ここはとある地方の山。 その山中には山実装の集落がいくつか存在していた。 厳しい自然に囲まれながらも必死に生きてきた彼女達。 そんな集落の中を走る1匹の山実装。 「デェェェッス!報告デス!長老に報告デッスーーー!!!」 鬼気迫る顔で長老の元へ急ぐ。 「デェ?何事デス?慌ただしいデスね」 「デス!そ…それが…」 この群れを治める長老山実装は落ち着いた口調で報告を聞いていた。 かなりの年月を生きてきたと思われる長老。 その髪は白髪となり服もあらゆる苦難を乗り越えてきたのかボロボロだ。 それでも群れのみんなは長老を尊敬していた。 今まで何度となくピンチを乗り越えてこれたのは長老のおかげだからだ。 「落ち着いて話せデス」 「デス!山の向こう側にある山実装の集落へ用事があって行って来たデスが…」 「あいつらも元気でやってたデス?」 「み…みんな禿裸になってたデッスーーー!!!」 「な…なんデスってーーーーー!?」 これにはさすがの長老も驚いた。 「どういうことデス!?詳しく説明しろデス!」 「半数以上が寒さと禿裸になったことによるショックで死んでいたデスが生き残りから話を聞けたデス」 彼女の説明によるとある日突然人間が集落へやってきたらしい。 そしてその人間は「可愛い山実装ちゃんをもっと美しくしてあげるね」と言い、突然皆を禿裸に剥いていった。 あまりの早業のため逃げる暇もなかったらしい、成体も仔も関係無しに皆剥かれた。 そして禿裸となり絶望の鳴き声を上げる山実装達を「それだけ美しくなれば冬だって余裕で越せるよね!」と言いながら去っていった。 残された禿裸の山実装達は人間の意味不明の言動に困惑していたがやがて大切な髪と服を失ったことによるショックで死んでいった。 その群れの長老などはショックが大きすぎたのか体を爆発させて憤死したとの事。 「デ…なんデス…そのニンゲンは…」 「今までのニンゲンならワタシ達を捕らえるなり変な道具で撃ち殺したりするだけなのに…どういうことでしょう?」 「分からないデス…しかしそのニンゲンは危険デス、ワタシ達も警戒しておいたほうがいいデス」 「そうデスね、では直ちに見張りを用意するデス」 「うむ、頼んだデス」 「デッギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」 その時、仲間の絶叫が集落に轟いた! 「デェ!?何事デス!?」 「長老ーーーーー!!ニンゲンがぁぁぁぁぁ!!!ニンゲンが来たデスーーーー!!!」 「な…なんデスってーーーーー!?」 「ニンゲンは仲間を次々禿裸に剥いていってるデッスーーーー!!!」 「ま…まさか…さっきの話に出てきた…」 「長老はここで待ってるデスゥ!ニンゲンはワタシ達が追い払うデッスーーー!!」 「ま…待て!無茶をするなデス!!!」 群れのナンバー2は突撃部隊を従えニンゲンの元へ向かう! しかしそこで見たものは地獄であった。 「デ…デェェェェェェェ!?」 ナンバー2は目の前の地獄に絶叫した! 皆、無残な禿裸になり地面に倒れていたのである! 引き裂かれた服の残骸を手に持って声なき声で涙するもの。 自分の糞を接着剤代わりに抜かれた髪を何とかくっつけようと全身糞まみれになっているもの。 錯乱し我が仔を喰い散らかすもの。 我が仔から「何でワタチの髪と服を守らなかったテチュ!」と責められボコボコにされるもの。 糞の匂いの染み付いた髪と服を取り払ってもらい逆に感謝しているもの。 禿裸=奴隷という構図は山実装でも適用されるのか禿裸になった仲間を苛めているもの(自分も禿裸なのだが) そしてその様子を微笑ましく見ながら次々仲間を禿裸に剥き続けるニンゲン! 「おのれニンゲンめぇぇぇ!!!全員戦闘準備!」 「「「デス!!!」 突撃部隊はナンバー2の合図で石や木の枝などを構える! 「突撃ーーーーーー!!!」 「「「デェェェェェェェッスゥゥゥゥゥゥ!!!」」」 一斉に男に突撃する部隊! だが 「お!これは可愛いくて強そうな山実装ちゃん!それぇ!!!」 「「「デェェェェェ!?デッギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」」」 突撃部隊の攻撃をひらりとかわし一瞬で禿裸に剥く男! 部隊は一瞬で壊滅してしまった! 「ワ…ワタシの大切な髪と服がぁぁぁぁ!!」 「禿裸じゃ生きていけないデスーーー!!!」 「冬も越せないデッスーーーー!!!」 オロロンと泣く突撃部隊。 そして男はナンバー2へと歩み寄る。 「おお!?君は貫禄があってめちゃ可愛いね!さてはこの群れのボスだね!?」 「デ!?