タイトル:【観察】 あと2話の予定です
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作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:4267 レス数:10
初投稿日時:2007/01/12-15:45:34修正日時:2007/01/12-15:45:34
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長い雨  (11) 進化

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夏の名物といえば、五月蝿い蝉の鳴き声というのは、実装石が多く存在するようになって見られなくなった。

都市部において土がある場所といえば、もはや公園しかない。

そして深夜、成虫になる為に木の上を目指す彼らは、
土から出たところを深夜徘徊の”低層派実装石”に捕まえられ、希少な獲物として栄養にされるのだ。

夏に差し掛かる頃、再び、公園には”団地組み”と”低層派”が生み出されていた。
既に公園産だけで大半が仔ではあるが300匹…20組強の家庭があり、家がある。
公園外から入ったものでも40近くの家が既に形成されており、
家を持たせてもらえないものも、同頭数の家族が公園無いに舞い戻った。

数百と家が並んで総数4千とも5千ともいた全盛期に比べればまだ数は十分ではないが、すでに差別が発生している。



「ここにも居るデス…ほら、お前達もしっかり食べるデス。
 コレは取っておく事を考え無くてもイイデス。”売り物”じゃないデス。
 ワタシもいっぱい食べてタクサン産むデス…お前達も食べて大きくなってママに楽をさせるデス」

垢だらけの肌の実装石が真っ白な蝉の幼虫を捕まえては口に放り込む。
その周りには15匹近い、仔がわらわらと動いている。

「デヂッ!デッデッ!ワタシに歯向かうとはいい度胸デチュ!こうデチ、こうデチ…いいきみデチュー」
「おいしいデチュー…ママのウンコよりおいしいデチュー♪」

割と育った仔には、小さく動きの鈍い蝉の幼虫は脅威ではない。

ただし…

「テチィィィィィィ!!イタイイタイイタイテチィィィィ」
「テチィ!イタイ!タスケテ!ママー、お姉ちゃぁぁぁん」

まだ小さな仔にとっては蝉の幼虫すら脅威である。
仔実装の攻撃力が低い上に、蝉の幼虫は本能的に物に捕まろうとするだけなのだが、
自らを木に固定し支える鋭い足で強力なクラッチ力を発生させれば、仔実装の皮膚は容易に貫通してしまう。

生まれて間もない仔実装は下手をすると蟻の集団にすら食い殺される例も少なくは無いほど弱い。

彼らが捕食できる限界は、虫の中でも抵抗力や攻撃意志の無い”幼虫”に限られる。
その幼虫ですら、彼我の大きさによっては芋虫の防衛行動である”のたうち”で親指が弾かれて死ぬケースすらある。

そんな仔実装に、捕まるという本能を持つ蝉の幼虫は餌であると共に危険な相手でもある。


ただ、それでも蝉の幼虫は、こんな爪弾きにされる実装石の栄養にされてしまい、
抵抗し仔を殺せるとはいえ、その何倍も食われてしまう事になる。

こうして、蝉は年々成体の数を減らし、今出てきているのは、何年も前に植えつけられた卵である。

何年か先には、都市部での蝉は壊滅するであろう…。

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こうした変化の無い日常がある一方、毎年とは様子が変わりだしている部分もある。

生き残った数が少なく、街中などから公園に流れ込んでくる実装石のほうが多い。

街実装も、この町では壊滅状態ではあったが、遠くの町から数が増え移動してきたものや、
公園同様に僅かに難を逃れたものが増えていた。

また、あの事件の後なので、近所からの評判の為にも、ペットを放棄する飼い主もこの町では増えた。
大半は、処理費を払って保健所引取りとなるが、面倒なのでそのまま家から追い出すだけだったり、
何らかの処置(燃やす、切り刻む、殴り殺す)が不完全で、蘇生してゴミ袋から逃げ出すものが何割か居た。

この街で、いくら人々が実装石に構うほど暇は無いとは言え、
あの事件の後なので、少しでも目立った行動をすれば容赦なく生ゴミにされ焼却炉に叩き込まれる事になる。
こうした、既に利用者の居ない公園の方が、比較するなら安全なのだ。



その為、公園内では爆殖はしているが、全体数も成体の数も公園産は、流入組みより劣勢である。
毎年の状況では、まだ、梅雨を過ぎても公園産の実装石が割と多く生き残り、
流入する新参者はいつも通りに嫉妬の選別眼によって篩いに掛けられるが、
今年はそれより早く新参者が我が物顔で家を建てる。


普通なら、こうなってしまうと圧倒的多数派に支配権が次第に移行するのが通例で、
その独特の強い嫉妬心から、先住側が意図的に家を追われ”低層派”に追いやられる可能性が高い。


ところが、そうなってもおかしくない状況であるのに、
団地組みの中では、格別、先住する実装石達の住環境は良く保たれている。
そして、さして警戒する様子も無く、それでも格段に攻撃を受ける事も無く、堂々と仔連れで街を闊歩している。

多少、仔が列を乱そうが、寄り道しようが、先住実装の仔は襲われる事が無い。
また、同じ団地組みとなった流入実装の方はコレまでどおり、仔の行動に注意を払わないと襲われている。

また、流入組みは常に他者に挨拶をしているが、
先住組みが進んでこれらに挨拶をすることは無く、されたら返事を返すぐらいである。
先住組みが挨拶を進んでする例外が、同じ先住実装相手のときである。

これが、低層派実装に落とされたものだと、何かルールがあるのか、
流入の団地組みに対しては普通に罵られ、逃げるか時には罵り返す普通の対応であるが、
先住の団地組みが歩いてきたら、まるで参勤交代でも通るかのように両手を投げ出し、
頭を地面にこすり付けてひれ伏している様子が見られる。
この時、先住実装が何をしても逃げる事も許されていない様子が伺える。


昨晩、蝉を食っていた親仔が、この砂場で遊んでいるときに、この先住組一家が現れた。


こうした遊具のある広場で”遊ぶ”時には、まえなら”低層派実装達”が追いやられるか、逃げ出さない限りは、
不思議と一応の共有ができる空間である。
水道、トイレ、小川、そして遊具広場では、入り乱れている光景がある。
余程、団地組みを刺激したり、機嫌が悪くない限りは、一定の距離をとっていられる場所であったのだ。

昨日、餌を食っていた親は、朝に新しい仔を産み落としたのか、蝉の幼虫に何匹か仔が食われたというのに、
早くも生まれたばかりの仔を含め、20匹近い仔を砂場で遊ばせ、
その横で、大股を拡げて木の枝を排泄口に突っ込んでいた。

周りには、その様子を指差しで笑う団地組みの親仔も遊んでいる。

しかし、先住団地組みが5匹の仔と2匹の蛆を連れて、胸を張ってふんぞり返って行進して来ると、
その親は、驚いた様子で慌てて仔達を呼び集め、何事かを話すと仔達を平伏させた。
言うことが理解できない仔が居れば、殴りつけてでもひれ伏させている。

勿論、生まれたばかりであろう仔は、それで死んでいるものも居る。
親は、それでも、その仔の死体を大慌てでムリヤリひれ伏させる形に整えると、地面に頭を擦り付ける。

先住親仔が、何が気に入らなかったのか、ツカツカとそのひれ伏す親仔の前に整列すると、
先住親が、低層親をいきなり蹴り付けた。
すると、仔達も、一斉に20匹近い仔に対して暴行を始める。

