タイトル:【虐】 説明文長いのは仕様デスゥ(でも反省)
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初投稿日時:2006/08/19-04:09:37修正日時:2006/08/19-04:09:37
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三代記 〜三代目達…悲劇と喜劇の実装生 後編〜

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3匹の仔実装は逃げた先の芝生の上で寄り固まって震えた。

「あのニンゲンヒドイテチィィィィ…いっぱい叩かれたテチィ!!」

「アタマ…ワタシのアタマ…ヒドイテチ…飾りなんかじゃなかったテチィー」

「あのニンゲンも頭悪いテチィ!あんなマヌケな面の実装石を飼うに相応しいニンゲンテチィ…
 ワタシ達を叩くなんて野蛮テチィ、危うく蛆チャンに当たるところだったテチィー」

2と5は両手が使えるので盛んに額の刻印に手を当てて泣いている。
1は、縫い付けられて離れない蛆実装を心配している。

「オネイチャン!どうするテチィ!こんなヒドイ事されて、こんなクサイフケツな場所で生きていけないテチィ」

「ナカマ…怖いテチィ…ニンゲンも怖いテチィ…ママの言ったとおりテチィ…お外は怖い事イッパイテチィィィィ」

「大丈夫テチィ!この世で最も賢く美しいワタシ達を飼わせて欲しいとひれ伏すニンゲンは居るテチィ!
 あんなマヌケヅラをペットにしたり、ママみたいなのを飼う下等ニンゲンとは違うテチィ!
 ワタシ達は、あのニンゲンに勝ったテチィ!妹チャンのカタキを取ったテチィ!!
 奴隷にしてワタシ達が見放したクズニンゲンテチィ!
 そんなクズニンゲンの嫉妬なんて、きっと見抜いてもらえるテチィン♪
 それだけ見る目のあるニンゲンなら、きっと贅沢三昧出来るテチィ〜♪」

実際にソコソコの知能があり、さらに自分が賢いと感じる糞虫は、基本的に饒舌になる傾向がある。
よく喋る事で知能の高さをアピール出来ると感じるからだ。

それにしても、口では何とでも言いながら、
結局、人間に飼われるという方向にしか逃げ道を見出せないのは、
彼女達が、所詮は飼われ、守られて生きてきた故の限界であった。


しかし、いくら夢を描いても、人間の家に居たときのように、
状況が安定して保全されることも、時間とともに状況が自然とよくなることなどありえない。


芝生の上で、3匹が寄り固まり、震え、泣き、恐れ、不満を語り合い、夢を描いても、
状況が変化する事は無かった。
彼女達には、実装石としていかなる状況でも”生きてはいける”本能がありながら、
守られた生活によって、何1つ経験したことは無いのだ。

「オネイチャン!!ウ・ウンチテチィ!おウンチ漏れちゃうテチィ!おまる…おまるドコデヂィィィィィ」

「ワタシも我慢の限界デチィィィィ!キレイな服が汚れるテチィ!おまるを探してテチィー!!」

「オオオ!おまるテチィ!漏らすなんて恥ずかしい事はダメテチィ!ガマンテチィー
 広いテチィ!どこにおまるが置いてあるテチィィィィィィィィン」

外の世界におまるがあるはずも無いのに、彼女達は今までの生活で、
すっかり馴れきったおまる以外で糞をする事に耐えられなかった。

彼女達は懸命にガマンしておまるをさがして駆け回った。
他の野良実装たちが、地面に平気で糞を落としているのを見ながらも、
記憶には薄いが漏らして怒られた事を思い出した。
同時におまるを使うとクサイのが広がらない、キタナイのに触らなくて良いという便利さを思い浮かべていた。
そして、それを使う以外をしなくなったので、ソレ以外の選択肢は無かった。

他の野良たちがその騒がしい3匹に注意を惹かれる中、
3匹は、1匹、また1匹と糞をガマンできずに歩きながら噴射した。
ガマンしただけに、余計に勢いが強く、さらに、それでも意識して排泄口を閉めているので、
ド派手な音と噴射で漏らした。
漏れているのに、堪えながらギクシャクと歩く姿は、壊れた玩具のように滑稽な姿である。

「テェェェェェ!お尻ビチビチするデヂィィィィィ」
「も・もらしちゃダメテチィ!!…ガマ…デビィィィィィィ!」
「おまる…おまる…漏れてないテチ、気のせいテチ」

「「デププププ…」」

その様子に周囲から大爆笑が沸き起こる。

「”おまるテチィ””おまるドコテチィ”デスゥ♪情けない泣き声デスゥ♪」
「醜い漏らし方デスゥ…デププププ」
「低脳の飼い実装らしい醜さデスゥ…お前たち、あんなバカに育ってはダメデスゥン」
「ハイ、ママわかっているテチィ〜」

この公園では、マルの時もそうだったが、餌は比較的豊富にある。
それだけに、日常に大きな諍いはなく、野良でも温和な生活をしている。
故に、この3匹が多少外観が違い、ニンゲンの庇護を受けた飼い実装である事がバレバレでも、
目の仇にされずにすんでいる。
執拗な攻撃を受けずに済んでいるが、そこは実装石、容赦の無い”口撃”が3匹を襲う。


「笑われてるテチ…」
「クサイイッパイテッチィ!キタナイイッパイテッチィ!」
「おまる無いテチィ…お風呂テチ!洗濯テチィ!…ワタシがこんなに汚れるなんてありえないテチィー」


3匹は同族の笑いを背に、逃げるように、今度は風呂を探した。
勿論、彼女達にとっての風呂は、人間の使う風呂であり、最低でもプラスチックの桶である。
水は上から自然に降ってくる温かい水であり、いい香りのする泡が出るものが無いと意味を成さなかった。


日が暮れる頃、ようやく、彼女達は池のほとりで諦めた。
途中、さらに1回、盛大に漏らした。
そして、思い描いたおまるや風呂が無い事を受け入れられないながらも納得するしかなかった。

冷たい水に身を浸す。
2と5は、丹念に服を脱いでから水に入る。

「冷たいテチィィィ…こんなのお風呂じゃないテチ、シャンプーも無いテッチ…ぜんぜんお洋服もキレイにならないテチー」

しかし、1は服を脱ごうとすると、両手で挟むようにして縫い付けられた蛆が悲鳴を上げる。
「レピィィィィィィィィィィィィ」
ピュ!
蛆の身体が横にニューっと引き伸ばされ、服の背中が裂け、皮膚も少し裂けて体液が飛び出す。
「テェ!蛆ちゃん…テ!手が使えないテチィ!」

