タイトル:【哀】 ペットショップの仔実装
ファイル:ペットショップの仔実装.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:8432 レス数:3
初投稿日時:2007/02/09-22:32:17修正日時:2007/02/09-22:32:17
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ペットショップの仔実装






その仔実装は、産まれて数日で親から引き離された。
その後、ブリーダーの厳しい調教を受け、無事ペットショップの商品として並ぶこととなった。
ただし、一匹100円のお買い得ペット実装として・・・

その仔実装は平均的な賢さだったが、あまりに内気で、寂しがりやで、恐がりだった。
そのため、ブリーダーはこの仔実装をペットショップの店長に引き渡す際、
あらかじめ商品としてはあまりよくない旨を伝えた。

現にその仔実装は、他のお買い得品の中にいる同族のように、客に対してアピールもせず、
同族といることを拒否しているせいか、端っこの方でいつも俯いていた。

ただ、その仔実装は、他の同族達が日中の客への媚びで疲れ果てて、ぐっすり眠っている真夜中の時間。
顔を少し上げ、窓の向こうから見える夜空をいつも眺めていた。


そんなある夜のこと、

「いつも、夜空を眺めて、何を考えているテチ?」

そう話しかけてきたのは、隣のガラスケースに入っている5万円のペット用仔実装だった。

「・・・」

「いつも、そのケースに入っている仲間達は、ニンゲン様に買ってくれとうるさく騒ぐのに、
 なんであなたは、下を見ているテチ?」

「・・・」

「このままだと、あなたは店長に処分されるテチ。」

「!!!」
「・・・ワタチはまだ、死にたくないテチ。ママにあって無いテチ。」

「よかったテチ。実はしゃべる事のできない仔じゃないかと思っていたテチ。」


その後、その高級仔実装は、笑顔でこのペットショップのことや、ブリーダーの元での調教時代、
自分が未だに売れ残っている現状を話した。


「あなたは何で、ワタチにいろいろ話してくれるテチ?」

「あなたとなら、きっといい友達になれると思ったからテチ。
 だから。これでワタチ達はお友達テチ!」

「!・・・友達テチ?」

「そう、友達テチ!」


こうして、その仔実装は、ペットショップで高級仔実装と友達になった。
それからは、毎日夜中に高級実装の話を楽しく聞いていた。

「そういえば、前にも聞いた質問テチ。
 どうチテ、いつも夜空を眺めていたテチ?」

「それは・・・」
「ワタチは産まれた後すぐに、ママと離ればなれになったテチ。
 その後、ずーと他の仔達と一緒に調教を受けてたテチ。
 ワタチは、他の仔達よりほんの少し物事を覚えることが早かったテチ。
 そしたら、毎日ニンゲン様の見ていない所で、ワタチはみんなからいじめられていたテチ。
 誰も助けてくれなかったテチ。
 いつも独りぼっちだったテチ。
 でも、夜空を眺めたら、ママの顔を思い出すテチ。
 そのときだけ、ワタチは独りぼっちじゃないテチ。」
「でも・・・」

「でもテチ?」

「今は、あなたがいるテチ。
 寂しくないテチ!」

「ワタチも寂しくないテチ。
 ワタチ達はずっと友達テチ!」



そんなささやかな幸せな時間を、二匹は毎日過ごしていた。
だが、それもいつかは終わりを迎える。







高級仔実装の鳴き声がテチからテスに変わり、しばらくたったある日のこと。



「いらっしゃいませー。」



今日もそのペットショップに客が来た。
当然、ガラスケースに入っている仔実装も、お買い得仔実装も自分のかわいさをアピールし始める。
その客は、一緒につれてきた飼い実装を連れて、お買い得のところに向かってきた。
お買い得仔実装は、さらにテンションをアップさせて、媚びを繰り返す。

