タイトル:【虐】 選択と決断 完結編
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初投稿日時:2015/02/12-18:47:28修正日時:2015/02/13-18:52:51
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前の話の続きが聞きたいって?
ケチな手品の種も明かしたし、大して面白い話にはならないよ?
でもまぁいいか。聞きたいのなら話すよ。
選択と決断をし続けた実装石の話をね。


           「選択と決断 完結編」


妊娠した実装石は表情を歪ませてAの箱とBの箱を見ている。
以後はこいつを親実装と呼ぶことにしよう。
こいつ自身の親は前の話で捻って殺してしまったからな。

親実装はこちらをチラチラと見ている。

「ヒントが欲しいのか?」
「デ、デスゥ……子供が生まれてくる前にいっぱい食べ物が欲しいデス…」
「ダメだ、あくまで自分で選択するんだ。俺は妊婦でも甘やかさない」
「デェ…………」

今までの成績はこいつが妊娠してから虐待、愛護、虐待、虐待と続いている。
(成績と言っても俺が一方的に結果を押し付けているだけだが)
本当はこの実装石はもう飽きたし、反応もつまらないのでとっとと殺してしまいたいが。
子供を産ませてからが腕の見せ所、との虐待師先達の言葉もある。

仕方ない。子供を産ませてやることにするか。

「さぁ、早く選択しろよ。次に虐待を引いたら三連続虐待、子供を流産してもおかしくないダメージだぞ」
「デー………なんとしても愛護の札を引くデス!!」
「がんばれ!!」

何を頑張れと言っているのかはわからないがさっさと箱に入ってくれ。

「Aデス!!」
「わかった、それじゃ今日の選択はー」

口で効果音を言いながらAとBと書かれた紙を引き抜く。

「Aは愛護です! おめでとう!」
「やったデスー!!」
「それではまず二日の間の虐待の傷を治します」
「ご飯デス、コンペイトウデッスン!」
「もちろん用意するとも、それじゃ火傷の痕を見せて」

一日目の虐待は左腕を切断、二日目の虐待は足を火あぶりだったな。
飯さえやれば腕は生えるだろう。足の火傷を適当に治してしまおう。

「それじゃー火傷用実装治療剤を塗布するよ」
「デスゥ?」

説明しよう。これはローゼン社が開発した実装石の火傷を治す薬剤である。
本来なら火傷を起こしたところを切除すれば再生する可能性のある実装石の体に
割とお高い新製品を使うことなんてないのだが。愛護の日だからね。仕方ないね。

「ちょっとシミるかも知れないけど……」
「デデッ! 痛痒いデスゥ」

ぶくぶくと泡を立てて正常に再生していく親実装の足の火傷。

「治ったかな? これでもう靴を履けるね」
「…………」

妊娠した腹を抱えたまま親実装はこちらを見ている。
表情から察するに、焼いたのも俺なら治したのも俺なのでお礼を言う場面でもないと考えているのだろう。

「それじゃ今日はアジの開きだよ。最近はアジは高くなってきたから今のうちに食べておきたいんだ」
「デスー! お魚デスー!!」

アジを丁寧に焼き、醤油を垂らしてから親実装に出す。
自分の分もテーブルに配膳。白いご飯と一緒にいただきます。

「デデ……骨が邪魔デスゥ」
「ああ、ごめんごめん。骨を取ってあげるよ、それと熱すぎない? 舌を火傷しないようにね」

自分でも内心笑っちまうような猫撫で声で親実装の魚から骨を取り除き、身をほぐしていく。
ガツガツとアジの身を貪る親実装。

「美味しいデス! 美味しいデス!!」
「公園住まいが長かったなら魚なんて食べる機会がなかっただろ?」
「デ………公園、デスゥ…」

公園の話を聞くと露骨に落ち込む親実装。
自分の母親と貧しくも堅実に生きていた頃を思い出したのだろうか。

「公園、戻りたいか?」
「デ………」

親実装は頭をフル回転させて次の答えを吟味した。

「………せめて子供を産むまでは、ここにいたいデスゥ」

その答えに俺は深い失望を覚えた。
俺という虐待派の手を逃れて公園に戻りたいという感情よりも
愛護の日を引いた時の贅沢に心を引かれている証拠だろう。

本当に子供を大事に思うのであれば、妊娠したままでも公園に戻りたいと言うはずだ。
こいつの感情は命懸けのギャンブルに濁ってしまっているようだな。
俺は溜息をつくと残った飯を食べて後片付けを始めた。