愛情のあるなしに関わらず、仔実装にとって蛆実装は特別な存在である。
愛情の無い種ですら、余程の事がないと蛆には特別に、他の同族には見せないほどの愛情を注ぐ。
それは、本能的に、蛆実装は天地がひっくり返っても敵にならない弱さと低知能であると知っているからであり、
生態系枠外最弱の実装石にとって、これほど心を許せ、玩具として扱える相手は居ないからである。
同時に、仔実装や親指実装が妊娠して生まれるのは、ほぼ100%蛆実装である事から、
母性本能が刺激されるのもあるだろう。

とにかく、クソ1には、自発的に蛆を殺す事は出来ない。
服を脱ぎたい気持ちと、少しでも両手の間隔が開くと蛆には苦痛である事と、顔を真っ青にして葛藤した。
人間や脅威となる同族、それも姉妹に対してすら性格の悪いクソ1でも、
いや、だからこそ蛆実装には愛情が深いのだ。

クソ1は、結局、何度か蛆を引き裂きそうになる行為を試行錯誤して、
蛆をなんとか離そうとするが、どうする事も出来ずに、弱った蛆を抱えてそのまま水に入った。
賢いと自負する割りに、さらに、入水して手にした蛆を溺れさせそうになる状態である。
手に蛆が付いて離れない事が理解できていながらこの始末である。
結局、教えて覚えた事や道具は使いこなせるが、物の本質はなに1つ理解できていないのだ。


「お前たち…ワタシの身体を洗うテチィ!ワタシは蛆ちゃんを守る大切な役目があるテチィ…」

「イヤテチィィ!ウンチキタナイテチィ!そんなの触れないテッチィン!
 ワタシのウンチは、ワタシがキレイだから、まだウンチも少しキレイテチー、だから触れるテチィ」

「オネイチャンの言うことが聞けないテチィィィィィ!オマエのウンチがキレイなら、ワタシのウンチはまだキレイテチィー」

激しく怒りだす姉に、2と5は、シブシブ姉の服や身体を水で洗う。
しかし、少し考えれば判りそうなものだが、蛆を抱いて離せない1が、妹達に幾ら凄んでも何も出来ないのだ。
しかし、2と5は、知能で勝てない1に従う事を選んだ。

1も姉妹の中では賢い方と言われていたが、それでも、道具を使うことを覚えた分平均よりマシ程度だった。
素直に親の言う事にしたがって、言われたとおりのことをしている間は良く見えていただけである。
そして、2と5は、それに輪を掛けて頭の回転が本能寄りなのである。

いくら擦って洗っても汚れは取れない。
彼女達にとって、服とは洗えば新品同様の色になり、ほのかに心地よい匂いがする状態になる事が当たり前であった。
その基準から見れば、一発で飼いと野良がわかるほどには汚れの落ちた服でも、
まったく納得できないほど汚れていると感じている。

「ぜんぜんダメデヂィ…お手手が疲れたデヂィ…まだ、ウンチのニオイするテチ…いいかおりにならないテチィー」
「ワタシのパンチュ…緑が取れないテチァ!こすってもこすってもボロボロになるだけデチ…」
「お前たち手抜きしてるテチィ!ワタシクサイテチィ!早くワタシも洗うテチィ」

殆ど汚れが落ちない姿のまま、3時間も池の中に浸かり続けた。
日も落ち、皮膚が水にふやけてヨレヨレになった彼女達を次に襲ったのは空腹であった。

「お腹が空いたテチィ…体が重くて動けないテチィ…」
「食べ物のニオイしないテチィ…あの美味しいゴハンはドコテチィ!?」
無論、彼女達の思い描く食べ物は、最後に食べた味だけが濃い実装フードである。

「オネイチャン…助けてテスゥー」

彷徨っている途中に、ベンチの下から弱々しい声がする。
勝手に実装石を見つけて追い掛け回していた3番…マラ仔であった。

「マラチャン…どうし…テテテ!」

ベンチの下のマラ仔は、巨大に腫れ上がったマラを抱えるようにして足を投げ出して座っていた。
顔面は、金平糖の如くコブでボコボコになっていた。

マラ仔は、すっかり性欲に支配され、その欲望の求めるままに行動していた。
野良実装を見ては、当然とばかりに追い掛け回し、襲い掛かり、
そして、殴りつけられた。
マラ仔も、やはり、外と隔離されて育った事により、力の差を比較する事を知らなかった。
その上、飼い独特の根拠なき優位感が加わっている。

こうして散々殴られても、3は漲る欲望と、彼にとっての獲物がうろうろ歩き回っている姿に、
本能を満たそうと公園内を走り回った。
そして、顔がすっかり変形する頃に至って、ようやく体格の似た仔実装なら襲えるという結論に至った。
そして仔実装を狙うが、すっかりマラにばかり行って脳に体液が循環していないのか、
親が居るのもお構い無しに追い掛け回す。
そして、親に殴られるという事の繰り返しだ。
それでも所詮は相手も実装石、稀に愛情の薄い親の仔に当たると、
仔がマラに襲われたと、我先に逃げ出す親も居る。

しかし、ここからがこの3の悲劇である。
ついに獲物を組み伏せた3は、意気揚々と仔実装の排泄口に不釣合いなマラで犯しだす。
泣き叫び抵抗する相手にマラを押し込むのはマラ実装の少ない脳を刺激する。
その悲鳴や叫びは、快感をどんどん高めていく。
しかし、半田鏝で皮を被せられたマラは、肝心な肉欲的感覚を半減させている。
「テテ…テスゥ!?」
仔実装の腹を裂き、命を奪い、皮すらマラに引っかからないほど犯しても3はイケなかった。
ミンチの如き肉片の花を散らした仔実装の固まりを目に3は呆然とした。

こんなハズではない…もっとキモチイイハズだ…。

3は、こうして殴られながら延々と獲物を襲っては、ミンチになるまで犯した。

しかし、一向に気分は高まっても開放されない。
3は、自分のマラを殴りつけた。
何匹も犯して、既に脳内はイケない不完全燃焼と、確かに感じている感覚のオーバーヒートで、
マラがその僅かな衝撃で働き出す。

「キタキタ!コレテスゥゥゥゥゥ!!コレテッスゥ〜ン♪」

しかし、射精寸前の絶頂感を味わいながら、それが開放される事は無い。
焼き潰された尿道(実装石の場合は射精道か…)に遮られて射精感が得られない。
マラ実装が感じる真の快感は射精が全てである。
イッても出ないのは、これ以上無い”ナマゴロシ”状態である。
「ななな・何テスゥ!何テスコレは…」
射精感が無く、脳内が爆発寸止めの3は、再びマラを殴りだす。

