タイトル:【虐】 葉老師の密かな楽しみ ~炸裂・超実一○二芸!~ 前編
ファイル:葉老師の密かな楽しみ ~炸裂・超実一○二芸!~ 前編.txt
作者:ジグソウ石 総投稿数:41 総ダウンロード数:667 レス数:2
初投稿日時:2018/07/06-21:17:51修正日時:2018/07/06-21:18:27
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 ※人間と実装石の会話は全てリンガル使用済みとしてお読みください。


 ワシの名は葉・敏明《よう・しゅんめい》、ここ双葉市で中華料理店を営むただの老人である。
 数十年前に日本に来てからというもの、ワシはこの国に住む奇妙な生物にすっかり魅了されてしまった。その生物の名は実装石————誰もがその存在を知りながら、一部の人間以外は
決して関わろうとしない緑の小人だ。

 実装石と関わろうとする人間は大別して2種類に分類される。
 この醜悪極まりない生物に対しても慈愛の心を持って接し、あまつさえ愛玩動物として飼育しようとする奇特な人間————愛護派。
 それとは正反対に、この生物が稀に見せる善性や可愛げにも全く心動かされることなく惨殺、もしくはそれさえ愉悦のためのスパイスにしながら嬉々として切り刻む人間————虐待派だ。

 かくいうワシは、どちらかといえば後者に属する人間である。
 ただ、実装石を自らの手で虐待することはあまり好まない。ワシが好むのは、実装石がその愚かしさ故に自ら破滅してゆく様を悠然と眺めることだ。
 こういうのは観察派とも呼ぶらしいが、ワシは虐待派寄りの観察派ということになるのだろうか。

 ワシは今、公園のベンチで実装石たちの営みを眺めている。こうして各個体、各家庭の状況をつぶさに知ることで、ワシの楽しみの種になってくれる者を選び出すためだ。

 この公園はかなり広く、そのため生息している実装石の数も他所に比べてずいぶん多い。だが個体数が多いということは、それだけ生存競争も厳しいということである。
 もうすぐ冬がやってくるこの季節、公園内ではいたるところで越冬のために秋の実りを蓄えようとする実装石たちが食料を奪い合う光景が見られた。

「デェェーン!」

 目の前を1匹の実装石が泣きながら駆けてゆく。
 その個体がやって来た方向を見てみると、そいつよりも少しだけ大きい個体が生ゴミの入ったコンビニ袋を手に、実装石特有の「デププwww」という醜悪な笑い声を上げていた。
 おそらくこいつは食料の奪い合いに敗れ、文字通りの泣き寝入りをするために巣へ戻るところなのだろう。よし、今回の獲物はこいつに決まりだ。

「これこれ、待ちなさい」

「デッ?」

 去っていこうとする負け犬実装を呼び止める。
 実装石の足は恐ろしいほどに遅い。ワシがこいつの置かれた状況を察するまでの間にも、その距離は2メートルと離れていなかった。

「どうしたんじゃ? そんなに泣きべそをかいて」

 あくまで好々爺《こうこうや》を装いながら優しく声をかける。
 ア○プスの少女ハ○ジに登場するお爺さんのような白髭で顔を覆い、長い眉毛で目元を隠したワシの姿は人間からも善良な老人としか見られない。ましてや愚かな実装石には、
ワシが虐待派の人間であることなど絶対に見抜けはしないだろう。

「デェ……ニンゲンさん、よく聞いてくれたデス。ジツは……」

 案の定、実装石は自分の置かれた状況をめそめそと泣きながら話し始めた。
 実装石の愚痴など聞くだけ時間の無駄なのだが、このプロセスを省略するわけにはいかないのが難しいところだ。

「ふむ……なるほど、色々大変だったようじゃな。しかし、お主はそういう目に遭っても仕方がないと思うぞ」

「デッ!? な、なんてヒドいことを言うデス! 優しそうなニンゲンさんだと思ったのにデスゥ!」

「いやいや、今お主が置かれた状況の原因は、全てお主自身が弱いということにある。もしもお主が強ければ、あんなやつに大事な食料を奪われることもなかったはずじゃ」

「デ、デゥゥ……」

 実装石はぐうの音も出ないといった表情で唇を噛んでいる。
 よし、ここで飴を与えればこいつは落ちる。まず突き放すことで不安を煽っておいて、それを解消してあげようと甘い言葉で誘うのは詐欺の基本だ。

