ファイル:塩保管スク[jsc0298.txt]
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:381 レス数:1
初投稿日時:2007/07/04-09:03:01修正日時:2007/07/04-09:03:01
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このスクは[実装石虐待補完庫(塩保)]に保管されていたものです。
2021/10:塩保消滅によりスクが見れなくなりましたので当保管庫の保存したキャッシュを表示します
痛いぐらいの日差しが窓辺に差し込む時間帯の事である。 飼い実装であるドリは、顔を真っ赤に染め上げながら、 不安そうに座っている我が仔達に鋭い視線を送っているのであった。 顔が高揚しているのはこの気温のせいだけではない。 ドリは怒りと悲しみに身を焦がしていたのである。 (誰デス… ご主人様に黙って金平糖を食べた馬鹿者はデスゥゥ) そう、怒声を上げると空になった金平糖の袋を我が仔達の前に思いっきり叩き付ける。 デフーデフーと荒い息をしている怒り心頭なドリが行ったこの行為を受け、 3匹の仔がそれぞれビクッっと身を震わす。 (レッフーレフー、プニプニはきっもちいいレフー)と緊張感の無い蛆実装が上げるその寝言が やけに滑稽に聞こえる。そんな昼下がりの出来事であった。 飼い実装ドリは筋金入りのペット実装である。 幼少の頃からブリーダーに鍛え上げられてきた個体であった。 だからこそ分かっている。仔を欲し、産む愚かさを。 自分がどんなに仔を望んでも、それは飼い主には関係の無い感情。 我侭を通して、飼い主に迷惑をかけるとそれは破滅を呼ぶ事になる。 だから押し黙っていた。仔を欲するその欲望を抑え、物分りの良い飼い実装を演じきっていた。 そんなドリにかけられた忘れもしないあの言葉… 『ドリさえ良ければ、家族を作っても構わないよ』 その言葉を聞くとドリは涙を流した。 せめてもの慰めにと、仔実装人形を使い育児の真似事をするほど仔を欲していたのである。 それが現実のものとなる。母としての幸せを謳歌できる。 ドリは飼い主の温情に涙を流しながら感謝した。 私の事を誰よりも分かってくれている世界で一番のご主人様。 そんな事を口にしながら、より一層の忠誠を飼い主に誓うのであった。 それから半月後、ドリは4匹の仔を産む。 活発なこの仔の名前はハナ、誰よりも優しい心の持ち主であるこの仔の名前はミミ 臆病で寂しがり屋なこの仔の名前はメメ。最後に家族のマスコットである蛆実装である蛆ちゃん。 総勢5匹の家族をドリは手に入れたのであった。 仔実装達が固形物を口に出来るようになった頃。 ドリは初めてとなる家族でお散歩をする事になった。 野良と間違わないようにと、家族全員におそろいの首輪をつけいざ公園に出発。 仔実装たちの歩く速さに合わせ、ゆっくりと飼い主と共に公園にやってくる。 初めての外の世界に大興奮の仔実装達。ドリが抱えている蛆ちゃんもレフィーっと楽しげに声を上げていた。 そんなドリの目に、真新しいダンボールが飛び込んでくる。 耳を澄ますと、〝ご主人様ぁぁぁぁぁ ごめんなさいデスー〟っと聞こえてくる。 どうやらそれは捨てられた実装一家のようであった。 不憫な実装石たちだなと思ったドリは少し陰鬱な気分になってしまった。 そんなドリの耳に続いてこんな言葉が聞こえてくる 〝もっと確り躾けるデスゥゥゥ 仔実装達が盗み食いしただけで捨てるだなんて酷過ぎるデスゥゥ〟 その時、ハッと過去の学習を思い出すドリ。 『仔は絶対に産むな。何かの間違いで妊娠し場合、例え未来の飼い主が仔を産んでも良いと言っても 産んだ直後事故に見せかけ皆殺しにしろ。これはお前たちを虐める為に言っているのではない。 寧ろその逆だ。仔が必ず起こす数々の糞蟲行動に飼い主は愛情を冷ましてしまう。 そうなった時お前らは捨てられる。例え自分は何一つ悪い事をしていなくても捨てられる。 その事を良く覚えておいて欲しい…、 願わくば、其々の飼い主に見取られながら逝く価値のある生をお前らが送る事を祈っているよ』 それはペット実装養成教育最終日のその日、ブリーダーから贈られた最後の言葉であった。 散々痛い目にあわせて来た大ッ嫌いなブリーダーの言葉がここに来てドリの脳内に響き渡る。 