「はは、懐かしいな。そういえば、お前もお買い得品だったよな。」

「デスー。」

そういいながら、その客はお買い得品の仔実装をなんとなく見つめ、すぐに興味を無くしたのか、
ガラスケースの高級仔実装達に目を向けた。

一方飼い実装は、お買い得品の中にいる仔実装の中、いやそのケースの端っこにいる仔実装に目を向けた。

「まるで、昔の私のようでデス。
 でも、このままここにいたら、この仔はいつか処分されてしまうデス・・・
 そうデス!
 この仔をご主人様に飼ってもらうデス!
 きっと、ご主人様は許してくれるデス。

 さあ、私と一緒に来るデス。」

その飼い実装が、仔実装を抱き上げた瞬間


ガブッ!!・・・・・・・ドサッ!


仔実装は飼い実装の腕を噛み、お買い得のケースに落ちた。

「デス!」

「どうした、ミドリ?
 な、その噛み跡、そこの仔実装の仕業か!
 おい!店員!これはどういう事だ!うちの実装がかまれたぞ!
 こんな粗悪品を客に売っているのか!」

その怒鳴り声を聞き、すぐに店長と店員が姿を現した。

「す、すみませんでした、お客様。
 そのコーナーの仔実装達はすべて処分します。
 誠に申し訳ございませんでした。」

処分、その言葉を聞き、飼い実装は止めようとする。
しかし、店員がすぐにお買い得品の箱を持って行ってしまい、止める事ができなかった。
飼い実装が最後に見た、あの仔実装の姿は、他の同族達からのリンチを受け、瀕死の状態となっている姿だった。

「オロロ〜ン、オロロ〜ン!
 その仔は悪くないんデスー!
 その仔は、ちょっと驚いただけなんデスー!
 だから、殺さないくださいデスー!」

「ほら、うちのミドリが、こんなに痛がっているじゃないか!
 どうしてくれるんだ!」







その仔実装は、生死の境をさまよっていた。

突然、知らない実装石に持ち上げられ、恐怖を感じた仔実装はその場から逃げたいがため、腕を噛んだ。
その後、ケースに落ち動けない所を、同族が襲いかかってきた。
皆、何でワタチじゃなくお前なんだと言っていた。
その仔実装は、瞬く間にぼろぼろにされて、意識が混濁していた。
そして気絶する、その瞬間つぶやいた。

「・・・あ・・の・・・・・おば・・ちゃ・・・ん・・・・だ・・・れだ・・・・ったテチ・・・・・」



しばらくして、体がある程度動かせる程度になって、仔実装は気がついた。
周りは、いつもとは違う風景で、少し暗かった。
自分以外の仔実装は、相変わらず外に向かって叫んでいた。



その仔実装が意識を取り戻してから時間が少し経過した後、店長が仔実装の友達である、
かつて仔実装だった中実装をつれて、やって来た。

「3分だけ時間をやる。
 時間になったら、お前はケースに戻すからな。」

わかりましたテスと言う言葉が、リンガルに表示されたのを確認した店長は、姿を消した。
そして、中実装は周りのうるさい外野を無視し、悲しい瞳をその仔実装に向けながら話しかけてきた。

「大丈夫テスか?」

「まだ、少しからだが痛いけど、大丈夫テチ。」

「よかったテス。
 いや、気絶してた方がまだましだったはずテス。」


「どうしてテチ?
 何で、気絶してた方がよかったテチ?」

「そ、それはテス・・・」

中実装は、答えるのをためらった。
この子も、周りの仔もこれから処分されることを知らない。
本当のことを答えるべきか、どうしようか。
しばらく考えた後、中実装は答えた。