確かに射精はしているのにマラから出せない。
快感が寸止めなので、少し殴れば簡単に射精しようと働く。
3のマラは、どんどん溜まった精子で膨らんでいった。
やがて、簡単にイケるのに、一向に満足できない3は、自分の胴体ほどの大きさに膨らんだマラを抱えて、
ベンチの下で途方に暮れるしかなかった。
重くて動きも取れない上に、無理に動けばさらに射精しようとする。
さらに、快感を開放されないストレスにより、興奮を通り越して憔悴しきっていたのだ。

「マラオネエチャン大変テチィィィ…」
5が3のマラに手を触れる。
「テスァァァァァァァァ!!」
イキたいが為に神経の過度に集中して過敏化したマラがプルンとして振動した。
また射精したのだ。

ビッ!皮が風船のように膨らむ。
どうやら、行き場をなくした精子が焼き潰された部分の僅かな裂け目を決壊させ、
今度は塞がれた皮の方に流れ出したようだ。
焼き潰されているので、当然、そこが決壊しても射精感は得られない。
3はさらに醜悪で、マヌケな姿に変貌した。
亀頭を覆う皮が膨らんで、自分の頭ほどに大きな風船を作る。
かといって、マラ自身の膨らみも殆ど納まらない。
3は、今ので完璧に身動きが出来なくなった。

「さ!触るなテスゥゥゥゥ」

「ゴメンテチィ…どうするテチ、オネイチャン…」
頼れるのは一番賢い仔…しかし、頼られる方は迷惑だ。
所詮、多少マシ程度の知能差しかないのだ。
「とと・とにかくゴハンテチィ!マラチャンはゴハンを食べて治るまでジッとしているテチィ!」

ガシャン!

「「何テチィ!」」

突如鳴り響く金属音に恐れる4匹。

金属音の正体は、実装石達の集団による”ゴミ箱倒し”である。
4匹はその様子をベンチの下から眺める。
大量の実装石が、ゴミ箱の網からはみ出しているモノを奪い合い、偏って取り付き、
それを奪い合いながら、さらに、その仲間達を踏み台に上のものをとろうとする連鎖が、
ゴミ箱を倒し、その屍を乗り越えて激しく中身を奪い合う。


「オネイチャン…アイツら何か食べてるテチィ!」
「よし、いくテチ!!ワタシ達もあそこでゴハン取ってくるテチィ」
「マラチャン待ってるテチィ!」

3匹はゴミの奪い合いに乗り込んだ。
この公園で、こうしたゴミ箱からしか餌を取れないのは比較的低級な実装石達である。
それだけに目の前の事にしか頭が回らない。
3匹はその隙間を縫って、色々と中にあったものを選んでは逃げてくる考えだ。

しかし、1は蛆が手から離れず、物が持てない事にそこで気が付いた。
しかも、蛆をこの混線の中から守らなければならない事も。

2と5も混線の中では物を物色する暇も無い。

3匹は殴られ、顔を腫らしながらベンチに逃げ戻る。
手に入ったのは、アイスの匂いが染み付いた木の棒と、固くなったコンビニ弁当の残りのゴハンの固まりであった。

「アイツら乱暴テチィィィィ…まったくクサイし、品が無いテチィー」
「何テチィ!?これは…ゼンゼン食べられないテチィ」

「とにかく均等に分けるテチィ!」
1の一言に2と5は不満を顕わにした。

「どうしてテチィ!ワタシはコレを必死で持ってきたテチィィィ、オネイチャンは何もしてないテチ!」
「こんな目に遭って持ってきたテチィ!どうして分けるテチィン」
空腹と食べ物を天秤に掛ければ、最初の言葉など吹っ飛ぶ。

「ワタシは蛆チャンを必死に守ったテチィィィィ!マラチャンもこんな姿テチィ!分けるのが当然テチィ」

渋々と獲物を均等に分け合う。
アイスの棒は食べられないので1が蛆実装に舐めさせる。
ご飯の固まりは手で4つに割って、まず2と5が食べる。
「か・かたいテチィ…こんなもの食べ物じゃないテチ…」
「美味しくないテチ…」
5匹は、最後に強い味の食べ物を食べた。
それだけに、食べ物の認識はその味が平均に固定されている。
それでも、空腹を前には選り好みは出来ない。

そして、2と5が動けない3のマラ仔にご飯を食べさせてやる。

その間、分けられた最後の固まりを1が食べようとする。
「レビィィィィァァァァァァァ」
手をご飯に伸ばそうとすると、木の棒を舐めていた蛆が泣き叫ぶ。
1は目の前の食事を取ることが出来ずに困惑した。

「おお、お前たち…マラチャンの次はワタシに食べさせるテチィ!」
2と5は更に不満を募らせる。
「勝手に食えばいいテチィ!」
「ワタシ達はオマエの道具じゃないテチィィィ」
2匹は1の手が塞がっているという状況が正確に把握できていないだけに、
さらに高慢な1の頼み方に不満が募っていく。

「ワタシはニンゲンにヒドイ事をされて蛆チャンを守っているテチィ
 姉妹は仲良くするのがママの教えテチィ!文句言わずに食わせろテチィ」
正確に説明して、さらに2匹がそれを理解できたのなら状況は改善したかもしれない。
しかし、結局は溝を深める形で2匹は渋々と1に食べ物を食わせた。

食事が終わると、3匹は再び近場の池で身体を洗う。

2はその時に異変を感じた。
髪を水に浸して手で梳かすと、手に髪が付着するのだ。
「テテテ!!ワタシの髪…髪デヂィィィィ」
一瞬、蒼白になり、狂ったように髪を梳かすが、その日はそれ以上抜けなかった。
しかし、除草剤に皮膚組織は犯され、徐々に侵食されていくのだ。

それを横目に、5はさかんに自分の髪を梳かす。
「テプププ…ワタシは美しいからそんな事にはならないテチィン♪」
しかし、気づいていないが、5の頭部には本来生えないところまで髪が、
それも産毛を通り越してしっかりと髪が伸び始めていた。
人間用の薬品は実装石には恐ろしく親睦性が高く、持ち前の再生機能と融和して劇的な育毛効果を引き出す。

そして、2匹で1と蛆を洗ってやる。
手つきは慣れてきたが、2匹とも、完全に1に対して不承不承で従っている状態だ。

それに、服が自分で脱げない1は、只でさえ抜けている実装石なのでひどく洗い残しが多い。
それでも、洗えないよりマシという考えに転換されていた。


4匹と蛆は、それ以上なにもすることが出来ずにベンチの下で夜を過ごした。
飼われて育った彼女達には、家を作る本能はあっても行動する術が無かった。



こうして何日かが過ぎた。
4匹は苦しみながらも生活に慣れだしていた。
トイレを相変わらず探すことはしていたが、我慢の限界を迎えると、
糞をどこでも漏らす事にも慣れていった。

