続々々々々々々々々・実装小話 その12 捨てられる ある日の夕方、帰宅する途中、何処からか泣き声が聞こえてきた。 「テーン!テェ〜ン!テェ〜ン!」 『一体何が泣いているのだろう』そう思って鳴き声のする方向に行って見た。 すると、見た目は綺麗な服を着た仔実装が、緑と赤の涙を流しながら立っていた。 仔実装は俺が居る事に気が付くと泣きながら俺の所にやって来た。 『何だ、仔実装か』そう思って俺はその場を立ち去ろうとした。 「ニンゲンさん待ってテチ!ワタチを連れて行ってテチ!置いて行かないでテチ!」 そう言って涙ながらに訴えて来た。 「俺は愛護派では無い、実装などに興味も無い無関心派だ。着いてくるなよ」 「そんな事言わないでテチ!寂しいテチ!辛いテチ!」 そう言って懇願してくる仔実装が、あまりにも哀れになったので......。 「俺が虐待派で無くて良かったな、殺されずに済んで。愛護派でも捨て仔実装なんかには、可哀想と言うだけで何もしてくれ無い。 俺は実装に関して関心は無い。しかし話だけは聞くだけ聞いてやる。何があったか言ってみろ!」 と面戸臭いと思いながらも話を聞いてやることにした。 そう言うと実装は、しゃっくりをあげながら話をし出した。 「ワタチは、先月末産まれて来たテチ!ゴシュジンサマやママ、姉妹に囲まれて楽しい毎日だったテチ! ところが、今朝、散歩に連れて行ってやるとゴシュジンサマに言われて、喜んでお散歩に出かけたテチが、ゴシュジンサマが急に居なくなってしまったテチ! 探しても、探しても姿が見えないテチ!その内お陽様が沈みだして暗くなってきたテチ!急に寂しくなったので泣いていたテチ!ゴシュジンサマは何処に行ったテチ!」 そう聞いて来たので......。 「お前それは捨てられたんだよ。俺の知り合いに実装を飼っている奴がいるけど、親は躾をしないしガキは飼い主の言う事聞かないし、糞は決められた場所にしないし、 汚いし、餌代に金は掛かるし、何にしても五月蠅いのが、一番嫌だったらしくてなぁ、2〜3日したら処分場に放り込んだって。 つまりお前は、産まれて来なくて良いのに、産まれて来たもんだから、鬱陶しいし邪魔になったんだろうな。 だが、飼い主は愛護派だから殺すに殺せなくて、捨てたと言う訳だ。しかし、実装センターへ連れて行かずに無責任な奴だ!」 「テッ......。捨てられた......捨てられたテチか?こんな可愛いワタチが?」 「そう言う事だ。それに可愛いと思っているのは、お前自身だけだぜ。そんな豚みたいな腹をした豚足の仔実装なんて、誰も可愛いなんて思わないぜ。 それからお前は捨てられるべきして、捨てられた訳だからな、親にも飼い主にも2度と会う事は出来ないだろうな。 俺にはどうする事も出来ん、諦めるんだな。話は聞いてやった。後はお前がどうにかしろ!」そう言ってその場を離れた。 しかし、仔実装は俺の後ろを「テッチ!テッチ!」とトコトコと着いて来た。 『仕方ない。家に着いて来られても困るが、少し遊んでみるか、別にする事も無いし暇つぶしに』 そう思って仔実装の歩く速度より少し早く、歩いていたが......。 仔実装は、必死になって着いて来る。 思った以上に食い下がるなぁ〜此奴。 暫く仔実装に付き合っていたら陽がとっぷり暮れてしまった。 「あっ!しまった今日は、プロ野球を見る予定だった。未だ放送開始には時間があるから早く帰ろう」 仔実装の相手をしていたお陰ですっかり忘れていた。そう思うと、此奴の相手をする気も無くなった。 近くのコンビニによってビールとおつまみを持ってレジ前に並んでいたら、仔実装が店の前で待って居るのが見えた。 代金を払い終わって店を出た。 すると仔実装は......。 「ニンゲンさん待って居たテチ、この食べ物はワタチを持て成す為に買ってくれたテチ?」 無関心派の俺が、一瞬眉間にしわを寄せる様な事を言いやがった。 「何故、お前を持て成す必要がある?」 「どうしてテチ?持て成してくれないテチ?」 「当たり前だ、さっき知り合ったお前を何故持て成す必要がある!」 「二......ニンゲンさん、そんな事言わないでテチ!悲しいテチ!寂しいテチ!」 