【桃の節句ス-ＭＥＮ】


「灯りを点けましょ、ションボリに〜♪」

夕暮れの公園で全身黒ずくめの男が調子っぱずれな歌を唄いながら、
ひなあられをばら撒いている。
背中を見れば１メートル以上はありそうな先の曲がった長いバールのような物を
斜めに背負っている。
どこからどう見ても怪しい不審者だが、周囲の人間は何故かまったく気にしていない。

『デス、デス？』

『デッスーン、デスデス』

『デデス、デスデス！』

『デッスン、スン？』

『テチュチュン、テチュン』

植え込みの陰、ベンチの下、公衆便所の裏から、
そして建ち並んだダンボールハウスの中から、
見る見るうちに集まってくる野良実装石の群れ。

『『『『『デッスゥ〜ン♪』』』』』

野良にとっては一生に一度でも口にする機会があるかどうかというほど貴重な甘味、
ＤＮＡに刻み込まれているとまで言われている大好物の金平糖によく似た形の菓子。
表面を砂糖でコーティングされたひなあられを口いっぱいに頬張り、
ほんのひと時舌の上に広がる甘い幸福感に舌鼓を打つ野良たち。

だが…

『デゲェ〜！』

『テチョワァ〜！』

数十匹いる野良のうち５匹だけが口から、総排泄口から、
目から、鼻から、耳から、全身の穴という穴から赤と緑の体液を噴き出し、
バッタリと倒れて、全身を痙攣させる。

「ふははははは！
　虐殺派である俺様を愛護派と誤認した愚か者が早死にする、
　これぞ誤認早死（ごにんばやし）の術！」

『デス！デスー！！』

生命の危機を感じてあわてて逃げ出す実装石の群れ。

「今さら気付いても遅いわっ！」

いつの間にか影のように現れた２人目の男が
パニックを起こして右往左往している実装石の中から
丸々と太った成体実装を３匹つかまえる。

「姦！すなわち肉体の交わりによりて、
　妊！すなわち子を宿し、
　産！子を産むが自然の摂理！
　しかしこの世の理（ことわり）に逆らい、逆の順序で仔を成す糞蟲あり！」

突然地面から噴き出した炎の中から現れた３人目の男はポケットから食紅を取り出し、
１匹の成体実装の左目に冒涜的な赤い色素を垂らす。

「産！」

たちまち仔実装を際限無く産み始める成体実装。

『デデデッ！？』

続いて風とともに現れた４人目の男は
次の実装石の右目に這い寄る緑の食用色素を垂らす。

「妊！」

『デッ！？デッデローッ！』

たちまち大きく腹が膨らむ成体実装。
そして最初からそこにいたかのように自然にそこに立っている５人目の男は
混沌なる花のついた桃の枝を懐から取り出すと、３匹目の総排泄口に突き立てる。

「姦！」

『デップゥ〜ン♪』

「これぞ産妊姦序（さんにんかんじょ）の術！」

『デーッ、デーッ…』『デッデローッ！』『デップゥ〜ン♪』

そして全身黒づくめの男達は、逃げ惑う実装石の行く手を阻むように立ち
それぞれ名乗りをあげる。

「くすぐる悪夢、内藤権太（ないとうごんた）！」

「一にして全、夜具外雄（よぐそとおす）！」

「夢見る混沌、浅遠洲（あさとおす）！」

「灼熱の炎、久遠牙（くとおが）！」

「宇宙駆ける疾風、倍悪兵衛（ばいあくへえ）！」

「「「「「実糞被害から世界を守る正義の我ら、団一致の会極東第三遊撃部隊、
　　　　　人呼んで忍業の旧月！！！！！」」」」」

（ちゅどーん！）

なぜか地面が爆発し、５色の煙が立ち昇る。

「それ、灯りを点けましょ糞蟲に！」

久遠牙が指を鳴らすと火柱が現れ、
数匹の実装石があまりの高温に声もあげられずに身を焼かれる。

「お花をあげましょ、肉の花！」

次に夜具外雄が指さした実装石の上半身が次々と爆ぜて、
言葉通り肉の花のような姿になる。

「少し白酒でも召されい！」

群れの中からマラ実装を見つけた内藤権太がマラをくすぐると
マラ実装は大量の精液をまき散らし、
まわりの実装石は両目を緑色に染めて急激に腹を膨らませ、
動くこともできなくなる。

