季節は冬、アパートのベランダに紐で吊るされた柿がそこにはあった! そう干し柿である!! 日本古来の風物詩たるこの和スイーツ しかるにこれを不届きな赤緑の視線が狙いをつける 盛んに木枯らしが吹き付ける中 アパートの敷地内に緑色の不法侵入者の… そう、皆さんご存知!野良実装の一団だ!!!! そろそろ中実装にさしかかろうという30センチほどの姉実装を先頭に ひとまわりづつ小さくなりながら末妹の親指実装まで合計5石 一揃いに列なしてならぶその様、まさにマトリョーシカの様にも見える この薄汚いマトリョーシカの一団が如何にしてこの敷地内に不法侵入に至ったか それは話を少々遡らねばならない - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 野良実装姉妹 オヤジっ装 親実装 成体実装 姉実装 姉妹の最も姉な実装 中実装にさしかかろうという中途半端サイズ 前から2〜6番目 合計5匹 7番目 姉妹の62女 近年稀に見る糞蟲 ロードローラーだッ! 8番目 姉妹の68女 黒髪実装 車に轢かれた 9番目 親指実装 ウンチ出たレチ パキン死 10番目 仔実装 チョウチョさん待っテチ - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - テッチ、レッチ、テッチ、レッチと掛け声も高らかに意気揚々と6石は行く 目指すは住宅地のゴミ捨て場である 「もうそこテス!もうすぐそこにニンゲンサンのゴミ捨て場テス!」 姉実装が檄を飛ばす 視界の端に白いゴミ袋が見える と、その時… ブォン テッチャー 一台の車とすれ違う、かなりのスピードだ だが、幸い向こうは車道、こちらは歩道上なのでスピードが出ていてもあまり関係はない ただ、悲鳴が聞こえたような気がするので一応、確認を取る 「みんな、大丈夫テス?」 「いるテチィ!」「ワカッタテチィ!」「ハイテチ!」「いるレチ!」 とにかく全員の無事を確認するも、怪我をした者はいない 先程までと少し返事の数が減った気がするが、構っている余裕はない テェッ …ッチヤー 遠くからかすかに実装石の声が聞こえる気がし、一抹の不安を覚える姉実装 最悪の予想が頭をよぎる… この姉実装はそれなりに賢く、自分が数を数えられないことも自覚している(※8) (※8)正確には、5を超える数を把握できない 従って姉妹が減っているような気がするという嫌な予感がしてならないのだ そして実際その予感は当たっていた ブォン ヂャー 続けてもう一台の車が姉妹の横を通り過ぎる、もうあまりもたもたしてはいられない 人間のテリトリーで立ち止まる危険性、それを姉実装は十分に熟知している 遠くからかすかに聞こえる気がする同属の声 そんなものは虐待派のうろつく公園では日常茶飯事のこと 同属の死は日常の一部であり、姉妹の身に危機が迫っているならいざ知らず 赤の他石にいちいち構ってはいられないのだ ブォン ヂャアアアアア 更にもう一台の車が通り過ぎる もう姉実装の腹は決まった 自動車…ニンゲンサンの乗り物が動いている、もう時間がないテス 姉妹が欠けているかもしれない、助けを呼ぶ声が聞こえる、そんなものはどうでもいいテス 今必要なのは前に進むこと、そうしないと… 親実装の顔が宙に浮かぶ 間引かれてしまうテス… デ…゙デ…゙デ…゙デ… その時、前方からかすかに地響きが聞こえてきた まるで地獄のような唸り声を上げて焔を上げ、何かが近づいてくる 「隠れるテス!」 姉実装はとっさの判断で妹達を通りに面したニンゲンの庭に誘導する 何かはわからないが、正面から近づいてくるものは危険な気がする 姉実装の野生の勘がそう言っているのだ 「みんな伏せるテス!動いちゃダメテス!」 妹達はじっと伏せて動かない デデデデデデデデデ… 唸り声を上げる何か、がじりじりと近づいてくる それとともにほんのり嗅ぎ覚えのある何かの臭いがする ”この臭い、どこで嗅いだテス…?” 伏せる姉実装の前に小さな黒いものがひらひらと舞い降りる、それは小さな煤だった と、ともに、姉実装の脳裏に過去の映像がフラッシュバックする - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - およそ半年前、姉妹は12姉妹だった その頃、姉実装は姉妹の11女で親指実装だった 12女である蛆実装の世話を任されて、いつも蛆実装を抱えて右往左往しつつも 優しくて賢い10匹の姉実装に囲まれて幸せに暮らしていた その日も、平和で楽しい一日が始まるはずだった 「来た!やつらが来たデスゥー!」「デアァー!!」「デェェーッ!」 突然の雑巾を裂くような絶叫に続き、あちこちから上がる悲鳴の数々、そして… 「ヒャッハー!糞蟲は消毒だぁーっ!」 モヒカン刈りにトゲのついた肩パッド、手には火炎放射器を持った一団が公園に躍り込む(※9) (※9)良い子は真似しないでね!おまわりさんとの約束だよ! そう!虐待派だ! 「ヒャッハー!丸焼きだぜーっ!」 「遺伝子のかけらまで、焼き尽くしてやるがががーっ!」 「汚物は消毒だーッ!!」 