仔実装を餌にして釣りするのにここんとこハマっている 釣りは俺の最大の趣味だ。とくにルアー系の釣りが好きかな。実装石虐待はまあ三番目くらいの趣味だと思う キッカケは本当に偶然だった。釣りをする人なら説明不要なんだが、魚ってやつはその時に食べている餌にルアーを似せてやるとやっぱりよく釣れる。 その日は初夏で、釣り人用語では「虫パターン」と言われる釣り方が有効な日だった。 湖に小さなボートで出て観察していると、なかなかのサイズのマスがじっと水面を凝視しているのが見えた。 彼らが狙うのは春蝉だ。そしてセミがぽとっとオチたその瞬間、がばっ! と水面が弾けた。うお、エキサイティング! 俺はさっそくセミそっくりのルアーを結んで木陰に投げる。 すぐさまニジマスが見に来た。 釣れたぜ! と思ったのも束の間、マスはルアーをしばし眺めてから、ぷいっと帰ってしまった。 ええ、マジ・・・? さすが人気の湖の魚、賢い・・・。でも、これだから釣りは面白いぜ。 その後もけっこう頑張ったのだが、見に来るだけでガバっと食べてくれない。しげしげ観察して帰るさまは「生き物じゃないな」とでも言いたげたった。 うーん難しいな・・・楽しい悩みを堪能していると 「テチィ・・・」 とおなじみの声がした。あ、実装だ。やべ、コンビニで昼飯買った時に託児でもされたのか、許さん俺の憩いのひとときを・・・? と慌てたが、どうも俺の船の上に糞虫の気配はない。 え、どこだ、ここ湖上だぜ・・・? と思いつつ視線をめぐらせると、見えた。いた。水面にオーバーハングした琵琶の木に仔実装がしがみついてヨチヨチと琵琶の果実を取ろうと決死の木登りの最中だった。 野生の琵琶の実はたっぷり熟していて美味しそうだし、なにより美しかった。あんな素晴らしいものを糞虫が食うのはダメだろ、と俺はそっと船を寄せ、手漕ぎオールで琵琶の幹をぐいぐい押して揺らした。 「テ、テチャッ・・・!? テェ・・・ッ! チギぃ・・・!!」 ぎゅんぎゅん掴まっていた枝が揺れて仔実装がブンブン動く。短い手足でグリップは叶わずあっさりズルっと滑って落ちた。水面へ。 「テチィィィィァァァ!!!!」 悲鳴をあげて着水する仔実装。つぎの瞬間、ざばっ!!と水面が炸裂した 「デボッ・・・!?!? ヂュっ・・・ッ」 ニジマスが仔実装に強烈バイトしたのだ。 わっ、ダメだって! そんな体に悪そうなの食べたら!! 思わず俺はニジマスの心配をする。普段プラスチックやらで出来たルアーで釣ってなんなら焼き魚にしようというのに、釣り人というのは身勝手だが、俺ら釣り人は魚を愛しているのだ・・・。 マス類に特有の鋭い歯でガッツリかじりつき、しかもブンブン首を振りつつの捕食。仔実装の半身が水の中で食いちぎられて、赤と緑の地がほんのかすかに水を濁す。 顔が3/4、体が1/2くらいになった仔実装がぷかーっと浮かんできた。服のなかに空気が少し残っているらしく 「テ・・・ャ・・・テプ・・・」 あ、生きてる。 と思ったら、その「まだ生きてるやん」と思ったのは魚も同じだったらしい。一匹目とは違うこれまた美しい模様をしたニジマスが瀕死の仔実装をガブリとやって湖水へと消えていった。そう、基本的に肉食魚は生きている餌が好きだ。 そんなこんなでもうお分かりだろう。 俺はこの湖の釣り方には「虫パターン」ならぬ「仔実装パターン」が存在するのではないかと推測した。 昼、釣宿に戻って女将さんに聞いてみると、やっぱりそうらしい。ここのニジマス、特に大きな魚ほど仔実装を狙って食べている、と。 