タイトル:【虐】 山実装を狩りに行こう!の巻
ファイル:山実装ハンティング.txt
作者:フンババ 総投稿数:4 総ダウンロード数:1961 レス数:9
初投稿日時:2019/04/05-14:21:05修正日時:2019/04/05-14:21:05
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山の中を実蒼石が歩いている。

その実蒼石の名前はアオイ。
当然野良実蒼ではない。
その証拠にアオイが纏っている服は、実蒼石のトレードマークというべき青い実蒼服ではなかった。
森林迷彩が施されたポンチョ状の外套を纏いフードをかぶり、その背中にハサミを背負っている。
飼いであることを証明するその首輪には黒い長方形状の小さなGPSマーカーが取り付けられている。

フンッフンフン

地面の匂いを嗅ぎながら、たった一匹の行軍を続ける。

「いるボクゥ...実装石の匂いボクゥ...」

アオイが追っている実装石は山実装。
読者諸氏も知っての通り、山実装とは公園に住み着き無様な痴態を惜しげもなく晒す例の生ゴミたちのことではない。
山実装は人間との関わりを捨て、 山で生き、そして山で死ぬ野生実装のことだ。
山実装のその優れた肉質と食味には多くの美食家や実装食愛好家が舌鼓を打つ。
そのため田舎の観光資源としても重要なポジションにいる野生動物なのだ。

彼女たちは人里離れた常緑広葉樹林や竹林に住処をおき、8〜10匹から多くとも15匹での成体で群れを組む。
雑食性で主に植物質のものを主食にする。
どんぐり、きのこ、木苺や植物の新芽に柔らかい根、わらびなどの山菜を主な主食とし好んで食べる。
勿論小さなカエル、昆虫類、サワガニやミミズのようなものも肉食するが、こういった貴重な動物性蛋白質は群れでの共有物といった側面が大きいという研究もある。

公園の野良と違い聴覚は人間と同程度で警戒心が強い。
視力は人間に劣るが(0.3〜0.5程度)、ニホンジカのように色盲ではなく特に青色には敏感に反応する。
そのために人間の生活臭が染み付いた実蒼服ではなく、アオイは森林迷彩の外套を羽織っている。
消臭対策としてアオイの迷彩外套は、何日も雨ざらしにされ土をかぶせた後に再度水洗いを行うという工程をなんどか繰り返している。

山実装は野生動物としては極めて高い知能のため、箱罠には殆ど掛かることはない。
また、くくり罠もその驚異的な再生能力のため、躊躇いなく足を切断して逃げてしまう。
そのため山実装狩りは実蒼石を用いた巻狩りもしくは単独忍び猟が行われることが多い。

山実装は水場である沢や小川から50〜100m程度の距離にある斜面に石などを用い横穴を掘ってねぐらを構えることが多い。
横穴式の住居を構えるのは、地温により通年に渡って安定した温度を得られるため越冬を容易にすることができるからである。
水場の近くを好むのは勿論飲み水の確保のためであるが、頻繁に行水をおこない体臭を薄め、捕食者からの発見を困難にするためという理由も大きい。

上記したように公園の賢い野良と比較しても非常に警戒心が高い山実装である。
が、しかしそれも天敵であり、極めて優秀な実装ハンターである実蒼石の前には無力であることが多い。

実蒼石の嗅覚は野生生物と比較しても特段突出した能力は持っていない。
しかし実装石の体臭を嗅ぎ分ける能力に関してのみ、訓練を受けた非常に優秀な猟犬を上回る能力を発揮する。
実蒼石はその匂いだけで実装石の主食にしている食べ物、年齢、糞虫度、などを正確に嗅ぎ分ける能力を持っている。
実蒼石は1kmの距離があっても実装石の存在を認識できる能力があるのだ。


アオイはガサガサと足元の落ち葉を掻き分けた。
あったのはサワガニの残骸とどんぐり。その食い残しには実蒼石にだけわかる実装石の唾液の匂いが残っている。

「近いボクゥ...」


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3匹の山実装の一家が餌集めに精を出している。
冬ごもりも遠くない秋口である。保存食集めに失敗すること、それはすなわち一家の死滅に繋がる。
親も仔も怠けることなく餌集めに勤しんでいる。(餌集めを怠けるような個体は基本的に間引かれる)

「テチュウゥゥッッッ!!ママッ!!ママッ!ニョロニョロがいたテチュゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッ!!」
「こいつめ!やっつけてやるテチュゥッ!」

ミミズを発見した仔実装が手にした小枝でペシペシとミミズを叩いている。
仔実装の力とはいえミミズは枝で叩かれ悶絶しているのかグネグネと地面を這い回っている

「くたばれテチュッ!!止めテチュゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッ!!」

仔実装は小枝をミミズの頭部に刺し息の根を止める。

「テェ...テェ...これがじゃくにくきょーしょくというやつテチュッ!」

様子を見に来た親実装が娘を褒めてやる

「次女ぉ!よくやったデスゥ!お前は偉いデスゥ!さすがワタシの娘デスゥ!!」

次女はテッチュンテッチュンと小枝を振り回し喜びの踊りを踊っている。

「お手柄デース!」
「これは群れのみんなで分け合うお肉になるデスが、長老に掛け合ってお前に最初の一口を貰えるよう頼んでみるデース!」

「嬉しいテチューンッ!」

スカートの裾でどんぐりを数個抱えた長女も遅れてやってくる

「次女ちゃんすごいテチュゥッ!!みんなからほめてもらえるテチュゥッ!!」

勿論ミミズ一匹では群れの食を賄う量にはとても足りない。
しかし次女の逞しさを通して我が娘の成長を実感した親実装は娘に惜しみない賛辞を送る。
そして次女の頭を撫でながら親実装は思う。