「俺は、話は聞いてやると言ったが、着いて来いとは言った覚えはない、お前が寂しかろうが悲しかろうが俺の知った事ではない。さっさと何処かに行け!」 「ワタチは、一人では生きて行けないテチ!ニンゲンさん飼って欲しいテチ!」 「ほんの1時間前に出会った俺がお前を飼うと思うのか?自分自身で生きて行けないなら死ね!」 「そ......そんな事言わないで飼ってテチ!」 「飼い主がお前を捨てた気持ちが解ったよ。人の都合も一切考えない自己中心的なお前に嫌気が刺したのだろう。 人の力を借りなければ、生きられないと言うのなら、俺が引導を渡してやる!死ね!」 「テ......」 俺は、仔実装を車道に蹴り飛ばして殺した。 「汚ねぇ〜なぁ〜靴が汚れた。しかしこれで俺も虐待派の仲間入りかぁ〜」 実装小話 その13 返される 愛護派が多く住む町蓋刃町、各家には、必ず飼い実装、飼い仔実装がいる。 愛護派と言っても言う事を聞かない糞蟲には、容赦なく実装愛護センターへ処分の依頼に行く。 この蓋刃町の愛護センター(*=実装殺処分センター)に勤めている職員も実は全員愛護派である。 他の市町村の様に適当な里親探しをしたりしない。仔実装の特徴、性格等をHPにアップして丁寧に説明している。 里親が見つかれば、その人と何度か面談して譲渡すると言う徹底ぶりだ。 当然犬猫に関しても同じように対応している。 この施設に実装の処分依頼を頼む場合、成体、仔に関わらず1匹3000円の手数料を徴収する。 仔実装の餌代やその他費用に使う為だ。(*=犬、猫は何故か無料) 周囲の家は大金持ちばかりだから3000円位は、はした金である。 糞蟲に家を引っかき廻される位なら3000円を払って処分して貰う、その方が遥かに楽と言う事だ。 ある日、施設の敷地内に段ボールに入れられた、仔実装が捨てられていた。 「誰が捨てたんだ!愛護派の人じゃねぇ〜な!」 そう言って施設の職員の俺は、舌打ちをしながら仔実装の入った段ボール箱を施設の中に連れて行った。 俺は、リンガルを起動させ仔実装と話を始めた。 「お前の家族構成を教えてくれ、里親を探すから」 「どうしてテチ!ママに会いたいテチ!」 「残念ながらお前は捨てられたんだよ。何処の誰が捨てたのか解らないから探しようがない。ママには、2度と会える事はないだろう。諦めろ!」 そう言うと、仔実装は涙を流しながら「ママの所が良いテチ!ママに会いたいテチ!」 「無理な事を言うな、誰が捨てたのかも解らんのに、こっちにも限界がある。自分の置かれた立場を考えないと何れは殺処分されるぞ」そう言って諭した。 仔実装は、自分の家族構成、飼い主の家族構成を説明して、新しい里親が見つかれば、その人の所に行く事を承諾した。 自分は実装家族の中では長女だったらしい。飼い主は、夫婦と女の子が2人居る家庭と言う事だった。 俺は仔実装には、美土里と言う名前を付けた。 里親を探すと言ってもまずこの美土里の性格を知らないといけない。2〜3日様子を見てみるか。 他の仔実装と同じ部屋に収監して様子を見ていたら、仲良くやっているな。どちらかと言えばリーダーシップを取っている様な感じがする。 3日目にもなると完全に仔実装達を纏めている。 以前は飯時になると、押し合いへし合いの団子状態だったが、美土里が来てから、列を作って順番を守っている。 フェイスブックとHPに此奴の写真をアップして『団体行動が出来、何でも率先して行動を起こします。頭の良い子です。名前は美土里と言います』と掲載した。 暫くすると飼いたいと言う愛護派の女性から連絡があった。 この人は、数匹の仔実装を飼っていて、リーダーシップが取れるなら美土里を是非とも飼いたいと言って来た。 何度か面談し、美土里とも話をさせた結果、その人が里親になると言う事で引き取られて行った。 これで美土里も幸せになるだろう。 そう思った矢先、僅1週間で美土里は返されて来た。 理由としては、相手先の先住石と馬が合わなかったらしい、思った通り美土里がリーダーシップを取って仔実装を纏めようとした見たいだが、相手は血の繋がった姉妹だ。 よそ者の美土里の言う事等耳を貸す訳が無い。美土里が来てから、毎日喧嘩が絶えないと言う事だった。 