あんなの食べて大丈夫なんでしょうか、と俺は心配したが、ここは高原のめちゃくちゃ自然豊かな湖だ。いるのはいわゆる”山実装”というやつで、なんなら人間が食べてもグルメにたえうる食材。心配無用だった。 そこから俺の試行錯誤がはじまる。もちろん無上に楽しい試行錯誤だ。 次の週、釣りに行く日の早朝。俺はいつもより一時間はやく家を出た。 テチャァァァア!! テジャァァァァァアア!!!!!??? テハァァ!テヒィィィ!!! テチュ? テチュ~ン♪ ———ジッ!? 深夜の街の公園。 湖に行く前に餌の確保だ。実装石のいそうなところを適当に踏んだりバー○で薙ぎ払ったりして、ハウスを見つけ次第ぶっ壊して、ちょうど良さそうなサイズの仔実装をエサ箱にブチ込んでいく 1500円の安物とはいえ釣り用のエサ箱を壊されたりしては嫌なので。 ブチッ テチャぁああ! ぐちっ テェェェェエェン!? 元気そうなのや賢そうなやつは足を潰したりしておく。蛆ちゃんは今回はパス・・・しようかと思ってたが、大事そうに蛆を抱いている仔実装がいたのでそいつは蛆ごと確保した。なんかに使えるかもだし。 餌に不適当なサイズのはその場でゴミ袋を分け、袋の上から適度に踏み潰して、静かになるまで何度も踏んで、ちゃんと実装処理場に置いた。オレ、釣り人、マナー第一。 釣り場につき、今日も女将さんに遊漁料と水質保全協力の些細な募金をして、小舟で湖にでた。 実装エサ箱をあけてみる。あけた途端にクソ投げでもされたら嫌だから、開ける前にバコバコバコっと上下に振った。 ヂィィッィィッィイィィッッッッ!!??! テチィィィィッッッ!!!!!!! テチュゥウゥゥゥゥゥゥゥッ!! 蓋を開ける。 良い感じに無傷なやつが一匹もいないくらいになっていた。だがパキンしてるやつはまだいない。我ながら見事な塩梅だ。 だいたい15匹くらいかな・・・元気じゃないヤツから順番に使おう。件の『蛆抱き』は軽傷だ、いちばん後回しになるのはこいつかも。 どいつから行くかな・・・と眺めていたら、いちはやく テチィ、 とおあいそしやがったヤツがいた。よし、こいつでいこう。便宜上イチバン、と。 俺は潰さないようにそっとイチバンをつまみだした。 デッ!デププ・・・っ! とイチバンが笑う。すごいな、右足つぶしてるのに飼われると思えるって。 「テチテチ。テッチ? テチィ・・・?」 イチバンを手に少し思索する。さて、どこにどう釣り針をさせばいいものか。ここはけっこう釣り人の腕の見せ所だ。・・・ま、とりあえず・・・。 餌持ち(簡単に針からぬけないようにってこと)の良さと、アクション(実装石自身の動きで魚を寄せてほしいので身動き取れないのはよくない)を考えた結果、 「テ? テェ!?」 髪。後頭部からの二房をぐるぐるぐるっと釣りバリに巻きつけた。 「チュェェエエエーーーー!!?」 イチバンがあばれるも、釣り人は「結ぶ」ってことのプロだ。そらもう目つぶってても10通りくらいの「結び方」をできる。 いい具合に針が背中にせっとされた仔実装ベイトが完成した。 … セミルアーよりは重たいので頑丈な釣り竿で——キャストぉ! チャアァァァァァ—— おお、すごく投げやすい。完璧なバランスタックルだ。さすが俺。 イチバンは見事なライナー気味の放物線で、ニジマスが水面を狙っている木陰へ着水した。 でぼ、でボボっ・・・テヒィ・・・テヒッ・・・! ヒッ・・・——!! 着水したイチバンが水を飲み、ゲボゲボっと苦しんで5秒ほど。ザバッ!! とイチバンにニジマスが踊りかかった。