タイトル:【虐】 野良実装ちゃんのためにしてあげられること
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作者:みぃ 総投稿数:41 総ダウンロード数:2228 レス数:8
初投稿日時:2016/08/25-00:14:44修正日時:2016/11/26-06:48:57
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「ふぅ、今日も大量デス」

 その成体実装石は住処に戻ってくると、果実のいっぱい詰まったビニール袋を奥の貯蔵庫に置いた。
 一つを手にとって地面に腰掛け壁面に背中を預けて食事にする。

「美味しいデッス〜♪」

 えもいわれぬ甘味に舌鼓を打ちつつ、今日も日々の糧を得られた事を神に感謝する実装石であった。。



 彼女は野良実装である。当然ながら名前はない。
 住んでいるのは開発から取り残された小山の岩場にある横穴。
 周囲には何件かの民家があるが山に入ってくる人間はほとんどいない。

 山に危険な動物はいないし、果実が採れる木もある。
 人里を歩き回るのは危険だが、いろいろと役に立つモノを拾うことが出来る。
 使い古された布きれや貯水に必要なペットボトルは集落のゴミ捨て場で拾ったものだ。

 人と自然の恵みをいいとこ取りしながら生きる、典型的な田舎の郷実装だった。

 とはいえ野良実装には違いない。時には食べ物がとれないときもあるし、
 興味本位で虐めようとする人間の子供に追いかけられることもある。
 それでも彼女は今日までなんとか生き延びてきた。
 美味しい果実を食べれば幸せを感じるし、温かい布きれにくるまって眠るときは心から安らげる。
 だけど、彼女はひとつだけ辛いことがあった。

 この辺りには同族が一匹もいないのだ。



 実装石の数が少ないということは悪いことではない。
 餌を奪い合う競合相手がいなければその分だけ多くの食料を手に入れられるし、変な嫉妬や恨みを買って無駄な争いをしなくて済む。
 だけど、この広い世界に実装石が自分一匹だけというのはあまりに寂しかった。

「もうすぐデス。もうちょっとだけ、この冬が終わったら……」

 そんな彼女には夢がある。

「仔を産んで、みんなで楽しく暮らすデス」

 たくさんの仔を産み、育て、この山を自分の子孫でいっぱいにすることだ。




 郷実装とはいえ野良生活は辛い。
 親の庇護があるとはいえ、仔たちはきっと苦しい目にあうこともあるだろう。
 それはこの歳まで生きてきた自分が一番よくわかっている。
 もちろん出来るだけ仔に辛い思いはさせないよう準備は万全にしてきたつもりだ。

 生きることは辛い。そんなことは当然だ。
 でも産まれてきたから食べ物を美味しいと思い、雄大な景色を美しいと思い、他者と触れあうことに喜びを感じられる。

「ワタシは仔たちに少しでも多くの『楽しい』を与えてあげたいデス」

 それだけを生きがいにしつつ、彼女は今年の冬を迎えた。
 彼女が生きてきた3年間の中で最も寒い冬だったが、
 決して壊れることのない天然のねぐらと、秋までにしっかりと越冬の準備を整えたおかげで、無事に辛い季節を超えることが出来た。

 そして春がやって来た。
 寒さのぶり返しがないことを確認すると、彼女はひと房の花を摘んで家に戻った。

「デップ〜ン♪」

 命を宿す儀式を行い、彼女は見事に花粉を使って仔を孕む事に成功した。

「デッデロゲ〜♪ ワタシのかわいい仔たち、早く産まれてくるデス〜♪ この世界は辛いこともあるけど、それ以上に素敵なことでいっぱいデス〜♪」

 素晴らしい景色を見た時よりも、美味しい果実を食べたときよりも。
 これまでに感じたどんな幸せよりもずっとずーっと素晴らしい幸福感に彼女は浸っていた。
 新しい命を授かるというのはこんなにも素敵なことなのか。

 ずっと昔の遠い記憶を思い出す。
 彼女は温かい誰かに包まれていた。
 あれはママだったか、姉妹だったか。
 
 今はもう遠い思い出の中にしかない『他者』の温もり。
 それがもうすぐ手に入る。自分の血肉を分けた大切な大切な娘が産まれるのだ。

 彼女は幸せの絶頂を味わっていた。





   ※

 マァーッ!
 マァァーッ!

 なんて立派なんでしょう!
 野良の実装ちゃんがまさかこの冬を乗り越えるなんて思いもしませんでしたザマス!