「デザートは金平糖とプリンから選べるけど?」
「デスー!」

悩み始める親実装。
ま、こんな味の濃い食べ物に慣れれば今更公園に戻って硬い木の実やバッタなど食べる気にもならないのかもな。

こいつの賢さと感情は鈍ってきた。
せめて産まれてくる我が子への愛情深さだけは残してくれていることを祈りつつ、愛護派のフリを続けるのだった。




その日から数えて、三日連続で愛護の日を引かせてやった。
それも流産という結果を免れられるようにとの俺の配慮だ。

上げ落とし。
それが俺の最大の武器。
この実装石の感情を最後の一滴まで搾り出すための。

仕事から帰ってくると親実装が産気づいていた。

「大丈夫か、すぐに水を用意するからな」
「デッデー! う、産まれるデスー!!」

背を向けて仔実装を産む場所を用意する時、俺は口の端を持ち上げて笑った。

散々持ち上げてやった。
そして実装石は子供を産み、幸福の絶頂となる。


ここからどうやって落としてくれようか。


そんなことを考えていると、ピンクの実装服を着た親実装は四匹の子供を産み落とした。
涙を流しながら仔実装の粘膜を丁寧に舐め取っている。

「可愛いデスゥ! ワタシがママデス! 可愛いデスゥ!!」
「ははは、それは良かったなぁ」

テチテチと好き勝手鳴いている仔実装たち。
だが産まれてすぐにリンガルで拾える言葉を話すような、賢い仔実装はいない。
生まれてきた仔実装の数も多産の実装石にしては少ないほうだ。

それについて親実装も薄々感付いてはいるようだが、
全て虐待の日の過度のストレスが原因だ。

虐待の日を引いた時には飯もやらず、親実装は体の再生に偽石の力を使うようなハメに陥る。
そうなると仔実装は体力はともかく知力は平均以下に落ちてしまう。
産む数も少なくなり、生存競争に圧倒的不利となるわけだ。

普段から餌の争奪戦に勝ち、自分の子供にも十分に餌を与えられるような個体が種を残す。
それが実装石のルールでもある。

しかし親実装は初めて産んだ我が子が可愛くて仕方ない様子。
まだ愛情深さは残っていたか。良かった良かった。

「さて、ママになれたな。おめでとう。それと一つ提案があるんだが……育児休暇を取らないか?」
「デデ?」

服をまくって仔実装たちに母乳を与えている親実装が怪訝そうにこちらを見た。

「今から5日間、お前に対して選択を求めない。ただし愛護はしない。虐待もしない。最低限の世話はしてやる」
「デェー…………」
「つまり安全に子供を育てて欲しい。俺からのささやかな出産祝いさ」
「デッス! それなら約束デスー!」

そうそう。生命力も低い。頭も悪い。そんな仔実装を責めても上げても何も面白くないからな。
せいぜい丹念に育て上げて欲しい。
強く生きろよ、実装石たち。




それから五日が経過した。

「クソニンゲンテチー!! こんなゴハンだけじゃ足りないテチ、コンペイトウ持ってこいテチィー!!」
「狭いテチ、臭いテチ、硬いテチ!! こんな場所で飼われて不幸テチー!!」
「デェェ……」

俺を見るなり騒ぎ始める仔実装たち。
親が気の毒なくらい頭が悪い。
実装リンガルのログを読み終えると親実装を憐憫の目で見た。

「ダ、ダメデスゥ……あの人間は虐待派なのデス、殺されるデスゥ」
「チププ、ワタチたちに何もしてこないオクビョウモノテッチュン!」
「ワタチがやっつけて奴隷にしてやるテチー!!」
「ウンチ食わせてやるテチ!!」
「おい、母親さんよ」
「デ……!」