プライドが残る分、その行為自体には苦痛が伴うが、
それでも、それをしてでも生きる欲望には勝てずに居た。

昼間はなんとか1と2と5は愛護派の撒き餌に参加しようとした。
あの、最後に食べたものと同じ匂いがする食べ物が堂々と撒かれているのだ。
しかし、額に『クソ』と書かれ、一際目立つ3匹は直接貰う事が出来ない。
人間に餌をねだりに来る実装石は、この公園では割と小奇麗な実装石が有利だからだ。
何日かして、体臭が強くなってくると(特に服の脱げない1)さらに人間はおろか同族にも煙たがられる。

キレイ好きである事が災いして”臭いに馴れた”彼女達は、自分はキレイ好きだから不潔な筈が無い。
今の自分は他人よりは清潔なハズだという解釈である。


さらに、2は捨てられた日に塗られた除草剤の効果で頭皮がただれ、
髪が日に日に抜け落ちていった。
5の方は、日に日に髪が伸びて止まらない。
本来生えないところまで生え出して、すっかりレゲエ歌手状態となっている。
どちらも、異常な容姿に人間も引いてしまう。
同族たちも、怖くて手が出せない。

その姿で、場を弁えずに自信満々に割り込んできて傲慢に要求する姿は、
彼女達が仔実装であっても、人間が愛護派であっても近寄りたがらない存在だ。
それによって、人間が去ってしまうので、同族からも徐々に目をつけられだす。
さらに、人間を見つけては「飼え飼え」とせがんでいれば人間はどんどん避けるようになっていく。
当人達も殆ど餌が手に入らず、相手にされないので、同族たちとの距離は開く一方である。
当然衝突する事もあり、ボコられ、服を破られてしまう。
生きていられるのは、この公園の実装石たちが餌が豊富なので温和であるという一点においてのみである。


結局、彼女達は夕方のゴミ箱漁りでなんとか食い繋いでいる状態である。


何日経っても、家を望み羨むばかりで自分達で行動して作ろうという考えには至らず、
相変わらず動けず弱っていく3と共に寝場所を転々として寒空の下で夜を過ごす毎日。


その3のマラ仔は、ついに、限界を超えた精液で一度、風船のように膨らんだ皮が弾け飛んだ。
大量の腐敗し醗酵した精子をぶちまけたが、マラはしぼんで動けるようになった。
しかし、それまでの間に長く包茎状態が続いた3のマラの皮は伸びて、すっかりその形状を覚えてしまい、
皮がなくなったと調子に乗って、また仔実装を襲っては、何日か虐殺を楽しんでストレスを解消するが、
そんな楽しみも1日もすれば再生した皮で風船を作る。
さらに、相変わらず射精の満足感は得られないので、精神的には発狂を始めている。
満足できない意欲が攻撃性を生み出し、動きづらくて他人に当たれない事で、
自分の服や髪を狂ったように引き裂いて暴れ、興奮で射精しては身動きを取れなくする事を繰り返した。
死なないのは定期的に犯せるという事で、満足はしないがストレスを解消できているからでしかない。
食事は取れるが、摂取する量など大量の無駄な射精で消費され、日に日にやつれて消耗していた。

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何日かに1度、俺はマルを連れて散歩に出る。

今までは、マルの気分転換、運動不足解消を兼ねての散歩だったが、
今は晒し者にするためだけの散歩である。

マルはそれも贖罪の為と、家を出るまでは多少の抵抗を見せるが、
外に出てしまえば大人しく紐に引かれている。

一応髪は残っているが、彼女の身に着けているものは、生まれたときからのボロボロな頭巾だけ、
服は無く、その股間はケロイドの跡が痛々しく、股間から生えた糞まみれの水道管が滑稽だ。
当然、人間、実装石問わずにマルの姿は笑いを誘う。

マルは相変わらず、睡眠は立ったまま取っているので、当然安眠も出来ずに肌はカサカサで、
誰も近寄って観察したくない異臭を放っているが、
近くで見れば、その肌は細かな皺やひび割れで老人の肌と化しているのがわかるだろう。

散歩を続ければ、公園にたどり着くまでに激しい侮辱が浴びせられる。
公園についても、野良や、マナーのなっていない実装石が飼い主の目を盗んではマルを蔑み、
俺がわざと長くリードを伸ばして、かなりの距離を開けて無関心を装って歩いているので、
容赦なく遠距離から糞を投げつける。

この侮辱にもマルは黙って耐える。
どうせ、怒って威嚇したところで、ヤツらが笑うだけ。
追い掛け回しても、俺にリードを引かれて、無様な姿を晒してヤツらを喜ばせるだけ。
それがマルには理解できているのだろう。

それでもマルがストレス死をしないのは、正直、俺にも不思議でならない。

そんな時の口癖は「ご主人様はもっと辛い目に遭ったデス…耐えてご主人様の笑顔を見るデス」だ。

残念だが、その願いは現状では叶えられないだろうな…。

俺も叶えさせてやる気は無いが、これ以上何かをして助ける気も妨害する気も起こらない。
する気は起こらないが”面倒なので早く死なないかな?”とは思っている。
ペットなら最後の瞬間まで面倒見てやりたいとは思うが、
こいつは所詮、実装石でしかない。


もう1つ、マルを定期的に散歩させる理由があった。

この公園に捨てた仔実装4匹と蛆の様子を見に来る為だ。

やつらは、苦しみながらも、やはり実装石らしく環境にそれなりに対応して生きていた。
1に仕込んだ蛆も役に立っているのか、クソ1はみすぼらしい、この公園でも下級クラスの身なりである。
クソ2は、身なりこそまともな姿ではあるが、薄めた除草剤で頭がただれ後ろも前も髪が薄くなっていた。
クソ5も、身なりは2と同等だが、増毛剤で頭頂部まで毛むくじゃら…頭だけ獣装石みたいである。
クソ3は、すっかりやせ細り、破裂しそうなマラを抱えて放心していたり、元気に物陰で仔実装を襲ったりと忙しい。

4匹は予想通り家を作る事が出来ないのか、雨風を凌げる場所を求めて公園を転々としているようだ。
定住できる場所にこだわらないのは、まだ人間に飼われる甘えがあるのだろう。
定住できる場所が得られないのは、その容姿では、流石にこの公園でも迫害対象になるからだろう。