そこそこ大きな仔達は泣き喚きながらも両手を後頭部に回して伏せ続けている。
それを遥かに小さい先住の仔達が面白いように集団で蹴り始める。

「デチィ!!デッチィ!!デヂャッ!!」

「テチャチャチャチャ〜肉団子のクセにイイ声で泣くテチュー♪」

「ヤメルテチィ!ワタチのお姉ちゃんにヒドイ事をするなテチィ!…テェェェッ!テチャ!」

姉を救おうと顔を上げて抗議する小さな仔を、今度は集団で蹴り付ける。
その仔も、抗議したはいいが、やはり抵抗できないままに蹴られる。

こうして1匹1匹、次々と暴行を受け続けていく。

先住組みの仔が抱える蛆も、先住組みの親が無理矢理、低層の仔の口を開かせて糞を飲ませている。

「ニクベンキにおウンチするレフゥ〜♪危うくみんなの前で漏らしちゃうところレッフゥ…
 ワタチ達は礼儀正しくおベンキにウンチするセレブちゃんレフ〜♪実は少し漏れていたのはナイショレッフゥ〜」

「グゲェッ!!ゲフッ!ガハァ!ウエップ!ゲロゲロゲロ〜…テッ…テェェェェェェェン」
それに対して殆どその仔は抵抗をしない。

空腹なら進んで糞食可能な実装石も、他人に無理矢理というのは、絶対に拒絶する。
飲まされた糞を勢い良く吐き戻し、地面に顔を擦りつけ、地面を叩いて大泣きし悔しがる。

「よかったデス…危うく、蛆ちゃん達がお漏らしするところだったデス…オマエラは役にたったデス。
 ちょうど良いデス!お前達も人前でおウンチしないように、今のうちに便器をつかうデス」

どうやら、権力を得てセレブ気取りの先住組みが、トイレをしたかっただけのようである。


ただ、20匹も居て、大半が生まれて間もない仔には、訳もわからず虐待される事に抵抗するものが居るが、
そうした仔は、先住親がそれを痛めつけ、半殺しになったところを仔が寄ってきて食うのだ。

「ワタシ達にオマエタチ如きが歯向かうのは万死に値するデス!
 (ザザザ…)サマの(ザザザ…)を忘れたデス!?
 ちょっと早いデスけど、丁度、おウンチも済ませたデス。みんなでお昼にするデス!」

「テッチュ〜♪さすがママテチュー♪久しぶりにプリプリお肉テチュ〜♪」

「こんなバカクズドレイでも、気軽に食べられないのは難儀デス…でもこのイエナシたちはワタシ達に歯向かったデス。
 イイデス!?そこの醜く丸まっているヤツは食べてはダメデス!みんなが見ているデス。
 ママが”ブレイウチ”したヤツだけ食べてイイデス…分かったデス!?」

「デズゥゥゥゥゥゥゥン…」
哀れな低層親の悲鳴が響く。
悲鳴は上げるが、攻撃を受けていない間はひたすらひれ伏し、チラチラと仔達の様子を見ては悲鳴を上げている。


『集音マイクの調子がおかしいな…入ったのは馬鹿親の悲鳴だけで、肝心な部分が入ってないじゃないか!?』

『どうも、あの梅雨の時に何処か断線したみたいで…繋がったり切れたりで…カメラもいくつか機能が。
 こちら側の受信機器はチェックしましたので、公園のほうだと思います』

『しかし、やつら、何を基準に先住実装と、それ以外を見分けているんでしょうか?
 低層と団地では、家を持つ持たないの違いだけでも、服の清潔さが違うのでしょうが…
 同じ団地でも先住と後住みを見分けてますよね?同じ環境下にあって、それほどの違いが無いように見られます…。
 あったとしても微妙過ぎれば、あの馬鹿共に分かるんですかね?』

『さぁ…でもヤツらって、人間から見れば何の変化も無いのに、ヤツら同士では顔の違いが分かるんじゃないか?』

『違いが分かる程の知能が備わっているタイプはそうだが、相手は所詮野良だぞ…
 あのオナニー狂いの低層馬鹿親は自分の仔ですら差異を覚えられそうに無いがな?
 あれほどの馬鹿でも見分けられる特徴が、何かあるはずなのだが』

だが、この事からも、この公園の野良達に大きな今までに無い変化が発生している事が伺えた。


単純な権力が、低層実装<流入団地実装<<先住団地実装の区分けがされ、
流入団地組みと低層実装には、権力の差はあるが、過去の住み分けと同等の差別しかなく、
また、流入実装は団地に暮らしていても、容易に下に落ちる。

しかし、一旦低層に落ちたものが復活する機会は前の群れより低くなっている。
低層の者は、先住組みに出会えば、先ほどの様に、ほぼ禿裸奴隷状態の扱いを受ける確率が高いからだ。

さらに、先住組みは余程の事が無い限り今の地位より下に落ちる事は無いようである。

そして、まえよりさらに”同族食い”がルールとして戒められており、
格下相手でも食い殺す事は、今回、後付で理由をつけたりしても許されていない。
ただ、まったく無いわけではなく、前の群れ以上の実装石には厳しいルールが存在していることを伺わせる。


また、団地組みには個々に仕事の役割があるようで、
例えば家を建てるものは、その専門家が置かれていて、彼らが自分で餌をとりに行く事は少ない。
餌を探しに行くものは、一日の大半を餌探しに費やして、
それ以外のことは、他の専属実装に餌の分け前でやってもらう。

通貨概念は無いが、物々交換の概念が団地で発生しており、
その専門に付いたものほど稼ぎが多くなるが、技量が低かったり怠けてしまえば稼ぎが無くなり食っていけなくなる。

例を挙げれば、家を建てる実装石は、普通に生活する片手間に家を作る実装石や技量の無い実装石より、
短期に手の込んだ家を建てられる可能性があり、
そんな家ほど多くの食料や、その食料と交換する事が出来る”価値ある物”と引き換えが出来る。

ここでも例外は先住組みだけであるが、先住組みにもそれなりの役割が与えられ、
その仕事がこなせない場合に、その”特権”が剥奪される様である。

あの梅雨から僅か1ヶ月で、まだ不十分ではあるが、高度な権力社会が形成されている。

観察機器の不調で、観察者達にはその肝心の過程や細部は推測に過ぎないが、
何らかの高知能の実装石が、この群れを集団から一気に公園規模の社会に作り変えたのは確かだ。

だが、その群れのリーダーがミーではないことだけは確かだ。

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ミーは、その喧騒を他所に、一人林の奥の家にまだ独りでいた。

もっとも、外にこれほどの社会が形成されていれば、今更、家を引き摺って元の家の場所に戻って無事なはずも無く、
低層実装も滅多に踏み込まない、丘の林の中でひっそりと生きているのは正解なのだろう。

時折、林の端まで外の様子を伺いに行くか、せいぜい、夜中に川に体を洗いに行く程度であるのだが、
それでも、痴呆のときのような呆けとは様子が違う。

蒸し暑い日々も、精力的に林の中で餌を探す。
生き残る意志がうかがえる。


頭の弱い実装石にとって”待つ”ということがどれほどの苦痛と労力であるかは計り知れない。
理解できない月日の流れ…今は、その目安となるものも失われた。
ミーは、1日過ぎれば、待つ時間がそれだけ短くなると言うことしか救いではなく、
それを理解できてしまった為に待ち続けているのだ。
それも、孤独なままで…。
それだけにあの梅雨の後、精神を病んでしまったのだ。