俺の声音が虐待の日のそれだと察知した親実装の顔が青褪めていく。

「今なら仔実装を一匹殺すことを許してやるぞ、お前の母親だって糞蟲は間引いたろ?」
「デェェェェェ……悲しいコト、しなきゃいけないデスー…?」

しばらく仔実装たちの顔を一匹一匹、眺めていた親実装が突然泣き始めた。

「で、できないデスー!! この子たちはワタシの可愛い子供なのデスー!!」

仔実装たちを抱いてデスデスと泣き続ける。
その親の只ならぬ様子を見てようやく自分達の命の危機に気付いたのか、黙りこくる仔実装たち。

「……親を裏切ったお前が子供を大事にするワケ?」
「それでもデスゥ!!」

なんの理由にもなってねー。
でも話が進まないので親実装の前に容器を二つ置いた。

ここからが本番だ。

「さて、育児休暇は終わりだ。今日から始まるゲームはザ・連帯責任」
「デ………?」

涙をゴシゴシと擦って親実装がこちらの話を聞く。

「母親が選択した結果が仔実装たちにも反映される。虐待を引いたら一家全員、虐待と飯抜きだ」
「デデデ……!」

俺の言ったゲームの仕組みが理解できない仔実装たちはテチテチ好き勝手に騒いでいる。
親実装は仔実装だった頃から選択してきたゲームの仕組みが変わったことに戦慄している。

今までは自分一人の問題だった。
だが今度の選択は重い。
虐待を引けば、愛する我が子がどんな扱いを受けるかわかったものではない。

「さて、今夜はAとB! どっちを選ぶ?」
「え、選べないデスゥ……」
「前にも言ったけど選ばなかった場合には全員に死が待ってるぞ」

その言葉に仔実装たちは糞を漏らして震えた。
何の気ない言葉だが、嘘のない言葉と理解できる感性くらいはあるのか。
親実装は仔実装の糞が床に垂れることも構わずBの容器に入った。

「Bの容器でいいんだな? 本当にいいんだな?」
「………デスゥ」

散々脅しておく。
だがAとBどちらの容器に入ろうが俺の選択は決まっている。

「デデドン!」

親実装は目を見開いて水槽の裏に描かれる文字を見る。
それは虐待。

「デ………ッ デッジャアアアアアアアアアアァァァァァ!!!」

すぐに牙を剥いて俺に威嚇を始める親実装。
仔実装たちはゲームの意図なんか理解してはいないだろうが、親実装に抱きついて保護を求めている。

……本当に意気が殺がれるよ。
仔実装たちもこの選択を理解できる知能があってくれればよかったのに。

俺の選択はここからだ。
さて……どうするべきか。
親実装から虐待するか、仔実装から虐待するか。それが問題だ。

「お前なんか怖くないテチ!!」
「デェェ!?」

親に抱きついていた一匹の仔実装が俺に向けて手を向けてなにやら騒いでくる。

「ママを怖がらせるクソニンゲンぶっ殺してやるテッチャー!!」
「あ、そう」

特に相手の言葉も聞かずに隠し持っていたマチ針を生意気な仔実装の右足に突き刺した。

「ヂィィィィィィィ!! あんよが痛いテチィー!!」
「長女ォォォォォォォ!!!」

まるで自分が針を刺されたかのように騒ぎ出す親実装。
今の叫び声、なかなか良かったな。

「やめるデスー!!」

牙を剥いて襲い掛かってくる親実装をデコピン。
吹き飛んで悶える親を尻目に狭い水槽を逃げ出した仔実装を捕まえにかかる。

「テチャー!!」
「三女ー!!」

イゴイゴと手の中で抵抗する仔実装を水槽の底に押し付けるように寝かせる。
そしてマチ針で両手両脚を次々と刺していった。

「痛いテヂュゥゥゥゥゥ!!! 死んじゃうテチャー!!」
「三女、逃げるデスゥー!!」

俺はマチ針を三女と呼ばれた仔実装の下腹部に突き刺した。
親以外は一匹や二匹死んだところで構わないので偽石の位置を探ったりはしない。

「チボォ!? テッヂュアアアアアアアアアアァァァァ!!!」

激痛に身を捩る仔実装。
次は右足を突き刺したままになっている長女(だっけ?)にマチ針を4,5本プレゼント。
絶叫し、血の混じった吐瀉物を撒き散らす仔実装。
次に引きつった笑顔で媚びてる仔実装を捕まえて————