次々にダンボールハウスに火をかけ、逃げ惑う実装石に容赦なく火炎放射を浴びせかける 姉実装…親指実装は蛆実装を抱えて右往左往するしかできない 「イモウトチャ、こっちテス!」 長女が親指実装をいずこかへ突き飛ばす、ぼちゃんという音がする そこは実装一家の使うトイレだった 長女は知っていた、虐待派というものは徹底的に実装石を見下している したがって虐待派は実装石が同属をトイレに隠すなど思いつきもしないだろうとたかをくくっている(※10)という事を (※10)これは長女の勘違いである、実際は高価な革製品に実装糞の臭いがつくのを嫌うからだ ただし、実際にこの時の虐待派は誰もトイレまでは確認しなかったので、結果論から言うとこの判断は間違っていない 現に、この公園では今回の襲撃に際してトイレに隠れた賢い野良実装が多数生き延びている 何が何だかわからず、姉実装…親指実装は叫ぶ 「オネチャー!オネチャー!」 「プニフー?」 必死で赤緑の涙を流す親指実装と、わけがわからない蛆実装 そこに姉妹の長女(当時)が悲しげな顔を見せる 「イモウトチャ、そこで大人しくしているテス そこにいれば大丈夫テス!ウジチャと…ウジチャと幸せになってテス!!」 上からダンボールの蓋を被せる、その直後… 「こんなところにも糞蟲がいやがったぜーッ!!汚物は消毒だーッ!!」 「ヂャアアアアアー」 ダンボール板の隙間から実装肉の焦げる臭いが鼻につく 火のついた実装服や実装髪の破片がちらちらと入ってくる いけない、見てはいけない そんな親指実装の意志とは裏腹に体はぐんぐんと前にのめる そして、ついに見てしまう 大きなニンゲンサンたちに囲まれて、公園の広場に生き残った野良実装達が集められている その中に姉妹がちらほらといるのが見える… 怯えるもの、俯くもの、逃げようと隙を伺うもの… それぞれの思惑がごった煮になったような緑色のひとかたまりだった そんな中、ついに意を決した一匹の成体実装が隙を見て走り、逃げる ママだ! 親指実装の顔からさーと血の気が引く ママもあいつらに捕まったんレチ… その時、一歩遅れて他の実装石達も我先にと逃げ始める 「逃がすなっ!一匹残らず燃やせーッ!!」 ニンゲンの怒号が飛ぶ たちまち囲いの内側に四方八方から火炎放射が浴びせられる 間一髪、親実装はモヒカン男とモヒカン男の間をすり抜けて走り去る しかし、他の野良実装達は…親指実装の姉妹も含めて 一匹も逃れることは叶わなかった よしんば包囲から逃れでたとしてもすでに火炎放射を浴びているため ジソリンの染み込んだ実装服が、実装髪がもうもうと焔の尾を上げてすぐに炭になってしまう その時、確かに親指実装は見た ダンボール板の隙間からわずかに覗いた、長女を焼き殺したモヒカン刈りの大男の腕には 公園の壁に書いてあったラクガキと同じ文字が書いてあったのだ 「ラクガキ…ニンゲン?」 親指実装の口から言葉が漏れる 当然、親指実装には文字は読めないが、その形だけは薄ぼんやりと記憶されている もし、姉実装が日本語を読めたならばその文字が何と書いてあったかわかったかも知れない ”銀様命”と… - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 「…ラクガキニンゲン」 姉実装がぽつりと呟く、5匹はそんな呟きに気づきもしなかったが 唯一、姉妹の次女(現在)である仔実装1匹だけは顔色が変わっていた そう、彼女こそ、あの日、あの場所で姉実装と行動をともにした蛆実装だったのだ… 「大丈夫テス、何でもないテス!コワイコワイが行ったなら 早く道路に戻るテス!ゴミ捨て場はもうすぐそこテス!!」 姉実装はいかにも元気そうに振舞う ニンゲンの乗り物の爆音と振動を避けて道路をよけてしまったが ついうっかりニンゲンの住処の庭に入ってしまっている これはいけない、危険だ!姉実装のカンがそう言っている くるりと周囲を見渡す ここはアパートと呼ばれるニンゲンのオウチだ 姉実装は託児が失敗した同属のことを思い出して震え上がる 禿裸リリースですらまだ生ぬるい、親実装に全身をホチキス留めされた仔実装 身体にプラモデルを貼り付けられて干からびて死んだ仔実装 実装燈の苗床にされてリリースされて公園の広場で仔実燈を吐き出して破裂した実装親子(※11) (※11)スク、汚部屋託児の後日談である 「ここは危険テス!早く立ち去るテス!」 そんな中、一軒のアパートのベランダを親指実装が見咎める 「オネチャ、あれは何レチュ?」 「ん、なんテス?」 親指実装の腕指した先には、ベランダに雑に吊るされた赤いものが横一列に連なっている それぞれ縦にも数個づつ連なっているため もっとも低い位置で高さはおよそ80センチちょっとといったところ 当然ながら仔実装の手に届く高さではない じっと姉実装は目を細めて観察する、そう、その赤いものとは… 季節は冬、アパートのベランダに紐で吊るされた柿がそこにはあった! そう干し柿である!! - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 後日談ルートへ分岐するため、回想シーンが入りました 次回、いよいよ干し柿へ…! もう少しだけ続きます 感想ありがとう!!
