タイトル:【愛】 小さな光り2 完結
ファイル:小さな光り2.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:12145 レス数:4
初投稿日時:2006/08/14-14:24:40修正日時:2006/08/14-14:24:40
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ガッチャン!



音がすると共に、ミミは麻袋から跳ね起きた。

「誰か来たテチ!」

ミミは毎朝、ロッカーを利用する人の音で、朝を迎える。

この駅のロッカーは一日に一人か二人の利用頻度で、
毎朝、同じ人間が朝と夕方利用する以外は殆ど利用する人はいない。

駅員も常駐は一人だけで、ロッカーの料金回収も、気が向いた時にするだけ、
使いっぱなしの有無など全く把握できておらず、客の苦情があれば対応する程度だ。


ミミは慌てて扉に走って行き、肩をぶつけながら覗き穴を覗いた。
どんな人間が使っているのか、確認をしたかった。

「いる!・・いたテチ」

見えたのは利用を終わって、立ち去っていく後姿だった。

「・・・違うテチィ」
「ご主人様じゃ無いテチ」

落胆して扉に持たれかかり、天井を見上げる。
天井はミミの身長より少し高いが、走ると頭を擦るほど低い。
視線を自分のお腹に向け、出っ張ったお腹をさすってみる。

「お腹へったテチ・・・」
「喉からからテチ」

視線の先にはペットボトルが見える。
ミミはどうやってそれを飲んだらいいのか、分からずにいた。
封の開いていない実装フードの箱も、ミミには単なる箱としか認識ができない。

ミミはペットボトルまで行って、物欲しげに見つめる。
中には水がたっぷりと入っているが、ミミには飲む事が出来ない。
透明な容器には水が見えているだけに、返って期待を持たせ、さらなる渇きを呼んだ。

ペットボトルを刺している水飲み器に管があり、口をつければ良いだけなのだが、
動物より感覚が鈍い実装石は、視線の先にあるペットボトルにしか、頭が回らなかった。

「!!ウッッ・・・また来たテチ・・」
「ウンコ・・テチ」

ミミには毎朝、毎晩、依然住んでいた家のペースと、同じように便意が襲ってきた。
ロッカー入って既に5日が過ぎている、何かを口にしている訳ではないのに、糞だけは出た。

糞をする度に、トイレ以外で出している罪悪感を感じ。
糞をする度に、段々と弱ってくる自分を感じていた。

一番奥のトイレにしている場所まで行くと、しゃがんでブリブリとウンコをひりだす。

「・・・またウンコ出たテチ」
「ご主人様に嫌われるテチ」

終わるとまた覗き穴に向かった、覗いてみると幸せそうな親子が、手を繋ぎ歩いている。
男の子がいきなり駄々をこねて泣き出した、それを母親が叱った。

「チププ・・おっかないママテチィ」
「ミミのママと一緒テチ」

穴を覗いていると、時間が経つのを忘れてしまい、
お腹が減っている事や、一人で淋しい事も紛らわせる事が出来た。

この駅の客は朝夕に集中する反面それ以外は、あまり利用客がいない。
誰もいない時は、ミミも退屈で暇を弄んでいる。


そして完全な暗闇の時間が来た。

ミミは暗闇の時間が未だに慣れずにいた、麻袋にしがみつき目をつぶって耐えている。
そのまま眠りに着くまで、麻袋をかぶっていた。

相変わらず誰も迎えに来ない、ミミは次第に焦りを感じ始めている。

朝になりミミは扉を背に、ぜーぜーと苦しんでいる。
喉の渇きが限界に来ているからだ、三角の口を開けぜーぜーと喘ぎ、舌を垂らしていた。

目の前にあるペットボトルに抱きついて、水の見える外側を舐めてみたが、渇きは癒えなかった。

「オマエは!・・何で飲めないテチ」
「むかつくテチ」
「お前なんか、こうしてやるテチ!」

「テッチィィ」

ガツッ!

ぽた・・ぽた・・

ペットボトルを蹴飛ばした衝撃で、管の口まであふれていた水が数滴ポタリと落ちた。

「水!・・水テチ!」

ミミは床に滴り落ちた水を舐めた、干からびた体中に潤いが行き渡る。
舐め終わると、すぐにペットボトルを何度も蹴り飛ばす。

ぽた・・ぱたた・・バチャ!