清々しい初夏の風を全身に受けてはいたが、じんわりと背中が濡れている事に気がつく 急に不安に駆られたドリであったが、飼い主と嬉しそうに戯れる我が仔達を見据えて、 私の仔だったら大丈夫デスっと不安を封じ込める為にそう呟くのであった。 お昼ちょっと前に公園から帰ってきたドリ一家は、その後昼食を済ます。 実装石にしては長い距離を歩いた為か、ドリはお腹がいっぱいになると眠気に襲われてしまう。 未だ遊び続ける元気な仔実装達を見つめながら、ウトウトとし始め。そのまま眠りに入ってしまう。 1時間ほど経った頃だろうか、耳元でドリ、ドリっと囁く声が聞こえる。 目を開けるとそこには飼い主がいたのであった。 『すまないなドリ、急に呼び出しが着てしまった。数時間で戻ってくるからお留守番頼んだよ』 半分寝ているドリはデェェェっと返事をするだけであった。 再び目を閉じると、遠くの方でバタンという飼い主が出て行った音が聞こえてくる。 その音を聞き終わると、再びドリは我が仔達が遊んでいる賑やかな声を聞きながら 夢の世界に入っていったのである。 時間は午後3時を少し過ぎた頃である。 喉の渇きを覚えたドリはムクリと起き上がる、水を飲む為に立ち上がったのであった。 専用の寝床には固まるように、遊び疲れた為か添い寝している愛しい我が仔達 そっとその中の一匹の仔の頭を撫でる。 幸せを与えてくれた飼い主と幸せを運んできてくれる我が仔に感謝しつつ、水飲み場へと移動する。 喉を潤すとついでにトイレも済ませておこうと、簡易トイレが置いてある場所へと移動をする。 簡易トイレは玄関の近くに設置してあり、リビングを横切る事となる。 仔実装達の誰かが出した糞の上に自分の糞を重ねるように出し終わると あくびをしながら寝床に戻ろうとリビングを横切るドリ。 とその時、ドリは立ちながら凍りついた… それはなんの変哲も無い空になった袋であった。 何て事は無いゴミがリビングの床に捨てられていただけ、 だが、ドリはその袋を掴み、マジマジと観察するとガタガタと震え出してしまった。 それは、昼食の終わりに飼い主から貰った金平糖の詰まった袋であった。 ドリは覚えていた。最後に見た時はまだ半分は金平糖が入っていた事を… それが今は空になって床に無造作に捨てられている。 もっと確り躾けるデスゥゥゥ 仔実装達が盗み食いしただけで捨てるだなんて酷過ぎるデスゥゥ〟 先ほどの公園で、一家揃って捨てられていた親実装の嘆きが響いてくる。 誰かが… あの仔の中の誰かが… 盗み食いをした… 誰が…  ドリは崩れてしまう足をなんとか立たせ続け、考え続ける。 責任を、誰がやったのかを明確にして謝らないと ご主人様は糞蟲を嫌うに決まっている。糞蟲は間引かないと皆捨てられる。 糞蟲を見つけないと… ドリは金平糖の袋を握り締めながら寝ている仔実装達の所へ駆け足で向かう。 そして寝ている我が仔達を乱暴に起こし、その場で正座をさせる。 いつもと違うドリの雰囲気に呑まれ、言われたとおり座り込む仔実装達。 そんな仔実装達に向かい (誰デス… ご主人様に黙って金平糖を食べた馬鹿者はデスゥゥ) とドリは吠え立てたのであった。 蛆実装の間抜けな寝言が響く中、犯人探しが開始される。 誰が食べたかを問うてみたが、仔実装達は各々ワタチじゃないテチィっと答えた。 そこでドリは仔実装達にパンツを見せろと要求する。 まずはメメからである。服をたくし上げるとパンツにはべっとりと糞が付着していた。 どうやらメメはパンコンしてしまっているようである。 トイレに行くのをめんどくさがり寝糞を垂れてしまったと涙ながらに語る。 この行為にメメ感謝をしなければならない。 通常ならばお説教が始まるが、今回はこれでメメは容疑者から外れたのである。 続いてハナがパンツを調べられる。パンツは真っ白であった。 四つんばいになる事を命じ、その総排泄孔に鼻を近づけるドリ フンフンと注意深く臭いを嗅ぎ取り、ここ数時間の間に糞をしていない事を確かめる。 これで、ハナはパンツと同じ白であると結論付けられた。 最後に総排泄孔を嗅がれたのは、ミミであった。 フンフンと臭いを嗅ぐドリの鼻に糞の臭いが漂ってくる。 (ミミ… 正直に答えるデス。ウンチをしたデス?) 「したテチュン。ママの言いつけ通りちゃんと独りでトイレやってきたテチュン」 ミミは誉められるものだと思い、自慢げにそう声を上げてしまう。 