今年はなんだか去年よりあったかいデスゥ。
そのせいかごはんが多い気がするデス。
前のお冬はとっても寒かったうえに拾えるごはんがとっても少なかったデス。

前のお冬では2匹いた娘の片割れの長女がごはんが足りなくて飢えて死んじゃったデス。
けど...今度の冬は...絶対に長女と次女の両方とも立派な大人に育て上げてみせるデスゥ。
きっと山の神様もワタシの賢い娘たちに感心してごはんを分けてくれているデスゥ。
今年はなんだかいけそうな気がするデスゥ!


ちなみにこの親実装、今年は冬ごもり前に合計8匹の娘を出産した。
8匹のうち4匹が糞蟲、1匹が普通の個体、1匹が蛆実装、そして今連れている2匹が残りの賢い個体だ
糞蟲個体の2匹と普通の個体1匹は親実装の言いつけを守らず勝手に巣を出て遠出し案の定不慮の事故で死亡。
残った2匹は脳無しの糞蟲セリフを親実装に吐いたため間引かれ、結果的に親実装の手元には賢い長女と次女、そして非常食である蛆実装が残ることとなった。

冬越えをする山実装の子育てで仔を一人前に育て上げられる割合は、親一匹に対し仔一匹が平均的な数である。
経験を積んだ個体や運に恵まれた個体が親一匹に対して2〜3匹の割合で仔実装を越冬させられる。
去年に比べ豊穣な山の恵みに感謝し自信と決心を深める親実装であった。

「おまえたち、こっちに来てこれを見てみるデスゥ」

親実装は傘が12cmほどの褐色のキノコを指さした

「なんテチュ?ママ?」
「これ、きのこテチューッ!」

「そうデス。これは食べられるキノコデス。見た目と匂いをよく覚えておくデスゥ」
「キノコはワタシたちでも手に入れやすいごはんデスが、毒があるキノコもあるデス」
「毒があるキノコを食べると、とっても苦しい思いをした後に死んでしまうデス」
「おまえたちが大きくなったとき、自分でごはんを集められるように覚えておくデス」

ちなみに親実装が見つけたキノコは香茸。
山中の広葉樹林に群生する山の珍味で、人間も食用として珍重するキノコだ。
山実装は公園の野良と違い、危険を犯してまで仔を餌の収集に連れ出す。
その理由がこういった山での生きる知恵になるべく早いうちから習熟させるためであり、山実装独自の文化なのである。

「ママはものしりテチュッ!」
「ママはどうしてそんなことを知ってるテチュ?」

「ママもおまえたちぐらい小さかったとき、ママのママや群れのおばちゃんたちに教わったデス」
「おまえたちも頑張ってお勉強をして早く群れの役に立てるようになるデスゥ」

「わかったテチュ!ワタチがんばるテチュッ!!」
「ママのママは今なにしてるテチュ?」

「...ママのママは...とっても賢くて...優しかったから、山の神さまのお家に招待されたデスゥ...」
「山の神様のお家はいつも暖かくておいしいごはんが沢山あるデスゥ」
「お前たちも群れのみんなのために頑張っていればいつか山の神様がお前たちを呼びに来てくれるデスゥ」

「テチュゥ!ごはんいっぱいテチュ?すごいテチュゥ!」
「ワタチたちもがんばるテチューッ!」

母について語る親実装の顔に影が刺したのに仔たちは気づかない。
幼い仔たちには親実装の心中を察するほどの機微はまだ身に付いてはいなかった。

親実装の母はイノシシに襲われて死んだ。
母を背にして逃げる親実装がどうしてもこらえられず後ろを振り返ったとき。
そこにはイノシシに腹部を噛みつかれ、腸(はらわた)を飛び出させペシペシとイノシシの鼻を叩く無力な母がいた
母の最期の表情を親実装は忘れることができない。
恐怖、怒り、悲しみ、諦観、哀願、後悔。色んな感情が混ぜこぜになった野生動物の最期の表情を通して、親実装は野生の残酷さを知った。
明日ともしれぬ山実装の命。せめてこの仔たちは生き延びてほしい。
儚い山実装、そして母としての儚い願いであった。

「そろそろ巣に帰るデース」
「ごはんを一度巣に持っていくデス」

「「わかったテチュゥ!」」

親子で山の幸を巣に持ち帰る途中、一家は2匹の実装石に会った。
親実装は2匹の実装石の片割れに話しかける。
その実装石は頭巾に4cmほどの裂け目が入った実装であった。

「娘ぇ!どうデス?戦果は?」
「ママッ!見てデス!大きなカエルを捕まえたデスッ!!」

誇らしげに2匹で抱えた15cmほどのヒキガエルを親実装に見せる頭巾裂け実装。
そう、その実装石は去年親実装のもとで越冬を成功させ、無事成体となった彼女の愛娘であった。