1 Re: Name:匿名石 2017/03/25-23:48:37 No:00004582[申告] |
待ってた。ありがとう。 |
2 Re: Name:匿名石 2017/03/26-01:39:59 No:00004583[申告] |
12女も親指実装なの? |
3 Re: Name:匿名石 2017/03/26-01:46:00 No:00004584[申告] |
12姉妹での中で姉実装が11女で、12女が親指なのに蛆がいるのは違和感ある。
蛆は数えないなら問題ないが。 |
4 Re: Name:賞金首 2017/03/26-01:55:35 No:00004585[申告] |
ごめんなさい!ミスを修正しました
半年前の姉実装は11女(親指実装)で、12女が蛆実装です 現在は、1~10女が消毒されたため繰り上がりで、姉実装が長女(中~仔実装)元蛆が次女(仔実装)です |
5 Re: Name:匿名石 2017/03/26-07:40:04 No:00004586[申告] |
よっ、待ってました!
やっと干し柿登場か、しかし盗れる気がしないなw こいつらの末路が楽しみだw |
6 Re: Name:匿名石 2017/03/27-01:36:33 No:00004588[申告] |
最近にわかに過疎化してきた中において
ハイテンションな作者さんは応援したいがんばってください |
7 Re: Name:匿名石 2017/03/27-09:38:12 No:00004589[申告] |
親実装に全身をホチキス留めされた仔実装のスク気になります。タイトルお願いします。 |
8 Re: Name:匿名石 2017/03/27-20:48:25 No:00004591[申告] |
※つきまくってるけど解説がない
完結編でまとめて出されるのか |
9 Re: Name:賞金首 2017/03/27-20:54:43 No:00004592[申告] |
>親実装に全身をホチキス留めされた仔実装のスク気になります。タイトルお願いします。
あっ、それ没にしたスクです >※つきまくってるけど解説がない 見辛いですが、(※10)とかの次の行の (※10)これは長女の勘違いである、実際は高価な革製品に実装糞の臭いがつくのを嫌うからだ とかが※の解説になってます |
10 Re: Name:匿名石 2017/03/28-00:13:50 No:00004594[申告] |
没か。プラモデルと仔実燈のスクは確かに読んだことがあったが、ホチキスだけは思い当たりませんでした。
もしかして、これは次期スクですか? |
11 Re: Name:賞金首 2017/03/28-00:49:41 No:00004595[申告] |
期待していただけるのは本当に有難いのですが
没スクが山とありすぎて完成させていくのはなかなか難しいです 本当は体験入園も後日談できるならやりたいんですけどねえ… |
12 Re: Name:匿名石 2017/03/28-19:01:24 No:00004597[申告] |
※9
ありがとうございます 解説的に最後にあると思い込んで見落としてました |
13 Re: Name:匿名石 2017/03/30-09:51:51 No:00004599[申告] |
なるほど、ゴミアサリする予定だったこいつらがアパートに不法侵入(※)したのはこういう経緯だったのか。
(命の危機があってやむなく敷地に入ってしまったのだから 彼女らに人権があるのなら緊急避難が適用されるのかもしれない) |
14 Re: Name:匿名石 2017/04/19-01:55:06 No:00004652[申告] |
下編早く読みたい |
15 Re: Name:匿名石 2017/06/15-13:24:17 No:00004745[申告] |
早く結末がどうなるか知りたいが・・・・
これって読者を楽しませるのではなく作者が楽しんでいるだけじゃん。 これで後編その1とか2とかを書きだしたらそれこそドツボ。 さっさと結末を仕上げて、番外編で好きな事書けばいいんじゃない。 それでも読者は読むよ。 |
16 Re: Name:匿名石 2017/06/26-01:25:52 No:00004759[申告] |
楽しいと思う? |
17 Re: Name:匿名石 2017/06/27-13:43:31 No:00004760[申告] |
作者は、色々アイデアが浮かんでくると書いていたよな。
と言う事は自分が楽しんでる事だよな。 つまりたらだら書いているだけだな。 こう長く続くとはっきり言ってつまらん。 |
18 Re: Name:匿名石 2017/06/27-13:47:09 No:00004761[申告] |
実際作者も読者にこれって矛盾してるね。
と指摘されているだろ。 自分自身が、どう書いたか分からなくなっているじゃん。 続編書くのも結構だけどさ。 |
19 Re: Name:匿名石 2019/05/17-13:57:44 No:00005966[申告] |
2年経つけど干し柿には辿り着いていない |