俺はその様子を観察した。

目敏くこちらを見つけて擦り寄ってくる事もあった。
最初は”反省したから飼ってくれ”
”もう一度飼わせてやる”になり、徐々に罵倒するようになり、
やがて、俺の姿を見ても近寄らなくなっていた。
少しは学習効果があるようだが、それがどう成長していくかが俺の楽しみでもあった。

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そんなある日、1は事態を好転させる術を思い浮かんだ。

公園を闊歩するキレイな服の実装石達…親仔…
彼女達は実に楽しそうで、幸せそうで、キレイに着飾っていた。
それなのに、ワタシ達は選ばれた、ニンゲンを奴隷にまでした賢い実装石なのに、
この妙な頭の飾りのお陰で、何から何まで上手くいかない。
なのに、あんなのが美味しそうな食べ物を頬張っている。
あの幸せそうな飼い実装の手にしている幸せは、ワタシ達こそ相応しいのだ…と。

1は、素晴らしいアイデアが思い浮かんだ事に自画自賛しながら妹達を集めた。

「流石テチィ!オネイチャンはやっぱり天才テチィ♪」

4匹はすぐに行動を開始した。
1の考えた策は単純なものだった。
あの無防備な仔実装と入れ替わるという考えだった。

可哀相な飼い実装親仔は、食事が終わってくつろいでいた。

親は小さな親指達と共に飼い主にべったり付いて遊んでいる。
5匹の仔は、それぞれ、首輪から紐を外されて暖かい陽気の芝生の上を駆け回っていた。

1がゆっくりと近づいて挨拶をする。

「こんにちはテチィ♪今日はいい天気なので蛆チャンとお散歩してるテチィ♪」

5匹はペット実装の仔で、かつ、ちゃんと躾けられているのか、
異臭を出す1の姿を見ても、ちゃんと丁寧に挨拶を交わした。

「「こ・こんにちはテチ♪」」
5匹が並んでお辞儀をする。
こうする事が5匹の教わった礼儀であった。

「貴方達にも蛆チャンと遊んで欲しいテチィ♪」

「蛆チャン、カワイイテチィ♪」
5匹は蛆に興味を示す。
家族でなくても、知能未熟な仔実装にとって蛆は母性本能をくすぐる可愛い愛玩動物と同等である。

「こっちでみんなで蛆チャンをレフレフさせてあげて欲しいテチィー♪」
言葉巧みに、1は5匹を芝生から植え込みの木の茂る場所に誘導する。

「ゴ・ゴメンテチィ…ママにはあまり遠くに行くなって言われてるテチィ…」

「遊んでくれるのは嘘テチィ!?ヒドイテチィ…テェ〜ン…蛆チャンレフレフしてもらえないテチィー
 お前たちはウソツキテチィ…ワタシが野良だと思ってからかっているテチィ!」
懸命の演技だ。
5匹の仔は、元が大人しいペットの仔で、他者を疑うことを知らずに育っていた。
そこまで言われると、自分達がヒドイ事をしているという自責の念に心を痛めた。

「ゴメンテチ…ぜんぜんそんな事思っていないテチィ、一緒に遊んであげるテチィ〜♪」

5匹は、誘われるままに茂みに入った。

それを4方から4匹が囲む。
こういう悪知恵が働くときは、トコトン狡猾なのも実装石の救えない点である。

「テプププ…おバカは簡単に引っかかるテチィ!やっぱりお前たちよりワタシ達が人間に飼われるに相応しいテチィ〜ン♪」

「「な・何を言っているテチィ?ここで遊ぶテチィ?」」

「テピァァァァァァ!!」
「オンナテスゥ!オカス!オカス!」
再度マラが爆発して皮がなくなった3が1匹に襲い掛かる。
獲物を前にして、とどまる事を知らない性欲が弱りきった肉体に力を与える。

3は、仔実装を背後から突き倒すと、逃げないように後ろ髪の束に噛み付いて、
服を脱がせるのも面倒と、下着の上から強引に包茎マラを突き立てた。
「デヂィィィィィィィ…」
一気に排泄口を裂かられ、仔実装は悲鳴を上げる。

その様子に4匹の仔は驚き一斉に腰を抜かしてパンコンする。
「テピィィィィ!ヒマワリチャン!ヒマワリチャンを助けてテチィ!」
マラの存在に慣れていない飼い実装の仔は、その光景に恐怖して反抗する力を失った。

「ヒマワリチャーン、ヒマワリチャーン♪マヌケテチィー、醜いテチィ♪お漏らしテチィ♪」
「テプププ…クサイお前たちは、みんなマラチャンに犯されるメスドレイテチィン♪」
「さぁ、さっさとそのワタシ達に相応しい服を寄越すテチィ!!お前たちには勿体無いテチー」

「「テテテ…デチァァァァァァァ!!」」

1の指揮の元、2と5は、腰を抜かしている仔実装達から、1匹に対して2匹掛りで服やリボンを奪い去った。
反撃する力の無い相手に容赦なく殴り蹴り、服を奪っては身に着けていく。
半殺しにした仔は、そのまま3がオナホを扱うがごとく犯して殺した。

数分後、4匹の仔が3によってグズグズの肉片になっていた。
それぞれの着る物を奪って身に付け、3と1にも着せて完成だ。

服を着た2と5は、肉片となった仔達をさらに食い散らかした。
「「さすがいい物食べてると肉もウマイテチィー!」」

さらに1は、このときとばかりと自分の服を破かせ、飼い仔実装の服の背中を破って羽織らせた。
こういうことには非常に頭の回転が良い。

3は服を着せられた後も、最後の仔を犯している真っ最中だ…。
とにかく、射精はしているが射精の感触が無いので、やはり満足できずに居る。
「テステステステステスゥゥゥゥ」
「ベッ!テッ!ヒペッ!チァッ!」

「マラチャン、もういいテチィ!そろそろいかないと怪しまれるテチィ
 そんなのは、ニンゲンに飼われたら、マラも治してもらっていくらでも楽しめるテチィィィ」

3は、渋々と1にしたがって下半身を破壊した仔実装から離れた。

茂みから出ると、人間と親実装が仔実装たちを探していた。
『サクラー、ウメー、ツバキー、ユリー…キクちゃん、あの仔達何処に行ったのかしら?』
「ヒマワリー!ドコに行ったデスゥ〜」