「すごいデス...。これは大物デス。立派な娘を持ってママも誇らしいデス」

「デェ...それほどでもないデスゥ...♪」

頭巾裂け実装は照れを隠さない。

「「大きなおねちゃ!それとおばちゃんもこんにちはテチュ!!」」

長女と次女が挨拶をする。

「デス。久しぶりデスゥ妹たち」
「こんにちはデスゥ」

成体実装2匹が挨拶を返す。

「おまえたち。ちゃんとママの言うことを聞いてるデス?ママを困らせては駄目デスよ?」

頭巾裂け実装が妹たちに語りかける。

「聞いてるテチュー♪」
「ワタチも、ママのお勉強がんばってるテチュ!」

「そうデスか。それは何よりデス。これからとっても寒い冬が来るデス」
「ママと協力して巣に保存食を沢山集めておくデスよ。それと、ごはんをいっぱい食べてなるべく太っておくデス。」
「それが寒い冬を乗り切る秘訣デスよ」

「「テチュッ!!」」

「それにしても大きいおねちゃすごいテチュ!おっきいカエルテチュ!ワタチたちより大きいテチュ」

「こいつは手強かったデスー。2匹で協力して大きな石を頭にぶつけてやったデスゥ」

「テェェ...大きいおねちゃすごいテチュ...」

妹たちから羨望の眼差しを受ける頭巾裂け実装は満更でもなさそうだ。

「大きいおねちゃ!見てテチュ!次女ちゃんもニョロニョロをつかまえたテチュゥ!!」

長女が次女の手柄を頭巾裂け実装に伝えてやる

「デスー。次女とっても偉いデスー。頑張ってママを支えてやるデスよ。」

そう言って次女の頭を撫でてやる。

「デスゥ。将来有望な仔デスねママさん」

頭巾裂け実装と一緒にいた実装石も次女と母を褒めてやる。
親実装は照れながらも2匹に提案する。

「ワタシたちは巣に帰る途中デス。どうデス?一緒に集落に帰らないデス?」

「いいデスよママ。ワタシたちもちょうど帰る途中だったデス。一緒におうちに帰るデス」

「「テチューーーン♪」」

集落に帰路を向ける山実装一行。











遠くからその一行を見つめる双眸があった。

その右眼の色は緑。左眼の色は赤。
そう、アオイであった。

「見つけたボクゥ...」

茂みの中伏せた姿勢で森に溶け込み、25mほどの距離から一行を観察していたアオイ。
獲物は完全に捉えた。
後は静かに奴らの匂いを追跡し集落を見つけるだけ。

アオイは万が一にも山実装一行に自身の存在を気取られることのないよう、匍匐前進で音もなくゆっくりと、しかし確実に彼女たちの背後を追跡していった。


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集落についた親実装一家は自分たちの巣穴の奥に保存できる餌をせっせと溜め込んでいく。
採集と貯蔵。山実装は冬籠りまでにこのルーチンを1日に何度も何度も繰り返すのだ。
一日たりとも餌集めを怠ることはできない。巣穴の隣に掘られた貯蔵用の食料保存穴も一杯にしておかなければならないのだ。

「お前たち、よく頑張ってるデース」
「このごはんを穴に詰め終わったら川に体を洗いに行くデース」
「それが終わったら一旦群れのみんなでお昼ごはんを食べるデース」

「チュゥゥゥン!ごはん楽しみテチュゥ!!」
「大きいおねちゃがとってきたおにく食べられるテチュゥ?」

次女が食い気を見せる。

「もちろんデース」

「ママァ...ワタチさいきんお川のお水がさむさむになってきた気がするテチュゥ...」

と、長女が親実装に問う。
その通りである。秋口とはいえ山の気温は低地よりずっと低い。

「長女、おまえは正しいデース。これからお冬になってもっと寒くなってくるデス」
「冬の寒さは今の川の水よりもっと冷たいデス」
「けど体を洗わず臭いままにしておくと体の匂いが色んな動物を呼び寄せるデス」
「お腹がペコペコなのはワタシたちだけじゃないデス。冬の前は他の動物たちもお腹を減らしてごはんを探しているデス。ワタシたちのことを食べようと狙っているデース」
「我慢するデース。今いい子にして頑張っておくととっても寒いお冬も巣穴でぬくぬくで過ごせるデース」

「悪いことばかりじゃないデスゥ」
「お冬を超えたら春がやってくるデスゥ。春はとってもポカポカでごはんが沢山あるデスゥ」
「おいしいごはんを沢山食べて春が終わる頃にはお前たちも立派なオトナになっているデスゥ」

「ほんとテチュゥー!?ワタチたちも大きいおねちゃみたいにかっこいい大人になるテチュ?」

「きっとなれるデスゥ」

「すごいテチューッ!」
「たのしみテチュゥー!」

長女と次女の姉妹は自分たちの未来を思い描き、お互いに腕を組みグルグルと廻り喜びのダンスを踊る。

きっとなれるデスゥ...
娘に言った言葉を自分に言い聞かせるように胸の中で反芻する親実装であった。


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行水のために川にやってきた親実装一行。

服を脱いだ長女と次女は親実装に体を清めてもらった後、裸で自分の実装服を川の水に浸して揉み洗いをしている。
親実装は水に濡らした仔実装服を手拭い代わりに自分の体を丁寧に拭いている。
この仔実装服、間引かれた3女と4女のものである。山実装は間引いた仔の服や髪を手拭いや保温材として大切に巣穴に取っておく。
長女と次女も、過去に母に手を引かれて巣の外に連れ出された3女と4女がどうなったのか、朧気ながらに理解している。
間引かれる直前の3女と4女の姿は今でも鮮明に思い出せる。