「もしもお主が強くなりというのなら、このワシがその手助けをしてやろう。何を隠そう、ワシは実装石を鍛え上げることに関しては一流のブリーダーなのじゃ」

「デデッ!? ほ、ホントウデスゥ?」

「ああ、もちろん(嘘)じゃとも。ワシの編み出した実装石のための拳法、その名も『超実一○二芸』を身につければ、どんな実装石だろうと恐れるに足らん」

「す、スゴイデスゥ! ワタシにもそれを教えてほしいデス!」

「ふぉっふぉっふぉ、よかろう(ニヤリ)」

 よし、これでお膳立ては整ったが……そうは言ったものの何からやらせようか。獲物の確保にばかり気が行って、肝心の内容を考えていなかったな。

(おお、そうじゃ!)

 ワシは思い出したようにベンチから立ち上がると、隣に置いてあった大きなリュックサックを開いた。これには虐待のための様々なグッズが詰め込まれているのだ。
 リュックをゴソゴソと探り、中から携帯用のガスコンロと料理用のボウルを取り出す。

「デデッ? ニンゲンさん、それはなんデスゥ?」

「まあ見ていなさい」

 そう言いつつ、ワシは金属製のボウルにペットボトルの水を入れると、それをガスコンロの上に置いて火にかけた。

 —————— シュゥゥゥゥゥ………… ——————

 ほどなくして水が沸騰し始める。
 それを確認した後、ワシは懐から数粒のコンペイトウを取り出してボウルの中に入れた。コンペイトウといっても本物ではなく、お湯の中でも溶けないよう陶器で作られた偽物だ。

「デッ? コ、コンペイトウデスゥ!」

「見てのとおり、この中にはお前たちにとって大好物のコンペイトウが入っておる。これを取り出せたら好きに食べてもよいぞ」

「これを食べてもイイデスゥ?」

「ただし、コンペイトウを取るためには熱いお湯の中に手を入れねばならん。さて……お主にできるかな?」

 ワシがそう言うと、実装石は沸騰するお湯の水面におずおずと手を伸ばした。
 そしてそのまま手をお湯の中にちゃぽんと浸けようとして————

「アッチィィデスゥゥゥ!」

 ものの見事に手を火傷した。

「ふぉっふぉっふぉっ、それではダメじゃよ」

 うむ、これだ。この間抜けな姿を見ることこそがワシの楽しみ。

「いいか、よく見ておれ」

 ワシは火にかけたボウルの前に立つと、いかにも拳法の達人っぽく見えるように構えた。

「しぇいっ!」

 素早く水面に手を伸ばし、そして引き戻す。すると、ワシの手には1粒のコンペイトウが握られていた。

「す、スゴイデスゥ! しかもスゴク速かったのに、お湯がちっともナミ立ってないデス!」

 実装石は感動しているが、これはもちろんペテンにすぎない。素早くボウルに手を突っ込んだように見せかけて、実はお湯に触れる前に引き戻しただけだ。
 今ワシが持っているのはポケットに忍ばせていた本物で、それを構える前から手の中に握り込んでおいたのである。
 実装石には3つ以上の数字を数える能力がないため、それより多くの偽コンペイトウを入れておけば、こいつらはボウルの中身が減っていないことにも気付かない。