振り上げられたドリの右腕を見て偉い偉いと誉められるものだと思っていた。 だがしかし、その右腕は拳を握りミミに向かって落とされたのであった。 (ミミィィィィ お前が金平糖を盗み食った糞蟲だったデスゥゥゥ!!!) トイレに行く為にはリビングを横切らなければならない。 メメとハナはトイレに行っていないので、リビングを横切ることは無い 蛆実装は物の数に入れないとするのならば、犯人はミミしかいないのである。とドリは結論づけた。 だが待って欲しい。トイレまで行っていないだけでメメとハナだってリビングまでいった可能性はある。 金平糖を食い漁り、何食わぬ顔でお昼寝を開始したとも考えられるが… そこまで複雑な考えをドリに要求するのは無理であった。 怪しいやつの目星がついた。それだけでドリは他の可能性を考えるまでも無く ミミが糞蟲だと結論をつけてしまったのであった… デザァァァァデザアァァァァ!! 怒号を発しながら鬼神の表情でドリがミミを叩く。 それは躾けの為に行使していた暴力とは一線を画す、敵を排除する時に使う暴力だった。 (お前が食べたデスゥゥゥ さっさと白状するデズゥゥゥ) 「テェェェンテェェェェェェン… ママヤメテェェェ ワタチ食べていないテチィィィィィィ」 (糞蟲は皆そう言うデウウウウ 嘘、デマカセ、捏造なんでもやるデスゥッゥ) 馬乗りになって顔面に拳をたたきつけまくるドリ。 ネチョーっとミミの鼻から流れ出した血液が、ドリの両拳に付着している。 顔が変形しだしたミミが、姉妹に助けを求める。 ワタチは盗み食いなんてしていない。皆言って頂戴と… しかし返って来た言葉は、ミミの求める言葉ではなかった。 「ほっ本当は知っているテチュ… ミミチャンが金平糖を食べているところワタチ見ていたテチュン」 メメは、冷たくそう声を上げた。 ここで下手な擁護でもして疑惑が自分の方へ向けられるのを恐れた為、そう声を上げたのである。 「悪い事をしたらちゃんと謝るテチ! 嘘をつくだなんてミミチャンは悪い仔テチ。  そんなやつ糞蟲であって姉妹じゃないテチ」 ハナに至っては、ドリと同調しすっかりミミを犯人扱いする言葉を吐いてしまった。 「ミミィィィは金平糖なんて食べていないテチィィィ」 その絶叫は空しく響き渡った。 違う…  ミミは盗み喰いなんてやっていないテチ… ミミは蛆チャンと遊んでいただけテチ 悪い事なんて絶対にやっていないテチィィ ミミは糞蟲じゃないテチ ドリ、ハナ、メメに囲まれ、辛辣な言葉をかけられ続けるミミ。 (お前以外、盗み喰いした糞蟲は考えられないデス!) 「さっさと白状しろこの糞蟲テッチュン」 「糞蟲なんかとは姉妹でもなんでも無いテチ」 (そこまでして嘘を貫くだなんて、相当性格が捻じ曲がった糞蟲デスー) 「罪の意識が薄いテチュ? ママの言い付けを破ってもなんとも思わないテチュ?」 「こいつは糞蟲だから、悪い事を平気で行うテチ。悪い事を認める事も出来ないテチ」 (お前なんて要らない仔だったデス、産まなきゃよかったデス) 「こんなやつ、姉妹でもなんでも無いテッチュン」 「きっと隠れて悪い事をいっぱいやってきたに違いないテチ」 糞蟲、糞蟲、糞蟲、糞蟲、糞蟲、糞蟲、糞蟲、糞蟲、糞蟲、糞蟲、糞蟲、糞蟲、 クソムシ クソムシ クソムシ クソムシ クソムシ クソムシ クソムシ クソムシ クソムシ クソムシ クソムシ クソムシ 謂れの無い罪で追い詰められてしまっているミミ。 聞こえてくるのは、糞蟲のレッテル。 その時、ミミの中で何かが崩れた… ワタチ… コンペイトウを食べたテチ… 盗み食いしたテチ… 嘘言ってごめんなさいテチ… ミミは、三匹に囲まれた状態で、そう罪を告白した。 目には光が無かった。 浴びせられる呪詛のような言葉。 誰も助けてくれない究極の孤独 ミミはそれから逃れたくて、生まれて初めてとなる〝嘘〟をついた… (やっと認めたデスー、この糞仔蟲デガァァァァ!!) その後は、お決まりのように暴行が始まった。 ミミは体中に傷を作った。 糞蟲に服や髪はいらないとの事で全て奪われ、ボロボロにされた。 ミミは只管涙を流していた。だが悲鳴などは上げない。 静かに、その両目が腫上ってもただ只管に涙を流し続けた… 体が破壊される痛さなどミミは感じなかったのだ。 熱くて真っ白な脳内に感じる感情はただのひとつ、痛いでも苦しいでもない即ち悲しいだった。 