3女と4女が間引かれた日の夕飯はバッタとコオロギの死骸、そして数種類のキノコだった。

「テシャャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!ムノウゥゥゥゥッ!!こんなクソマズな豚のエサがくえるかテチャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

「そうテチュウッ!クソババアァッ!!ごはんはアマアマしかみとめないテチュゥッ!!」

「クソママがぁッ!!こんな生ゴミはババアにくれてやるテチュゥ!もっとゆうのうなゲボクを連れてくるテチュゥ!!」

好き勝手なことをほざく糞蟲たち。苦労してエサを集めてきた親に対しあまりといえばあまり。
流石に長女が諌めに入る。

「3女ちゃ、4女ちゃ、ワガママいっちゃ駄目テチュゥ...ママががんばってごはんとってきてくれたテチュゥ...」

「シャアアアアアアッ!!めしつかいの分際でなまいきなくちをきくなテチャアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

ポフッ

「チュアッ!」

3女に渾身のストレートを見舞われ転倒し、後頭部をもろに打つ長女。

「テェェェ...ゥッ...テェック...テェェ...」

泣き出す長女。賢さと山実装の本能故に大声で泣き喚くことはない。

「チープププッ!ドレイクソザコ過ぎテチュゥ!生まれついての高貴さが無いめしつかいはこんなにもブザマテチュかぁ?」
「情けないテチュゥ!みじめテチュッ!ああはなりたくはないテチュゥ!」

3女と4女が長女を嘲笑する。

それを無表情で眺めていた親実装。
小さなため息とともに3女と4女に語りかける。

「...わかったデス...3女、4女、お前たちにはこれから特別に用意したごちそうを食べさせてあげるデス」
「ママの後をついてくるデスゥ...」

「チプッ!ごちそうがあるならさっさといえテチュ!ほんとうにゲボクはウスノロテチュねぇ」

もはやママと呼ぶことすらしない3女

「特別なごはんテチュ!おまえらゲボクは食べれないテチュ!チープププ」

4女が長女と次女を嘲笑する。

「ママ...だめテチュ...3女ちゃと4女ちゃも教えたらちゃんとわかってくれるテチュ...」

これから何が起きるのかを察した次女がママを止める。
しかし親実装はあえて次女の言葉を無視する。

「シャアアアッ!めしつかいだまってろテチュゥッ!高貴なワタチの待遇に嫉妬するなテチャア!! 」

次女に対し歯茎をむき出し、顔に皺を寄せて威嚇する3女。

「さ...行くデス」

親実装が3女と4女についてくるよう促す。

「ママ...」

「「 テピャッーーーーーーーーーーピャピャピャッ!! 」」

次女の制止も構わずに3女と4女を連れていく親実装であった。


川についた親実装は3女と4女に服を脱ぐように促す。

「服を脱ぐデス...そしたらとってもおいしいごちそうが沢山食べられるデス」

「チャアアアッ!ごちそうッ!さっさとワタチの服を脱がせるテチュゥ!」
「ふくをぬぐのは高貴なワタチのやくわりではないテチュゥ!ママが脱がせるテチュ!これはドレイのせきむテチュゥッ!!」

各々勝手なことをほざく糞蟲たち。

「はいはい...わかったデス...」

親実装は2匹の実装服を脱がせてやる。
親実装の前で裸になった2匹。親実装は3女を抱えあげる。

「チプッ。なんテチュ?うつくしいワタチを愛でたくなったテチュ?」
「まあかわいいワタチを前にしたら当然のはんのうテチュ」

「...」

ブンッ

親実装はサイドスローで3女を川に投げ捨てた。

ボチャアッ!

「ッッッ!!?!?!??」
「チャアアアアアアアアアアアッ!!?!??」

親実装に撫でてもらえるかと思っていた3女。気づくと水の中であった。
常時半開きのミツクチと鼻の穴に容赦なく水が侵入する。
命の危機から全身をバタバタともがき浮き上がろうとする。が、しかし悲しいかな実装石の体は水中で泳ぐようにはできていない。

「ッ!ゴボ!!ゴボボッ!!ェボゥアッ!ボハァッ!!テベゥ!」

息をしようと無駄な試みを行うため、水中で肺の中の空気が抜けていく。
その後容赦なく水が3女の気管と胃の中に侵入する。
3女は水の中で生命の危機にさらされ、生き延びる一手を取るために粗末な脳味噌をフル回転させる。
まあ、仔実装の足りない知能では詮無きことではあったが...


どうちて!?
どうちてかわいいワタチがこんな目にあわないといけないの!?
うつくしくてかわいいワタチが世界から愛されるのは宇宙の真理であり宇宙の義務なのに!!
きっとブサイクなババアがワタチの愛くるしさに嫉妬したからこんな仕打ちをしたんだ!!
ちくしょう!!
ちくしょう!!
このお水から脱出したらあのババアを袋叩きにしてやる!
それから!それから!うんちを塗ってババアを再教育してやる!!