………
……
…

そんなこんなで仔実装たちはみんな針串刺しになってしまったとさ。
……全員、生き残っている辺り運が良いんだか悪いんだか。
デスンデスンと泣いて仔実装を前にオロオロしている親実装に手を伸ばす。

「デギャア!! やめろデスー!!」
「大丈夫、マチ針を刺したりなんかしないよ」
「デ、デスゥ?」

俺と親実装の間で視線が交錯する。
ふっと微笑む俺。

「お前には千枚通しを刺すからな」
「デッジャアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

それから親実装の右手に千枚通しを突き立てる。
気絶したら傷口をぐりぐりと開いて無理矢理起こし、また千枚通しを刺す。
親実装の悲鳴と仔実装のすすり泣きが心地よい。

こうして親子実装は血の海に沈んだのだった。
ふう、今までのフラストレーションが一気に晴れた気分だぜ。

「もう嫌テチ! ニンゲンは怖いテチィ……」
「四女、待っているデス……明日こそは愛護の札を引いて良い目を見せてやるデスゥゥゥゥ…」

そうそう。明日どうなるかはわからないよ。
俺以外にはな。
反逆や内輪揉めに針を使われないように手早く仔実装に刺したマチ針と親実装に刺した千枚通しを回収。
そうして手をヒラヒラ振ると自分の分の夕食の準備に向かいながら大きな欠伸をした。

虐待の日は実装石に作る分の飯が要らなくて手間が省けるよ。
喉の奥から引きつったような笑い声を上げると、水槽の中から聞こえる鳴き声が一層大きくなった。




次の日。
仕事から帰ってきてすぐに仔実装たちが威嚇をし、悲鳴を上げ始める。
怯える子供達を見て項垂れる親実装。

「あの人間は怖いだけではないのデスゥー……」

虐待派の俺を随分と高く買ってくれているようだが。
俺としてはお前の感情が見れればそれで文句はない。
いつものようにプラスチック容器を二つ、

「さて、また選択いってみようか」
「デェェェェ……おなかすいたデスゥ」
「お前が愛護を引けば子供たちにもお前にも飯を食わせてやるって」
「デスゥ………」

状況を理解できない仔実装が暴れ回っている間に親実装はAの容器に入る。
俺は無表情のままAと書かれた紙を引き抜く。

「デ!」
「おめでとう、Aは愛護だ!!」
「やったデスー!!」

無邪気に喜ぶ母親を仔実装たちは怪訝な目で見ている。
こいつら本当に何やってるのかカケラも理解してねぇ………
俺は頭痛を覚えた。

それから怯える仔実装、暴れる仔実装、噛み付いてくる仔実装、逃げる仔実装を捕まえてテーブルへ。
満足げな親実装も両手で抱えるとテーブルの上へ招待した。

「今日は豚のステーキになりまーす」
「ステーキテチィ!!」
「みんなでお腹一杯食べるデスゥ」
「テッチュアー!!」

大興奮の仔実装たちと、落ち着いた様子で豚テキを食べる親実装。
が、その仔実装のうち一匹の様子がおかしい。
食があまり進んでいないばかりかこちらをチラチラと見て涙を流している。

