タイトル:【虐】 浦島仔実装
ファイル:浦島仔実装.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:6498 レス数:5
初投稿日時:2006/06/29-03:12:24修正日時:2006/06/29-03:12:24
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浦島仔実装

〜このスクはバイリンガルでお送りしています〜



ハックション!



「アレ!?・・・しまった・・・コンタクトが・・・」

公園を散歩していた俺は、クシャミをした拍子に片目のコンタクトを吹っ飛ばしてしまった。

「やべぇな・・・」

俺はその場でしゃがみこみ、コンタクトを探し始めた。


「ニンゲンさん。どうしたんテチュ?」

ふと、顔を上げると、そこには一匹の仔実装がいた。
身形はそこそこ清潔。
躾の行き届いた野良か?はたまた飼い実装か?

「その辺に、コンタクトを落としちまってな・・・」

「テェ?コンタクトテチ?」
「ああ・・・これくらいの透明な丸いものだ」

「判ったテチュ!ニンゲンさんのお手伝いするテチ!」
そう言うと、仔実装はコンタクトを探し始めた。

数分後後・・・

「ニンゲンさん、これテチ?」

「おぅ!これだよ!ありがとう。助かったよ」
俺は感謝の言葉を告げ、仔実装の頭を撫でてやる。

「テチュ〜ン」

気持ち良さそうに目を細める仔実装。

「お前、親は?」

「ママとお姉ちゃんが二人と妹がいるテチ」

「うーん・・・お前、性格良いし結構、賢そうだから本当なら
飼ってやりたいところなんだが、家族がいるならそうも行かないか」

「ニンゲンさん、ありがとうテチ。その気落ちだけで十分テチュ」

本当に実装石か?と疑問に思うほどに慎み深く遠慮する仔実装。
これを放って帰ったら人間の沽券に関わるな。
なんとしても礼をしなくては・・・。

「よし!これから俺の家に行こう。何も無いが、お前にご馳走するくらいの食い物はある。」
ご馳走と聞き、仔実装のお腹がグゥ・・・と鳴る。

「テチュ・・・」
恥ずかしそうに頬を染める仔。

「ああ。もちろん、食べ終わったら帰してやるよ。」

「テェ・・・わかったテチュ。お言葉に甘えさせて頂くテチ。」

「よし!そうと決まったら、行こうか。」

俺は仔実装を肩に乗せると、歩き出す。

「テチュ〜ン!高いテチ〜!気持ちいいテチュ〜!」

俺の肩の上ではしゃぐ仔実装。
辺りでは野良実装が羨望の眼差しを送る。

ハッキリ言って汚いし、何より見苦しいので関わり合いになる前に公園から出ることにする。

後ろから追いかけてくる声と気配を感じた俺は歩みを速める。

「テチュ・・・」
不安そうな仔実装の声が聞こえる。

俺はさらに速度を増す。
見る見る声と気配が遠ざかり、やがて人込みに入り込む。

「テチュ・・・ニンゲンさんが一杯テチ・・・」

「怖いか?」

「大丈夫テチ。でも、落ち着かないテチュ。」

「少しガマンしてくれ。もう直ぐ着くからさ。」

「はいテチ。」

そう言うと俺は商店街に入っていく。
様々な惣菜や、果物の匂いに興奮する仔実装。

「良い匂いテチュ〜ン」

俺は、狭い路地に入りその奥まったアパート・・・目的地・・・の扉を開ける。

「ご主人様、お帰りなさいデス。」

「良い子にしてたか?お客を連れてきたぞ。」

「は、はじめましてテチュ・・・」

「ご主人様、この仔はなんデス?」

「ちょっと公園で世話になってな。お礼をしたくて連れて来た。」

「そうでしたか。ご主人様を助けてくれてありがとうデス。ワタシはジョゼと言うデス。宜しくデス。」

「て、テチ・・・」

「大丈夫だ。ソイツはお前を虐めたりしない。」

「はいデス。」

「俺は準備があるからその間、仔の相手を頼むぞ。」

「はいデス。さぁ、こっちに来てくださいデス。」

ジョゼが仔実装を連れて居間へ向かったのを見て俺は台所へ。
・・・豚コマにキャベツ・・・ふむ・・・
俺は料理のレパートリーが貧弱だ。
ぶっちゃけ野菜炒めしか出来ない・・・
まぁ・・・いいか。
俺は調理を始めた。