まずはこのお水から華麗に脱出しないと!
お水の上に行けば息ができる
そうすればババアをぶち殺してやることができる!
お水の上!!
でも上ってどっち!?わからない!!どっちが上なの!!?

くるちい!!くるちいよぅ!!

ババアッ!はやくワタチを助けろッ!!そうすればボコボコにするだけで勘弁してやる!!
はやくッ!息ができない!!
このままじゃ!!死んじゃう!ワタチが死んじゃう!

死ぬ...!?
ワタチが...死ぬ!!??
ワタチがこの世から...いなくなる...?

いやだ!!
いやだッ!!
いやだあッ!!

ワタチはまだ全然楽しいことも気持ちいいこともしてない!!
死にたくない!!ママ!ワタチをたすけて!!

ママッ!ママッ!ママァッ!!

死にたくないよぅ!たちゅけてぇッ!!!

息が...いやだ...くるちいッ!!
ちぬのやだあぁぁぁぁあああぁぁあああああああああッッッ!!!

マ、ママァァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

ゴボッ!
ゴボボッ....
...................
ボ.................
...................
...................
...................


「チーーーーーーーーーーーープププププププッ!!!」
「ブサイクが溺れ死んでるテチュゥ!ウケるテチュゥゥゥーーーーーーッ!!」
「三女がブサイクだからママに処分されたテチュゥゥーーーーーーーーーーー」
「草生えるテチュゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

4女は相当ツボに入ったのか左手で腹を抱え右手で地面をバンバンと叩いている。

「プギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアwwwwwwwwww」
「プッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアwwwwwwwwww」

4女は無様な3女を嘲笑するのに夢中。
隣で自分のことを冷たい目で見下ろしている親実装にも気づかない。


結局4女は自分が川の水面に着水する最期の瞬間まで笑顔であった。


親実装が2匹の髪まで抜かなかったのは母としての最期の情けであろうか。

「お前たちは悪くないデスゥ...糞蟲に産んでしまったワタシを恨むデスゥ...」
「ごめんなさいデス...今度生まれてくる時は賢い仔で産まれてくるデスゥ...」

公園の野良に比べ非常に高い知能水準を誇る山実装であるが、出産における糞蟲の割合は公園の野良とそう大きくは変わらない。
単純に山では糞蟲を抱えた一家や群れには非常に高い淘汰圧が掛かっているだけなのだ。
そのため糞蟲の間引きをためらう決断力のない親はもれなく一家死滅の憂き目にあう。
賢い長女や次女を守るための親実装の決断は山実装としては当たり前のことであった。


2着の仔実装服を片手に巣に帰ってきた母に次女が声を掛ける。

「ママ...妹ちゃんたちは...?」

「...」
「ごはんにするデス...」

その日の晩餐で親子の間に会話が交わされることは一度もなかった。


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行水を終え親実装たちが集落に帰ってくると、群れが総出で獲物を仕分けしていた。
別の場所では数匹が集まりヒキガエルを解体していた。
皮を剥ぎ、尖った石で骨を外し、肉を分解する。
こういった保存の利かない動物性蛋白質の獲物は群れで共有し、群れの長によって公平に分配されるのだ。

「ママッママッ!おにくひさしぶりに食べられるテチューッ!!」
「おいしそうテチュゥ!」

長女と次女が昼食の味を想像し、親実装の周りではしゃぎまわる。

「次女ちゃが捕まえたニョロニョロ食べていいテチュゥ?」
「前に食べたニョロニョロのおにくモチモチのウマウマだったテチュ!楽しみテチュゥ!!」

「お前たちしょうがない仔デース」

親実装は仔たちのはしゃぎように苦笑する。

「さ、早くごはんを食べたいならみんなにお手伝いできることがないか聞いてくるデース」

「「わかったテチュゥーーー!!」」

長女と次女が手をつないで群れの方に走っていく
そんな微笑ましい風景を眺める親実装であった。














そんな微笑ましい風景を眺める実蒼石のアオイ。

獲物たちとの距離は...約10m...
茂みの中から匍匐姿勢で集落の実装石の数を数える
成体実装の数は...12匹...
仔実装は...確認できるだけでも14匹...

アオイは背負ったハサミを音もなく右手に持った。
そして首輪に取り付けられたGPSマーカーのスイッチを押した。
このスイッチを押すことによりアオイの後方約100mの距離を保ちつつアオイを追跡する飼い主に信号が送られる。
発信された信号が持つ意味はただ一つ


そう




カ リ ノ ジ カ ン ダ




突如弓から放たれた矢のように群れに向かい駆けるアオイ。

ザザザザザザザザザザザザザザザザッ!

