タイトル:【馬燈】 託児を目論む実装石一家だが、その汚部屋ぶりは想像を絶するものだった
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作者:汚部屋託児作者 総投稿数:1 総ダウンロード数:2345 レス数:3
初投稿日時:2013/02/23-00:45:49修正日時:2013/02/23-00:45:49
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男は徹夜仕事で疲れきった重々しい身体を引きずって自宅の玄関を開けると
ふぅ、ふぅ、と肩で息をする

「はぁ…そろそろ本当に痩せないといけないのかな…」

内扉を開けるとむわぁっと臭いがただよう
三日ぶりのわが家、ようやく帰ってこられたことにほっと安堵する

暗い部屋に灯りをつけつつ、誰もいない部屋に向かって一人ごちる。
いや、誰もいない、というのは正確ではない。

部屋一面に広がる汚物の山、山、山
そこかしこに空瓶や食べかけのパンの袋、読みかけの雑誌などで埋め尽くされ
明かりを付けた途端、そこかしこの隙間からかさこそと物音がする

崩れたゴミがいつからか寝室への入り口を塞ぎ、
片付けるのも面倒なのでもう長いこと寝室には入っていない

男が部屋に足を一歩踏み入れると、手近なゴミから何かが飛び立つ

だが、男はそんな様子を気にもかけず、物を踏みたくりながら部屋の中央のテーブルに向かう
何かが潰れる音、割れる音、紙の破れる音、騒音を立てる
バキッ、ペキッ、ビリビリ、パキン、グシャ、クチャッ、ブジュッ…

何から破れて汁が漏れる、ツンとする異臭が鼻につく
しまった、あの辺にはこの間食べきれなかったおでんのパックがあったはずだ
まだ食べられたかもしれないのに、勿体無い…
と、考えかけて男は首をふる、いや、この臭いはきっと腐ったんだろうな
やれやれ、食事が済んだら片付けないと、と考えた

もっとも、食後に片付ける意思が残っているかは、別の話であるが
さて、男がようやく食べかけの積み上がったテーブルにたどり着くと
そのわずかな隙間に手に持ったコンビニのレジ袋を載せる

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あー、君、少し、その…言いにくいのだが、食生活を改めてはどうかな
あまり、ジャンクフードを食べ過ぎると、生活習慣病などもあるし…」

昼間、男と一緒に過ごす上司は、彼に通院を勧めたことがある。
太りすぎて健康状態の怪しい巨体、そして異様な体臭…
病気になられては困る、管理職としては当然の心配ごとではある
だが、そこはもちろん上司・部下の関係である。フォローも忘れない。

「あー、もちろん、個人のことだから、強制するわけじゃない
私の叔父が味覚障害になってな、物の味がわからんのは大変辛いそうだからな」

さて、男はというと、湯を入れたカップラーメン…二つ目を食べる手を止めると
笑ったような泣いたような、困った顔で応えた

「はぁ…努力します」

上司は心の中で頭を抱える、これじゃまるで俺がパワハラしているみたいじゃないか
こうなってしまうと、本人も一応はやる気を見せている以上はもう注意は出来ない
そして、体臭のことを注意しそびれたことに気づいた上司は自己嫌悪に陥る
また、タイミングを逃してしまったか、と…

だが、上司は気づいていない、体臭のほとんどは男自身の体から出ているものではなく
彼の着衣や所持品から出ていることに…

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

男はテーブルにつきながら、そんな昼間のやり取りを思い出した
ああ、しまった、昼間注意されたばかりなのに、また買ってしまった…

いや、今は楽しみの時間だ、そんなこと気にすることじゃない
そう考えて頭を一振りすると、男は楽しみの時間にふさわしい曲をかけるため
テーブルの反対側においてあるオーディオのスイッチを入れると、イヤホンを耳にかけ
大音量で音楽をかけはじめる