「三女、どうしたデスゥ?」
「テテテ、テチャァァァ!!!」

突如叫び声を上げて三女と呼ばれた仔実装が目の前の皿から離れた。

「みんなおかしいテチ!! こいつはギャクタイハテチ!! 怖いことするテチ! 痛いことするテチー!!」
「デ……お、落ち着くデス」

身悶えながら後ろへ下がっていく仔実装。
あ、バカそっちは

「テッ………」

テーブルの淵から足を踏み外した仔実装はそのまま床に落下。
慌てて覗き込んだ俺と親実装の目に映ったソレは………赤緑の肉塊だった。

「デェェェェェェェェ!! 三女ォォォォォォォォォォ!!!」
「あちゃー………」

こんな簡単に死にやがって。あと床を汚しやがって。
頭は悪いくせに猜疑心は強いとかどんな個体だよ…

「……俺はこいつの治療をする。お前は仔実装ちゃんたちと一緒に飯食ってな」
「デェェェェン! デェェェェェェン!!」

どう見ても死んでいるので治療もクソもないがここで他の仔実装たちに狂死されても困る。
できるだけストレスがないようにしてもらわないとな……愛護の日なんだから。

通夜のように泣きながら豚肉を食う実装石たち。

俺は彼女たちに見えないように三女の死体をゴミ箱に捨てた。
それから庭に出ると適当に土を盛ってその辺の木の棒を立てた。


「……この下に三女が眠っているデスゥ?」
「ああ、そうだよ。手当ての甲斐なく亡くなってしまったからな…」
「デスン、デスン……もっと愛護の日を引いて幸せな暮らしをさせてやりたかったデスゥ…」
「テチィー……妹のお墓テチ?」
「そうデス、みんなお祈りするデス……三女が楽園に行けることを神様にお願いするデス」
「そんなことよりステーキもっと欲しいテチィー!! デザートのコンペイトウよこせテチャー!!」

………なんかちょっと性格がわかってきたな。
この空気を読まずに飯をくれと言っている奴が長女だ。
俺は極端に頭の悪い実装石が苦手だ……溜息をつくと愛護の日の続きのために実装石たちを家に入れた。

身の程を弁えない発言はスルーしてもこの仔実装三匹の要求に答えるのは、なかなか骨が折れた。




その日の愛護から数えて実装石は虐待、愛護、虐待、愛護、虐待、虐待、虐待と引いた。

この頃になっても残された仔実装三姉妹は
「ママが何か交渉してその日は愛護か虐待か決まる」
程度にしか選択ゲームを理解してはいなかった。

だから虐待続きの今、仔実装は親実装をなじることすらあった。
それでも仔実装に申し訳なさそうに謝ることしかしない親実装。
……そんな子供でも可愛いもんかねぇ。

「さて、三連続虐待を引いた罰だ」
「デェェェェェ……」
「もう痛いの嫌テチー!!」
「おなかすいたテチャー!!」
「ママは何やってるテチィー!!」

そう騒いでいる仔実装たちの前に餌皿を置いてやる。
深緑の実装フードが山盛り入れてある。

「ゴ、ゴハンテチィー!!」
「やったテチ、おなかいっぱい食べられるテチャー!!」
「デ、デスゥ?」

ニヤニヤと笑いながら疑問符を顔一杯に貼り付けている親実装を見る。
その俺の表情を見て何かを察した親実装は

「た、食べちゃダメデスゥ!!!」

と仔実装たちを怒鳴りつけた。
だがもう遅い。

「テ、テ、テ」

青い顔をした仔実装の一匹が喉元を両手で押さえた。

「テベェェェェェェ」

その場で嘔吐、そして糞を漏らすとオッドアイからは血涙が流れた。

「そのフードには毒が入っているデスゥゥゥー!!」
「ご明察」

だが皿を置いた時点で意地汚く毒入りフードを食っていた仔実装たちは苦しみ、悶えている。

「おなか痛いテチィー!! テベッ テヂィィィィィィ!!」
「死んじゃうテチ! 毒ごはんテッチャー!!」
「しっかりするデスゥー!!」

実装石たちの前で薄く赤色のついた液体の入った瓶を振ってみせる。

「実装コロリを希釈した毒だ。少々食ったところで致死量じゃないが、苦しみは長く続く」
「…デェェェェ………」

仔実装が吐瀉物と糞と血の中で暴れ回っている姿を見て嘲笑う。

「明日、虐待を引いたら四連続だからな。お前のママと同じ末路を迎えてもらうぞ…家族もろともな」
「地獄に落ちるデスゥ………!!」
「考えとくよ」

空腹と虐待ですっかり参っている親実装。
虐待派である俺に暴言を吐くことに抵抗がなくなっているようだな。

「さっさとその毒入り実装フードを片付けるデスゥ!!」
「断るね、お前たちは一晩この毒餌を眺めているんだな」

そう言い放つとリンガルのスイッチを切り、背を向けて自分の風呂の準備を始めるのだった。




次の日。朝起きると実装石たちが入っている水槽の様子がおかしい。
実装リンガルのスイッチを入れて中を覗き込むと、顔をぐしゃぐしゃに歪めた汚物だらけの仔実装が死んでいた。