「あなたやそこにいるみんなは、これから遠くに行くテス。
 おそらく、もう二度と会えないかもしれないからテス。」

「テ!そんなのやだテチ!どうしてテチ?何で、そうなるテチ!」


「仕方のないことテス。わかって欲しいテス。
 それに私達はずっと友達テス。
 どんなに離れていても、この思いを忘れなければ、きっとまたあえるテス。」

「・・・本当テチ?忘れなければ、またあえるテチ?」


「そうテス。またあえるテス。
 だから今は、お別れテス。」

「寂しいテチ。
 でも、我慢するテチ。」


「あなたがいい子でよかったテス。
 ・・そうテス!」

中実装が何かをひらめいた。
その様子に仔実装は?マークを浮かべていた。

「本当は破ってはいけないルールテスが、仕方のないことテス。
 今回だけ、あなたのための特別テス。」

「テ?何テチ?」


「あなたに名前をあげるテス。」

「テチ!」
「「テテテッ!!!」」

中実装の言葉は、その仔実装だけでなく、周りの仔実装も驚かせた。
名前とは実装石にとって、非常に強い意味があるからである。
それはまさしく特別なことだった。

周りがさらにうるさくなっている中、中実装は続けた。

「実は、前々からあなたに似合う名前を考えていたテス。
 きっとこの名前なら、気に入ってもらえるテス。」

「ワタチの名前・・・・」


「あなたの名前は チー テス。
 あなたにぴったりで、可愛い名前テス。」

「ワタチはチー・・・・」


「だめテス?」

「そんなこと無いテチ!うれしいテチ!
 わたしは今日からチーテチ!」


「喜んでもらえて、よかったテス。
 早速自己紹介して欲しいテス、チーちゃん。」

「テチ!わかったテチ!
 ワタチはチーです。
 ペットショップで売られている仔実装テチ。
 ワタチにはお友達がいるテチ!
 ・・・」


「どうしたんテス?急に黙って。」

仔実装は急に黙ってしまい、何かを考えている様子だった。
そして、何かがひらめいたのか、顔を上げ話を続けた。

「ワタチにはお友達がいるテチ!
 ・・・
 お友達の名前はミミちゃんテチ!
 ワタチより頭がよくて、可愛い実装石テチ。
 ずっと、ずーーと、何があっても友達でいてくれる優しい実装石テチ!」

仔実装は話しながら、涙を流していた。
中実装もいつの間にか、涙を流していた。
周りの仔実装達はさらにヒートアップして、つばをまき散らせていた。

「今は、離ればなれになるテチ。
 でも、いつかまたあえると信じているテチ。
 ミミちゃん!」

「私も信じるテス。
 お互い忘れなければ、きっとまたあえるテス。
 チーちゃん!」

中実装はケースの中に手を伸ばし、仔実装もそれにあわせ、手を伸ばした。
ケースの高さでぎりぎりではあったが、二匹は再会の約束の証となる握手をした。

そして、ペットショップの店長と店員が入ってきたのも、そのときだった。

「さ、時間だ。
 二匹とも、名残惜しいだろうがこれで終わりだ。」

店員は、オロロ〜ンと泣き続ける中実装をつれ、姿を消した。
店長はケースを持ち、何かの機械の前に立ち、仔実装達に話しかけた。
「お前達は、これからどうなるか知らないだろうし、知る必要もない。
 これから、いなくなるお前達に俺がかけてやる言葉はただ一つ

 死んで、俺に詫びろだ!!!」

そういうと、店長はケースを機械の入り口であろう穴の中に仔実装達を入れた。
そして、その瞬間仔実装は理解した。
自分は、してはいけない事をしたんだ。
だから、これから処分される。
だから、ミミちゃんは悲しい目をしていたんだと。

穴の中に消える、そのとき仔実装は叫んだ。







         「ミミちゃーーーーーーーーーん!!!」








そのペットショップの実装石の処分方法は、実装石にとって見れば楽な死に方である。
穴の中に放り込み、何も見えない道をベルトコンベアで運ばれ、プレス機でつぶされ、絶命する。
つぶされた後は、実装食品として生まれ変わるのである。