 ええ。彼女のことは随分と前から知っていたザマス。
 どこから入ったのか知らんザマスが、随分と前からうちの裏山に住み着いていたザマス。

 彼女はとても賢い仔だったザマス。
 何度か私が善意で餌をあげようとしたザマスが、いつも警戒して近づかなかったザマス。

 確かに世の中には実装ちゃんを虐めることで性的興奮を覚える虐待派とかいうおぞましい人種もいるザマス。
 やつらは巧みに実装ちゃんを騙しておびき寄せ、散々良い思いをさせた後で突き落とす信じられないほど外道なことをするザマス。
 そういう鬼畜どもから身を守るためには誰であろうと人間に近づかないのは正しいザマス。

 本当ならこんな可愛くて良い仔は私が飼ってあげたいザマス。
 でも主人が動物嫌いザマスから無理ザマス……
 ごめんなさいザマス、実装ちゃん……

 せめて一生懸命生きているあの仔のために何かしてあげたいザマス。
 そこで私はいろいろと調べたザマス。
 野良で生きる動物は猫も実装石もとっても辛い生活を送っているザマス。
 人間の与える食べ物を食べない賢い仔ザマス。
 だからいつも餌には事欠いていると思うザマス。



 せめて、あの仔にこれ以上の負担がかからないようにしてあげたいザマス。



 そうと決まれば即座に行動ザマス。
 彼女が山の中の小さな横穴をねぐらにしているのは調査済みザマス。
 夜中にこっそりと近づいて中を照らしたザマス。
 実装ちゃんはタオルにくるまってデピーデピーと寝息を立てて眠っていたザマス。超かわいいザマス。
 さて、ちょっと中にお邪魔するザマス。

「デッ!? デシャァァァァア! デシャァァァァァ!」

 おや、起こしてしまったザマス。
 威嚇されてしまったザマス。大丈夫ザマス。私は敵じゃないザマス。

「デシャァァァァァァッ!」

 奥から実装ちゃんを引っ張り出して抱き上げるザマス。
 おお、よしよし。腕の中で暴れる実装ちゃんをなんとか宥めようとするザマスが、言うことを聞いてくれないザマス。
 本当は家に連れて帰ってから行うつもりでしたが、仕方ないのでこの場で『施術』開始ザマス。

「デェッ! デッギャァァァァ!」

 実装ちゃんの右目を掴んで勢いよく引っ張るザマス。
 おお、痛いザマスね。でもちょっとの我慢ザマス。

 ん……意外と固いザマスね。
 ちょっと力を込めて……どっこいしょぉ! ザマス。

「デギャァァァァァァァァァァッ!」

 よし、とれたザマス。
 さあ次はこいつザマス。

 半狂乱で暴れる実装ちゃんを膝で押さえつつ、持ってきた長い鉄の棒をバーナーで炙るザマス。
 赤くなったあたりで実装ちゃんを仰向けにして超高温の鉄の棒を瞳のなくなった眼窩に突っ込むザマス。

「デッギャァァァアァァ! デギャァァァッァァッ!?」

 おお、よしよし。もうちょっとザマス。我慢するザマス。
 実装ちゃんを飼ってあげられない私があなたのためにしてあげられることはひとつだけザマス。
 それは『避妊手術』ザマス。

 実装ちゃんは一度にたくさんの仔を産むザマス。
 これまでたった一匹で生きてきた実装ちゃんザマス。
 きっと仔を産めばその生活は大きく変わってしまうザマス。
 ギリギリの生活を送っていた野良の実装ちゃんに仔のぶんまで餌を集めさせるのは酷ザマス。

 それに、下手に産まれても辛い目に遭う実装ちゃんが増えるだけザマス。
 食べるモノもなく、寒さに凍えるだけの命ならば産まれない方がいいに決まってるザマス。
 悲しい命を増やさないように手を貸してあげるのが、実装ちゃんを愛する人間の務めザマス。

 ……ふう、これだけ焼けば再生はしないザマスね。

「デェッ、デェッ……」

 実装ちゃんは痛みに涙を流しているザマス。
 ごめんなさいザマス。でもいつかこれで良かったとわかってくれると信じているザマス。

 エメラルドで作った義眼を窪みにはめてあげるザマス。
 200万円もしたザマスが遠慮なく受け取って欲しいザマス。お礼なんかいらないザマス。
 よし、これでいいザマス。見た目も施術前と一緒ザマスね。
 ……あら?
 