ミーは自慰などの生殖行動を一切していなかった。
普通ならば…特に家族を失えば賢くても愚かでも、次の仔を産もうと言う意志が働く。

まして、孤独になってしまえば、その寂しさを紛らわせる為に、娯楽の無い実装石には仔作りは一石二鳥の楽しみとなる。

無駄な仔作り本能と妊娠能力と、そうした様々な視点からの仔の恩地によって、
危機に瀕し孤立した実装石は、仔を設ける欲求には逆らえない。

賢いミーも、結局はこの本能に理由付けをして仔を産む無限地獄に陥った。


だが、ミーにはそのような兆候は見受けられない。


ミーは、飼われている頃、花を見るのが好きだった。
窓からアパートの隣の小さな花壇の花を食い入るように見つめたり、散歩の度に花を触っては眺めていた。

飼い主の殺風景な部屋に、キレイなお花があればきっと楽しくなる…

そうして花と接するうちに妊娠したのがキー達である。

男が、その妊娠原因が分かって、花を咲かせる前に消費できる(生活の足しになる)
”ラディッシュ”(二十日大根の一種)を育てさせた。
それからは目を離した隙に花壇に踏み込む事はなくなったが、それまでに結局3回、仔を産み落とした。
だが、元から仔育ての欲求はあっても、仔作り自体への欲求が低かった。

第8世代への調教過程で、生殖意欲を抑制するようにはなっているが、取り上げることは出来ない。
精神的に生命を維持する際に問題となる欲求ストレスとの絡みで、生殖機能と深く連動する部分までは手が付けられない。
だから、結局、仔作りを始めてしまえば、増える速度は野良よりはマシな程度。

だが、ミーは同じ第8世代と比べても低い方である…花に興味を示さなければ仔が居なかっただろう。


だから、彼女は孤独とも戦わなければならなかった。

失ったものを取り繕っても仕方が無いという”悟り”なのか、
ただ、仔を作って、また、厳しい生活で失うのが嫌なだけなのか。
はたまた、別の理由があるのか…。

確定しているのは、愛情はあっても仔より、やはり飼い主を優先する固い意志がある。



男は迷っていた。

そのミーの姿を見て…

”所詮こいつは、自己正統化の形を模索しているだけなのだ”という観察者の視点と、
”なぜ、実装石らしい部分を捨ててまで俺を信じるのだ?”という飼い主の視点と、
2つの心が揺れていた。

そもそも自身の金の為にミーを”預かった”だけという事を割り切れない自分が居る事に戸惑い、
それでいて、まだ研究者の端くれだからこそ、この席を立たっていない。

自分は溺愛派…いや愛護派ですらない…なかったハズなのだ。
自分は研究員なのだと心で何度も唱えるうちに言葉を思い出した。

『実装石はね…人間の暗い部分を巨大に歪めて写す鏡なんだよ。
 特に飼い実装…飼い主と飼い実装の関係は、他人には分からない歪な自分自身が投影される。
 自分自身の弱い部分が見えるから、どんなに醜くても受け入れてしまう…そして行き過ぎて溺愛に暴走する。
 飼い主は、もう1つの自分自身と共生し向き合わされる事で自分を否定できなくなる。
 だから実装石を飼ってしまった人間は守るんだ…自分の弱い心をね。
 そして、実装石を否定する人間は殺そうとするんだ…他人に弱さを見られないために自分自身をね。
 虐待派…愛護派…どちらが、優れた人間の行為かなんて基準は存在しない。
 問題は提示されるのに、永遠に答えあわせの無い白紙の答案用紙…それが人間の心なのだから』

誰から言われたのだろうか…心の均衡をかき乱されているのを自覚している今の自分には思い出せない。

分かるのは、自分の醜い部分の心は、まさに、あのミーの愚直で応用の利かない不器用な姿と同じなのだという事だ。
その姿と戦うべきか、自分自身を守るべきなのか…いつまでも解答用紙を白紙には出来ない。


俺は、そんなに弱い人間じゃない…自分の弱い心と閉じた世界で傷を舐めあうのはゴメンだ。
そう思えば、今にも飛び出してしまいそうな足を留めて置ける気がした。
そう言う人間を腐るほど見てきた。

だが、同時に心の奥でミーの幻影が俺の声で囁きかける。
自分を押し殺しても周りは何も変わらないのさ、俺だけがアイツと俺自身の心を癒せるんだ…
人間だって強い生き物じゃない。

10月…教授との約束のその日まで、あの公園に足を踏み入れない事が俺の闘いだ。

ミーならば、この忘れ去られた林の中で、つつましく生き抜いてしまうのだろう…

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うだるような暑さが続く日々、街中に沸いた実装石達は、大半が生来の怠け生物らしく、
日がな1日の大半を日陰でダラダラ過ごし、うまい避難所を得られない者は人間に見つかっては追い出されて、
何匹も熱いアスファルトで生焼け…時には干からびて転がっている。

公園の実装石達も大差が無いとは言え、夜になれば大きな差が生まれる。

暑い昼間の活動を避けるのは、この季節ではどんな馬鹿でも思いつく事ではあるが、
やはり、家という安定した日陰を得られるのは大きいらしく、直射日光にさらされて体力を無駄に消費しない。
その分、僅かでも体力が豊富で、少し多く餌を取り(採り)多くの仔を産み養える。

その為に、夏場は公園外にも精力的に繰り出し、大変な迷惑を近隣にもたらす。

只でさえ昼間暑く夜も寝苦しい日々が続き、意識的に無関心を装いたい住民達からも駆除の要請が起こり出す。
だが、徹底的な駆除が入ることは、あの騒ぎが過ぎ去った後でも期待は出来ない。

愛護派が減っても、金持ちに多い精神構造が崩壊している溺愛派の権力には変化は無い。
まだ、駆除を差し止めたり、その規模を限定するだけの力を有している。


また、この公園の実装達が、そんな人間の騒ぎなど理解できるはずも無く、
まるで人間達の思考などお構い無しと言う態度である。


この公園の実装達の間では、交代で定期的な水汲み組みが編成され、水を”売って”歩いている者たちも居る。

彼らのお陰で、団地組みは暑い昼間に外を歩き回らなくても脱水は避けられるし、
水汲み組みも、商売の概念が成立して飢える事は無い。

全てが活発で、その公園社会の進展も日に日に…いや、時間時間毎に促進されている。



この公園では、同様に日に日に変わった商売が編み出され、物々交換が生活のメインになりつつある。



トイレ裏で万年日陰の草むらでは、ゴミのアイスの棒が幾重にも立てられ柵になっている部分が数箇所ある。
ここには、実装石の糞が集められるとともに、蛆や親指という”未熟児”が放り込まれている。


今も、何匹もの実装石がせわしなく空き箱で作った階段の上から、ケツを出し柵の中に糞を落とす。
あるものは、容器に入った糞を落とす。
公衆トイレの概念が考えだけでなく、形として存在し、機能しているのだ。


すると少しでも新鮮な糞を味わおうと柵の中の蛆や親指が寄り集まってくる。


それを上の実装石達は、下を覗いては「デププププ」と笑い、スッキリした顔で去っていく。
列を成して待っているものたちも、その柵の中の哀れな存在たちの様子を見て笑う事で便意をガマンする。