「デェェェェン! デェェェェェェン!! 子供が死んだデスゥゥゥゥゥゥ!!!」

泣く親実装を前に事態を察した。

「どうやら腹を空かせた仔実装が親が寝てる間にでも毒餌を腹いっぱい食って死んだか」

これ以上犠牲が出ないようにとのことか、毒餌の上には糞がぶちまけられている。
もっと早くそうしてればこの仔実装も死ななくて済んだかもな。

「可哀想に。心中お察しいたします。ご愁傷様です。それじゃ今日の選択は夕方だから」
「待ってくださいデスゥ!!」
「ん?」

俺、自分の分の朝食の準備があるんだけど。

「このままじゃ残った二人の子供も死んじゃうデスゥ! 何か……何かご飯をくださいデス!!」
「ごめんな。俺、地獄に落ちる予定が入って忙しいんだ」
「デ………」

さすがに昨日自分が言った言葉は覚えていたか。
ただでさえ絶食と虐待で顔色が悪いのにさらに青褪める親実装。

「今日の夕方に愛護の日を引けば全員腹いっぱい飯食わせてやるって。お前のピンクの実装服も綺麗に洗うし」
「ごめんなさいデスゥ!! 悪いことを言ったデスゥ! 謝るからお慈悲をくださいデスー!!」
「ダメだな。これもお前が選択した結果だ」

ぐったりしている仔実装の一匹に乳を含ませる。
母乳なんか出るわけないのに。
なんとかこの仔を生かしたい。その想いがそうさせたのだろう。

「そうしてると思い出さないか?」
「デス?」
「お前のママとお前が俺の家に来たばかりの頃をさ」

ママ。お前が裏切った母親。
その言葉を聞くと飯をねだる気力すら失ったのか、親実装はすっかり項垂れてしまった。

何、餓死なんかしないさ。今までの経験上、実装石はそう簡単に飢え死にできるようにはできていない。

「さて、ソーセージにたっぷりマスタードをつけて朝飯って感じにするかな」

そう言いながら笑ってキッチンに向かう俺だった。
今日は休日。

そして………こいつらとのお別れの日だ。




休日。俺は本屋で適当に本を買い、スーパーで食材を買い込んで戻ってきた。
家に帰ると親子揃って実装石たちはグッタリしている。

「おい、生きてるかー? 今日、愛護を引いたらあずきパイだぞー」
「デッ………」

俺の言葉に顔を起こす親実装。
仔実装たちもノロノロと起き上がる。
……ん?

「おい、その死んだ仔実装の死体」

驚いた。仔実装の死体が食われた痕がある。
まぁ歯型から察するに姉妹仔実装に食われたようだが。

「デェェェ……何も食べるものがないデスゥ……死んじゃうデス………子供たちは長女の死体を食べたデス…」
「で、死体に蓄積されてた毒でまた苦しんだと」
「デスゥ………」