いいサイズだ!! テチュゥッッッッデデゥゥゥゥ!!!!!!?? けっこう距離があるのにここまで聞こえるイチバンの断末魔に、エサ箱の仔実装らがビクビク反応した(あ、これで状況わかってるやつは賢い個体だな、でも恐怖パキンするなよ) そして俺はあわてず、フッキング(アワセのこと)! ずしんと竿が重くなる・・・!——はずだったのだが。 ぷチッ、という軽い手応えとともに、なにかがすっぽ抜ける感触。 糸が切れた・・・高級釣り糸なのに・・・!? と思ったら、ちがった。 イチバンの髪が抜けたのだ、そして針と髪だけが戻ってきた。・・・失敗。水面を覗き込むとイチバンがニジマスに咥えられたままモガイているのが見えた。ぶちゅ、と体が分断され、さらにそこを違うニジマスから丸呑みにされた。あの食われ方は、生きたまま腸内で溶かされるだろう。 つぎつぎ。 「髪の毛はだめか」 エサ箱をあける。あがるやかましい悲鳴の合唱。今度はくてぇ・・・となっているのを取り出した。体力の限界なのか諦めているのか。何にしてもパキンするまえに使おう。よし、ニバン。 針持ちがよく、なおかつコイツが元気に動きそうなところ——と考え——プチュリ—— ゥ...テチャアァァァァァアアアッッッ!!?? スイッチ入ったように元気に喚いてジタバタするニバン。 おお。良い感じだ! 右目から左目。赤と緑を両方、顔の中をとおって釣り針のカーブで上手いこと通し刺しに貫通させてやった。 イタイテチィ!! オメメイタイテチ!! オメメナイ! 真っ暗テチィィ怖いテチィ!!! オメメェェエェ!! アップルウォッチにいちおう起動させといたリンガルに翻訳がデてる。元気じゃんこいつ・・・。あ、強制妊娠になるかもしれないがそれもまたよし! 魚よせそうだし! 手足を振って懸命にもがくニバンをキャスト!! テヂィィ~~~~~ィ 着水後、ニバンはものすごくやかましくチャバチャバ水面で暴れた。おー、でかいセミっぽい、これは釣れそうだ・・・! 苦痛でパニクらせるのありだな。 なんて思っていたのだが・・・なんと、いつまでたってもニジマスはバイトしない。 こ、こんなに釣れそうなのに・・・すごいアピールなのに・・・!? テヂ・・・ッ!? 苦しいの嫌テチィ・・・ッ! テヂ・・・ッ!? ボヂュ・・・ッ!! 死ぬの嫌テチ・・・っ! ニバンの生命力あふれる命の灯は完全無視しつつ戸惑っていると、ぷかり・・・となにかが浮かんでいた。あれは・・・さっきのイチバンの、肉片か・・・? 見れば、ばちゃばちゃと水面で猛アピールするニバンには、ちょくちょくニジマスが近づいているのだ。しかし・・・しばしすると、ぷい、と食べるとのヤメている。 漏らす糞や赤緑の体液が水に溶けている—— 「——マズイんだ・・・!」 俺は気づいた。山実装を食べ慣れているニジマスに、公園の糞虫は似て非なるものなのだ・・・! 雄々しきプレデター(肉食魚)である巨大なニジマスは、この湖の生態系の頂点だ。聞いたことがあるだろう、シャチと同じだ。さして飢えず敵もいない最強の彼らは、気に入った美味いものしか食わないのだ。これは、じつは釣り場ではよくある。 つまりさっきのイチバンもニジマスはぺっ、としたのだ。 丸呑みにしてしまったニジマスは今頃「まっず・・・気分わるっ・・・」と思いながら消化しているのかもしれない。 「しまったなあ・・・てか悪いことしたなあ・・・」 リールを巻いてニバンを回収した。 ゲボッ・・・ニンゲン・・・ゴホッ・・・ごめんなさいデスゥ・・・許してデフ・・・テロオオオ・・・。 