中では、元気なものから力ないものまで、様々な蛆が蠢いて泣き叫んでいる。

元気に糞を食す者達も居れば、柵に寄りかかって延々と「ママ!!ダシテレフ〜!!」と叫ぶ蛆や親指たち。

複数で固まってぼーっと上を見上げ続ける蛆たち。好き勝手に走り回る親指たち。

もはや、この場所での生活に生きる気力をなくした者達…。


「レフゥーレフゥー…こっちのおウンチはとっても甘いレフ…オマエタチも食べるレフ…」
この肥溜めで、おそらく長く居るのであろう、体長10cmまで大きくなった蛆が、
沢山の小さな蛆を引き連れている。

その手足は、普通のものよりは少し大きく長い。
生きている間に、ゆっくり親指体に成長するタイプの蛆な様だが、糞食のためか、身体は大きくなっているが、
手足は蛆より長くても、まだ立ち上がって身体を支えるにも、4足で歩くにも僅かに足りない。


その大きな蛆には、より小さな蛆たちのみならず親指まで従って小さな集団を作っていた。


「レフゥゥゥゥ…ママ…ママはいつ迎えに来るレフ…ワタチ、サミシイレフ…」
「レヒィ…レヒィ…クチャ…クチャスギテ シンデシマウレフ…」
「毎日ウンチョ、毎日ウンチョ、おいしいおウンチョレフー♪」
「レェェェン、ワタチのママイナイレチ!もうウンコなんか食べたくないレチ…ワタチのママ知らないレチィ!?」
「ウマイレチュ♪もっとオイチイウンチを紹介するレッチィ!」

ヒュー…ペチョ「レピャ!」「レフッ!」

彼らの近くに、新しい親指と蛆実装が放り込まれる。
幸い、尽きる事が無い大量の糞の海でぬかるむ地面に衝撃を吸収され、儚い蛆や親指は傷1つ付いては居ない。
だが、糞まみれの身体で、何が起こったか理解できないまま母親を探し上を見る。

「レチャァァァァ!マーマ!マーマ!タスケテ!オッコチチャッタレチィィィィ…」
「レヒィィィィィ!!クチャイクチャイ!!オボレチャウレフ!ママドコ!?マーマ、マーマ、マーマ」

投げ込んだのは彼らの親…落ちた仔の様子を見ると、プイッと背を向けて去っていった。
台の下では、生まれたばかりの仔達がワラワラと親に寄り付き、親と手を繋ぎたがる。

「ママ…蛆ちゃんとちっちゃい妹ちゃんがいないテチ…ママが抱えていたテチ…」

「ママ!妹ちゃん達落っことしたテチィ!!あそこ、とってもクサイテチィ!早く助けにいかないと大変な事になるテッチィ!!」

「デッ!お前達!これはお前達の為にもなる事デスゥ!あれは悪い仔達デス!悪い仔はあそこに落ちるデス!
 つべこべ反論するとお前も手足を毟り取ってあそこに落とすデス!」

栄養状態に日々の格差がある野良実装の生活で、どうしても生まれるのが蛆や親指という存在だ。
彼らはただの未熟ではなく、生活上、足枷にこそなれ、役には立たないムダ飯喰らいである。

弱く小さく頭が悪い。

連れて歩くには小さく遅く足手まとい、家に置いておくにはガマンも知能も足りない、仕事をさせるには余りにも儚い。
大半の親にとって未熟児は、生まれてきたものは仕方ないと飼っているか、動く非常食を養っているだけでしかない。
仔にとっても、妹という名称のペットか玩具を飼っている扱いである。
同時に実装石の2面性で、飼ってしまうと自分の仔は他人のことは違うはずだという処理によって、
ズルズルと”我が仔”という呼称で養ってしまう。

そんなお荷物を受け入れるのが、この公衆トイレと併用した”牧場”という商売である。

様は、手軽に捨てるために簡単でも大義名分と、他人に処理を押し付けたい…。
どの親も”きっかけ”さえあれば簡単に我が仔を手放せるという意味では”託児”の一種である。

ある親はコレ幸いにと”悪い仔”として遺棄し、ある親は弱い蛆ちゃんの為に幼稚園に預けたと理由付けをする。

自分達で糞を食わせて育てれば同じ事…確かにそうする親も居るのだが、
その手間すら他人に委託して楽をしたいから成立するのが実装石らしさである。



「レフレフ…お前達新入りレフ?!ワタシはここでズット暮らしてきたエライ蛆ちゃんレフ!
 お前達、ウンチ臭がっているレフ?さては生まれたばかりでココを知らないからレフ!?ワタシは賢いから分かるレフ…」

大きな蛆は自慢げに、他の蛆よりは長くなった手足をパタパタさせピシャピシャ糞の水面を叩く。

「と言う事は、ママに落とされたレフ?ワタシと一緒レフ!それも分かっちゃうレフ、ワタシは賢いから分かっちゃうレフ♪」

自画自賛で悦に入った蛆は、上体を反らし、尻尾をピシャピシャ振って糞飛沫を上げる。
確かに母親に捨てられた事を理解し覚えているのは蛆としては賢いのだろう。

何せ、ここには生まれて間も無く捨てられるのだ。
右も左も分からない…というレベルではない。

「ここはとてもクサイ場所レフ…ウンチの海だからクサイレフ…そんな事まで分かっちゃうレフゥー!なんてワタシは賢いレフ!?
 生まれたてのお前達は海って知らないレフ?レププ…きっと知らないレフ。
 海って、多分、食べ物レフ!賢いワタシが言うからそうレフ!だから食べているレフ…分かるレフ?
 という事で、今から先輩のワタシがお前達の面倒を見てやるレフ、感謝するレフ」

「レフーレフー…センパイ…センパイレフ?オイシイレフ?」蛆の方は早くも母親に捨てられた事を忘れて、大蛆の後ろを付いて歩く。
「レッ!ウジチャン!ダメレチィ!ココから逃げてママを探すレチュ!」それを慌てて追いかける親指…。

「ココは親指チャンと蛆チャンだけの世界レフ…おウンチとお水しか降ってこないレフ…
 ワタシは賢いから、どの色でどの硬さのおウンチがどんな味か分かっちゃうレッフゥゥゥゥン♪
 だから、ワタシについてくればカンペキレフ…怖い事の逃れ方も知っているレッフー♪」

「レッ?怖い事レフ?」

「「怖い事怖いレフー…怖い事怖いレフー」」
後を付いて回る蛆たちが怯えてブルッと身体を震わせ、尻尾を上げてピュッと糞を撒く。

「本当レチ…オオ蛆お姉チャマの言うとおり怖い事がおきるレチュー」
先輩親指が、新入り姉妹に語りかける。

「ママみたいなヤツが、あの柵から入ってきたら、ワタシ達は怖い目に遭うレフ…
 ボコボコにされて、悲鳴を上げて連れて行かれるレッフゥ…思い出しただけで寒気がするレヒィィィィ」

大蛆はブルッと身体を震わせ、尻尾を上げて糞を撒く。小蛆達も再び同じ動作で糞を撒く。
親指たちも、両手を胸元で交差させブルッと身震いして膨らみっぱなしのパンツから糞を零れさせている。