アホだ。真性のアホだ。

「まぁいい」

そう言って水槽に二つの容器を入れた。

「さて、今夜はAとB! どっちを選ぶ?」
「デスー………」

散々迷う薄汚れたピンクの実装服を着た親実装。その様子を眺めている仔実装。
それからBの容器にのそのそと入っていく。

「いいんだな? 本当にBの容器でいいんだな?」
「デッ……デェェェェ…」
「それじゃ札を引き抜くからな? 本当にいいのか?」
「デジャアー!!」

慌ててBの容器から這い出てAの容器に入り直す親実装。

「ここデスー!! やっぱりAにするデスゥゥゥゥゥ!!」
「OK! それじゃ変更はないな? それ!」

俺は勢いよく札を引いた。
笑いを噛み殺しながら、Aの容器が虐待になるようにイカサマをして。

「デッギャアアアアアアアァァァァァァ!?」

今までにない大きな声で叫ぶ親実装。

「はいはい出た出た」
「デヒィッ!? デギャアァァ!!」

Aの容器から親実装を水槽に追い出す。
ここからが俺の選択だ。

親実装から殺すか、仔実装から殺すか。

「デッジャアァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

残った二匹の仔実装を抱きかかえて吼える親実装。
やっぱり愛情深い親の前で子供を殺すのが王道か。
俺は薄手のゴム手袋を両手に嵌めた。

「どけ」
「デギィ!?」

親実装を軽く突き飛ばして仔実装を一匹手に取る。

「四女ォー!!」
「ママァー!!」
「四回連続虐待の日を引いたペナルティでーす、それじゃこの子には首吊りをしてもらおうかな」

散々、飯を抜いてやったのに元気に騒ぎ立てる実装石たち。

「やめるテチ、やめてテチー!! テッチャー!!」

姉妹の体を食った分の糞を漏らしながら悲鳴を上げる仔実装。
その首にハングマンズノットに結んだ糸を巻きつけた。
手を離すと絞首刑が始まる。

「…………!!!」
「四女!! 四女ォォォー!! 助けてあげてくださいデスー!! ワタシには何をしても構わないデスー!!」
「ダメだな」

足をばたつかせて左右に揺れ続ける四女と呼ばれた仔実装。
次第に顔が鬱血していく。

「デェェェェン! デェェェェェェェェン!!」

親実装が吊るされた仔実装の下でぴょんぴょんと飛び跳ねている。
届く高さでもないので放っておくが。

「………………!」

しばらくすると仔実装の動きが止まった。
まだ僅かに慣性で死体が揺れている。

「さて、次の仔実装いっとこう」
「この子は最後の仔デスゥ!! どうか、どうかやめてくださいデスー!!」
「…………」
「他の子はみんな死んでしまったデスー!! この子だけでも幸せにしたいデスゥー!!」
「お前さ」

親実装を指差す。

「お前が初めて虐待された日、お前のママが同じこと言ったの覚えてる?」
「デ…………」
「あとその実装服返してくれよ、もう死ぬお前には必要ないだろ」

抵抗する親実装からピンクの服を剥ぎ取る。

「まぁ俺も鬼じゃないからな。元々のお前の服を返してやる」

親実装がまだ仔実装だった頃に着替えさせたままだった、小さな服を返却してやる。
親実装は自分が小さい頃に着ていた服を手に取ると小さく震えた。

「ママ………」

そう。お前を守ろうとし、お前に見限られたママとの思い出がたくさん詰まっているだろう?

放心状態の親実装が呆けてる隙に最後の仔実装を掴み上げた。

「テッチャー!!」
「じ、次女ォー!!」

次女と呼ばれた仔実装は俺が摘み上げた時に首吊りで死んだ仔実装と目が合ったらしい。
恐慌状態に陥って叫び声を上げた。

「助けテチー!! ママ!! ママァー!!」
「次女、逃げるデスゥー!!」
「もうワガママ言わないテチ! 妹にイジワルしないテチ!! た、助けテチィー!!」

そしてある程度の高さまで来て俺と視線の高さが合うと、次女は最後の媚びをした。

「テッチュン! ワタチを飼って一緒にシアワセになるテチィ」

声は完全に掠れ、震えている。

「嫌だ」

そう短く伝えると仔実装の両脚を摘んで逆さ吊りにした。

「ヂィィィィィィィィィィィィィィ!!!」

死の危険に晒された仔実装の、親を呼ぶ悲鳴。
だが親実装は思い出のカスである自分の実装服を抱えたまま震えることしかできない。

「お前は股裂きだ」
「テヂャアアアアアアアアアアアアア!!」

そのまま両脚を左右に開き、引っ張っていく。
股関節が外れ、総排泄口から肉が広がり、裂けて仔実装の体が左右に分かれていく。

「テッヂィィィィィィィィィィィィィ!!」

肺腑から声の一滴まで絞り出して死んでいく仔実装。
内臓がボタボタと落下し、その中に緑色の石が光っていた。

「それ!」

ビチ。
俺の声と同時に右肩のほうまで裂けた仔実装。当然、絶命した。

親実装の手前で臓物に塗れた緑色の石がパキリと砕けた。

「デェェェェン! デェェェェェェェェン!! 子供がみんな死んだデスゥゥゥゥゥゥ!!!」
「そうだな」

適当に相槌を打っていると親実装が俺を見上げた。

「デスン、デスン……人間さん…」
「なんだ?」
「ワタシたち、長い付き合いデスゥ」
「そうだね」

血涙を流しながら親実装は呟く。

「ワタシは虐待されたデス。四日もご飯もらえなかったデス。子供たちもみんな殺されたデスゥ」
「……うん」
「それでも……ワタシは人間さんに飼ってもらいたいデスゥ」
「ふむ」
「優しくしてくれたデス、お風呂に入れてくれたデスゥー! 全部、全部嘘だったデスゥ!?」