「デ...?」

ヒキガエルを解体していた実装石の一匹が何か接近してくるものに気づいた。
しかし森を背景に背負い、森林迷彩を纏うアオイを正確に目視することは出来ない。

ヒキガエルを解体していた3匹の山実装のもとに一足飛びで跳躍する。
着地と同時にアオイは3匹の顔面を狙い定めハサミをきらめかせる。

ヒュンッ

「デ...デ...?」

3匹の額に細く赤い筋が走った。

アオイが手にするハサミは正確にはハサミではなかった。
ハサミの留め金を外して分解した刃の片割れのような刃だ。
それは山実装を狩るために使う特別製のブレード。

迷彩色に塗装され細く薄く作られたそのブレードの先端部分から3cmにのみメスの如き鋭利な刃が存在する。
その小さな刃先には即効性の実装シビレが塗り込んであるのだ。

通常野良実蒼が実装石を狩る場合、その本能に刻まれた実装石に対する種族的憎悪でもって、極めてスプラッタな殺戮を行う。
野良実蒼が狩りを行ったあとに残されるのはバラバラになった実装石の残骸と血の海だけだ。
しかし、こと山実装狩りにおいては、その実蒼石の狩猟本能はふさわしくない。
獲物に必要以上の傷をつけては商品価値が下がってしまうのだ。

訓練を受けた実蒼石は最小の斬撃で斃す。
3mm切り込めば実装石は倒れるのだ。

ドサ
ドサ
ドサッ

3匹の実装石が泡を吹きながら小刻みに痙攣し同時に地面に倒れる。

「デス...?」

異常に気づいたのは群れのリーダーであった。
カエルを解体していた仲間たちが倒れている...?
カエルの横に何かが立っている...よくわからないが確実に何かがいるのだ。

実装石の視力と認識能力では迷彩を纏うアオイを正確には認識できない。
山実装たちに対しそれはあたかもステルス迷彩のように機能していた。

「デデ...!?」

その「何か」が自分に向かって接近してくる。
「それ」が何なのかは分からない。しかし偽石に刻み込まれた天敵に対する根源的な恐怖が全力でレッドアラートを発令している。

「デアアアアアアアアアアアアアッ!!?!?」
「森がッ!森が襲ってくるデスゥゥゥゥゥゥウウウッ!?」
「皆逃げるデスゥゥゥゥゥゥウウウウウウッ!!」

発狂したリーダーの声で群れの山実装たちが凍りつく。

ヒュンッ

アオイのブレードが横一文字に振るわれ、5mmほどの深さで群れの長の双眸を切り裂いた。
彼女が最期に見た光景。それはフードから覗く実装石のオッドアイと真逆の配色の双眼であった。
右眼は緑。左眼は赤。

「あ....お...」

3秒後、真実を知った群れの長の口から白い泡が溢れ、小さく痙攣しながら彼女は後方にコテンと倒れた。

「デスゥァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!?」
「仲間が!?仲間がやられているデスゥウウウウウウウウウッ!?」
「みんな逃げるデスゥゥウゥゥゥゥウゥウウウウゥウウゥウッ!!」

群れの一匹が大声を出し、パニックが群れに伝染する。
蜘蛛の子を散らすように山実装はあちこちに逃走を開始した。
だが無意味だ。実蒼石の嗅覚からは逃れられない。

訓練された流麗な動きでアオイのブレードが舞い、成体、仔を問わず山実装たちに小さい切り傷を刻み、その動きを止めていく。


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木の根本のうろで震える仔実装が一匹。
次女であった。
叫び声がでないように両手を口に当てて抑えている。
大人たちの叫び声とパニックの中次女が目にしたのは、ぼやけた輪郭が大人たちの間を通り過ぎると大人たちが動かなくなっていく光景。

恐怖に突き動かされた次女は全力で逃げ出しここに身を隠した

「おばけテチュゥ...こわいテチュゥ...」
「何がおきてるテチュゥ...? グスッ...ママァ...どこテチュ...?」

ザザッザザザザッ

足音が聞こえる。
何かが走りながら次女に接近してくるのだ。

いやテチュ
いやテチュ!
こわいテチュゥゥッ!!

「デェ...デェ...ここまでくれば...大丈夫デスゥ....」

次女の耳に届いたのは聞き覚えのある声。
外に目を向けると頭巾が4cmほど裂けた実装石がいた。

「大きいおねちゃぁ!?」

「い、妹ぉ!?生きてたデスゥ?よかったデスゥ!」

頭巾裂け実装は次女のいる木のうろまでやってきた。

「ママはどこデス?おまえだけデス?」

「テェ...ママは...どこにいるかわからないテチュゥ...グスッ」

「デ...大丈夫デース! ワタシがおまえを守ってやるデース!」
「さあ、一緒に逃げるデース!」

「グスッ...お...おねちゃぁぁぁあああ!!」

次女が頭巾裂け実装のもとに駆け寄ろうとした。
その瞬間

とすっ

頭巾裂け実装の腹部から迷彩色のブレードが生えてきた。
1秒後ブレードは抜き去られる

「デ...?」

ぷりっ

頭巾裂け実装の腹部からピンク色の何かが頭を出す。

「な、なんデスゥ!?これはぁ!?お腹の中から変なのが出てきたデスゥ!!」

「ちょ、腸だ!腸が出てるデスゥ!」

「デデデッ...デッ!」

次女の前にいた頭巾裂け実装が泡を吹き前のめりに倒れる。


その背後にいたものは


「イヤァァァァァアアアアアアアァァァァァァアァアアァアアッッッ!!!!!!!!!」
「ま、ママァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!!!!」

次女の絶叫が森の中にこだました。


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親実装は長女を連れ茂みの中で腹ばいになっていた。親子の体は泥まみれである。その泥に付着し落ち葉が体中を包んでいる。
ころんだのではない。親実装が水たまりの泥土を掬い自分と長女の体にたっぷり塗り込んだのだ。
賢い実装石が嗅覚の鋭い捕食者から逃れるために行う習性であった。
泥で体を包み体臭を完全に消し、捕食者の追跡から逃れるのである。