「ジョゼさんは、ニンゲンさんに飼われて長いのテチュ?」

「ワタシは、丁度今のアナタ位のときにご主人様に拾われたデス。
ママも姉妹も皆、殺されてワタシも大怪我を負って倒れていたデス。
もし、ご主人様に拾って貰われなかったら今頃死んでいたデス。」

「テェ・・・」

「アナタもご主人様に飼って貰うと良いデス。」

「それはダメテチ。公園ではママとお姉ちゃんと、妹達が待ってるテチュ・・・」

「そうデスか。優しいママなんデスか?」

「とても優しいテチ!暖かくっていい匂いがして・・・ワタチは大好きテチ!」

「うらやましいデス・・・ワタシも家族が欲しいデス・・・」

「テェ?」

「ワタシ、怪我のせいで仔が産めないんデス・・・」

「テェ・・・ジョゼさん可哀想テチュ・・・」

「でも、寂しくはないデス。ワタシにはご主人様がいるデス。」

「良いニンゲンさんテチュ」


「おーい出来たぞ〜」

「はいデス。さぁ、ご飯デス。一緒に行くデス。」

「テチ!」


「お?すっかり仲良くなったみたいだな?」

「お友達デス。」

「そうテチュ!」

「そうか・・・さ、冷めない内に喰ってくれ。」

「美味しそうてチュ〜ン♪良い匂いテチュ〜ン♪」

仔実装は、恐る恐る料理を口に運ぶ。

「美味しいテチュ〜ン!」

よほど腹が減っていたのだろう。
仔実装は皿まで齧りそうな勢いで食べる。

「そんなに慌てなくても一杯あるから落ち着いて食べろよ?」

「はいテチ!ジョゼさんは食べないテチュ?」

「ワタシはこれで十分デス」
そこには緑色の固形物が盛られている。

「それはなにテチュ?」

「これは実装フードだよ。」

「フードテチ?」

「ほら。」
俺はフードを一個摘むと、仔実装に食わせてやる。

「こっちも美味しいけどフードも美味しいテチ!」

「そうか。じゃあ土産に持たせてやるから、お前のママや姉妹にも食わせてやるといい。」

「ニンゲンさん、ありがとうテチ!ママ達もきっと喜ぶテチュ!」


そうして仔実装を囲んだ楽しい時間は仔実装の一言で終わりを告げる。


「ニンゲンさん、そろそろお家に帰りたいテチュ。」

「ん?まだいいじゃないか。」

「でも、ママも心配してるテチュ・・・」

「ご主人様、無理を言ってはダメデス?」

「うむ・・・そうだな・・・じゃあ公園まで送っていくか。留守番頼むぞ。」

「はいデス。」

「ジョゼさん、ありがとうテチ。また会えると良いテチュ」

「また会えるデスよ。」

「バイバイテチ!」


別れを惜しみ手を振る仔実装を肩に乗せると、再び公園に向かう。

時間は夕方。
商店街も活気ずく時間帯だ。

仔実装は、人の様子や店の賑わいを飽きもせず見ている。
俺は少し歩みを遅くして人の流れに乗る。

やがて商店街を抜けると人の流れも疎らになり、公園に着く頃にはすっかり静まり返っていた。

「さぁ、着いたぞ。」
俺はそっと仔実装を降ろす。

「ニンゲンさん、ありがとうテチ!とても楽しかったテチュ。」

「俺のほうこそありがとうな。ほら、お土産だ」
俺はコンビニ袋に詰めた実装フードを渡してやる。

「ありがとうテチ!早くママにも食べさせてあげたいテチュ」

「本当にここまでで良いのか?なんなら巣まで送っていくが・・・」

「ダメテチ!ママがニンゲンさんをお家に連れてきちゃいけないって・・・」

確かに人間は公園では目立つ存在だ。他の野良実装につけられ、巣を危険に晒す恐れがある。
やはり、この仔にしてか。相当に賢い実装石のようだ。

「判ったよ。じゃあここでお別れだ。」