4匹は悠々と駆け出していった。
コレでワタシ達は、またニンゲンを奴隷にして豪華な食事とお風呂と家が手に入る…。

「ママ〜、ニンゲン〜、待たせたテチィ!ワタシはココに居るテチィ〜」
「レヒィィィレッフ〜♪」
「早くニンゲンの家に連れて行くテッチィ〜ン♪テテテ!帰るテッチィ〜ン♪」
「メステスゥ〜ワタシにメスを用意して欲しいテスゥー」
「お腹ペコペコになったテチィー美味しいもの用意しないと許さないテチィ♪」

しかし、4匹は自分達の頭では上手く化けたつもりだろうが、
元の仔には蛆やマラは居なかったのを考慮していない。
服さえかぶっていればマラがはみ出していてもお構いなし、
頭が数本の毛だけがだらしなく残っていたり、
逆に、パンクの様にゴワゴワの髪で頭巾がかぶれなくてもお構いなし、

何より、その服には仔実装の体液や肉片がびっしりこびり付いていた。

「デェ!ナニデス!お前たちは!!」

「何を言っているテチィ!?ワタシは”ヒマワリ”テチィ♪」
「そうテチィ!ママ何を言っているテチィ?ワタシは”ヒマワリ”テチン♪」
「ワタシは”ヒマワリ”テスゥ♪」
「ワタシも”ヒマワリ”テチィン♪ママ〜」
姉に習って2,3,5はそれぞれ真似をした。

飼い主と親実装は困惑した。
いったい何が仔実装に起こったのか…最悪の事態しか頭に描けなかった。
なにせ、目の前で可愛い(?)媚び姿勢をとっている”4匹”は、
5匹の仔実装に何1つ似ているところが無い不潔で異形の連中だ。
ソレが飼い実装にしか…それもあの5匹に与えたのと同じフリル付の実装服を身にまとっている。
服は汚れ、一目で実装石の体液と判る状態だ。

「テ…テ…ママ…ゴシュジン…サマ…た・タスケ」

ガサガサ…
草むらから下半身を破壊され、腹の裂けた仔実装が這って出てくる。

『ツバキちゃん!』
「ツ!ツバキデスゥ!」

飼い主と親は、4匹を無視して仔実装の元に駆け出していく。
4匹は、慌ててその後を追って仔実装を抱えあげる人間や、それを見上げる親実装に擦り寄った。

「そ、ソイツはヘンなヤツテチィ〜、ワタシ達の真似をするクソムシテチィ〜」

「ウソツキはお前達デスゥ!」
ベチン!親実装のビンタが2の頬を激しく歪める。
仔を殺された怒りで、親実装は自分の腕が衝撃で折れるのも構わない威力で2をぶった。

『よくも、この仔達を…』
グシャ!飼い主が、足にこすり付けられる3のマラを踏み潰す。
怒りで、靴が汚れるのも構わずに何度も踏みつける。
「デビァァァァァテハヒィィィィ!!」

「どうしてテチィ!ホラ、ニン…ゴシュジンサマ!こんなにカワイイ蛆チャンもいるテチィ!
 そいつなんかよりカワイイテチィ〜ン♪
 ”ツバキ”の服テチィ!みんな”ツバキ”テチィ!?ちゃんと5人居るテチィ!
 何でバレ…何でカワイイワタシ達を疑うテチィ?」

マルに大きな落ち度があるとすれば、仔実装たちに”名前”を与えなかった事だろう。

実装石にとって名前は特別なものであり、個を認識させるものだ。
特に、人間から与えられた名前には執着する。
飼われている安心感が得られる大きな拠り所であり、大きな他者へのアドバンテージだ。
マルは、それを知りすぎていただけに、下手に増長しないように名前は特別なときにだけ与えようと考えた。
もし、生まれた時から、人間に名前を与えてもらうという事をしていれば、
マルの6匹の仔は、少しは人間に、良い意味で依存する事を学んだかもしれなかった。

しかし、この仔達は名前の概念が存在していなかった。
人間が仔の名前を呼んでも理解できない。
しかし親実装が仔の名前を言っているのはわかった。
だから、唯一理解できた”ヒマワリ”という名を全員が名乗った。
そして、他者に与えられた名前の概念が理解できないので”ツバキ”という単語がわかるとツバキに乗り換えた。

「許さないデスゥ!ワタシの大切な仔を殺したデスゥ!!殺し返してやるデスゥー!!」
親実装は確かに育ちの良いペット実装であり、さらに格別に愛情が深いのか、
折れた腕を振り回して、痛みに歯を食いしばりながらも、狂ったように4匹を追い回した。
当の4匹は、バカな3を除いて、何故自分達の完璧な作戦がバレたのか理解できずに戸惑った。

その親実装石を飼い主が抱え上げる。
”やった、助かった”1がそうおもった。
”コレでまた贅沢できる…”そう思って顔を緩めて人間の足元に近寄ろうとした瞬間…。

キッ!
人間の鋭い視線が1を貫いた。
4匹は一斉に腰を抜かして倒れる。
その視線を4匹は、かつて見た事がある目だったからだ。
人間の見せる”怒りに燃えたような視線”
4匹が都合よく記憶から消しても、あの時の”恐怖”はしっかり残っていた。

とくに、3は記憶的には脳を潰されて忘れ去っていても、
いわゆる”偽石情報”ともいえる根底に残る情報が危険を知らせる為に蘇る。

3は腰を抜かし、マラが萎え、僅かに数本残る後ろ髪が白く脱色していた。

人間はその目のまま、4匹を睨み、まだ怒る親実装と半死の仔を抱いたままその場を去った。

4匹はとりあえず自分達の命があることを喜び、
せっかくの恐怖も、その喜びに浸るうちに、またも自分達の勝利と自画自賛した。

人間に飼われる作戦だったのが、いつの間にか、ニンゲンをまた奴隷にしたという喜びに変えていた。


その数日後だった。
その日は、朝から様子がおかしかった。

野良実装石達がベンチのある中央歩道に集まっていたが、みんな呆然と立ち尽くしている。

朝、来るはずの餌撒きの人間が一向にやってこないのである。

実装石たちは何もすることが無く歩道で立ち尽くしている間に、どんどんザワついてくる。
全員、今日は何かがおかしいと感じて不安を語り合っているのだ。

”エサニンゲン来ないデスゥ”
”フツウのニンゲン達も一人も居ないデス!”
”ウロウロする目障りの飼われているヤツラも居ないデス…”
”アイツら目障りだけど、アイツらニンゲン連れてくるデス”
”お腹空いたデスゥ…ワタシはあのゴハンでないと受け付けないデスゥン…”