今度はさっきよりも多く零れ落ちる、すぐに舐め取りまた蹴飛ばす。
何度も繰り返しミミはやっと一息をついた。

ミミはふと目の前の箱を眺めた、水はミミの為に置いてくれた物みたいだ、
この箱もミミの為に置いているのか・・・・

箱に齧りついてバリバリと破っていく、透明なビニールがある・・・・フードだ!
ビニールの中身は実装フードが、入っているのが確認できた。

ビニールに喰らい付くと穴を開け実装フードを取り出した。

「フードテチ、フードテチ!」
「ミミの事、考えてたテチ」
「ミミはバカテチ、ミミは悪い仔テチ」

ご主人様のパパはミミが嫌いなんだ。
ミミは意地悪をされて、ここに閉じ込められたんだと思っていた。

水もフードも置いてくれていた、ミミの事を考えてくれていた。
自分は何て悪い仔なんだ、だから迎えに来てくれなかったんだ。

涙を流してフードを食べる・・・おいしい・・感謝の気持ちで一杯だった。


水とフードを見つけ、とりあえずは生きて行くのには困らなくなったが、
違う問題がミミに降りかかって来た。

毎日、大量の糞をする為に、奥の方から糞で溢れ返って来たからだ。
臭いも相当な物でロッカー中に蔓延している。

臭いに関しては慣れてしまったが、糞の量は自分の寝床まで圧迫してきた。

ミミの体も垢や糞の汚れが付着して、実装服にも糞による染みが目立ち始めた。
飼い実装の時は毎日シャワーを浴びていたので、この環境に耐えられなくなってきている。

自分の汚れた体や実装服を見つめ、かつてママに清潔にしていなさい、
不潔な実装石は嫌われると教えられた事を、思い出していた。

ミミはドロドロに汚れた体を麻袋で拭くと、シャワーを浴びてママに体を洗って貰った事を思い出した。
さらさらの髪、水を玉のように弾いていた体、今の惨めな自分を比べた。

明日になればご主人様が迎えに来てくれる、可哀相なミミを助けてくれる。
優しくしてくれたご主人様を思い、毎日を繰り返した。

そして暇があれば覗き穴を覗き、ご主人様が来てくれる事を待っていた。

今日は駅員がロッカーの周りを掃除に来ている、ロッカーに目もくれず、
駅の外まで箒を掃いて、ゴミ箱の掃除を始める。

「あの人間さん・・・いつもいるテチ」
「きっと偉い人間さんテチ」

ミミの一日は覗き穴を見て、フードを齧り、糞をして、駅の電源が切れると震えて眠り、
ロッカー利用者の音で目覚め、また覗き穴を見て終わって行く。

そんな日が一ヶ月も過ぎると、水はかなり残っているが、フードが底を付いてしまう。
三日ほど何も食べずに過ごしたが、餓えも限界に来ていた。

ミミは目の前まで迫って来た糞の山を見つめ、仕方が無いと決意する。

「ウンコ食べるテチ・・・」
「食べないと死んじゃうテチ」

ミミは糞を食べた、口に入れると嫌な臭いと共に、腐った味が口の中に広がる。
背に腹は代えられない・・・ご主人様に会えるまでは糞を食べて、生きるしかなかった。

グチャ・・ヌチャ・・ペチャ、ペチャ

「・・・・惨めテチ」
「ご主人様・・・早く助けテチ・・」

既に実装服は汚れで緑であった色も、どす黒い糞の色と同じになっている。
体は垢と汚れが何層にも重なり、皮膚炎を呼び起こし、掻いては出血を繰り返した。

生きる希望だけは確かに持っていた、素直で賢くないミミの全ては、
かつてミミに優しく遊んでくれた、ご主人様の思い出だけが生きる希望だった。


そんな日が続いたある日。


ミミに奇跡が起こった、覗き穴からいつものように覗いていると、
ご主人である「」が駅に入ってきたのだ。

友達の家を訪ねての帰りに来ただけだが、それは本当に偶然だった。

ミミはロッカーの中で飛び上がり喜んだ、ご主人様がミミを迎えに来てくれた。
ご主人様を信じてよかった、今までのつらい事なんて小さな事に感じた。

ミミはロッカーを力一杯叩いて、ご主人様に呼びかけた。
声が枯れるほど叫び続けた、ミミはここにいる早くこんな所から助けて、
まるでどこかのお城に幽閉されたミミ姫を王子様が救ってくれる、そんな思いだった。