何を言ってるデス…そりゃワタシは可愛くて貫禄あるからボスと思われても仕方ないデスが…」 将来の目標であるボスと勘違いされまんざらでもないナンバー2. 「そんな君に相応しい姿にしてあげよう!!!」 男は一瞬でナンバー2を禿裸に剥いた! 「それじゃね、美しい山実装ちゃん」 「デププ、長老が死ねばワタシがボスになるのは明白デス、ワタシのような才色兼備は他に存在しないデスからね」 ナンバー2は禿裸にされた事も、男が既に去った事も気付かずに己の野望を垂れ流し続けていた。 「ワタシがボスになったらこの山を山実装だけの美しい国にするつもりデス、そして…」 「デェ…一体どうなったデス…」 長老は集落の奥で部下の報告を待っていた。 しかし誰も帰ってこない。 聞こえてくるのは仲間の絶望に染まった鳴き声だけだ。 「こうなればワタシ自らが…」 「お?これはこれは…」 「デェ!?ニ…ニンゲン…!?」 ついに長老の元へ男が辿り着いた。 「もしかして君が群れのボス?」 「その通りデス」 「頷いてるから多分そうなんだろう」 男はリンガルを持っていなかったが雰囲気でこの年老いた山実装がボスだと思った。 「君の仲間はみんな美しくしてあげたからね」 「お前は何が目的デス!?ワタシ達を殺すでもなく捕らえるでもない…お前は何者デス!!」 「さすがはボス、声にも力強さが感じられるな、年老いてもやっはり実装石は可愛いなぁ」 「デ?可愛い?何を言ってるデス!可愛いならば何故仲間を禿裸にするデス!」 「よーし、君も美しい姿に変えてあげよう!さぞや綺麗になるだろうなぁ」 「デ!?近寄るなデス!ワタシに触れるなデス!」 長老は杖として使っていた木の枝を振り回し男を威嚇する。 「これから厳しい冬なんだ、美しい姿になれば寒さだってへっちゃらになるよ!」 「何を訳の分からない事を言ってるデス!禿裸では冬は越せないデス!死んでしまうデス!」 「はいはーい、美しくなりましょうねーー♪」 「デ…デッギャアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」 「長老ーーー!!」 禿裸となり茫然自失となっていた山実装達は長老の絶叫を聞いて急いで駆けつけた! だがそこで見たものは… 「ちょ…長老ーーーーーーーー!!!!!」 「長老がみすぼらしい禿裸にーーーーーーー!!」 「みっともないデッスーーーーーー!!!」 「つーか、死んでるデッスーーーーー!!!!」 長老は既に死んでいた。 死因は髪と服を失った事によるショック死だ。 長老にとって自分と共にいくつもの年月を生きてきた髪と服は命と同じ存在であった。 美しいと思っている自分の髪が白髪になっても手入れを欠かさなかった。 長年着続けてきたボロボロの服も毎日洗濯した。 ボロボロではあるがそれは自分の歴史、かけがえのないものだ。 それを一瞬で失ったのだ、死ぬのも当然だ。 「長老ーーー!!これからワタシ達はどうやって生きていけばいいデスーーー!!!」 「禿裸じゃ冬の寒さは耐えられないデスーーー!!!」 「ナンバー2は変な事をブツブツ言い続けておかしくなってしまったデスーー!!!」 「長老ーーーー!!みすぼらしい姿で死んでないでワタシ達を導くデッスーーー!!!」 男は長老に泣きつく禿裸山実装達を微笑ましく見ていた。 「あまりの美しさに歓喜の涙を流してるんだね!」 男はデジカメを取り出すと禿裸山実装達に声を掛ける。 「美しい山実装ちゃん!こっち向いて〜」 「「「デ!?」」」 「はいチーズ!」 パシャ 長老の亡骸の周りでオロロンと泣きながらこちらをビックリした目で見る禿裸山実装達が写真に収められた。 「それじゃ末永くお幸せに♪また遊びに来るね♪」 そして男は山実装の集落を後にした。 帰宅後、男は自分のサイトにあの時撮った写真を掲載した。 その他にも今まで美しくしてあげた実装石の可愛らしい写真も多数掲載している。 すると… 「何だよ…また虐待派のコメントかよ…」 何故か掲示板には虐待派と思われる人間のコメントがいつも多数あった。 「管理人さんGJ!」「うちのグループに入らない?」「俺の師匠になってください」などだ。 「ここは愛護派のサイトだとトップページにも書いてあるだろうが!こいつら…!」 男はトップページに虐待派出入り禁止!!とデカデカと書いて虐待派のコメントを削除していった。 「ちくしょう…なんで虐待派ばっかり集まるんだよ…愛護派は顔なじみしか来てくれないし…」 男は確かに愛護派だった。 実装石が大好きだった、可愛がった、コンペイトウも毎週公園の野良にプレゼントした。 本当に大好きなのだ。 だがそれを理解してくれる人はごくわずかであった…