「かすかにゆする春の風！」

倍悪兵衛が両腕を広げるとつむじ風が巻き起こり、
数匹の実装石が天高く飛ばされてゆく。

「ひな祭りの起源は穢れを川に流す
　流しびなだとか…」

地面から染み出すように現れた６人目の男ががつぶやくと、
その場にいた全ての実装石が幻の水に引き込まれ、
アップアップと溺れだす。

「おう、深海の支配者、苦取夫（くとるふ）殿か！」

「遅いぞ、苦取夫殿！」

「すまん、すまん。
　ちと陰須磨市に召喚されておったのでな。」

「それにしても、他の者は皆ひなまつりの歌の歌詞に合わせた
　虐殺技しばりで楽しんでいたというに、
　流しびなとは空気が読めぬ…」

「まあ、よいではないか久遠牙殿。今日は楽しいひな祭りじゃ。
　さて、全員そろったところで…」

久遠牙をいさめた浅遠洲は、背負っていた
先の曲がった名状しがたきバールのような物をスラリと抜く。

「そろそろ頃合いか…」

他の５人も浅遠洲に続いて
先の曲がった名状しがたきバールのような物をスラリと抜く。
そして理不尽な災厄に恐怖して右往左往している実装石の群れへと
全員で襲い掛かった。

「そぉーれ、とどめは無慈悲な邪神ＣＱＣだ！
　ヒャアッハァーッ！！！」

「「「「「ヒャッハァーッ！！！！！」」」」」

『『『『『デギャー！！！！！』』』』』

炎をまとったバールのような物に殴られた実装石は
一瞬にして燃え尽きた。

水をまとったバールのような物に殴られた実装石は
深海の超水圧に潰されるように圧壊した。

恐怖をまとったバールのような物に殴られた実装石は
かすり傷程度のダメージにもかかわらず偽石が崩壊した。

カオスをまとったバールのような物に殴られた実装石は、
こなごなに砕けた体の破片ひとつひとつが不定形に体をくねらせながら
時折実装石の顔を表面に浮き上がらせて悲鳴をあげ、
また不定形にもどって近くの破片とくっついてはまた悲鳴をあげ、
際限無く苦しみ続けた。

超高速のバールのような物は音速を超え衝撃波を放って、
直接当たらなくとも近くにいた全ての実装石をことごとく
赤と緑の血の霧のように粉砕した。

「ちょっ、おま…倍悪兵衛殿！」

「一人で一気に殺してしまいよって、
　おかげでもう終わってしまったではないか。」

「やや、これは失敗したか。面目無い。」

「はっはっは、まだまだ若いのう、倍悪兵衛殿。
　それではこうするかな。」

夜具外雄の両目から、口から耳から鼻から噴き出す無数の虹色の瞳が
霧のように周囲を包むと、殺されたはずの実装石たちが次々と生き返った。

『デ？デデッ？』

「さて、それではもう一度やり直しじゃ。
　ヒャアッハァーッ！！！」

「「「「「ヒャッハァーッ！！！！！」」」」」

『『『『『デギャー！！！！！』』』』』

狂気をはらんだ男達の叫び声と実装石の悲鳴が
誰にも聞かれることなく春の公園に響き渡った。
いつまでも終わることなく。
いつまでも。
いつまでも…。


（終）


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あとがき



えーっと…
デスゥ・ノートの作者でございます。
まずはクトゥルー神話を知らないみなさん、ごめんなさい。
（土下座）
それとクトゥルー神話ファンのみなさん、ごめんなさい。
（ジャンピング土下座）
また馬鹿馬鹿しいスクを書いてしまいました。

でも、おっかしいなあ？
ひな祭りにちなんだ虐待スクを書いていたはずなんですよ？
それが気が付いたらこんなカオスな内容になってしまったなんて。
これはきっとニャル様の介入だな、うん。
…というわけで。
「這い○れ! ニャル子さん」ファンのみなさんならびに
「たとえ明日世界が滅亡しようとも」ファンのみなさんにも、
ごめんなさいぃーい！
（スライディング土下座）

かくなるうえはこの「ナイスバデェな美人化学教師」に
この「超ハイレグのエッチな水着」を着せて
こーんな感じの「セクスィーなお詫びの舞い」を踊らせるでし
あっ！
ハイレグの角度から飛び出してきたこの四つ足の不気味な獣はいったい何だ！？
こら、あっち行け！
来るんじゃないっ！
痛てっ！
噛みやがったなぁ！
このお、あっち行けってば！
痛い！痛い！痛い！
食われる、食われるぅ！
誰か、助けてーっ！
（ムシャムシャ、バキボキ、ガリゴリ、ゴックン！）



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スク投稿リスト
・マラ実装エステの時代　　　08.01.02
・デスゥ・ノート①　　　　　08.01.30
・デスゥ・ノート②　　　　　08.02.01
・デスゥ・ノート③【完】　　08.02.03
・４８匹目の実装石　　　　　11.01.15
・シン・実装石　　　　　　　16.10.20
・聖バレンタインデーの虐殺　17.02.11
・本作　　　　　　　　　　　17.02.24


（スクの日付は初稿の完成日であり、修正版と入れ替えたスクは
　スクアップローダーの表示年月日と異なる場合があります）