焦点の合っていないミミの目に映るのは、やけに興奮し生き生きとしている家族の嫌な笑み。 絶対正義の名の下に行われている。大義ありの暴行。 糞蟲を処罰する為の行為にドリを始めとする家族は酔っていた。 そんな自分を信じてくれなかった家族を目の当たりにし、 これで良かった… 良くない ワタチは盗み食いをした 本当はしていないテチ ワタチは悪い事をしたから当然ママ経ちに怒られる 本当は悪い事なんてしていないテチ と、いまいち統一制のかける考えをしていたのであった… 『お前たち何をやっている』 何時の間にか帰ってきた飼い主が、未だミミに暴行を加えているドリ達に向かい声を上げていた。 急ぎ、リンガルを取り出し電源を入れリンチの理由を聞く飼い主。 ドリは嬉々として喋りだした。 黙って金平糖を盗み食いした糞蟲を特定し、制裁を加えたと こいつが欲望を抑えきれず、やった事。 こいつが全部悪い。私を含めた家族は悪くない。 捨てるのならばこいつ一匹にしてもらいたい。と 興奮気味に話すドリの言葉を聞き終わると、 飼い主は虫の息になってしまったミミをそっと優しく拾い上げる。 『ミミ、聞こえるか? 苦しかったら喋らなくて良い。  お前が金平糖を盗み食いしたのか? もしそうならば体のどこでもいい少しだけ動かしてみろ』 飼い主のその問いに、ミミは少しだけ左腕を動かした。 ミミのその仕草と、ワタチがやりましたといわんばかりの顔を見ると飼い主は涙を流した。 『そうか… 食べた事になってしまったのだな… 言わせられたのだろうな…  さぞ寂しかっただろうに… 悲しかっただろうに…』 デェー?デデ?っとドリが不思議そうな声を上げている。 糞蟲を特定し、悪い事をやったミミを突き出した自分を なんで誉めてくれないのだろうとドリは思っていた。 そんなドリに思いかけない言葉が浴びせられる。 『金平糖を食べた犯人を教えてやる。それは俺だよ。  出かける前に俺が食べたんだ。ミミは何もしていない』 ドリは凍りついた。メメとハナはポカーンと口を開けたまま固まっている。 (そんな、ご主人様ぁ、嘘ついちゃダメデス。そいつは自分で食べたっていったデス) 『言ったじゃない… 〝言わされた〟んだよ』 (本当レフ- 皆には内緒って事で皆が寝ちゃった後、 人間さんと蛆チャンで金平糖食べたレフ- 美味しかったレフ-) 何時の間にか起き出してきた蛆実装が緊張感の無い間の抜けた声を上げ、 飼い主の言葉を肯定する。 ドリはガタガタと震え出した。そんなドリにかけられる言葉 「ワワワ、ワタチは最初からミミちゃんが犯人じゃないって思っていたテチュン」 その声の主はメメだった。 「ご主人様聞いてくださいテチ、全部ぜーんぶママにやらされた事テチ。ワタチは何も悪く無いテチ」 続けて声を上げたのはハナだった。 メメ、ハナは旗色が悪くなったドリを見捨て飼い主側に行こうと画策しているのである。 (違うデスー、金平糖を食ったのはその糞蟲に決まっているデスー) 独り孤独にそう罪をでっち上げているドリを尻目に 強者である飼い主の足元に擦り寄り己の罪を有耶無耶にしようと必死なメメとハナ。 気を失い、眠ってしまったミミと現状を把握できていない蛆実装だけが 飼い主の目の中に映っていた… 数日後、心を壊されたミミはケージの中で今日もぼんやりと天井を見つめていた。 ピクリとも動かず、只管金平糖を盗み食いしたというありもしない罪を償うために、 ごめんなさい。ごめんなさいと呟き続ける日々。 それは肉体は生きているが、心が死んでいる状態であった。 そんな状態からミミが回復してくれる事を祈りつつ、 今日も飼い主は蛆実装の腹を人差し指で押し遊んでやっている。 ドリ、メメ、ハナはとうの昔にこの世から去った。 糞蟲はいらないと飼い主に言われ、処分場送りにされてしまったのだった。 メメ、ハナは論外だが、果たしてドリはそこまで糞蟲だったのだろうか? ドリはドリなりに家族を守る為に必死だったのだ。 酌量の余地はあったのかもしれない。 だが、それを決めるのは飼い主である。飼い主がいらないと言えばいらない ただそれだけの実にシンプルな話である。 業火に身を焼かれ、朽ちていくその瞬間にドリが思った事、それは ブリーダーは正しかったといった事だった… 即ち 『仔は絶対に産むな。  何かの間違いで妊娠し場合、例え未来の飼い主が仔を産んでも良いと言っても  産んだ直後事故に見せかけ皆殺しにしろ』 であった。