「でも、ワタシが教えてやるレフ!ヤツラが来たら、息を止めて顔をウンチに付けるレフ
 そうするとワタシ達もウンチレフ…ヤツはマヌケだからワタシ達をウンチと見分けられないレヒッ!!」

この蛆は、自分が糞塗れなのを利用して、こうして生き延びて成長してきた。
その自信はココから来ている。
そして、この付いて回る蛆や親指たちは、その大蛆の体格と自信を信頼して真似て頼っているのだ。


その頃、柵の外では、監視小屋の元に、ボロ服の低層派実装が訪れてきていた。

「デスデス〜♪親指肉を貰いに来てやったデス、今日はタクサン収穫があったデス!
 ジャンジャン持ってくるのを許すデス」

すると小屋の中から、野良としては綺麗な身なりの実装石が面倒くさそうに顔を出す。

「なんだ、お前デス?さっさと収穫を見せるデス」

「見て腰を抜かすなデス!魚の骨デス!頭も付いているデス!こんなに大きいデス!」

確かに実装石には大きいカレイの骨が折りたたまれて袋に入っている。
だが、その実装石は一番上の頭をつまみ上げると、残りを足蹴にして低層実装に返す。

「このワタシの目を誤魔化すつもりデス?頭以外の骨はしゃぶった後デス!お前のクサイツバでベトベトデス!」

「デェェェ!そこを何とかするデス…頭は残してやったデス…いやいや、これは拾ったときにこうなっていたデス…
 ちがうデス!拾ったときにはお肉がイッパイあったデス!今なくなっていたデス!
 アクマの仕業デス!ワタシの責任ではないデスゥ…」

そこに、これも身なりがまともな実装石が割り込んでくる。

「デスデス〜♪今日も仕入れに来たデス♪今日の代金は金平糖三個とキラキラ宝石二個デスゥ〜♪
 ここの肉は、歯ごたえが良いと評判デスゥー、丸々と肥えたのを寄越すデス〜」

差し出したのは金平糖と割れたビー玉である。


育てるものが居るという事は、当然、加工”料理”するものも商売が成り立つ。
この実装石はその加工販売をしている実装石だった。


「まいどどうもデスゥ〜」

高圧的だった牧場主が、突然愛想が良くなると、パンパンと手を叩く。

すると、柵に寄りかかって涎を垂らしていた禿裸の実装石が牧場主に寄って来る。

「ボッとするなデス!急いで蛆ちゃんの大きいのを3匹お出しするデス!」

禿裸は奴隷の証…団地組みにはどうも、奴隷を”飼う”事はあるようだが、
昔と違い、奴隷化にする過程での”直接殺すに等しい暴行行為”を禁じているのか過度の加虐が無い。

醜い姿を晒させ、加虐して自己顕示欲を満たし…というペットとしてではなく、
明確に個人の為の労働力としての色彩が強い様だ。

この禿裸も、仕事以外はボーッと過ごし、ここに居る限りは他者から攻撃を受ける事も無く、
最低限ではあるが餌が当たるので、収穫にムラのある低層派より肌の色艶は良い。

一生、この姿であり、自由が存在しないことにさえ納得できれば、一旦堕ちてしまえば低層派より待遇はよいが、
実装石最後のプライドたる髪や服を失う際の苦しみや痛みは、中々に納得できるものではないので、
進んで禿裸になるものも、また、存在はしない。

また、仕事といえば、汚れ仕事や危険を伴う仕事であるのは低層派も奴隷も変わりが無い。
この禿裸も、肥溜め管理という低層派より危険は無いが”惨め”な仕事をしているのだ。

禿裸はいそいそと柵を空けて糞の海をあるくとキョロキョロ辺りをうかがう。


「レヒィ!みんな隠れるレフ!ママみたいなのがやってくるレフゥゥゥゥ」

「「レヒィィィィィィ」」「「レチャァァァァ」」

一斉に顔を地面の糞に沈める。



「デスデス…コレ大きいデス…ご主人様が残しておけといったヤツの1つデス」

「レ!レレ!違うレフ!ワタシはウンチレフ!」捕まったのは、あの大きな蛆だった。

さすがに、蛆実装が浅く積もった糞の海に潜ればある程度の擬態ができるとはいえ、
物の数秒で呼吸のために顔を上げたり下げたり動いていれば、否が応でも気が付かないものではない。
それにソイツはあまりにも大きくなりすぎていた。
今までは、単に残してもらった幸運があっただけという事がついに分からず無駄な努力を重ねていたのだ。

尻尾から吊り下げられた大蛆は、肥えた分、即効で頭に体液が上がってしまい、顔がプックリと膨らむ。
ついでに身体の構成が異常に単純なために、内臓の物がそれによって簡単に込み上がって来る。

顔を真っ赤にして「レベェェェェ」と嘔吐し、元気に反抗する余力は無い。

だが、さらに禿裸は、蛆をベチャベチャ!!と地面に叩きつける。
浅い糞の海であるし、禿裸も本気ではない為に衝撃は小さいが、蛆と言う弱い存在には強烈な衝撃が何度も加わる。
”商品”を渡す際に、万が一にも逃げない為の作業だった。

流石にこの光景には、糞の海ですら能天気に駆け回っていた者も止まって震える。
お陰で、この禿裸も簡単に獲物を選んでいく。

「レ…レェッ…」「レペッ…レフッ…レェェェェェ」「レー…レー…レー…」

殺すまでやっては大変なペナルティを負うのだろう、禿裸は慎重に弱らせた大き目の蛆3匹をぶら下げて柵を出る。

「おまちどうさまデス〜♪はい、特別に選んだ蛆肉デス!献上品にしてもおかしくない丸々プリプリデス!」

「ありがとデス〜♪サービスするからウチにも食べに来るデス♪」

蛆を貰った実装は、ポテポテと僅かに歩いてすぐ隣の家の前、低い木の枝から垂らした紐に、その蛆の尻尾を通して吊り下げる。

「レェェェェッ!!」「レヒィィィィ!」「レフゥゥゥゥゥ!」

紐の先端には木の枝のフックになっている。

「「レペェェェェェェェ…」」3匹が尚も弱々しく吐き続けるのを見ると、その実装は木の枝を持ち、
その吊り下げられた蛆を順番にパチパチ!と叩き出す。

「「レパァァァァァ…ペアッ!ペピッ!レヘコペハポァ」」

10回も叩けば、蛆達はきれいに胃袋を吐き出した。
単純なので逆さづりで徐々に体内の物が頭に落ちてくるが、同時に内臓自体も上がってきて、軽い刺激で裏返しに出てきてしまう。

「ヘヒ!(ギュッ)ヘホホホホホ!!(グググググ…)ヘハァ!!(ブチ!!)」

その胃袋を掴んで引きちぎれば、表向きの糞抜きが完了する。
そして、苦しみのたうつ蛆を泥と草をすりつぶした液に放り込むと、
人間で言えば餅つきの杵であろうか、石と木の枝を組み合わせた道具でペッタンペッタンとつき出す。

糞食した蛆や親指は糞が細胞単位で染みて臭いが酷く、見た目に肉体が腐敗しているものも居るし、糞抜きも大して意味が無い。

それでも、一旦、潰して肉団子にしてしまえば、低層派のみならず、共食い禁止状態らしい団地組みにすら販売できる。
(団地組みは戒律もあるようだが、糞食蛆などを食うのはプライドが許さないのも大きい要素)
そのままでも低層派は喜んで食うのだが、肉団子で売ると、さらに多くの客層から物品をせびり取れるのだ。