「ママ...次女ちゃ」

「静かにするデス....絶対音を立てては駄目デス」
「安全だとわかるまで...1日でも3日でも絶対に動いてはいけないデス」

親実装は持久戦を覚悟した。
親実装にも何が自分たちを襲っているのか全く理解できていない。
確実に言えるのは仲間を呼びながら大声を上げて逃走すれば即座にやられてしまう。
親実装の中では群れはもう全滅したものとの認識であった。

ガサッガササッ

何かが正確に自分たちの方に向かって来る。


何故?匂いは消したはずなのに!?
お願い!ワタシたちを見つけないで!!
頑張ってごはんを集めたの!
冬さえ越せばこの仔も一人前の大人になる!そうしたらこの仔も自分の仔を産んで...
どうして?ワタシたちはこんなところで死にたくない!
こんなところで死んだらワタシは今までなんのため...


親実装の頭に過去の記憶が蘇る。


ママから独り立ちして自分の巣穴をつくったときのこと。
お石を使ってひたすら穴を掘った。
掘っても掘っても終わらない。
毎日へとへとになるまで働いた。ごはんを食べてもお腹が空いて...眠りから覚めても体がフラフラだった

辛かった...いつになったら自分のおうちが完成するのかと気が遠くなって...
お腹もペコペコで動けなくなった...
つらくて...涙がこぼれるのを抑えられなかった...
ふと、後ろを振り返ると群れの皆がいた。
みんな...お石をもって...ワタシの巣を完成させるのを手伝ってくれた。

その中に笑顔のママがいた...
ワタシは独り立ちしたのに...ママが自分のごはんをわけてくれた...
嬉しくって...情けなくって...けど嬉しさの方がずっと大きかった....
ママ...大好き...死んじゃったけど...ずっとママのことが好き....

ママのためにも...この仔のためにも...ワタシはこんなところでは死にたくない!!


ガササッ


だが現実は非情である。
何かが茂みをかき分け親実装たちの隠れていた場所を露わにする。

「おっ!いるじゃーん♪」
「山実装親子はっけーん♪」

親実装が見上げたその先には人間がいた。
左手に偽石サーチャーを持ち、背中に猟銃を担いだ若い男がいた。

ニンゲン...親実装が群れの長老が語るおとぎ話の中でだけ聞いたことがある存在。
実装石を楽しみながら拷問し捕食する。この世界で最も恐ろしい悪魔。
親実装も見たのは初めてであったが、実装石の本能が直感させた。これが伝説の悪魔だと。

「デ...」

「お...?」

「デシャァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

親実装が歯茎を剥き出しにし、男に威嚇をする。

「ママァ...!」

「長女ぉッ!!逃げるデスゥッ!!走って逃げるデスゥ!!」
「ママを振り返っては駄目デスゥ!早く逃げるデスゥッ!!」

長女は素早い決断で親実装を背にし逃げ出す。

「シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
「ッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」
「近づいたら殺してやるデスゥ!!」
「シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

武器である歯をむき出しにし、威嚇相手にその攻撃手段を誇示する親実装。

娘に手を出せば許さない!
どこへでも喰らいついて肉を噛みちぎってやる!!
ワタシもママのように自分の娘を護って死んでやる!!
でもこのニンゲンも地獄に道連れだ!!

「シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!」

「ハハッ!シャアシャア五月蝿えんだよw。 赤い彗星かよおまえはw」

バスッ

男が右手に持っていたグロッグ18cのエアガンを一発親実装の頭に打ち込む
親実装の額に赤い小さな花が咲いた。

実装シビレを塗ったBB弾が親実装の脳内に侵入し即座にその効能を発揮する。

体が硬直してバランスを失った親実装は地面に倒れこんだ。
そして親実装の背後から現れたのはフードを脱いだアオイ。その右手には長女が掴まれている。

「マスター仔実装を確保しましたボクゥ」
「ボクが確認できたところではこれで全部のはずボクゥ」

「おーアオイ。ないすぅ♪」
「これ、おまえの帽子な。こっちの方が落ち着くだろ?」

「ありがとうございますボクゥ」

アオイは自分の実蒼帽をかぶりながら主人に礼を言う。

嘆きの慟哭すらあげられない親実装は虚しく両目をギョロギョロと動かし、静かに血涙を流すのみであった。


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「はーちかれた...」

軽トラで山実装たちを自宅に運んできた男。
禿裸に剥かれ水で洗浄された山実装たちの解体作業に入っている。
捕獲した成体12体のうち、あと残るのはこの吊るされた2体だけだ。

「もうちっとで終わりか...がんばるぞい!」

後ろでは仔実装を入れた透明のプラスチックケースの中で仔実装たちがテチュテチュと何やら喚いている。

「大きいおねちゃぁぁああああああああああああ!!!!!!」
「ニンゲンッ!!!!やめるテチュウゥゥッッッ!!!!!!」
「大きいおねちゃを傷つけるなテチュウゥゥッッッ!!!!!」

山実装を食肉として処理するためにまずは放血を行う。
胸の中央部、心臓をめがけナイフを一突きにし血液を抜く。
傷口はなるべく小さく必要以上に組織を損傷させないようにする。

充分な放血が得られると次は内臓の摘出を行う。
総排泄孔から喉までナイフで切り上げる。
このとき内臓を傷つけないように切れ味の良いナイフで皮膚と脂肪の上だけを滑らすように刃を通す