大量の湖水をゲロるニバンを掴み上げ、釣り針をぶちっ! ひっぱって外した。 目の間の肉がとれてニ番の顔に穴があいた。 デゥゥゥゥウ!!!!!!!!!!!!!!!!!!! あらためて、針を外したニバンを湖にぽいっと投げ込む。 デッ・・・デッ・・・ッデ・・・ 先程と同じ地獄に自分が戻ったと視界ゼロでも分かるらしく、またもがくニバン。しかしさすがにもう死にそうだ。 そして、やはりニジマスはニバンを食べようとしなかった。見に来て、臭いをかぎ、去っていく。 釣り針の存在に気づくことすらある超絶に賢い湖の王者への念の為の確認だが、やっぱりそうではなさそうだ・・・。 「うーん・・・となるとやはり・・・回収しないとか・・・」 テチテチ・・・テチテチ・・・レフ・・・? と、エサ箱から糞鳴き声が聞こえる。 このくらい使い切れると思っていたし、仮に残っても最後は魚たちに感謝の気持ちで御馳走して帰るつもりだった。 しかし、こんなに釣れないと分かれば使えないし、ここにすむ魚にとってこいつらが食えない糞虫であるなら、これ以上湖に投げ込むのはマナー違反だ・・・彼らの住まいにゴミすてるのと同じだもんな・・・。 「仕方ないな」 俺は虫の息のニバンを網ですくって回収し、べちゃ、とエサ箱に戻した。 テェ!? チッ? テェ・・・デププ・・・ テチャアァァァ ワンピースの水水肉みたいになったニバンへのエサ仔実装どもの反応は様々だ。自分もなるのだと恐怖してるやつは賢いのかな。 何にしてもガッカリだ・・・って感じで舟に積んでおいたバケツに湖水をくむ。しかし、山実装をじゃあ捕まえるってなると難しいだろうしコスパがなあ・・・ ため息つきながら色々考えを巡らせる俺。そしてエサ箱をあけると、ニバンがけっこう他の仔実装どもに食われていた。 テチ、ゴハンの追加テチぃ? ジューシーお肉美味しいレフ— ニンゲンサン・・・公園には帰れなくても良いテチ・・・でも命だけは助けてほしいテチぃ・・・ お肉に免じてこれまでの無礼は許すテチ。コンペイトウとステーキを持ってくるテチ 俺は水がなみなみバケツからザバーっとエサ箱にたっぷり水を注いで—— チャアァァァァァアアアッッッ!!?? まっくらテチュゥゥゥゥゥゥッ!!! テチィ!!! 蛆ちゃああああ!?!?! 出してテチュゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッ!! なんで・・・どうしてデチュぅ・・・ッ!! リンガルを切って、速攻できっちり蓋をした。 捨てるにしても殺さないと面倒だし。しかしなかで潰したりしてて殺すと必要以上にエサ箱が汚れる・・・溺死させるのがベターかなってだけの理由だが・・・。 あーあ、でも糞虫の水死体をたっぷり車に詰め込んで処理場まで運ぶのかあ・・・なんて思っていたら——イチバンの肉片が、なにやらピクピク動いているではないか。 えっ、と思って近づいてみたら、なるほど——巨大なニジマスではなくて、小さなニジマスだ、手のひら以下くらいのサイズの可愛いニジマスたちがチマチマと実装肉をかじっていた。 ・・・成体になれば湖の覇者となるニジマスだが、小さいうちはまだまだ天敵が多い存在だ。ゆえに彼らはエサを選ばない。食えそうなものならばとにかく食らい、一刻でもはやく成長しようとする。 「・・・じゃあちょっと今回だけは申し訳ないけど、処理していただけますかね・・・」 小さく懸命な輝きを見せる小魚たちに呟いて、エサ箱をかついだ。 ヂャ!?