特に匂いの強い草で糞臭さを誤魔化した”草入り肉団子”が人気のようだ。


「デェェェェッ…食い応えありそうな蛆ちゃんだったデスゥ…デ!仕方が無い取って置きデス!
 食べられそうな色々混じった物に、この葉っぱと卵の殻を2つもつけるデス!トロトロ美味過ぎデス♪
 これはワタシとカワイイ仔の為の取って置きデス!!だからさっきのとおんなじ蛆ちゃん3匹食わせるデス♪」

あの低層派実装は、まだ粘って交渉を続けていた。
所詮は元手0の糞食で育った蛆や親指と言う肉に過ぎない。
我が仔を食らうのと何の差異も無いことが、まったく低層派実装には分かっていない。
恐らく、そこまで交渉するより収穫を自分達のために使うのが妥当なはずなのだが、
”見栄”があるために、どうしても団地組みと同じく、物々交換をする事で地位を高めようという思考が働くようだ。
見た目だけで、本質的な計算が出来ずに、人間との問答で自滅する実装石らしい姿でもある。
そして、そこにこそ、きつい労働をしなくても食べて生きて行ける団地組みのこの繁栄が存在するようだ。

「デ?これっぽっちじゃ、あの丸々蛆ちゃんなんて売れないデス…親仔仲良く蛆1匹でガマンしやがれデス。
 本当に買う気あるデス?このビンボー人がデス」

「デエエエ!昨日はこの葉っぱ3枚でも蛆ちゃんと親指くれたデス!!」

「デフン!昨日は昨日デス!ブッカという言葉も知らないデス!?」

そこに、再び、今度は汗だくの実装石がツカツカと間に入って、牧場主と相対する。

「デスデス〜♪接着材が死んでしまったデス…所詮、糞食いカスデス…無様に泣き喚いて死んだデス♪
 今日中に、1件お家を作るデス!この最新モードのハイセンスな服5着と交換するデス」

ここの養殖仔は、家作り実装に”接着剤”として買われても居るようだ。
使用法はいたって単純…死ぬまで糞と体液の混じったモノを”搾り出される”のだ。
”我が仔”ではない、そして、ルールに当てはまらないと言うだけで、
実に残虐な行為も平然と行えるのは…そして、それに楽しみを見出すのも何も変わらない。


「デスゥ〜!!袖がないデス…不良品デス」

渡された服は、確かに袖の部分が肩から破られていた。

「夏の最新モードデス!ワタシもお気に入りデス!涼しくて機能的デス!知らないと乗り遅れデス♪
 服屋に新しい店を建ててやったら、そう言って差し出したデス♪」

服の差異が気になる実装石も、”最新モード”という言葉には弱い。
特に団地組みには、物々交換の品目に服もある。
誰の物でもどんな経緯でも良い、死体から剥ぎ取ろうが、弱者を襲って奪い去ろうが服は服であり、
それに、自分の服ではなく、”誰かのものだった”スペア服なら、
幾らでも外観に手を入れられるのが実装石らしい考え方である。
これも、飼い実装気分を体感できてセレブ気分を味わえるので商売になる。



禿裸が再び、糞池に入り込む。

その目に付いたのが、頼るべき大蛆を失った先程の”群れ”で、行動を選択し決定してくれるものを失って戸惑っていた。
生まれてすぐに落とされたわけだから、彼らの動言的には自己の思考がありそうなものだが、
実際には、自己の思考でそれをする能力など持ち合わせているものは皆無に等しい。
実装石基準でも知能の成長が悪い彼らには、本能に従って恐怖から逃げるという行動すら、誰かが率先しないと出来ないのだ。

「蛆お姉ちゃんコロされたレチ!?あのママみたいなのに捕まってヒドイヒドイにされたレチ…」
「「レヒィィィィィ…レェェェェェン」」
「レヒッ!ママみたいなのがコッチにくるレフ…怖いレフー怖いレフー…」

目の前に禿裸が迫っているのにこの様で、泣き喚いて糞を漏らすか、再び大蛆に習った行動をする事しか出来ない。

「接着剤って何デス?ご主人様の命令はフクザツデス…たしか、入りたてのはダメ、持って行ったらオシオキデス
 また、蛆ちゃん刑で、ここに放り込まれるのはイヤデス」

そう、ブツブツ呟きながら目に付くモノを買い物袋に拾っては放り込む。

あの落とされた蛆と親指姉妹も一旦捕まったが、服や肌に糞が染みていないという基準だけで開放された。


「レチィィィィィ…怖かったレチ…あの仔達みんな居なくなったレチ…ワタチ達はどうするレチ?」
「レフゥゥゥゥゥ、ウンチ美味しいレフ」

親指は、糞で早くも腹を膨らませた蛆の背中に手をやって、
モゾモゾ動く袋を引き摺る禿裸の後姿を見ながら途方に暮れてペチャ…と尻餅をついた。



「デェェェェェ!!あんなに大量に持っていくデス!ヒキョウデス!サベツデス!」

あの親は、禿裸から袋を受け取って悠然と去る大工実装の背を目で追いながら抗議する。
確かに差別だろう。

「もう、うるさいデス!お前も少しは、餌取り以外のケンセツテキな事位してみろデス!
 それが出来ないからいつまでもイエナシのクズなのデス!お前らは蛆肉よりゴミがお似合いデス」

切れた牧場主の言葉も一理あるところが実装石の無駄な知能である。
だが、その低層派の拾うゴミを食うのは、結局、団地組みも一緒である事は、
いや、むしろ、有り難がって食っているのは団地組みの方である事はコイツらの思考では除外される。

「ワタシは賢いデス!オマエ達が邪魔して家を建てさせないだけデス!!
 ワタシだけは、あんなクズどもとは違うのデス!だから、ワタシのお口には高級なここの蛆肉しか合わないデス」

人間の客商売としては、この無駄なプライドというのは実に、物を売りつける分には楽だろう。
問題は、売った後に色々と難癖をつけるのもこのタイプなので、人間だったら商売全体で見ると結局は厄介な客ではあるが…。

そうして血が上った低層実装は、服を脱ぎだし、首から提げた買い物袋を外す。
そして、中からまだ、腐敗していない新鮮なキャベツの芯を取り出して見せた。

「コレはとっておきの代物デス!もしもの時に、こっそり一人で食べるつもりだったデス…
 さぁ、コレで文句無いデス!?たんと寄越すデスゥ!!」

身体に身に着けて服の下に入れれば、見た目はバレバレでも、確かに簡単には奪い取れない。
そこまでするということは、希少な獲物である。

キャベツの芯を渡された牧場主は、目の色が変わる。

「こ・こ・こ・こんなモノはあ・ありあまってイルデス!珍しくもなんとも無いデスが、
 そこまで言うのなら、あまりにもかわいそうだから恵んでやるデス…」

そう言うと、禿裸を呼び寄せて耳打ちをする。


すると禿裸は、中から、先程の蛆と親指姉妹を抱えてやってくる。
蛆も親指も、食料とされるのにまったく暴行を受けずに抱えられている。


「レチッ…出られたレチュ…本当にママがお迎えに来たレティ?レェェェェ、ママァー!!蛆ちゃん!あれがきっとママレチュ!!」
「レフー♪ダッコレフ…タカイレフ♪レ?!ママレフ?確かにママレフー!やっぱりワタチがイチバンカワイイんレッフ♪」