「よいか、大事なのは集中力……己の持つ全ての気を一点に集中させるのじゃ。さすればこんなこともできる……あそこを歩いている実装石をよく見ていなさい」

 そう言いつつ、ワシは10メートルほど先を呑気に歩いている実装石を指差した。
 そして隣にいる実装石の視線がそいつに向いた瞬間、気合を込めて指を一振りする。

「フン!」

 —————— ばちゅん! ——————

「デヒィッ!?」

 向こうを歩いていた実装石の頭が、突如として粉々に爆散した。

「見たか、これぞ『百歩実拳』じゃ。(実装石にとって)百歩先にいる実装石を一撃で倒せることからこう呼ばれる」

「デェェ……す、スゴイデスゥ」

 もちろん今のもただのトリックである。実装石の視線が殺された個体のほうへ向いた瞬間、袖口に隠しておいたスリングショット(パチンコ)で頭を撃ち抜いただけなのだ。

「さっきワシがやったようにお湯からコンペイトウを取り出せれば、お主にも同じ技が使えるじゃろう」

 本物のコンペイトウをボリボリとかじりながら説明するが、実装石は口からヨダレを垂らしながらワシのほうを羨ましそうに見つめていた。うむ、全く人の話を聞いておらんな。

「ほれ、分かったらもう一度やってみんか。よいか、気を集中するのじゃぞ。コンペイトウが食いたいという気持ちをそこに集約するのじゃ」

「わ、わかったデスゥ」

 実装石はワシがやったのを真似るように構えると、間抜けな顔を精一杯真剣な表情にして気持ちを集中し始めた。

「デッスァァァァァァァ!!!!!」

 ボウルの中のコンペイトウに狙いを定め、裂帛《れっぱく》の気合とともに手を伸ばす実装石。そして————

 —————— どばしゃん! ——————

 実装石が手を突き入れると同時に、その衝撃でボウルがひっくり返った。もちろん手前側になので、やつが沸騰したお湯を全身にかぶったのは言うまでもない。

「デッギャァァァァァァァ!!!!! アツイデス!!! アヅイデズゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!」

「フォーッフォッフォッフォ♪ そうなると思ったわい」

 うむ、見事。あまりにも見事すぎる間抜けっぷり。それでこそ実装石。

「デギャッ! デギャァァゥッ! デギャァァァス!!!」

 熱すぎてそれどころではないのだろうか、それとも服を脱ぐという発想もないのだろうか、実装石はもの凄い悲鳴を上げながら転げ回っている。
 ようやく落ち着いた頃には、その全身が水ぶくれで真っ赤に腫れ上がっていた。

「デヒィィィ……アツイデス……オメメが見えないデスゥゥ……」

 すでに実装石は息も絶え絶えにぐったりとしている。眼球の表面までが火傷で剥離してしまったのだろうか、こうなってはもはやこいつに生きていく術はない。
 ワシは間抜けな実装石の足を掴んで体を持ち上げると、公園の茂みに無造作に放り込んだ。こうしおけば飢えた禿裸、そうでなくても腹を空かした同属にすぐ食われてしまうだろう。

(ふっふっふ、なかなか上手くいったわい。そういえば以前、似たようなシチュエーションで猫を使ったことがあったのう……)

 そう、前にも同じように実装石を即席の弟子にした後、ワシは『百歩実拳』の発展形と偽って『五獣百歩拳』なるものを教え込んだ。
 ワシの命令がない限り実装石を襲わないよう調教した猫をけしかけ、適当な個体を殺させて「これを極めれば猫・犬・カラス・ネズミ・イタチという、本来なら実装石の天敵となる獣を自由に操れるようになる」
などと言って騙したのだ。
 もちろん騙された個体は猫に向かって必死こいて念を送り続けた挙句、ワシの命令で飛びかかった猫にズタズタにされて死んだ。いやぁ、あのときの間抜けな顔ときたらなかったわい。

 さて……日が沈むまではまだ1時間ほどあるな。今日はもう1匹ぐらい殺しておくか。
 そう思っていたワシの耳に、実装石の威嚇音が聞こえてきた。

「デシャァァァァ! デシャァァァァッ!」

 何事かと思って声のするほうを見てみると、そこには飢えた禿裸の前で四つんばいになり、1匹の仔実装とその妹らしき蛆実装を守ろうとしている個体がいた。ふむ……次はこいつにするか。
 ちょうどいいタイミングで新たなターゲットが見つかり、ワシは思わずほくそ笑んだ。



 —————— 後編に続きます ——————

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1 Re: Name:匿名石 2018/07/15-18:13:45 No:00005485[申告]
後編ではどんなトリックが飛び出すのか?
今から楽しみである
2 Re: Name:匿名石 2019/02/15-02:14:45 No:00005751[申告]
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