痛いぐらいの日差しが窓辺に差し込む時間帯の事である。 飼い実装であるドリは、顔を真っ赤に染め上げながら、 不安そうに座っている我が仔達に鋭い視線を送っているのであった。 顔が高揚しているのはこの気温のせいだけではない。 ドリは怒りと悲しみに身を焦がしていたのである。 (誰デス… ご主人様に黙って金平糖を食べた馬鹿者はデスゥゥ) そう、怒声を上げると空になった金平糖の袋を我が仔達の前に思いっきり叩き付ける。 デフーデフーと荒い息をしている怒り心頭なドリが行ったこの行為を受け、 3匹の仔がそれぞれビクッっと身を震わす。 (レッフーレフー、プニプニはきっもちいいレフー)と緊張感の無い蛆実装が上げるその寝言が やけに滑稽に聞こえる。そんな昼下がりの出来事であった。 飼い実装ドリは筋金入りのペット実装である。 幼少の頃からブリーダーに鍛え上げられてきた個体であった。 だからこそ分かっている。仔を欲し、産む愚かさを。 自分がどんなに仔を望んでも、それは飼い主には関係の無い感情。 我侭を通して、飼い主に迷惑をかけるとそれは破滅を呼ぶ事になる。 だから押し黙っていた。仔を欲するその欲望を抑え、物分りの良い飼い実装を演じきっていた。 そんなドリにかけられた忘れもしないあの言葉… 『ドリさえ良ければ、家族を作っても構わないよ』 その言葉を聞くとドリは涙を流した。 せめてもの慰めにと、仔実装人形を使い育児の真似事をするほど仔を欲していたのである。 それが現実のものとなる。母としての幸せを謳歌できる。 ドリは飼い主の温情に涙を流しながら感謝した。 私の事を誰よりも分かってくれている世界で一番のご主人様。 そんな事を口にしながら、より一層の忠誠を飼い主に誓うのであった。 それから半月後、ドリは4匹の仔を産む。 活発なこの仔の名前はハナ、誰よりも優しい心の持ち主であるこの仔の名前はミミ 臆病で寂しがり屋なこの仔の名前はメメ。最後に家族のマスコットである蛆実装である蛆ちゃん。 総勢5匹の家族をドリは手に入れたのであった。 仔実装達が固形物を口に出来るようになった頃。 ドリは初めてとなる家族でお散歩をする事になった。 野良と間違わないようにと、家族全員におそろいの首輪をつけいざ公園に出発。 仔実装たちの歩く速さに合わせ、ゆっくりと飼い主と共に公園にやってくる。 初めての外の世界に大興奮の仔実装達。ドリが抱えている蛆ちゃんもレフィーっと楽しげに声を上げていた。 そんなドリの目に、真新しいダンボールが飛び込んでくる。 耳を澄ますと、〝ご主人様ぁぁぁぁぁ ごめんなさいデスー〟っと聞こえてくる。 どうやらそれは捨てられた実装一家のようであった。 不憫な実装石たちだなと思ったドリは少し陰鬱な気分になってしまった。 そんなドリの耳に続いてこんな言葉が聞こえてくる 〝もっと確り躾けるデスゥゥゥ 仔実装達が盗み食いしただけで捨てるだなんて酷過ぎるデスゥゥ〟 その時、ハッと過去の学習を思い出すドリ。 『仔は絶対に産むな。何かの間違いで妊娠し場合、例え未来の飼い主が仔を産んでも良いと言っても 産んだ直後事故に見せかけ皆殺しにしろ。これはお前たちを虐める為に言っているのではない。 寧ろその逆だ。仔が必ず起こす数々の糞蟲行動に飼い主は愛情を冷ましてしまう。 そうなった時お前らは捨てられる。例え自分は何一つ悪い事をしていなくても捨てられる。 その事を良く覚えておいて欲しい…、 願わくば、其々の飼い主に見取られながら逝く価値のある生をお前らが送る事を祈っているよ』 それはペット実装養成教育最終日のその日、ブリーダーから贈られた最後の言葉であった。 散々痛い目にあわせて来た大ッ嫌いなブリーダーの言葉がここに来てドリの脳内に響き渡る。 清々しい初夏の風を全身に受けてはいたが、じんわりと背中が濡れている事に気がつく 急に不安に駆られたドリであったが、飼い主と嬉しそうに戯れる我が仔達を見据えて、 私の仔だったら大丈夫デスっと不安を封じ込める為にそう呟くのであった。 お昼ちょっと前に公園から帰ってきたドリ一家は、その後昼食を済ます。 実装石にしては長い距離を歩いた為か、ドリはお腹がいっぱいになると眠気に襲われてしまう。 未だ遊び続ける元気な仔実装達を見つめながら、ウトウトとし始め。そのまま眠りに入ってしまう。 