「デッ!!こんなちっちゃい蛆と親指だけデス!?話が違うデス!!タクサンのタクサン寄越すデス!!」

「いいか、良く聞くデスビンボー人!!肌を良く見るデス!汚れをとってもウンチ色になっていないデス。
 この2匹は、キレイキレイに育てられた献上品の仔デス!おエライ人しか食べられない希少な肉デス♪
 普段食べているのとはゼンゼン格が違うデッスゥ〜♪あまりに美味しくてちっちゃいのデス!
 まぁ、キレイな親指肉といえば、お前達には自分の仔がせいぜいデス♪
 それともウンコ肉の方がお口にあっちゃったりするデス?なら仕方が無いデス…」

「デッ!!まっ待つデス!そ・そ・それが欲しかったデス!
 あったりまえに決まっているデス!ワタシには、コレしか口に合わないデスゥー」

「ママ…ママ…お腹空いたテチュ…」
「ママー…いっぱいガンバってとったゴハンドコテチュ?!」

空腹に耐えかねたのか、2匹の仔が物陰から駆けて来て、その低層実装のスカートを引っ張っている。

「デッ!仕方ないデス…コレを仲良く2匹で割って食べるデス。
 ワタシは蛆でガマンしてやるデス…」

親は、2匹の仔に小さな親指を渡す。

「レチャー何か汚いお姉ちゃんレチ…レッ!なにするレチィ!!そんなに引っ張ったらチギ!チギ!ヂギレ…レビィィィィィィ…」

ビキビキと音を立て、抵抗むなしく、体液を噴きながらゆっくり引き裂かれる親指実装…。

「レヒュヒュ〜♪ママ、タカイレフ〜♪レヒャヒャ、ママの変な顔が下に見えるレフン♪
 レピャピャ!シッポの先ナメナメ、くすぐったいレフ♪ワタチ、そこ弱くて漏らしちゃうレフ!ンコ出るレフ!ンコ出るレフ!
 レレレ!?レチッ!ママ!ワタチのシッポ、ガジガジしているレッフ!レビ!レビ!ガジガジはイタイレフ!」

一方の蛆も、シッポから味わうように少しずつ齧られている。

「この蛆のウンコの味もまた他のとは…たぶんきっと違うデス!これがワタシの口に合う高級品デス!
 これが献上品デス!キサマと同じ物を食べているデス♪」

親は、品物に一応納得して、半分ほど食った蛆を咥えてチュルチュル吸いながら背を向ける。
仔達も、それぞれ親指の肉を食いながら親のスカートを片手で掴んだまま付いて行く。

それを牧場主は口に手を当て、笑いを噛み殺していた。
「デスデス〜♪また、交換してやるデス、キリキリ食い物運ぶデス〜♪」

ここに堕とされた蛆や親指は、低層派実装より悲惨である。
完全に”モノ”扱いになるからだ。
生まれて間も無く陽の当たらない不潔な糞の海に捨てられ、糞を喰らって生き、
待っているのは殆どが低層派を飢えさせずに飼いならす為の食べ物となる事だ。



「ママ…おやつ食べ終わったテチ…ワタシ達のゴハンどうしたテチ…」

「何を言っているデス!セレブなお肉を食べたデスッ!コレが全部デス!!」

「テェェェェ!!あんなに取ったテチュ!お魚、頭が残っていたテチィ!ママしかナメてないテチ!」
「あのゲロとか言うモノも、卵のヌルヌルも葉っぱも食べたかったテチ!あれは晩御飯って言ったテチィィィ!!
 こんな、ちっこい食い応えの無いお肉じゃゼンゼン量がつりあわないテッチィー!」

子供というのは、純粋で、純粋ゆえに時として正確に損得勘定が出来るのは人間と同じである。

「何を言うデス!お前達には、このセレブな味の違いが分からないデス!
 そんな事ではお家を持てないデス!!いつものゴハンぐらい、夜も探しに行けばいいだけデス!
 そんな事も計算できないからおこちゃまデス!いつものと違って、クソブクロの中身も違うんデッス!!
 意地汚く食ってしまうから味わえないデス!」

親は、未練タップリに、まだ、小さな蛆を半分のまま、チューチュー吸って味わっていた。
流石に夕食どころか取って置きの贅沢品までも渡した事を、かなり歩いた時点でようやく後悔した。
後悔はしたが、言い聞かせる事で納得し、贅沢品ゆえにたっぷりと味わった。

蛆は、既に中身を飲みつくしたパック飲料の様にシワシワに干からびながらも、
偽石が吸われて飲み込まれた事で、それが胃液で溶かされるまで、その姿でも意識があった。

「レ…レ…ママ…マ・マ…スワナ…イ・レェッ…ウジチャン…チヌ…ヌパァ」

最後は、脳味噌など顔にあったものまでが吸いだされ、
舌でたっぷり転がされ飲み込まれたが、それでも肉はピクピク動き続けていた。

食われる蛆たちも悲惨だが、食らった家族も、例え、この群れがなくなったとしても永遠にこの生活を引き継いでいくのだ。


納得はしているが、3匹の後姿はどこかさびしい影を引いていた。



こうした商売の犠牲者となる低層派達は、それらを得て、少しでも団地組みになれる狭い門を潜り抜けるために、
日夜、汚れ作業や、危険な公園外の作業に従事する。
現実としては、騙されて、その気分を一瞬味わうだけでしかない。

乱闘の末に手に入れた食べ物を差し出して蛆肉やその肉団子を買ってその日の腹を満たしたり、
苦労して見つけたダンボールを差し出して、自分が前に取られた服を知らずに取り戻して喜んでいるものも居るだけに、
低層派は所詮、低層派としてコキ使われるのが運命ではある。

中には、飼い実装を襲って服を奪い、その服と家を交換して団地組みに戻るサクセスストーリーもある。


こうして、公園の実装石達は、短期間のうちに社会概念と秩序を構築しつつあった。
社会を手に入れた彼らは、性格こそ代わりは無いが、知能という面の中でもごく限られた範囲はとても進化していた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

例え、優秀な知能のリーダーを頂いたとしても、それだけではこの期間での進化は考えにくい。
それは、実装石の増殖の速さ、肉体的成長の早さ、生まれてからの生存時間に対する知能成長の早さ…
それらも群れの進化に乗数的な効果をもたらしていると考えられた。

そして、この群れは、その両方を活かせる”システム”を手に入れたのだ。


実装石と”商売”という組み合わせは、それほど”危険”なものである。


実装石らしく絶対的に抜けている所が多い、どれだけ努力しても人間に対抗できる武器や身体能力を得られない…
それらの明確な差が存在している為に、人間が猿まで退化したとしても、知能だけで立場が入れ替わる事はありえない。
そう、それだけは絶対の法則ではある。

だが、その進化速度自体は予想を超えて驚異的であることが実証された形である。


容量が低い知能…などと言われているが、進化の可能性を持つ生物には、万が一でも限界を作ってはならない。
代を経る…たとえ仔が部分コピー品に過ぎないとはいえ、劣悪優性遺伝とはいえ、
生活水準が高度化して、そのまま代を経ていけば種族的に進化は継続し、土台はコツコツと積み上げられる。