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「ママー、ママー。もうすぐ晩ご飯のお時間テチ。」

「デ・・・ス・・・
 デス?晩ご飯デス?」


「ママはお寝坊さんテチ。
 日向ぼっこしながら、完全に熟睡テチ。」

「そうデスか。
 ちょっと、寝過ぎたデスね・・・」


「オジジとオババがご飯の用意をして、待っているテチ。
 早く行くテチ。」

「私は、もう少しだけここにいるデス。
 お前は先に行ってて欲しいデス。」


「わかったテチ。
 先に行って、ママを待ってるテチ。」

自分を起こしに来た仔実装は、部屋の中に入っていった。
その様子を見ながら、その成体実装は微笑みを浮かべていた。



あれから、あの中実装は3千円まで値段落ちしたが、とある老夫婦に購入されることとなった。
その老夫婦は、中実装たってのお願いで名前はミミにした。
老夫婦は、中実装を実の孫のように大切にした。
中実装は、その老夫婦に答えるためにいろいろ手伝い、仲良く暮らした。
やがて中実装は成体となり、さらに親となった。
生まれた子供はたった一匹だった。
老夫婦と親実装は、その子を甘やかされた実装石にならないように、厳しく、そして優しく育てていた。




そんなある日の夜
親実装は仔実装が寝床にいないことに気づき、部屋を出た。
いつも、日向ぼっこをしている縁側に行くと、そこに仔実装はいた。

「こんなところで何をしているんデス。
 もう、遅い時間デス。よい子は寝てる時間デス。」


「ママ、ワタチ夜空を眺めていたテチ。
 夜空を眺めると、なんかママのことを思い出すテチ。
 でも、そのママはガラスケースの中にいるテチ。」

「デデ!」

親実装はその話を聞き、立ち止まった。

何で、この子が?
何故昔の私を知っているの?

仔実装は話を続けた。

「夢の中でも、ママの夢を見るテチ。。
 ワタチが箱の中にいて、ママが一生懸命に腕を伸ばしてくるテチ。
 ワタチも手を伸ばすテチ。そして手をつなぐテチ。
 そのとき、ママはこういったテチ、ワタチ達はいつまでも友達・・・」

仔実装がそういうやいなや、親実装は仔実装に抱きついた。


「そういうことだったんデス、そういうことだったんデス!
 忘れなければ、本当にあえるんデス!
 オロロ〜〜ン!オロロ〜〜ン!」


「ママ、ちょっと苦しいテチ。」







親実装は落ち着いた後、仔実装と夜空を眺めていた。

「ずっと、ご主人様達と悩んできたデスが、やっと決まったデス。」
 
「何をテチ?」

「お前の名前デス。」

「テチ!名前テチ!うれしいテチ!
 どんな名前テチ!」


仔実装のその質問に、親実装は一呼吸おいた後答えた。




「この名前はお前にぴったりデス。
 そして、可愛い名前デス。」

「早く、教えて欲しいーテチー。」





「お前の名前は」























            「お前の名前は チー デス。」











終わり。

※参考元 腑口氏の「実装まんが」より



















後書き
もうちょっと、長い方がいいのか迷いましたが、まあこんなもんで。
画像掲示板やお絵かき板の作品を、逆にスクにするという試みでした。
お楽しみいただけたら、幸いです。

本当は虐待ものを書こうとしたんだが、なんかこうなってしまい少し後悔してる。

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1 Re: Name:匿名石 2019/02/11-02:44:02 No:00005737[申告]
後悔することはない。
ええ作品やん。
2 Re: Name:匿名石 2021/02/10-23:36:47 No:00006311[申告]
読後感スッキリで、良い作品だった。
3 Re: Name:匿名石 2023/06/19-06:22:06 No:00007326[申告]
傷治ったり相手が中実装になるまで処分に時間ありすぎな感じはしないでもない
それで気づいたが、前半部分の話も、かまれた部分とかも、実装じゃなくて他の話で見た気が
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