「ご主人様ぁあ!」
「ミミはここテチィ」
「早く・・・早く助けてぇぇ!」

「」はロッカーの前で立ち止まった、何か声がする・・・
バタンバタン何か煩い、ロッカーかなっと一瞬思ったが。

「こっち見たテチ!」
「やっぱりミミのご主人様テチ」

友達の家へ急がなければならない為、ちらりとロッカーを見た後、駅の構内に向かって走って行った。

「何処に行くテチ!」
「行っちゃ駄目テチィ!」
「ご主人様!・・ごじゅじんざまぁぁあ!」
「ティェェン・・ティェェエン、ティエーーン」
「グズ・・グズ・・テエーーーン!」

ロッカーの扉にズルズルと持たれかかりミミは泣いた。
今まで信じていたご主人様が助けてくれなかった、何のために今まで頑張ってきたのか。
ウンコまで食べて生きてきたのは、ご主人様に会いたいからなのに。

信じていた全てを裏切られ、ミミは生きる希望を失くしてしまう。
その日から食べていた糞も食べなくなって、ミミは衰弱していった。
体はガリガリに痩せて行き、お腹だけがぽっこりと出て、さながら餓鬼の様な姿になって行った。
確実にミミの体は衰えて死に向かっていたが、信じるものが無くなったミミにとって、
死なせてくれるんなら、早く死んでしまいたかった。



ただ覗き穴だけを毎日見て過ごした、覗いているとご主人様の事が忘れられたからだ。

珍しくロッカーの客が来た、ミミの隣のロッカーに何かを入れると、急いで駅を出て行った。
その日の夜、いつものように麻袋にくるまって寝ていると突然、隣から大きな音がする。
壁を何かが叩いている・・・一体何がミミは耳を塞いで朝まで震えていた。

次の日になり、隣のロッカーに昨日利用した人間がまた来ていた。
利用する時間は決まって人のいない午後だった。
ミミは穴を覗いて見ると、若い女だった、若い女はロッカーを開けると、
優しい表情になり、ロッカーに話かけている。

「・・・?・・何してるテチ」
「独り言なんて、変な人間さんテチ」

ロッカーの荷物を手に持った・・・・それは赤ん坊だった。
女性は人知れず子供を生んで、どうしたら良いか分からずロッカ−に隠していた。

赤ん坊にミルクを飲ませ、おむつを替えると淋しそうな表情を残し、駅を出て行った。

一部始終を見ていたミミは、何であの人間がロッカーに閉じ込めたのか分からなかった。
あの赤ん坊も躾の為に入れられたのか・・・何となく親近感を感じた。


その夜、電気が落とされ暗闇がやってきた、暫くすると隣のロッカーからもぞもぞと音がする。
ミミは壁に耳をあて、様子を伺う。
いきなり昨夜と同じで、何かが壁を叩いた。

ドカン!ドカン!

「うるさいテチ・・・静かにするテチ」

隣の赤ん坊も気が付いたのか、壁に向かって何かを話している。

『キャッ・・キャッキャッ』

ミミは一人ではない寂しさから開放され、赤ん坊に向かって色々と話し始めた。

「お前も何か悪さしたテチか」
「ミミが聞いてあげるテチ」

バン!バン!

赤ん坊は壁を叩いて答えた。

「お前は一人じゃないテチ」
「安心しろテチ・・・ミミも一緒テチ」

笑い声が聞こえた後・・・・赤ん坊は静かになった、どうやら眠ってしまったようだ。

死を願っていたミミに、生きる希望が生まれた。
ミミは目の前の糞を、また食べ始める。


次の日も母親がやって来た、ミミは赤ん坊が羨ましかった。
ミミには誰も会いに来てくれない、赤ん坊にはママが来てくれる。
羨ましい反面、赤ん坊に会いに来てくれる事が純粋に嬉しかった。

