タイトル:【観察】 農奴石解放運動
ファイル:農奴解放運動.txt
作者:賞金首 総投稿数:41 総ダウンロード数:1327 レス数:4
初投稿日時:2020/03/13-02:10:21修正日時:2020/03/13-02:10:21
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農奴石、それは実装石を飼う形態のひとつであり
わずかな食料や人間の庇護と引換に労働力を差し出す
この村の伝統的な風景である

今日も禿裸の実装石が夕暮れの畑に列を成して小石や雑草を満載した籠を背負い
番犬…ならぬ番実蒼に追い立てられながら畑の端にある小屋に並ぶ

春に増えて、夏に働き、秋に恵みを受け、わずかな数が冬を越す
そういった季節の風物詩

しかし!!
その伝統に、季節の風物詩に愛護派が待ったをかけた!

コンするパンすら没収され、何が伝統か!何が季節の風物詩か!
実装石にパンを!仕事を!

農奴石の禿裸たちに衝撃走る!!
そもそも産まれると同時に禿裸になる農奴石にはパンコンという概念すらない

パンを!仕事を!
の声は瞬く間に農奴石に席捲するも
あっさりトラクターに踏み潰されて「ヂィッ!」の悲鳴を上げてたちまちミンチになる無数の農奴石
これをヂィッの日曜日事件という

それはさておき

日に日に高まる圧力にとうとうこの村も負け
農奴石は解放となった

公民館を借り切って行われた愛護派主催の解放記念パーティーは
それはもう盛大なものであった

全て禿裸である農奴石には用意された実装服が足りなかった
しかし、それほどの騒ぎにはならなかった
そう、彼らにはずっと禿裸が普通だったから

それでも自由の身となった元農奴の禿裸実装達は
意気揚々と野に山に公園に繰り出した
「自由デス!」「幸せになれるテチ!」
誰もがそう思った、みんなそう思ってた





何が起きたかはご想像にお任せしよう




半年後の村役場

「あなた方が放せと言うから外に出したんです、今更そんなことを言われても困ります」
困り顔の老人が頭を掻きながら言った
彼は地元の伝統にのっとって農奴石農法を行っていた人物だ

彼に実装石愛護団体のメンバーが詰め寄る
「お宅で飼ってた実装ちゃんでしょう、お宅でお世話をなさい!」
「デェエ!デスデスッ!」
あわせて愛護団体のメンバーが連れている悪趣味なピンク色の服を着た実装石も何かわめく

「こちらのデェリザベスちゃんはおたくで産まれました
最後まで面倒を見るのが飼い主の責任でしょう!!」
「デスデスッ!」
実装石も醜い顔を歪ませる

鼻息の荒い愛護派をなだめつつ老人も応える
「そんなことわからないじゃないですか?いわゆる”なりすまし”ってこともあります
どこの野良かもしれない野良実装なんか食品を扱う農場に入れられるわけないじゃないですか」

愛護派はなおも食い下がる
「それでも…」

老人は遮って言った
「それでは、この野良実装に畑仕事をさせて食中毒でも起きたら
お宅が責任を負ってくれるんですか?
いい加減にして頂かないと保健所を呼びますよ」

「え、いや、それは…」
こそこそと愛誤派は部屋を出て行こうとする

「待った」
老人は愛誤派を静止するとピンク色の塊の襟首を掴む
「デデッ!?」
驚いてイゴイゴ蠢く実装石をずいと愛誤派の眼前に突きつける
「忘れ物だよ」


いま、この村は無数に増えた元農奴石で溢れかえっていた
しかし農場の門戸は硬く閉ざされ、また農奴石よけの番実蒼が刃を光らせていた
彼らは向かう、双葉市へと、愛誤派たちのもとへ…

回っていた伝統を、サイクルを破壊してしまった罪は大きい
彼らの悪夢は今、始まったばかりである…







感想ありがとうございます
どうにか昔の未完成作品をひとつの形にまとめました
(この作品のファイル、2014/9/28最終更新でした)
楽しんで頂ければ何よりです

オチのない作品や放置されている無数の作品があるのですが
ここにアップして誰か続きを書いてくれたりなんてのは難しいですよね

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1 Re: Name:匿名石 2020/03/14-21:11:46 No:00006232[申告]
やはり人間さんに利用されるうちが最も幸せな生き方だったということか
コンするパンのところは本当にセンスがキレッキレでいいね
2 Re: Name:匿名石 2021/07/26-00:57:38 No:00006390[申告]
前半のラップみたいなキレッキレの文体がリズミカルでワロチ
3 Re: Name:匿名石 2021/07/28-02:55:28 No:00006393[申告]
愛誤派は報いを受けよ
4 Re: Name:匿名石 2021/12/06-14:52:25 No:00006440[申告]
やれ権利ダー!やれ自由ダー!!と喚く人達は一番信用できない
自分達の権利と自由が保障されているからこそデモして喚いていても平気で暮らしていられるのに
安全な場所からなら何でも言える、何でも主張できる…その結果誰かが不利益を被ろうがそれは知ったことではない、『自分達が要求する事』そのものが目的であり正義あって、運動の結果で改善されれば自分達の手柄と誇り、改悪となればそれはやり方が悪いと責任転嫁…どんな結果でも自分は傷まない
この物語の愛誤派達も、逆の立場だったなら『実装石の管理をしないのは虐待ザマス!怠慢ザマス!実装石に働く権利を与えるザマス!』と喚き立てるのだろう
自分の利害が絡むなら黒を白と言って恥じることない頭花畑の愛誤派は、幸せ回路全開の糞蟲実装と大差ない、むしろそれより始末が悪い怪生物…
こんな『権利イナゴ』が現実に居なくて良かった…いや、居やがりましたわ!
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