「ニンゲン来たデスゥ!いつものヤツらじゃないけど、とってもイッパイ来たデスゥン♪
 とっても色々手に持ってるデスゥ♪」

入り口近くまで行っていた実装石が広場に駆け込んでくる。

この公園には餌の層によってある程度のコミュニティーらしきものが形成されてイタズラな奪い合いを防いでいる。
ハーレムとは違い、組織を形成し、ある程度の役割分担と共生制度がある。
ちゃんと、こんな場合に備えて、入り口から監視している連中が居るのだ。

実装石達はその言葉に一斉に入り口に向かって歩き出す。

「ニニニニニニ!ニゲルデスゥゥゥゥゥ!!あのニンゲン達、様子がおかしいデスゥ!!」
別の伝令が走ってくる。
しかし、実装石達は肉の壁となって押し寄せて、伝令を押し返しながら入り口を目指す。
定時を過ぎて、我慢弱い実装石たちの頭には餌しかなかった。

しかし、彼女達の様子もすぐに一変する。
入り口に居た伝令実装や、付近にいた実装石達が人間に捕まっているのだ。
人間の手にしているのは、自分達を入れるための袋だ。

入り口近辺のダンボールハウスやゴミハウスが目の前で破壊され、
中から成体・仔を問わずに引きずり出され袋に詰められていく。

『おっ居たぞ、この公園も増えたなぁ』
『あんなにかよ…気が滅入るぜ』

ようやく、実装石の集団は理解した。
”これは命に関わる危機だ”と。
実装石達は一斉に逃げ出した。

男たちは、市の依頼を受けた駆除業者である。

今までは、この公園にだけは業者が入らなかった。
愛護派の運動で、せめて何箇所かは実装石の住める公園を作って欲しいという要望で除外された公園だった。
野良実装石も安住でき、餌が豊富なら必要以上に悪いことはしないというのが理論だった。
公園の清掃や餌管理は愛護ボランティアがするというのが条件だった。
愛護派の餌まきで餌が豊富なのはこんな理由があったのだ。

実装石たちの知らないところで、彼女達はある程度必要以上の野良の流入を抑制され、
危険なマラも必要以上が入り込んだり、大規模ハーレム化する前に手が打たれていた。
実の所は、自分達の飼い実装が安心して散歩できる公園さえあればよいのだが、
建前上、野良を保護し、その野良が決して悪いものではないという印象を与える必要があっただけである。
それは、自分達の理論が正しいという事を実践し、多くの人が実装石を飼い、
多くの利益が誰かの懐に入る事が根底にはある。

とにかく、違う意味でこの実装石と気軽に触れ合える公園の彼女達は”飼われた”存在だったのだ。

それが狂ったのは、この4匹の捨て実装が全てであった。
彼女達の不快な行動の数々が、この公園全体の実装石の質を、評価的にも現実的にも下げていたからである。
飼われていたプライドだけで、人間にも同族にも不遜の態度である4匹が居れば、
その僅かな争いの種が…。
ある程度の秩序と平和な世界に4匹のような作られた貧富のボーダーブレイカーが存在する事で、
平和に慣れた彼女らは、それを真っ先に排除するのではなく、
ある意味、彼女達より目立てばよいだけの話だとなっていった為、
醜い媚びに磨きがかかり、しかも、手当たり次第に寄っていくというのが公園全体のスタイルとなってしまった。
これまで、ゴミ漁りしか出来なかった低ランク実装コミュからも、
彼女達が出来るなら…と、昼は人間に、夜はゴミ漁りと欲張った生活を望むものが増えてきた。

餌をねだりに来る実装石の絶対数が増え、その行動も抑制がなくなりだし愛護派でない人間には居心地の悪い公園となった。

その苦情は日に日に市に寄せられ、ついにトドメとなったのが、
4匹による飼い実装惨殺事件である。
ただの惨殺ではなく、野良が成りすます為に仔を襲ったのが衝撃であった。
過去に成りすましの例が無いわけではない。

しかし、実際に起こるまでは他人事でしかなかったのが現実となったのだ。
そうなれば、実装石ならどんな事でもやるだろう…という考えだ。
これには、流石の愛護派ボランティアも取り繕う所ではない。
なにせ、支えとなる会員自体が、あの公園にはペットを連れて行けないとなったのである。
もはや内側からコレでは、実装ショップの目論見も愛護派議員や有力者も形無しである。

そして、公園の野良に対する許可は簡単に降りた。
旗色の悪くなった愛護派は、公園の実装石を徹底駆除して、今度は飼い実装だけの公園をと望んだのである。

この公園の野良たちは、人間の都合によって保護され、そして切られたのである。


何が起きているか、大半の実装石は理解できないままパニックが起き、それが更にパニックを生んだ。
逃げ惑うもの、媚びに行くもの、許しを請うもの…統制を失った大量の実装石の緑の帯が、
公園をうねうねと動いていく。

それを数十人の専門駆除業者が割って入り、次々と緑色を減らしていく。

ボフッ!ボフッ!
空気砲による大型投網も投入される。

捕まった仲間は麻袋に入れられ、数人の人間が袋の口を押さえながら棒で叩き潰し、
程よく容積を小さくしてから、処理車の投入口に投げ込む。
処理車では、投入口から入れられた潰された実装石がさらに細かくミキサーで潰され、
待機するタンク車の荷台に”半液体のミンチ”にされ詰め込まれる。
徹底して再生しないようにする為に、ミンチはさらに専用の焼却炉に送られるのだ。

家は徹底して茂みの中も探され、再構築できないほどに壊され中身は引きずり出される。

一軒の天然の小さな土の穴を利用した家すら暴かれる。
そこに住んでいたのは1匹の親実装と1匹の仔実装、そして、大量の蛆実装だった。
彼女達は元ペットであり、豊かなコミュの構成員であり、知能が高く愛情が特に強く、
足手まといになりがちな蛆実装を一時的に預かったり、
親とはぐれたりした蛆実装を保護しては、この穴で愛情を持って育てる事を生きがいとしていた。
彼女達は”託児所や保育所”の役割を引き受けることを生きがいとしていた。

マラが主体で作られるハーレムとは違い、元飼いや知能の高いほうの実装石があつまって出来たこの公園の上層コミュは、
こうした社会生活の機能を備える事で、安定した秩序を形成していたのだった。
安定した秩序が、高い知能の安定を生み、悪戯な増殖を防ぎ、
彼女達が、知能の低い低層や下級のコミュにニラミを効かせて一定の数を維持する秩序を保っていた。