1時間ほど経った頃だろうか、耳元でドリ、ドリっと囁く声が聞こえる。 目を開けるとそこには飼い主がいたのであった。 『すまないなドリ、急に呼び出しが着てしまった。数時間で戻ってくるからお留守番頼んだよ』 半分寝ているドリはデェェェっと返事をするだけであった。 再び目を閉じると、遠くの方でバタンという飼い主が出て行った音が聞こえてくる。 その音を聞き終わると、再びドリは我が仔達が遊んでいる賑やかな声を聞きながら 夢の世界に入っていったのである。 時間は午後3時を少し過ぎた頃である。 喉の渇きを覚えたドリはムクリと起き上がる、水を飲む為に立ち上がったのであった。 専用の寝床には固まるように、遊び疲れた為か添い寝している愛しい我が仔達 そっとその中の一匹の仔の頭を撫でる。 幸せを与えてくれた飼い主と幸せを運んできてくれる我が仔に感謝しつつ、水飲み場へと移動する。 喉を潤すとついでにトイレも済ませておこうと、簡易トイレが置いてある場所へと移動をする。 簡易トイレは玄関の近くに設置してあり、リビングを横切る事となる。 仔実装達の誰かが出した糞の上に自分の糞を重ねるように出し終わると あくびをしながら寝床に戻ろうとリビングを横切るドリ。 とその時、ドリは立ちながら凍りついた… それはなんの変哲も無い空になった袋であった。 何て事は無いゴミがリビングの床に捨てられていただけ、 だが、ドリはその袋を掴み、マジマジと観察するとガタガタと震え出してしまった。 それは、昼食の終わりに飼い主から貰った金平糖の詰まった袋であった。 ドリは覚えていた。最後に見た時はまだ半分は金平糖が入っていた事を… それが今は空になって床に無造作に捨てられている。 もっと確り躾けるデスゥゥゥ 仔実装達が盗み食いしただけで捨てるだなんて酷過ぎるデスゥゥ〟 先ほどの公園で、一家揃って捨てられていた親実装の嘆きが響いてくる。 誰かが… あの仔の中の誰かが… 盗み食いをした… 誰が…  ドリは崩れてしまう足をなんとか立たせ続け、考え続ける。 責任を、誰がやったのかを明確にして謝らないと ご主人様は糞蟲を嫌うに決まっている。糞蟲は間引かないと皆捨てられる。 糞蟲を見つけないと… ドリは金平糖の袋を握り締めながら寝ている仔実装達の所へ駆け足で向かう。 そして寝ている我が仔達を乱暴に起こし、その場で正座をさせる。 いつもと違うドリの雰囲気に呑まれ、言われたとおり座り込む仔実装達。 そんな仔実装達に向かい (誰デス… ご主人様に黙って金平糖を食べた馬鹿者はデスゥゥ) とドリは吠え立てたのであった。 蛆実装の間抜けな寝言が響く中、犯人探しが開始される。 誰が食べたかを問うてみたが、仔実装達は各々ワタチじゃないテチィっと答えた。 そこでドリは仔実装達にパンツを見せろと要求する。 まずはメメからである。服をたくし上げるとパンツにはべっとりと糞が付着していた。 どうやらメメはパンコンしてしまっているようである。 トイレに行くのをめんどくさがり寝糞を垂れてしまったと涙ながらに語る。 この行為にメメ感謝をしなければならない。 通常ならばお説教が始まるが、今回はこれでメメは容疑者から外れたのである。 続いてハナがパンツを調べられる。パンツは真っ白であった。 四つんばいになる事を命じ、その総排泄孔に鼻を近づけるドリ フンフンと注意深く臭いを嗅ぎ取り、ここ数時間の間に糞をしていない事を確かめる。 これで、ハナはパンツと同じ白であると結論付けられた。 最後に総排泄孔を嗅がれたのは、ミミであった。 フンフンと臭いを嗅ぐドリの鼻に糞の臭いが漂ってくる。 (ミミ… 正直に答えるデス。ウンチをしたデス?) 「したテチュン。ママの言いつけ通りちゃんと独りでトイレやってきたテチュン」 ミミは誉められるものだと思い、自慢げにそう声を上げてしまう。 振り上げられたドリの右腕を見て偉い偉いと誉められるものだと思っていた。 だがしかし、その右腕は拳を握りミミに向かって落とされたのであった。 (ミミィィィィ お前が金平糖を盗み食った糞蟲だったデスゥゥゥ!!!) トイレに行く為にはリビングを横切らなければならない。 メメとハナはトイレに行っていないので、リビングを横切ることは無い 蛆実装は物の数に入れないとするのならば、犯人はミミしかいないのである。とドリは結論づけた。 だが待って欲しい。トイレまで行っていないだけでメメとハナだってリビングまでいった可能性はある。 