ヂャァァーーー!? ヂュベェッテヒィィィ... テチュゥゥウ! テェェ テチャァァアァァァァ ざばーっ! と溺れ死にかけてた仔実装らが(+一匹の蛆ちゃん)湖水にドバドバ落ちる。 にわかに騒がしくなる湖面。 ばちゃばちゃテチャテチャという音にひきつけられて、あっというまに沢山のキラキラと銀色を煌めかせる小ニジマス達が溺れる仔実装らの周りと取り囲む。サメ映画のクライマックスみたいだなあ・・・ 「テェェェェェン...ッ 溺れ死ぬの嫌テチィ・・・!」 「怖いのが沢山いるテチィ・・・! テヒ!?!?!? 噛んでくるテチィイイ!?!?!?」 「こいつらをみんな食っていいテチ! だから私は食べないで欲しいテチィ!!!」 「次女ちゃん!? 次女ちぁあああん!!! 次女ちゃんを食べちゃダメテチ!!」 「テチゥ...早く全部食べテチィ・・・もう苦しいの嫌テチィ・・・お腹が痛いテチィ・・・」 「ずっといい仔にしてたテチュ!!! どうしてテチュぅ!?」 「オメメ食べないでテチィ!!! オテテ噛まないでテチィ!! 苦しぃテチィ!!!!」 「テヒ・・・お腹から入ってきたテチ・・・怖いテチ・・・死ぬテチ・・・」 「蛆ちゃんがチギレちゃうテチィィィィニンゲン助けろテチィィィィィぃ!!!」 「怖いテチ!!! 怖いテチ!! 怖いテチ!!! 水嫌テチ! こんな食べられるテチ!!?? テチャァァァァあァァァ!!」 「こんな死に方イヤテチィィィィィッ!!!!」 「・・・テチュゥ・・・食べちゃだめテチュゥ・・・アンヨなくなるテチィ・・・」 ぶちっ、ぷちっ、 テチっ、テヒッ・・・ ゆっくりと時間をかけて仔実装らが小さなニジマスらのエサになっていった。 必死で体を浮かせようとしている仔実装の足がかじられ、水中に引きずりこまれてブチブチと一口ずつ齧られていく。 服と髪は食べにくいようで、子ニジマスは基本的に実装の穴を狙う。目玉からえぐり、総排泄孔から腹をさいて内蔵を食らう。 服は食べられないと思ってそれでガードしようとする仔実装は余計にながく苦しむ。 どうやら偽石が湖水に浸かっているせいで、ちょっとパキンするまで時間がかかるようだ。ここの湖の水は山からの湧き水が溶け出してて栄養豊富だからか。 ・・・あ、せめてハゲ裸にしてから投げ込んであげればよかった、すいません、子ニジマスさんたち・・・ありがとう、食べてくれて・・・。 最後の一匹になったのは、あの「蛆抱き」だった。体を齧られながらも立ち泳ぎみたいにして両手を空に伸ばし、蛆をかばい続けていた 「怖いレフ! 死ぬの嫌レフぅ! おねえちゃん蛆ちゃんを守るレフ!!」 「レチャァァ・・・どうして助けてくれないんですテチ・・・せめてウジちゃんだけでも助けてレチィィィィィィィィィ・・・」 俺はもう舟を陸に向けて漕ぎ出していた。 オールの引波が最後の二匹を飲み込んだ。さすがに子ニジマスたちもお腹いっぱいになったのか、その蛆と蛆抱きは食べなかった。 蛆抱きはその後も頑張った。 蛆ちゃんを抱いたまま岸を目指してもがき続けた。レフレフ文句を言い続ける蛆ちゃんをかばい続け泳ぎ続けたが、 途中で飢えに我慢できなくなり蛆ちゃんに齧りついた。 レピャアアああああああ!!! くちくちカリカリコリコリ・・・ユックリ時間をかけて喰い、偽石まで飲み込んで体力を回復しつつ岸を目指した。 「死なないテチ・・・死にたくないテチ・・・強い私は幸せになるべきなんテチぃ・・・死にたくないテチッ・・・蛆ちゃんの分まで幸せになるんテチぃ・・・!」 仔実装が岸まで泳ぎきったのは、完全に奇跡といっていい。 