我々が知りうる限界は、条件が整わないだけで、実は限界ではないかもしれない…


彼らは、あの”洪水”から僅か1ヶ月で、
会話のできる類人猿モドキだったものから、擬似ではなく、実質の支配制度と秩序をもつ文明の入り口に辿り着いている。
実装同士でも単純な交渉、駆け引きが日常的に繰り返され、そうする事で話術が進化し、
知能が刺激され、群れとしての知能も加速する。

良い生活のものは自然と健康で優秀になり、その仔が劣化遺伝でバカでも、
日常の生活様式が高度であれば生活経験である程度は補える。

多産性による教育の不効率も、習慣として、こういった施設で不良な仔を効率よく間引いていく流れが生まれ、
また、生活が高度になるほど、悪戯に自慰による欲求発散を抑えていき妊娠率は下がる。

仔が少なくなれば教育も盛んになり、また、知能種に多い”皆仲良く”ではなく、見下すべき存在も用意されている。
堕ちる見せしめが用意され、それが一定の形で許容されている。


土台が徐々に積み上げられているのだ。


今はこれでも、人間が数年の歳月をかけ手を入れた第8世代の辿った進化速度よりは仔実装の駆け足の様に遅い。
だが、永遠に繰り返しをする普通の実装石集団に比べれば着実に進化していく計算になる。
そして、可能性は低いが、このまま越冬を身に付け、放置されれば、いつかは…



これは、危険な観察だ…。

実装石が、これまでの”常識”以上に進化する可能性を実証してしまう。

いや、そんな事は検証しなくても、可能性自体は多くの人間は薄々気が付いている。

だが、それをレポートという形になったもので突きつけられたらどうなるだろうか…

それを多くの人が知るところになれば、どう転がっても良くないことが起きる。



これは研究者としての率直な考えだ。




だが、教授は、実験の続行・中断に関しては何も言わずに、興味深げに指示を出している。

思えば、只でさえ常識外れの作られ方の第8世代をさらに進化させようと考えたところからして、
教授は、野良でもこうなる事を分かりきって何かをしようとしているのだ。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

その公園に、1つの実装石家族がコソコソと潜り込んできていた。


時間は昼間、草むらに身を隠す綺麗な飼い実装独特の装飾服に身を包んだ親仔…
2匹の成体実装に、ゾロゾロと20匹も親指実装がそれぞれ互いのスカートの端を握って数珠繋ぎになっている。

親指の先頭は、1匹の成体実装のフリル付きのスカートを必死に押さえ、
そうして仔を引き連れている親であろう成体は、キョロキョロと戸惑うように辺りを見回しオドオドしている。

一方、もう1匹の成体実装は、その親を茂みに残して、慣れたように警戒しながら、
ヒモで小さくまとめたダンボールを引き摺って駆け出し、他の家々と程よい距離を開けた場所に、
手際よく動いて、家となるダンボールを拡げて組み上げて行く。
木の枝等も結んであったようだ。

見かけは良くないが、うまく組み合わせて、枝を柱に大きな家を建設していく。
持ち運ぶ為に小さくしたダンボール同士を、クチャクチャと口の中で租借した残飯の糊で張り合わせてもいる。


暑さで夜型になった団地組みは、殆ど出歩いてはいない。

彼女は、それを計算して、団地に潜り込もうという考えであった。


やがて、夕暮れには、野良としては大きく立派な家が完成していた。

ただ、今のこの公園では、それでも見栄えで1歩か2歩、他の家よりは見劣りする作りではある。


そして、その実装石がクイクイと手招きの仕草をすると、
ずっと茂みに潜んでいた親仔が「デスゥゥゥゥゥ」「「レチャァァァァ」」と荷物を手に小走りに駆けて来て、
飛び込むように建物に入る。

入った直後から、一転して「「レッチャ♪レッチャ♪」」と嬌声が響きだす。


家を建てていた実装石は「デッスゥ…」と一仕事を終えた充実感の吐息を漏らし、玉の様に染み出した汗を手で拭った。

その実装石の耳に輝く特徴的なピアス、胸元のカメオ、その首輪に輝くプレートに刻まれた文字は…”Mee”

彼女は、飼い主によって野良生活から開放されたはずの、あの賢いミーであった。

彼女は、真昼の直射日光にダラダラと汗を流しながら、懸命に家を建て、
再び、この公園の住人となる事になったのだ。

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長い雨 … つづく

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1 Re: Name:匿名石 2016/12/05-12:47:00 No:00003059[申告]
ミーの復活、おそらくキーの王国、賢いミーの復帰
盛り上がったところで未完になったのが残念な大作だ

実験としてはいいデータが取れたんだろうけど開発、発展は封殺されてガンダム0083みたいなオチだったのかなあ
実装進化論は愛誤虐待はもちろん研究者や普通の人に示すにも危険過ぎるし
第9世代も忠誠心は理想的なんだろうけどヤンデレというか情のない機械を飼う人間に喜びはないと思う
ロボットにも感情モドキを持たそうとするのが人間だからなあ
凄く我が儘な話、人間が求めるのってたぶん極めて良蟲、家族愛等実装、但し、主人に嫌なこと命令されたらそれに従う実装石であって最初から最後まで人間様最優先でできた実装ロボじゃないのよね
研究所はそこを読み誤ってそうだからコケるわ
2 Re: Name:匿名石 2016/12/06-00:34:54 No:00003068[申告]
ミーってちょっとご主人様に忠実すぎて感情がある生物らしさがないよな
愛誤飼い実装のマリアみたいなのは困るけど歪んだ糞蟲なりに家族愛のあるキーの方が好きだな
そう言ってももうどちらの実装生も続きが書かれることはないけど…
3 Re: Name:匿名石 2016/12/09-16:38:03 No:00003096[申告]
これから面白くなりそうなのになあ。戻ってこないかなあ
4 Re: Name:匿名石 2019/02/15-02:25:37 No:00005752[申告]
この大作もあとちょっとというところでエタっちゃったんだよな
そして、前に感想や完結を期待するレスがついたのさえ2年前か…
5 Re: Name:匿名石 2020/11/03-23:26:51 No:00006289[申告]
続け
6 Re: Name:匿名石 2021/06/04-14:37:59 No:00006342[申告]
王国の正体とメイン3匹の末路は読みたかった
7 Re: Name:匿名石 2021/07/05-11:43:10 No:00006380[申告]
エタったやつの続きとか書く人いないかなぁ
8 Re: Name:匿名石 2021/08/08-15:09:24 No:00006403[申告]
ちょっとした2部作3部作予定ぐらいのやつならともかく
これだけの実装社会モドキ実験超大作の続きとか歴戦のスク師でも無理だわ
特にあとは賢いミーの再潜入の成否、王国の支配者の正体、ミーと研究の末路って最終段階に入ってたもののオチだけ書くなんて愛誤マリア級の自意識でもしてなきゃ無理
9 Re: Name:匿名石 2023/06/30-01:06:44 No:00007389[申告]
これ結局研究所の実験やったんか…
人間があまり入ってこない理由は書いてあったけど
そして未完成なのは残念
10 Re: Name:匿名石 2023/10/04-07:02:48 No:00008077[申告]
隠してるのと残り2話で新キャラ出しても説得力ないから生きていたキーが支配者なんだろうけど頭良くなりすぎだよなあ
そこらへんの説明含めて続き読みたかった
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