ドリアン 会社の同僚から海外出張のみやげをもらった。 果物の王様ドリアンだ。 はっきり言って臭い。 近所の大手スーパーでもたまに売っている。 しかし実物を見たことはあったが金を払ってまで買う気になれなかった。 あれをいったい誰が買っていくのかずっと不思議に思っている。 もらったときに食べごろになるまで25度以上の温度で熟させるよう聞いた。 熱帯の果物だから冷蔵庫に入れると熟さず腐ってしまうそうだ。 こんなものを冷蔵庫に入れておきたくないし、台所に置いていても部屋に臭いがこもる。 ビニールロープでくくって庭の物干し竿に吊るしておくのがいいだろう。 固いトゲだらけの果皮に注意しながら吊り下げられるようにロープをかけてみた。 吊りひもを持ち上げてドリアンをしげしげと眺める。 なにかに似ているような気がする。 子供のころ見た何かに… なんだっただろうあれは…… 思い出そうとして思い出せない何かに首をひねっていると、腹立たしいデスデス声が聞えてきた。 ふしぎなかほりがするデスー なんだかとってもなつかしいにおいデスー 臭いが部屋にこもらないように窓を開けていたらすぐこれだ。 無意識のうちに手にしたものを実装石に叩き込む。 デ グ ォ ォ ォォォォォォォォォォォォォォン ドリアンを腹に叩き込まれ、くの字で外にふっとんでいく実装石。 その瞬間頭の中に聞えるはずのない鈍い打撃音が響いたような気がした。 長い間忘れていた単語を思い出す。 Gンダムハンマーーーッ! 思い出させてくれたお礼をしてやろう。 童心にかえって後ろにいた仔実装達ともドリアンで遊んでやった。 庭の片付けは大変だったが気分はすっきりした。 ありがとう実装石。 −− 続く −− 年甲斐もなくはしゃぎすぎた。ドリアンにもひびが入ってしまった。 血糊と肉片を洗い流して、熟するのを待たずに割って食べてみることにする。 確かに濃厚なねっとりした味わいといえるのかもしれない。 しかし糞を喰う実装石のイメージがついつい頭にわいてしまうので、最後までどうしても うまいとは言い切れなかった。珍しい果物なんだろうが適当に食べておしまいにする。 次の生ゴミの回収日まで2日ある。 独特の臭いを放つ果皮は鍋に入れて庭に置いておく。 翌日の朝早く、庭が騒がしくて目が覚めた。 庭に野良実装石が何匹もよってきていた。 ドリアンの皮の奪い合いでケンカしているようだ。 迷惑だ。フライパンで殴り飛ばして静かにさせる。 何をしていたのかリンガルを使ってこいつらを尋問することにする。 「たまらないほどおいしそうなにおいがしたデス」 「すんごくかぐわしいデスゥ かおりだけでからだがトロけそうデスゥ」 「見たことも嗅いだこともないのになつかしいかんじがするデス」 「ママのオナカの中にいるようなあったかいキブンがしたデス」 「死んだママをおもいだしたデスゥ ずっと忘れてたのにふしぎデスゥ」 「ママには喰われそうになって逃げたデス なのに優しかったママの声がうかぶデス」 「なんだかシアワセだったにおいがするデス」 「カナシイこともイヤなこともないセカイにいた気がするデス」 「チクチクなのにほおずりしたくなるデスゥ」 「一口かじったデスゥ まるでラクエンのたべものだったデスゥ」 「なんデスとー?!」 「はきだすデス アタシにもくわせるデスー!」 「ハラワタひっぱりだしてやるデス」 「なにするデスーッ?!」 「おまえごと喰ってやるデスー!」 「デジャーーッ!」「キシャァァァッ!」「ギョペェェー!」「デス゛ゥァァァーーッ!」 どうやらドリアン独特の臭いが実装石にはたまらない芳香のようだ。 母親の胎内にいたころの記憶を思い出させるのかもしれない。 幸い今朝は実装回収日だったので指定実装袋につめてゴミ収集場に出しておく。 もちろんしっかり息の根はとめておいた。 それとこのままドリアンの皮が残っているとロクなことにならないと思ったので、面倒だったが 袋に詰めてコンビニのゴミ箱に捨てにいった。 仕事帰りに今朝ドリアンの皮を捨てたコンビニの前を通った。 やっぱり実装回収箱が実装石でいっぱいになっていた。スマン。 翌日の会議で企画部にドリアンを実装ホイホイの誘引剤に使ってはどうかと提案してみた。 あまりよい顔はされなかったが何も言わないよりマシだ。 味は美味しくなかったが、少しオレの役にたってくれた。 ありがとうドリアン。 −− 終わり −− 《 大鍋146 》
1 Re: Name:匿名石 2018/05/09-23:09:25 No:00005208[申告] |
いくらドリアンが臭いからってその臭い扱いはドリアンに失礼だと思った
面白かったけど |
2 Re: Name:匿名石 2018/05/25-01:36:20 No:00005269[申告] |
胎内を思い出すって事は、ドリアンは実装石の糞の臭いに似ているって事か? |