「はいテチ」

「じゃあ、元気でな。」

「ニンゲンさん、バイバイテチ!」
そう言うと、仔実装は夕焼けに染まる公園に消えていった。

さて。俺も帰るか・・・
俺はタバコを咥えると、家路に着いた。








テッチ!テッチ!テッチ!

「ママー!ただいまテチ!ニンゲンさんにご飯貰ったテチュ!一緒にたべ・・・」


静寂。
何も仔実装に答える者はない。
血と糞の匂い。
仔実装を悪寒で包み込む。

「ま・・・ま・・・?お姉ちゃん・・・?」

仔実装はママと姉妹を呼ぶ。

しかしそこには何も無い。
ママも、姉妹もダンボールハウスも。
僅かに残った血と糞の匂いが全てだった。

仔実装は、ニンゲンに貰った実装フードの入った袋を落とした。

辺りを見回すものの、全くの静寂。
何時もなら五月蝿いほどにデスデスと鳴いている同族の声も聞こえない。

一体何があったというのだろう?
仔実装が公園を離れていた僅かな時間に、全てが消え失せてしまった。

日は既に落ち、街灯に灯が燈る時間になっても仔実装は立ち尽くしていた。

頬を伝う涙を拭いもせず、ただ立ち尽くす。
そして仔実装は理解した。
ママはもういないと、お姉ちゃんも妹もいなくなってしまったと。

自分は一人ぼっちだと。

仔実装は一頻り泣いた後、ニンゲンの顔を思い出した。
そして同居人の実装石のことも。

仔実装は思った。

「そうだ・・・ニンゲンさんに飼ってもらおう」と。
あの優しいニンゲンならば自分を受け入れてくれる、仔実装はそれだけを希望にしてニンゲンのもとへ。

しかし仔実装は公園の出入り口まで来たところで再び現実と直面する。



「チ・・・昼間にあれだけブチ殺したハズなのに、もう湧いて来たぞ・・・」



ニンゲンは優しい人もいるけど怖い人はそれ以上に多いと。

「テェ?」

怖いニンゲンを見たら逃げなければならないと。

「よし!糞蟲ゲットだぜ!」

「テェェェ!!テチャァァァ!!」

怖いニンゲンに捕まったら一杯痛い事をされて死んでしまうことを。

「今夜をコイツの悲鳴を肴にイッパイやっか!」


「テェェェン!テェェェン!」







「ご主人様、お帰りなさいデス」

「おぅ」

「あの仔は・・・?」

「帰ったよ。家族の下へ。」

「デス・・・」

「なぁ・・・今度あの仔に会いに行ってみるか?」

「はいデス!」


END

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1 Re: Name:匿名石 2014/10/30-20:26:38 No:00001525[申告]
いざというときに人間に頼ろうとするあたり糞蟲性ゼロでもないんだが
基本は慎みができてる実装が無惨な末路を迎える話は悲しいな…
2 Re: Name:匿名石 2015/11/06-14:06:58 No:00001853[申告]
これは別に糞蟲成分でもないような。
3 Re: Name:匿名石 2016/09/30-15:04:00 No:00002546[申告]
ラストの会話が意味深だな…
4 Re: Name:匿名石 2019/03/31-01:40:51 No:00005839[申告]
やったぜ
石生で最大級の幸せ感じたろうし、後は苦しみぬいて死ぬだけだねぇ
5 Re: Name:匿名石 2023/09/27-15:20:43 No:00008035[申告]
ごちそうしょぼ
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