金平糖を食い漁り、何食わぬ顔でお昼寝を開始したとも考えられるが… そこまで複雑な考えをドリに要求するのは無理であった。 怪しいやつの目星がついた。それだけでドリは他の可能性を考えるまでも無く ミミが糞蟲だと結論をつけてしまったのであった… デザァァァァデザアァァァァ!! 怒号を発しながら鬼神の表情でドリがミミを叩く。 それは躾けの為に行使していた暴力とは一線を画す、敵を排除する時に使う暴力だった。 (お前が食べたデスゥゥゥ さっさと白状するデズゥゥゥ) 「テェェェンテェェェェェェン… ママヤメテェェェ ワタチ食べていないテチィィィィィィ」 (糞蟲は皆そう言うデウウウウ 嘘、デマカセ、捏造なんでもやるデスゥッゥ) 馬乗りになって顔面に拳をたたきつけまくるドリ。 ネチョーっとミミの鼻から流れ出した血液が、ドリの両拳に付着している。 顔が変形しだしたミミが、姉妹に助けを求める。 ワタチは盗み食いなんてしていない。皆言って頂戴と… しかし返って来た言葉は、ミミの求める言葉ではなかった。 「ほっ本当は知っているテチュ… ミミチャンが金平糖を食べているところワタチ見ていたテチュン」 メメは、冷たくそう声を上げた。 ここで下手な擁護でもして疑惑が自分の方へ向けられるのを恐れた為、そう声を上げたのである。 「悪い事をしたらちゃんと謝るテチ! 嘘をつくだなんてミミチャンは悪い仔テチ。  そんなやつ糞蟲であって姉妹じゃないテチ」 ハナに至っては、ドリと同調しすっかりミミを犯人扱いする言葉を吐いてしまった。 「ミミィィィは金平糖なんて食べていないテチィィィ」 その絶叫は空しく響き渡った。 違う…  ミミは盗み喰いなんてやっていないテチ… ミミは蛆チャンと遊んでいただけテチ 悪い事なんて絶対にやっていないテチィィ ミミは糞蟲じゃないテチ ドリ、ハナ、メメに囲まれ、辛辣な言葉をかけられ続けるミミ。 (お前以外、盗み喰いした糞蟲は考えられないデス!) 「さっさと白状しろこの糞蟲テッチュン」 「糞蟲なんかとは姉妹でもなんでも無いテチ」 (そこまでして嘘を貫くだなんて、相当性格が捻じ曲がった糞蟲デスー) 「罪の意識が薄いテチュ? ママの言い付けを破ってもなんとも思わないテチュ?」 「こいつは糞蟲だから、悪い事を平気で行うテチ。悪い事を認める事も出来ないテチ」 (お前なんて要らない仔だったデス、産まなきゃよかったデス) 「こんなやつ、姉妹でもなんでも無いテッチュン」 「きっと隠れて悪い事をいっぱいやってきたに違いないテチ」 糞蟲、糞蟲、糞蟲、糞蟲、糞蟲、糞蟲、糞蟲、糞蟲、糞蟲、糞蟲、糞蟲、糞蟲、 クソムシ クソムシ クソムシ クソムシ クソムシ クソムシ クソムシ クソムシ クソムシ クソムシ クソムシ クソムシ 謂れの無い罪で追い詰められてしまっているミミ。 聞こえてくるのは、糞蟲のレッテル。 その時、ミミの中で何かが崩れた… ワタチ… コンペイトウを食べたテチ… 盗み食いしたテチ… 嘘言ってごめんなさいテチ… ミミは、三匹に囲まれた状態で、そう罪を告白した。 目には光が無かった。 浴びせられる呪詛のような言葉。 誰も助けてくれない究極の孤独 ミミはそれから逃れたくて、生まれて初めてとなる〝嘘〟をついた… (やっと認めたデスー、この糞仔蟲デガァァァァ!!) その後は、お決まりのように暴行が始まった。 ミミは体中に傷を作った。 糞蟲に服や髪はいらないとの事で全て奪われ、ボロボロにされた。 ミミは只管涙を流していた。だが悲鳴などは上げない。 静かに、その両目が腫上ってもただ只管に涙を流し続けた… 体が破壊される痛さなどミミは感じなかったのだ。 熱くて真っ白な脳内に感じる感情はただのひとつ、痛いでも苦しいでもない即ち悲しいだった。 焦点の合っていないミミの目に映るのは、やけに興奮し生き生きとしている家族の嫌な笑み。 絶対正義の名の下に行われている。大義ありの暴行。 糞蟲を処罰する為の行為にドリを始めとする家族は酔っていた。 そんな自分を信じてくれなかった家族を目の当たりにし、 これで良かった… 良くない ワタチは盗み食いをした 本当はしていないテチ ワタチは悪い事をしたから当然ママ経ちに怒られる 本当は悪い事なんてしていないテチ と、いまいち統一制のかける考えをしていたのであった… 『お前たち何をやっている』 何時の間にか帰ってきた飼い主が、未だミミに暴行を加えているドリ達に向かい声を上げていた。 