「テチャあぁァァァァァァァァァ!!!!!! 私は最強テチィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!!」 勝利の雄叫びをあげた仔実装はしかし、 「テッ・・・!?」 次の瞬間、釣宿の飼い猫に見つかっていた。 彼は飼い猫としてのちょっとした務めである実装石狩りをマジメにこなす賢い白猫だった。 「・・・・・・テェ・・・テチューン・・・♪」 最後の最後に媚びを選択した蛆抱きを、 チッ!? 猫パンチがまたも湖に落とした。その後、這い上がってくるたびに、白猫はパンチしたり咥えたりかじったりして、湖水に落とし続けた。 テッ・・・っ、テブっ・・・! デジャっ・・・! デボッ・・・! 娯楽の少ない田舎の白猫にとり、実装石というのはパキンの音が聞こえるまでは使える暇つぶしの相手だった。 そんなこんなで、俺は今日もまた『仔実装ベイト釣法』の開発にちょっと夢中だ。趣味ってのは夢中になれるのがいい。 現在、試行錯誤の末、さすがに山実装そのものを捕まえるのは難しいので、都会の公園やらコンビニで仔実装を回収するのは変わらないのだが、 そいつらを少しでも山実装の味と臭いに近づけるため、一週間ほど飼ってから使うというメソッドにたどり着いている。 あたえるエサは芋の皮とか、おがくずとか、釣り餌用に大量購入しているサナギ粉とかだ。これらを食わせることで山実装に近い風味をだすのだ。 エサをちゃんと食わないような仔実装は当然つぶして捨てるが、殆どの仔実装は飼いになれたと思い込んでご満悦で過ごし、その週末には生き餌にされるわけである。 はからずして上げ落としになっているみたいで、着水と同時によく喚く 自慢じゃないが、毎週末けっこう爆釣だ。 釣れすぎたときは勿論、ムダに持って帰らずにリリースするし、使いきれなかった仔実装はハゲ裸にして湖の真ん中に向けてぼちゃっと放り投げる しかし、最近ではついに、超絶に賢い大物は俺の『仔実装ベイト』を見切りだしたようだ。 なにせ針がついてる時には食べず、こうして最後に投げる時にだけガッツリと狙い定めるように襲いかかる魚がいることがわかりだしたのだ。 やっぱり、釣りは面白い(Cv:菅原正志)。 ——終
1 Re: Name:匿名石 2020/09/02-02:11:17 No:00006266[申告] |
やっぱり、スクは面白い |
2 Re: Name:匿名石 2020/09/02-18:15:07 No:00006268[申告] |
ちゃんとゴミ処理の方法に言及してるあたりマナー良い!(たぶん)
実装ゴミは正しく処理しましょう |
3 Re: Name:匿名石 2020/09/02-18:45:47 No:00006269[申告] |
Sensei. it's very funny story. |
4 Re: Name:ルアーマン 2020/09/03-01:44:45 No:00006271[申告] |
レスありがと茄子 |
5 Re: Name:匿名石 2020/09/04-03:01:28 No:00006272[申告] |
糞蛆が気に入った!! |
6 Re: Name:匿名石 2020/09/07-03:09:28 No:00006275[申告] |
ニジマスさん賢すぎる
脊椎動物とはいえ魚類に劣る実装石… |
7 Re: Name:匿名石 2023/05/11-15:10:55 No:00007146[申告] |
趣味を全力で楽しむお兄さんにほっこり |