「う〜ん、美土里は親分肌だからなぁ〜、先住石の長女と性格が被ったのかぁ〜、今度は気を付けよう」 もう1度、美土里の情報をフェイスブック、HP、更に普段の様子を見て貰う為に動画も載せてアップした。 すると、掲載してから3日後、60代の愛護派夫婦が、飼いたいと申し出て来た。 『自分達の子供達はとっくに独立して、孫も就職や結婚して心配事が無くなった。これからは、自分達が楽しもう』と思い以前実装の親子を飼った事が有るのでもう1度飼ってみたいと言う事だった。 当然美土里の性格も説明して、相手も本人もお互いの事を気に入ったみたいなので相思相愛、里子として引き取られて行った。 今度こそ、美土里は幸せになるだろう。 と思ったが、1週間後又、返却されて来た。 今度は、同族は居ない、ニンゲン相手の里子なので揉める事は、絶対無いだろうそう思っていたのだが。老夫婦は、仔実装がもっと甘えて来て、構って欲しいと言って来ると思っていた。 しかし......。 「同族が、おらず私達老人の相手はつまらないのでしょう。毎日、しょんぼりしていて元気が無い。私達の所に来て元気がなくなるこの子を見ていたら、居ても経ってもいられなくなったので」 と言うのが返却理由だった。 「う〜ん!又、1から出直しかぁ〜!しかし他の仔実装は里子に出しても上手く行っているのになぁ〜何故だろう」 そんな事を言っても他の仔実装の里子の世話もしないといけない。他の職員も色々と情報を持って来るが、流石に2回も返却されて来た事例は無い。 美土里にベストマッチと言った里親も出て来るのだが、又返却されたら思うと二の足を踏んでしまい、他の子を里子に出そうとなってしまう。 更に運の悪い事に、美土里が里子に出されている間に強力な振興勢力が出来てしまった。 里子から帰って来た美土里は、いわば新参者扱いで今度は、仔実装のリーダーになろうにも代替わりをして居る上、他の仔実装達は新しいリーダーの命令に従う。 更に美土里が此処の施設にいたことを事を知っている奴もいない。誰も美土里の言う事を聞かないのである。 それどころか「お前生意気テチ!」と言われて、俺の目の前で他の仔実装に殴られた事もあった。 流石に、一緒の部屋に置いておくことは出来ないので別の部屋に収容する事になった。 美土里は鬱になってしまい毎日部屋の中でぼんやりしている。これでは里子に出すのは難しい。 しかし、毎日の様に仔実装は持ちこまれる。野良実装はその日の内に処分する事が出来るのだが、飼い実装となると、それでも施設の中は飽和状態になる。 そして遂に、所長から「市議会で現在収容している実装は、成体は1日、仔実装は3日以内に殺処分する事に決まりました。 当然、食費も税金で賄われているのだから、経費を節減する様にと言われました。本日より1日目として明後日には、古参の実装は全て殺処分となります。 取り敢えず、現在収容している実装に関してだけの事を言っています。新たに収容される実装に着いては、次回の市議会で決定しますので、皆さん宜しくお願いします!」 これで3日以内に美土里の里親を見つける事にしないとならない。だが、他の仔実装の里親さがしもしないとならない。 ところが、美土里が処分される前日に、犬の譲渡会に来たと言う家族が施設を訪れた。 すると美土里は、入れられているガラスケースの窓を《ベシ!ベシ!》叩いて何かを叫んでいた。 リンガルを起動させてみると「ゴシュジン様!ワダチテチ!連れて帰ってテチ!」と言っている。 俺はてっきり飼い主が、美土里を引き上げる為に来たのかと思い「仔実装を連れて帰るのですね?」と聞くと 「とんでもない、私達は、仔犬の譲渡会に来たのです。譲渡会には、時間があるので、暇つぶしに実装を見に来ただけです」 そう言ったので「この仔実装は、あんたらを見てゴシュジンサマと言っている。あんたらが捨てたんじゃないのか!」 すると、この家族の主人が、冷や汗を流し出して真っ青な顔になった。 俺は、こいつらが、美土里を捨てたと確信した。 「犬を譲渡されるまでにする事があるだろう。この子は、明日殺処分される。可哀想だと思うだろ!連れて帰ってやってくれ!」 そう言って頼んだが「何をバカな事をそんな仔実装は知らん!」