食道と内臓、主要大動脈を切り離したのち熱湯で軽く腹腔に溜まった血を洗い流す。
そののち速やかに冷水に肉をさらし体温を下げてやる。
放血後速やかに内臓を摘出し体温を下げてやらないと肉やけを起こし肉質が劣化してしまうのだ。

仕上げは皮剥ぎだ。
足首の周りにナイフで切れ込みを入れ皮を剥いでいく。
首まで到達したら、頭部を分離していく作業だ。
首の周りにぐるっと一周ナイフで切り込みを入れ、うなじから頭頂部にかけて縦に切り込みをいれる
その後一気に頭部の皮を剥いでいく。
頭部の皮剥ぎが終わると耳の部分も切り離す。ここがミミガーのような歯ごたえと独特の風味でうまいのだ。
首の骨(環椎)を両手で外し頭部をナイフで切断する。

「テヒャァァァァアアアアアアアアアアアアッッッ!?」
「大きいおねちゃがぁ!ぴんく色のおにくになっちゃったテチュゥゥーーーーー!?」
「いやテチュゥーッ!こわいテチュゥーッ!!」

「とりあえずこれで終わり。後一匹か....仔実装どもは明日にするかな...」

最後の一匹に目を向けると、実装シビレの効果が薄れてきた山実装がこちらを向いてか細くデスデスとなにか喋りかけてくる。

「おねがいデス...娘は...見逃してください...デスゥ」
「娘たちはとっても...いい仔なんデスゥ...」
「長女は...とっても優しい仔で...次女はとっても元気で明るい仔なんデスゥ...」
「娘たちは...とっても賢いから....きっとニンゲンサマのお役に立てるデスゥ...」
「ごはんも自分で集められるデスゥ...ニンゲンサマを不快にする粗相もしないはずデスゥ...」
「春になれば...大人になって...沢山の仔を産んで...きっと幸せになれるって...あの仔たちと約束したデスゥ...」
「ワタシは...おにくになってもいいから...どうか...娘だけは...」
「なんでもするデスゥ...山の同族を見つけるのを手伝ってもいいデスゥ」
「だから...娘だけは...」

血涙を流しながら親実装が男に決死の哀願を行う。
ケースに入れられた長女と次女もお互いに抱き合い血涙を流し、母の愛と想いを噛みしめている。
母はワタチたちのことをこんなにも想ってくれている。
母と娘、心を繋いだ3匹の間に聖なる瞬間が訪れる。

男は親実装がデスデス喋っているのを神妙な様子で聞いていた。

「そうなのか...お前...気持ちはわかるよ...うん...そうだったんだな...」













「まあけどリンガルないから何言ってっかわかんねーや♪」
「ハハッ!(ミッキー風)」
「じゃ、おいしいお肉になろうねぇ♪(甲高い声)」
「ハハッ!(ミッキー風)」

「デェェェェェッェェェェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエェェェエェェェェェエエエエエッッッ!!!????」

「「 テェェェェェェェエエエエェェェエエエエエエエエエエエエエェエェェェェェエエエエェェェェ!!??? 」」


男は右手にもったナイフを逆手に持ち変え親実装の胸の上、心臓直上に狙いを定めた。








「デ、デギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!!!!」

山実装の慟哭が農村の片隅に鳴り響いた。

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1 Re: Name:匿名石 2019/04/05-19:04:44 No:00005849[申告]
人と関わりを断って強かに生きているからなんだ
食すのを度外視してでも殺して回りたい
警戒心が強いなら、なおさら攻撃したい
山では知りえない恐怖と苦痛を与えたい

そんな加虐心が首をもたげました
そして、今も昔もグロッグ18cが好きなんだな、この世界の加虐者は
2 Re: Name:匿名石 2019/04/05-21:49:00 No:00005851[申告]
街の実装石と違って山実装は人の益になるから良いね
3 Re: Name:匿名石 2019/04/05-22:33:20 No:00005852[申告]
今回も面白かったです
プレデ〇ーもシグ〇イも懐かしい…

某作品で寂聴の腸が出てきた時は翠星石だローゼンだと話題になったけど
俺は絶対実装石だと思ってたっス
4 Re: Name:匿名石 2019/04/06-12:43:55 No:00005853[申告]
けっこうな長編を短時間に書き上げる
しかも面白い

うらやましい才能デス
5 Re: Name:匿名石 2019/04/09-21:47:16 No:00005858[申告]
仔は残ってるし美味しく頂くシーンの続編にも期待できる!
山実装の生態描写が詳しくて良かった
6 Re: Name:匿名石 2019/04/22-23:10:01 No:00005917[申告]
年で来てなかったけど久々に来てよかった、本当久々に実蒼石の出る面白いスク読めて良かった
地道に頑張ってる方々がいてくれてよかった、また来ます
7 Re: Name:匿名石 2019/05/09-22:59:46 No:00005957[申告]
残った山仔蟲どもの末路の続編が見たいですな。
できれば宜しくです!
8 Re: Name:匿名石 2023/07/25-21:12:57 No:00007623[申告]
溺死する三女の独白でワロタ
9 Re: Name:匿名石 2023/08/24-02:23:32 No:00007832[申告]
実蒼石が邪魔するまでは面白かった
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