ミミはあまり覗き穴を見なくなった、隣の赤ん坊と壁をはさんでお話をする為、壁に張り付いている。
赤ん坊の方もいつも壁に張り付いて、ミミの言う事を聞いている。

「お前のママは優しいテチ」
「ミミのママも優しいテチよ」
「お前とミミは同じテチ」

壁に張り付くと赤ん坊の温もりが伝わってくる、ミミはロッカーに入って以来、
いつも泣いていたが、赤ん坊のお陰で楽しく優しい気持ちになれた。

「お前は特別ミミの妹にしてやるテチ」
「ミミお姉ちゃんに、何でも言うが良いテチ」

赤ん坊が壁の向こうで笑った。

「キャキャ・・キャッ」

何を話しても話が通じなかったが、お互いは壁を挟んで繋がりを感じた。

赤ん坊はいつも電気が落ちると、暫くしてから夜鳴きを始めた。
ミミは妹である赤ん坊が、心配で心配でたまらない。

「泣いちゃ駄目テチ・・泣いちゃ駄目テチ」
「ミミがママに聞いたお歌を、歌ってあげるテチ」

ミミは毎日ママといる時に聞いていた、子守唄を歌った。
実装石にしか分からない、特殊な波長があるらしく、ママが子守唄を歌い始めると、
ミミはとても良い気持ちになれた事を思い出した。

「テッテロチェー♪・・テッテロチェー♪」
「テッテロチェー♪」

ミミの子守唄を聞くと、赤ん坊の夜鳴きはぴたりと止んだ。
どうやら実装石の子守唄は、赤ん坊にも効くようだ。

そんな日が二週間ほど続いたある日、母親がロッカーに訪れる。
いつもと様子が違う・・・穴から覗いていたミミは感じた。

母親は赤ん坊を抱いて泣いている、いつもより長い時間ロッカーにいる。
泣きながら赤ん坊と話した後、いつもの様に母親は去っていった。


次の日、母親は現れなかった。


赤ん坊は夜中、一晩中泣いている、ミミの子守唄も効果が無い。

そして翌日も母親は来なかった。

ミミは赤ん坊の反応が弱くなっている事が、いつも接しているので分かっていた。
妹がおかしい・・・一体どうしたんだ、何でママは来ないのか。


母親はあの日、赤ん坊にさよならに来た、自分で養えない事が分かると、
ミミの捨てられた理由と一緒であっさりと、赤ん坊を捨ててしまった。

いつまでも赤ん坊に関わっていられない、駅のロッカーだから、
お金を払っていない事が分かると、すぐに誰かが見つけてくれると思ったのだ。

ミミは隣の壁を叩いたが全く反応が無い、幾ら話しかけても何も帰ってこない。

「どうしたテチ!」
「何か話すテチ」
「お姉ちゃんテチ」

幾ら壁を叩いても、幾ら話しかけても、赤ん坊の動きが無い。

「どうしたら良いテチ」
「ミミに何が出来るテチ」
「妹が・・・妹が死んじゃうテチ」
「お姉ちゃんが絶対・・・絶対死なせないテチィ!」

ミミはロッカーの扉を叩いた、誰もいなくても関係なく叩いた。
脆い実装石の手の皮が破れ、血が飛び、骨が見えても叩いた。

やがていつもロッカー利用している男が、音に気づきミミの鍵穴を覗く。
力の限り扉を叩き、男に向かって叫んだ。

「ここにいるテチィ!」
「妹を・・・妹を助けテチィ!」

男は慌てて改札に走って行く、駅員が血相を抱えてロッカーにやって来た。

『オイ!真ん中辺だ、あの辺で声がしたぞ!』

駅員がロッカーの鍵を次々と開けて行く、そして赤ん坊の扉を開けた。

扉から出された赤ん坊はぐったりとしており、隣から覗いているミミは、
気が気ではなかったが、駅員が声をかけると赤ん坊が泣き出した。

『オギャァァァア!」

赤ん坊は生きていた、すぐに病院に連れて行かれ、検査を受けたが、
何日かミルクを飲まなかった為の軽い栄養失調で、命に別状は無かった。

赤ん坊を見つけた男は、テレビの取材、駅や警察から表彰を受け、時の人になった。



赤ん坊は連れて行かれたが、ミミの扉は赤ん坊のいる扉で止まり、ついに開けられなかった。
それでもミミは妹が助かった事が、とても嬉しかった。
短い間だけど、同じ境遇で辛い目に会った妹が助かったからだ。