ああ、嘘だよ。
最初に言い忘れていたが、俺は嘘吐きだ。

「嫌だ、俺はお前なんか飼わない」
「デギャアァァァァァァ!!」

頭を抱えて絶叫した親実装が、自分の服に縋りつく。

「ママ!! 助けてデスー!! ママ、ごめんなさいデスゥー!! ママ!! ママァー!!」

この期に及んで死んだ自分の母親に泣きつくのか。
意外な行動に俺は少し、感心した。
こいつの心の奥に最後に残った感情、それがこれなんだろう。

「さて、ママと同じ死に方をしような」
「デヒィ!!」

ゴム手袋のまま親実装の両腕を摘む。
まるで弱々しい鼓動が薄手のゴム手袋越しに伝わってくるかのようだ。
これが、この実装石の命………

「デヒッ、デヒッ」

緊張の余り胃液でも吐きそうな親実装の両腕をそのまま引きちぎる。

「デギャアアアアアアアアァァァ!! ママ!! ママー!!!」
「お前のママは死んだよ」

粘つく血を流す親実装の両脚を捻り、千切り取る。

「デギィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!! う、嘘デズゥ……ママはワタシをあ、愛し」

俺はそんなどうでもいい嘘は言わない。
実装石の下半身をねじ切った。
血の中に倒れこむ親実装。

「デヒィ………」

死の間際で設置されたままになっている愛護と書かれたBの箱に視線を向ける親実装。

「デヒィ……デヒィ…あ、愛護の日デスゥゥゥゥ…」

そこに逃げ込もうとでも言うのだろうか?
俺は愛護と書かれた紙を引き抜いた。

「デ…………」

これでAとBの箱、両方に虐待と書かれた紙が出ている。
実装石が生気を失くした眼でこちらを見た。

「デ……なんでデスゥ…どうしてデスゥ………」
「ごめんな、俺……嘘吐きなんだ」

その言葉を聞かせると絶望に満ちた親実装の顔にそっと手を添えた。

「やっぱり限界まで追い詰められた実装石の表情は最高だな」

そう言って親実装の首をねじ切り、殺した。

後に残っているのは、実装石たちの死体だけだった。




こうして一ヶ月以上続いた愛護と虐待の日々は終わりを告げた。
あの親実装、賢さと感情が鈍ったかと思ったけど意外と楽しめたな。
最後の最後で自分の母親を求める辺り、途中まで本当に愛されていたんだろう。

あの親実装、楽園という言葉を時々口にしていたが。
死んだ実装石が行く楽園なんて本当にあるのかな。


また足を運べる範囲の公園が飢餓状態に陥るまで俺は実装石と関わりはしない。

だって。ねぇ?

賢く愛情深い親子が手に入るまで、こんな楽しい遊びは期待できないからな。
空になった水槽に、小さな実装服だけが残されていた。






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前作への感想、大変参考になりました。
そして絵を描いていただき、誠にありがとうございました。

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1 Re: Name:匿名石 2015/02/12-21:32:34 No:00001634[申告]
続編きたー!
本日夜勤で見れないので明けでみます!
ありがとうございます
2 Re: Name:匿名石 2015/02/13-01:10:41 No:00001635[申告]
久々の長編ガチ虐待
3 Re: Name:匿名石 2015/02/15-00:21:43 No:00001637[申告]
いやー、すばらしい
きっちり終わって満足です
また作品読みたいです
4 Re: Name:匿名石 2015/02/18-16:55:12 No:00001639[申告]
ネタばらしの後の話は正直言うと蛇足に感じる
5 Re: Name:匿名石 2015/02/21-18:42:25 No:00001647[申告]
おぉ続編もあったのか!今回も素晴らしい作品
ありがとうございました。あっさり殺すとは
優しいですね(笑
6 Re: Name:匿名石 2019/03/07-23:53:47 No:00005788[申告]
いやースッキリ
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