「デッ……? デデッ……?」

 実装ちゃんはお腹を不思議そうに撫でているザマス。
 こころなしか施術前より痩せたように見えるザマスね。
 まあ多分夜だからそう見えるだけザマス。気のせいザマス。

 実装ちゃんは傷の治りが早いらしいザマスから大丈夫だと思うザマスが、一応念のため栄養ドリンクをセットで置いておくザマス。
 人間の与えるモノは飲まないのはわかってるザマスが、よかったら飲んで欲しいザマス。

 さあ、それじゃ私は帰るザマス。
 またあいましょうね、実装ちゃん。

 ああ、良いことをした後は本当に気分良いザマスね。




   ※

「う〜、ハイキングハイキング」

 今、山頂を求めて全力疾走している僕は予備校に通うごく一般的な登山家。
 しいて違うところをあげるとすれば登山用ストックの代わりにバールのようなモノを使っているってとこかナ……
 名前は双葉としあき。

 そんなわけで近所にある小山にやってきたのだ。

 ふと見ると獣道を一匹の成体実装が横切っていた。
 ウホッ! いい野良実装石……

「ちょうどいいや。せっかくだから虐待していこう」

 僕はこう見えて実装石の虐待派でもある。
 といっても一部の苛烈なやつらとは違い、ちょっといたぶってマヌケに逃げ惑う姿を見られれば満足なソフト虐待派だ。
 命までは……取らない!

「おっ、動きを止めたな」

 その野良実装はちょっと開けた場所で座り込んだ。
 しめしめ……ゆっくり近づいて、と。

「それっ!」

 僕はストック代わりにしていたバールのようなモノを思いきり振り下ろした。
 もちろん直接当てたりはしない。実装石がこちらに気付いて驚くよう、彼女の真後ろの地面に勢いよく叩きつけたのだ。
 しかし……

「あれ?」

 あとほんの数センチズレていたら脳天が砕けていたにも関わらず、その実装石は逃げるどころかこちらを見ようともしなかった。
 どういうことだろう。絶望的に鈍いやつなのか?
 無視された気分で苛ついた僕はその実装石の背中を蹴飛ばすことにした。

「こら、糞蟲!」

 蹴ると柔らかい手応えと共に実装石の身体が転がった。
 しめしめ。これで自分に迫る脅威を理解しただろう。
 だが……

「デッデロゲ〜♪ デッデデュ〜♪」

 なんと、その実装石は背中を蹴飛ばされたにも関わらず暢気に歌なんかうたっている!
 こいつめ! ばかにしているのか!
 思わず頭に血が上り、倒れた実装石の胸倉を掴みあげた僕は……

 その顔を見てゾッとした。

「デッデロゲ〜♪ デロデロロチュ〜♪」

 実装石というやつは基本的に無表情だが、嬉しいや楽しいなどの感情によって瞳を輝かせる性質を持つ。
 だが、こいつは……
 こんなに楽しそうに歌っているのに目に光が全くない。
 いや、それどころか至近距離で向かい合っているはずの僕のことすら見ていない!

 持ち上げてみてわかったが、こいつは随分とやせ細っている。
 おそらく最低限の餌しか食っていないのだろう。
 その不気味さに思わず手を放すと、落ちた実装石の両足が折れた。

「デス、デス」

 こいつは這って近くの花に手を伸ばすと、それを摘んで自分の股ぐらにあてがった。

 普段なら見るにも絶えない醜悪な受粉行為。
 うわずった声で快楽に染まる実装石を見て良い気分になる人間は余りいないだろう。
 ところがこいつはそれさえもおかしい。

 快楽を得ている様子はなく、ひたすら義務的に花を股に当てている。
 心なしかさっきまでとは違い何かを焦っているような感じだ。
 折れた足を痛がっている様子でもない。
 なんだ、なんなんだこいつは……

 僕は不気味に思いつつも携帯リンガルを手にとって見た。



「ワタシの仔〜♪ 早く産まれるデス〜♪ 大丈夫、心配ないデス〜♪ 生きるのは大変だけど楽しいこともいっぱいデス〜♪
 だから早く産まれるデス〜ワタシの身体は気にしないで大丈夫デス〜痛いのなんてなんでもないデス〜ひもじいのも我慢するデス〜
 だから早く産まれるデスはやく産まれるデスお願いデス出てきてデスはやくデスはやくはやくデスデスデスススス産まれろデス産まれろ
 デッデロゲデッデロゲデッデロゲデッデロゲデッデロゲデゲデゲデゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲ」