急ぎ、リンガルを取り出し電源を入れリンチの理由を聞く飼い主。 ドリは嬉々として喋りだした。 黙って金平糖を盗み食いした糞蟲を特定し、制裁を加えたと こいつが欲望を抑えきれず、やった事。 こいつが全部悪い。私を含めた家族は悪くない。 捨てるのならばこいつ一匹にしてもらいたい。と 興奮気味に話すドリの言葉を聞き終わると、 飼い主は虫の息になってしまったミミをそっと優しく拾い上げる。 『ミミ、聞こえるか? 苦しかったら喋らなくて良い。  お前が金平糖を盗み食いしたのか? もしそうならば体のどこでもいい少しだけ動かしてみろ』 飼い主のその問いに、ミミは少しだけ左腕を動かした。 ミミのその仕草と、ワタチがやりましたといわんばかりの顔を見ると飼い主は涙を流した。 『そうか… 食べた事になってしまったのだな… 言わせられたのだろうな…  さぞ寂しかっただろうに… 悲しかっただろうに…』 デェー?デデ?っとドリが不思議そうな声を上げている。 糞蟲を特定し、悪い事をやったミミを突き出した自分を なんで誉めてくれないのだろうとドリは思っていた。 そんなドリに思いかけない言葉が浴びせられる。 『金平糖を食べた犯人を教えてやる。それは俺だよ。  出かける前に俺が食べたんだ。ミミは何もしていない』 ドリは凍りついた。メメとハナはポカーンと口を開けたまま固まっている。 (そんな、ご主人様ぁ、嘘ついちゃダメデス。そいつは自分で食べたっていったデス) 『言ったじゃない… 〝言わされた〟んだよ』 (本当レフ- 皆には内緒って事で皆が寝ちゃった後、 人間さんと蛆チャンで金平糖食べたレフ- 美味しかったレフ-) 何時の間にか起き出してきた蛆実装が緊張感の無い間の抜けた声を上げ、 飼い主の言葉を肯定する。 ドリはガタガタと震え出した。そんなドリにかけられる言葉 「ワワワ、ワタチは最初からミミちゃんが犯人じゃないって思っていたテチュン」 その声の主はメメだった。 「ご主人様聞いてくださいテチ、全部ぜーんぶママにやらされた事テチ。ワタチは何も悪く無いテチ」 続けて声を上げたのはハナだった。 メメ、ハナは旗色が悪くなったドリを見捨て飼い主側に行こうと画策しているのである。 (違うデスー、金平糖を食ったのはその糞蟲に決まっているデスー) 独り孤独にそう罪をでっち上げているドリを尻目に 強者である飼い主の足元に擦り寄り己の罪を有耶無耶にしようと必死なメメとハナ。 気を失い、眠ってしまったミミと現状を把握できていない蛆実装だけが 飼い主の目の中に映っていた… 数日後、心を壊されたミミはケージの中で今日もぼんやりと天井を見つめていた。 ピクリとも動かず、只管金平糖を盗み食いしたというありもしない罪を償うために、 ごめんなさい。ごめんなさいと呟き続ける日々。 それは肉体は生きているが、心が死んでいる状態であった。 そんな状態からミミが回復してくれる事を祈りつつ、 今日も飼い主は蛆実装の腹を人差し指で押し遊んでやっている。 ドリ、メメ、ハナはとうの昔にこの世から去った。 糞蟲はいらないと飼い主に言われ、処分場送りにされてしまったのだった。 メメ、ハナは論外だが、果たしてドリはそこまで糞蟲だったのだろうか? ドリはドリなりに家族を守る為に必死だったのだ。 酌量の余地はあったのかもしれない。 だが、それを決めるのは飼い主である。飼い主がいらないと言えばいらない ただそれだけの実にシンプルな話である。 業火に身を焼かれ、朽ちていくその瞬間にドリが思った事、それは ブリーダーは正しかったといった事だった… 即ち 『仔は絶対に産むな。  何かの間違いで妊娠し場合、例え未来の飼い主が仔を産んでも良いと言っても  産んだ直後事故に見せかけ皆殺しにしろ』 であった。

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1 Re: Name:匿名石 2018/05/26-21:52:07 No:00005273[申告]
賢い実装石を作りたかったのか
実は虐待派だったのか
どこまでも家族に愛情を持つ実装石を得たかったのか
実装石が飼われることは難しい
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