と言いやがった。 「嘘をつくな!あんたに美土里の事を言った時、顔色が、変わった。それに美土里は、さっき迄、鬱の様にぼんやりとしていた。 あんたらの顔を見た途端、目が輝き嬉しそうな表情になった。此奴はあんたらが此処に捨てたんだ!連れて帰れ!」 「知らん!本当に知らん!」そう言って惚けていたが、誰が見ても嘘をついていると言うのが、見て分かる取り乱しようだ。 「仔実装一匹もまともに育てられないのに、何が、犬の譲渡会だふざけるな!帰れ! 譲渡会の職員には、あんたらに譲渡するなと連絡するからな!さっさと消え失せろ!」 そう言って、その家族を追い出した。 美土里も俺と元飼い主のやり取りを見て、自分は完全に捨てられたと思ったのか涙を《ポロポロ》流していた。 「すまんな美土里、こんな事になってしまって」そう言って謝った。 だか内心『仮に彼奴が美土里を連れて帰ったとしても、今度は人目に付かない所に捨てられ、野垂死にするだろう。 それなら此処で死んだ方が美土里の為にも良いだろう』 俺は自分にそう言い聞かせた。 しかし美土里は、涙を流しがら呆然としていて、心此処に在らずの状態だ。 そして、殺処分当日の3日目になった。 当然、別部屋に居る美土里も殺処分の対象になっている。 俺と先輩上司の2人で美土里を迎えに行った。 昨日の事が申し訳無く思い、美土里の態度次第では、もしかして俺が規則を破って見逃してしまうと思ったからだ。 美土里は、俺達の顔を見て、自分が殺されると感じたのだろう。 部屋の隅にへばりついて「お願いテチ!殺さないでテチ!ワタチが何をしたテチ!良い子にしていたテチ!ゴシュジンさまを追い返したのは、お前テチ!」と反抗的な態度を取った。 俺は、涙をこらえて、「これは規則だ!規則を守れない者、それは糞蟲だ!糞蟲は殺処分される!」 そう言って、嫌がる美土里を処分器の中に放りこんだ。 FIN *今回も一部ピクシブ漫画とYucyubuで現実に遭った捨て犬の話を一部だけ参考に考えています。画像は貼りつけしませんが。
1 Re: Name:匿名石 2019/05/08-17:19:11 No:00005951[申告] |
よかった、またスクが投稿されて
やめてしまわれたのかと心配しておりました |
2 Re: Name:匿名石 2019/05/08-22:15:31 No:00005952[申告] |
投稿待ってました!
ウザイ糞蟲描写が冴えてて安心しました 後半のしんみり話もよかったです これからも力作お願いします |
3 Re: Name:匿名石 2019/05/09-01:19:56 No:00005953[申告] |
ウザ糞蟲もアレだが無責任家族も相当な糞ですね
よろしければ参考にした絵の具体的ヒントがほしいです あとは自分で探しますので これからも投稿お待ちしております |
4 Re: Name:匿名石 2019/05/09-10:44:35 No:00005956[申告] |
捨てられるは、コンビニの前で佇む仔実装の絵を参考にしました。
返されるは、実際にメキシコであった捨て犬の話をYucyubuで見て参考にしました。 里親から、二度に渡って施設に返却された可哀想な犬の話です。 返されるを題材にした話は、多分わかると思いますよ。 |
5 Re: Name:匿名石 2019/05/09-23:46:23 No:00005958[申告] |
もし釣りキチな人に出会ってれば、無為に処分されることもなく
コマセ生産用として役に立てたろうに。かわいそうである |
6 Re: Name:匿名石 2019/05/11-03:25:06 No:00005960[申告] |
自業自得だろうとただ運が悪かっただけだろうと
最終的に不幸な氏に様をさらす実装はとてもイイな 作者さんがまたスク上げてくれて嬉しいよ これからも幸せいっぱい夢いっぱいな可愛い実装ちゃんイラストを元に 実装石を悲惨な運命に落としてやってください |
7 Re: Name:匿名石 2023/08/12-15:28:46 No:00007775[申告] |
職員さん熱かった
最期に勘違いしたこと言われてもキレないの人間できてる |