 ……完全に、心が壊れてやがる。

 目を見ればわかるがこいつはほとんど死んでいる。偽石が崩壊していないのが不思議なくらいだ。
 それでも生き続けているのは、生きなければいけない何かがあるからだろうか。

 いったいどんな虐待を受ければこうなるのだ?
 何か、大切な……そう、命よりも大切なモノを奪われたのか……

「マァーッ! マアアーッ!」

 突然、背後から聞こえた怪鳥のような絶叫に僕は振り向いた。
 とんがった三画メガネにお団子ヘア、趣味の悪い紫色の服を着たオバサンが立っていた。
 そいつは眼鏡越しにもわかる怒りを滲ませながら僕に近づいてきた。

「あなただったザマスね! あなたが、あなたが!」

「な、なんですか……?」

「あなたがこの野良実装ちゃんを壊した虐待派だったザマスねェ!」

 その発言からこのオバサンが愛護派であることはわかる。
 だが、彼女の怒りは誤解だ。
 なぜなら僕は初めてこの山にやってきたのだし、当然この実装石に会うのも初めてなのだから。

「ち、違いますよ。僕はただの登山家で……」

「問答無用ザマス!」

 こちらの話を聞かず、オバサンはミイラのような腕を伸ばすと僕の首を思いきり掴んだ。
 身体が持ち上げられ、万力のような力で喉を締め上げられる。
 一体この細い身体のどこにこんな力が……!?

「死ねザマス! 命を大切に出来ないやつは……死ねザマス!」

「ぐ……げ……」

 意識が遠のいていく。
 殺……される……?

 なぜ、どうしてこんなことなったのか、私にはわかりません。
 あの実装石に何があったのか。また、このオバサンはあの実装石のなんなのか。
 ひとつだけわかるのは、実装石同様にこのオバサンも狂っていると言うことです。 

 これを読んだあなた。どうか真相を暴いてください。それだけが私の望みです。

「デッデロゲ〜♪ ワタシの娘たち、はやく産まれるデス〜♪ みんなで仲良く暮らして、いつかオヤマをワタシタチの家族でいっぱいにするデス〜♪」

 消えゆく意識の中、実装石の仔守歌の不快な音程だけが僕の耳に焼き付いていました。



                           終

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1 Re: Name:匿名石 2016/08/25-01:32:53 No:00002494[申告]
最後wwww

まあ自覚のない愛誤派って、現実でも一番タチ悪いよね
シーシ○パードが一日も早く滅びますように…
2 Re: Name:匿名石 2016/08/25-19:47:52 No:00002496[申告]
まさかとは思うけどこの山に実装石がいないのってこのBBAが(ry
3 Re: Name:匿名石 2016/08/26-00:19:34 No:00002497[申告]
実装の癖にかなりまともで、放っておけばそれなりに幸せに天寿を全うしそうだった個体の実生を疫病愛誤BBA妖怪がメチャクチャにするっていいな
糞蟲が悲惨すぎて気持ちいい
4 Re: Name:匿名石 2016/08/26-01:43:40 No:00002500[申告]
ナイス愛誤!
5 Re: Name:匿名石 2016/10/02-01:25:42 No:00002558[申告]
ろくに手も付けてなさそうな山奥とはいえ人の土地で勝手にしてる糞蟲なんて不幸に死ぬべきなんだが
実装というよりは慎ましく生きる野生動物が動物愛誤派に生を崩された不快感の方が大きいな
ちょっといたずらしたとはいえ無実無害な登山家って人間様が殺されてるのも糞
いつか違う話でいいからこの愛誤おばさんが死ぬよりきつい末路を迎えるところをお願いします
6 Re: Name:匿名石 2019/03/07-22:28:18 No:00005786[申告]
幸せ回路全開で繁殖しようとしていたバカ蟲が去勢されて良かった
胎教とか言って人間ゴッコしてる姿を見るとムラムラする
7 Re: Name:匿名石 2023/04/14-21:22:49 No:00007040[申告]
しっかり実装石を去勢して山を汚す可能性も有り得る登山家も始末して山の自然を守る山岳愛護派の鏡だな
8 Re: Name:匿名石 2023/04/15-01:42:51 No:00007041[申告]
山の所有物を主張してるのは人間だけで野良生物にはしったこっちゃないんだよなぁ
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