ミミはご主人様を思い出した、あきらめちゃ駄目だ、
生きていたら、いつか迎えに来てくれると心に決めた。

ミミは駅員や男にではなく、ご主人様に扉を開けて貰いたかった。
ご主人様に開けて貰って、ミミの頑張った事を聞いて欲しかった。
妹ができた事を聞いて欲しかった。


それからミミは三ヶ月を生きた、最後は糞を食べつくし。
布団代わりの麻袋を食べ、自分の手足まで食べ頑張ったが、ついに死んでしまう。


駅では年末の大掃除で、ロッカーからミミの屍骸が見つかる。
からからに干からびて手足の無いミイラは、実装石とも何とも分からない姿だった。

その屍骸はゴミと一緒に焼却場に行き、誰にも知られる事無く灰になった。










『こんにちは「」さん』
『みどりちゃんの様子を見に来ました』

テレビで話題ななった可哀相な捨て子として、赤ん坊は施設に預けられた。
すぐに里親が見つかり、今は里親の下で何不住無く暮らしている。
母親は見つからず、何処に行ったかも分からずじまいだ。

里親会の職員が定期的に様子を見に来ていた。

赤ん坊はみどりと名づけられ、裕福な両親の元、幸せに暮らしている。
両親もみどりを可愛がり、みどりも良く懐いている。

父親が答える。

『みどりですか、元気ですよ』
『ほら見て下さいよ』

今の母親に手を引かれ、嬉しそうに抱きついた。

職員もその様子を見つめて、安心している。
母親が答える。

『甘えん坊ね、みどりは』

みどりが何かに気づく・・・・・実装石の親子だ。
みどりは実装石に近づくと、仔実装と遊び始める。

後ろで見る父親は、困ったように職員に話す。

『みどりは実装石と仲が良いんですよ』
『理由は分からないんですが・・・』
『実装石を見ると、すぐ近づいて行くんですよ』

職員が答える。

『仲が良いんなら・・別に良いじゃないですか』
『何か問題でも?』

父親は困った顔をして話す。

『みどりと言うよりも、どっちかと言えば、実装石が近づいて来るんです』
『みどりには特別な何かが、有るみたいです・・実装石限定ですが』



みどりは仔実装と何か話している、仔実装も楽しそうだ。

母親がみどりを呼んだ。

『みどりぃ・・もう帰るからこっちへ来なさい』

みどりは母親の方を振り返り、答える。

『うん!今行く』

みどりが帰ろうと歩いて行くのを、仔実装が追いかけて来る。
途中でつまづき、転んでしまい、仔実装は泣き出してしまった。

「ティェェン、ティエーン」 

親実装が駆け寄るが、まだ泣いている。

みどりはしょうが無いな、と言う顔で仔実装の元へ戻ってきた。
仔実装を抱えると歌を歌い始める。

その歌はミミが歌っていた子守唄だった、なぜ憶えているのか分からないが、
脳裏に焼きつき、みどりはずっとその歌を覚えている。

『泣いちゃ駄目・・みどりがお歌を歌ってあげる』
『テッテロチェー♪・・テッテロチェー♪』
『テッテロチェー♪』

仔実装は安心したのか、泣き止んで気持ちよさそうに、目をつぶっている。
みどりは仔実装に手を振ると、両親の元へかけて行った。


ミミの存在を知る物はいない、みどりの歌っていた子守唄だけが残った。

ミミが覗いていた小さな光りは、みどりを助ける光となった。
ミミにとってもあのまま死んで行くより、妹の命を助けたと言う思いが救いになっている。

ミミにとっての一番の光りは、ご主人様に扉を開けてもらう事だったが、その願いはついに叶わなかった。

ミミは最後の時まで希望を失わずに生きた、みどりが送ったミミにとっての、小さな光かも知れない。







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見張りは長かったので、今回は短めです。

次は人間視点で作りたいと思います。









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1 Re: Name:匿名石 2018/07/29-09:51:24 No:00005533[申告]
>ミミにとってもあのまま死んで行くより、妹の命を助けたと言う思いが救いになっている。
これで感動した。
2 Re: Name:匿名石 2023/06/22-06:22:44 No:00007337[申告]
いい話や…
父親は反省しろ
3 Re: Name:匿名石 2023/11/02-00:28:50 No:00008192[申告]
人間の方がクソ野郎だな
父親は普通に殺したい
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