愛護派の思惑を超えて、この公園では、優れたコミュが形成されつつあったのだ。

それが、あの4匹の行動によって破壊される形になってしまった。

彼女達のささやかな幸せ…それすらも、容赦なく人間の手に掛かる。
「蛆ちゃん達は誰にも渡さないデスゥ!ニンゲンさん、この仔達は見逃して欲しいデスゥ!」
「蛆チャン達ィィィィ!!ヤメテテチィィィ!離してテチィ!その仔達は何も出来ないテッチィー!テ!テ!テェェェェェェェェン」
責任感の強い彼女達親仔は、懸命に人間に抵抗して蛆を守ろうとしたが、
人間相手には抵抗らしい抵抗も出来ずに、保護した蛆たちと共に麻袋に詰め込まれ、
殴打され、蛆達の肉と溶け合った。

上層コミュと低層コミュと最下級コミュの実装石が入り乱れてパニックを起したため、
そのパニックは統制を失い、デタラメに逃げ惑う連中がぶつかり合ったり踏み潰しあって地獄絵図が展開する。

人間が手を下すまでも無く、開けた場所には何十という実装石の死骸や放心した実装石達が置き去りにされた。


4匹は逃げ惑う実装石たちに巻き込まれる形で公園の林の深い場所に逃げてきていた。
この公園には、本格的な実装公園を視野に入れて、越冬しやすい環境をと大量の植林された部分があった。
その愛護派により作られた林が業者の作業を停滞させ、実装石達を守る砦となった。

賢いコミュが越冬用に林の中に作った洞穴には、今、大量の実装石がひしめいていた。
賢い、低層問わず、とにかく逃げる事に成功した者達がいくつかの洞穴に身を寄せていた。

その1つに、4匹も紛れ込んでいた。

「ニンゲン怖いデスゥ…」
「どうしてニンゲンがワタシ達をここまでイジメるデスゥ!?」
「ママ…ママが捕まったテチ…」
「ミドリちゃんが…ワタシのミドリちゃんが踏み潰されたデスゥ」
「ママー、ママの言うとおり、踊りもお歌も、ご挨拶もガンバッタテチィ…なのにニンゲンは怖かったテチィ」
「痛い…痛い…頭が、ウデが痛いデス…足が食べられたデス」

まともな姿の実装石は殆どいなかった。
顔を腫らし、腕を失い、親を仔を失い、糞尿や仲間の血にまみれ…もはや上層・低層の区別も無い。


その中で1匹、まともな実装石が洞穴の高い位置に座っていた。
彼女が上層コミュのリーダーであった。
「ここにはすぐにニンゲンは来ないデス…冷静に考えるデス…ワタシ達が何かしないとこんなことにはならないデス
 何かが起こったために、ニンゲン達が怒っているデス」

「「ワタシ達は何もしていないデスゥ!」」
実は、自分達の媚びも原因の1つではあるが、実装石がそれを理解する事は無い。

「スイサマ…ワタシの仔が前に見たと言う話があるデスゥ…
 ニンゲンの飼い実装の仔達を襲ったヤツが居るデスゥ!考えられるのはそれしか無いデスゥ!!」

この公園にとって、人間の飼い実装を殺すという事は、余程の事が無い限りは絶対の禁止事項であった。
殺しあわないと言うのは、飼い実装たちと自分達の暗黙の了解であった。
確かに、見下しがちで幸せそうな姿を見せる飼い実装を、野良は憧れと共に気に食わない視線を向ける。
しかし、飼い実装たちが来る事で、人間が豊富に訪れ、この公園の秩序が維持できる面もある。
それが理解できる上層コミュの実装石は徹底してコレを遵守し、遵守させてきた。

そして、それを破るのは、コミュに加わらない最下級でも下級の狂った飢餓実装か、
4匹のように新参者で、ルールに加わろうとしない連中しか居ない。

「あそこテチィ…あそこのミニクイ4匹がやったテチィ!」
「娘の見たのは正しいデス!あいつらの服はペット連中の服デス!」

洞穴の数十という実装石達の視線が4匹に注がれる。

「「テ!」」

流石にコレだけの同族の攻撃的視線に晒された4匹は震え上がる。

「なな・何テチィ…ワタシは”ツバキ”テチィ!えらいテチィ!文句あるテチィ!」
1が反論になっていない反論をする。
名前がある=偉い基準だけはあるので、覚えたての名前を誇ってみた。

一瞬の間が空いて笑いが起きる。

「ツバキだから何デスゥ?」
まだ、クズな仔実装のたわごとと受け止められている。

「ワタシはニンゲン奴隷を飼ってやってたテチィ!ニンゲンも勝てないテチィ!」
「そうテチィ!ワタシはお前達とは違うテチィ!”ヒマワリ”で”ツバキ”テチィ!何かしたらニンゲンと同じく泣かせてやるテチィ!」
悲しいかな、彼女達には脳内に人間に勝ち続けた印象しか残っていなかった。
自分達は人間に勝てる程強い、だから、お前達にも勝てるという理論でなんとか自身を奮い立たせようとしていた。

「あいつらだってボコボコにして食ったテチィ!あいつらと同じく泣いても許さないテチィィィィ!!」

ザワザワ…洞穴の空気が変わる。

犯人が自供したのである。
実装石たちにとってこれほど明確な証拠は存在しない。

「お前たちは…昔あったことがある実装石に似ているデス…匂いも似ているデス…
 とても気に食わないヤツだったデス
 あいつの仔だとしたらそれらしいクズムシどもデス」
スイという実装石が睨む。
ちなみにスイは、あのマルの母親を助けた賢く優しい実装石の仔で、
マルを半殺しにした仔達の1匹だった。
今はその母から継いだ知能で、こうした越冬に備えた穴を掘らせる程の上層コミュのリーダーである。
これも運命と言うべきであろうか…。

駆除業者が予定時刻で作業を終えて帰る中、人知れず洞穴の中では”喜劇の宴”が始まろうとしていた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

終章 三代記 へつづく…

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1 Re: Name:匿名石 2014/10/30-22:48:06 No:00001529[申告]
二代目だけじゃなくて初代の因果がここでも襲い来るのか
こういうとこが長編、年代記の味だなあ
2 Re: Name:匿名石 2021/09/09-08:59:04 No:00006416[申告]
賢く優しい実装石の仔とは言っているものの、結局仔は親を馬鹿にされていたとはいえ、マルを無意味に半殺して笑い者にしていた糞蟲に過ぎないんだよなあ。生活の知恵があっても結局は性格が親とはまるで違う糞だから、過去の行いの因果応報でコミュの崩壊を招いているという。
3 Re: Name:匿名石 2024/02/15-18:30:53 No:00008730[申告]
バカ飼い主がクソどもを捨てたせいで飼いが被害に遭ってるじゃねーか
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