タイトル:【観察】 新作たのしみにしておりますデス
ファイル:いとこじこいし.txt
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初投稿日時:2023/03/20-15:14:11修正日時:2023/03/20-15:14:11
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部屋の奥には水槽が一基ある。
壁に向けた一面には子供が描いたような素朴な実装石のイラストがあった。
そんな中、一匹の仔実装が住んでいた。

ポロポロと主人の手から落とされる実装フードを食べる。
もそもそと味気のないそれに、たまに黄色いコンペイトウが混ざる。
それだけが、仔実装の娯楽であった。

 ピンポーン

チャイムの音がする。
玄関先で、主人と宅配員がなにやらやりとりをしている。
荷物を受け取った主人は、部屋の中にポイと投げ捨てる。
無造作にダンボールの蓋を塞いだガムテープを取ると、中から新しい仔実装が現れる。

 テッテチュベッ

開口一番、仔実装は主人の蹴り足により派手に吹っ飛ぶ。
のろくさと立ち上がり、恨みがましい目つきをして、主人を睨みつける。

 ああ、いけないテチ

水槽の中から、仔実装は同族を見ていることしかできない。
主人は乱暴に足をつかむと、ガラリとベランダへ続く窓を開く。
そのまま勢いよく仔実装を投げ捨てる。
やたらと高いベランダの壁を、仔実装は放射線を描いて越えていく。
悲鳴さえ聞こえることはなく、ただ無常なクラクションの音が響く。
ピシャンと窓を閉めると、そんな喧噪さえも掻き消えて、部屋には元の静寂が戻った。



ある日、大量の仔実装を仕入れてきて、主人は部屋にバラ撒いた。
少しでも糞蟲の兆候を示した個体は、禿裸にした挙句に手足をプチンと切除し、置物じみて壁際に並べる。
それを逃れた仔実装たちはさして気にする様子もなく、テチテチテチューと部屋中を思い思いに駆け回る。
部屋の片隅には寝床があって、対角線状の隅にはトイレがあった。
残った仔実装たちはきちんと躾られているようで、トイレでペロンとパンツを下げると、真ん丸なお尻を
突き出してふんばる。
ブピブピとひり出された糞で、みるみるトイレはうまっていく。
主人はこまめにトイレのシーツを取り換え、部屋の中心に餌をばらまく。
仔実装たちはテチャーンと餌にむらがり、手に取ってテムテムと噛り付いた。
犬食いやトイレ以外で粗相ををするような個体はあらかじめ除かれている。
水槽の仔実装の目にもとてもお行儀のよい同族の集団であるように思われた。
そんな中、ピンクのゴムボールを転がし合って遊んだり、足元に寄ってきた仔実装をやさしく
つかみ上げ、撫でさする主人の姿があった。

 テチィ……
 ワタチもゴシュジンサマにあそんでほしいテチ……
 オトモダチとイッショにかけっこしたいテチ……

水槽の仔実装は、羨ましそうにそんな光景を眺めていた。
しかし、そんな仔実装に与えられるのは、相も変わらず与えられる実装フードとコンペイトウばかりで、
主人の手に直接触れられることはなかった。



次の日になると、水槽の仔実装は考えを改めた。
目を覚ますと、壁には禿裸の仔実装がびっしりと並んでいた。
あれだけいた仔実装は、ほんの三匹ほどになっていた。

 ピンポーン、ピンポーン

絶えず配達される仔実装。
主人はダンボールを開封する労すら惜しいのか、蹴り飛ばして内容物をぶちまける。
テチャっと投げ出された仔実装を掴みあげると、流れるような手つきで実装服を剥ぎ取り、
毛髪をもぎ取り、手足をちょん切る。
一瞬で半生半死になった仔実装を、今度は丁寧な手つきで壁際に並べていく。
五体満足で色艶もよい仔実装たちは、そんな主人の動向を気にする風でもなく、ボールを
追いかけたりトイレに向かって駆けていったり、思い思いに実生を謳歌していた。

仔実装は日々入荷され、数を増やしていった。
床面を埋め尽くさんばかりにあふれる仔実装たち。
トイレにあぶれた仔実装は我慢できずに、そこらで糞をひりはじめた。
主人はそんな個体を見逃さず、手早く禿裸のダルマにして、壁際に放った。
壁はダルマで生垣のようになっている。
餌場からあぶれた個体は飢えからパキンと偽石を割って、死体となった。
主人はそんな個体をつまみあげると、トイレに流して処分する。

楽園から一転、地獄のような様相を呈する水槽の外をまのあたりにして、
仔実装は隅で蹲ってブルブルと震えることしかできなかった。
その頭上からは、相も変わらず餌とコンペイトウが降り注ぎ、カラカラと乾いた音を立てる。



翌朝、仔実装が目を覚ますと、視界一杯が肌色だった。
それは水槽からあふれだすほど敷き詰められた、禿裸のダルマたちだった。
そんな中で、仔実装はほとんど生き埋めにされてた。
仔実装がそれらから逃れようと身をよじると、ダルマたちは為すがままに退いていく。
ただ、悲し気な小さな声でテチーと鳴くことしかできない。
やっとダルマから脱出し、水槽のフチに手をかけた仔実装。
そこには、昨日までの喧噪が嘘のように、ガランとした部屋がひろがっていた。
ただ、主人はそんな部屋の真ん中で、ノートPCのF5キーを永延と叩き続けていた。

 ゴシュジンサマ、なにをしているテチ?

水槽の仔実装は主人に話かける。
そんな仔実装に、主人は目を向ける。
主人と仔実装は、そこではじめて目を合わせる。

「待っているんだ」

主人の答えに、仔実装はテチィと頭をかしげる。

 なにをまっているんテチか?

静かになった部屋の中。
カチリ、カチリとキーを叩き続ける音。
水槽の中で小さく呻く5000番台の禿裸たちの声。
頭上に1を浮かべて、主人を見つめる仔実装の息づかい。

「ずっと待っているんだ
 畳の上でおあいそをする実装石
 公園で仔に囲まれて笑みをうかべる実装石
 夢にまで見そうだよ
 もう何年も経っているというのに、今になって新作だなんて
 そんなの、感謝しかないじゃないか……」

主人は立ち上がり、水槽の前やってくると、仔実装の頭上から餌とコンペイトウをばらまいた。
そんな主人を、仔実装は不思議な生き物でも見るかのような目つきで、ただ見上げていた。

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1 Re: Name:匿名石 2023/03/20-16:21:43 No:00006954[申告]
頭の中で全て再現できることからすると
俺もいとこじジャンキーなのかもしれない
2 Re: Name:匿名石 2023/03/20-20:49:01 No:00006955[申告]
上手くいとこじが文章化されているデス
文章にするとかなりシュールになるけど非常にいい味出てますね

いとこじの新作もcさんの新作も楽しみです
3 Re: Name:匿名石 2023/03/21-06:18:34 No:00006959[申告]
いとこじネタかあ!こいつは一本取られたぜ
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