彼にとっては、一日の終わりの癒しのひととき、
誰にも邪魔をされたくはない、大事な時間である。

ぼんやりと天井を眺める…いつしか、明かりのついた蛍光灯のまわりには
数匹の蛾や得体の知れない羽虫やらがくるくるとまわっている

今度、殺虫剤でなんとかしないとなあ、フンもするだろうし

男はふっと思い返す、成虫になった蛾は口が退化し食事もフンもしない、という
それはほぼ食べることしか趣味の無い彼にとっては想像もつかないことだ

その時、ふっと、昼間の上司の顔が浮かぶ
露骨に嫌そうな顔で、遠まわしに伝えてくるが、要は痩せろ、ということだろう
事実、この男にとって全く努力をしていないわけではない、だが、そうそう痩せるものではない
実際、ここ半年で5キロは痩せたのだ、が…100キロを優に超える彼の巨体では
外見上は誰も気づきはしないのだった。

現に彼は10キロもサバを読んでいるが、誰も気づいたものはいない
そもそも、彼は気づいていないが上司が本当に気にしているのは体臭であって体重ではない



貴重な楽しみの時間を嫌な上司の顔にかきけされそうになり、彼は首を振って考え直す
今日はもう買ってしまったんだ、明日から、明日からでいいか…そう考えながら、急いでレジ袋からコロッケの入った茶色い油紙の紙袋を手に取る
そして、一気に中身を口の中に放り込む…

異様な味が口の中に広がる、まるでドブのような味だ
男はむせ返って慌てて口の中身を吐き出そうとするが、慌てたせいで半分以上飲み込んでしまっていた

慌てて吐き出すと、出てきたのはぐちゃぐちゃになったコロッケ
とても胸がやける、気持ちが悪くなる
まるで胃の中で何かが動いているような気さえしてくる

痛んでいたんだ!畜生、なんてコンビニだ!
男は声に出さず毒づくと、とにかく口をすすぎたくなった

吐きそうになるのを堪えてレジ袋から紙コップのジュースを取り出すと、ふたが半分外れかけて中身がこぼれているのか、袋の中が緑色に染まっている
先ほどのコロッケを思い出し、男はコンビニ店員の雑な仕事ぶりを想像すると怒りに震えたが、ひとまず今はふたを直すと
おぼつかない手つきでストローを深く刺し、一気に吸い上げる

またしてもあの異様な味だ
思わずレジ袋の中に口の中身を吐き出す
そして、蓋を開けて中身を見る

中では溶けかけてグチャグチャになった白いバニラアイスクリームが緑色に染まり
緑色にバニラが混じった緑がかった白いクリーム状のものが表面に膜を張っている
それを見て男は完全に頭にきた

傷んでいる上に、炭酸が抜けているじゃないか!何がクリームメロンソーダだ!
ふざけやがって、苦情を入れてやる!

男は完全に頭にきて、レシートと携帯電話を取り出すと番号を打ち込む
が、発信ボタンを押す前にふっと昼間の上司の言葉が頭をよぎった

『あー、もちろん、個人のことだから、強制するわけじゃない
私の叔父が味覚障害になってな、物の味がわからんのは大変辛いそうだからな』

なにかと言うと、彼の上司は叔父を引き合いに出して遠まわしにして彼に痩せるよう促す
彼は他人事として、愛想笑いでいなしてきたが、現実問題として自分の身をよぎると、
歯に挟まったのように上司の言っていたことが頭から離れなくなる

「まさかとは思うけれど…味覚障害?」

頬を汗が伝うのが自分でもわかる
キッと、テーブルの上を見回す
いつのものかわからないフライドポテト…先週のフライドチキン…3日前のロールケーキ!
そうだ、これならきっと大丈夫だ!

震える手をロールケーキに伸ばすと一息に口に放り込む!
期待するような気持ちで咀嚼するが、結果は絶望だった

あの異様な味、同じ味だった
何を食べても、あの異様な味がする

目の前が真っ暗になった

楽しみと言えば、食べること
そんな生活を送ってきていたのに、これから何を楽しみにすれば…
ともかく、明日、病院で検査をしなくては、と考える

恐らく、病院にいけば治療はできてももう今のような食生活は出来まい
そう考えるだけでも陰鬱な気分になる
耳にかけたイヤホンから流れる陽気な音楽に虚しくなり
落ち込んだままイヤホンを外す

ふっと、外からの喧騒で我にかえる
なにやら、自分の部屋の前で暴れているようだ

こんな時間に、どうして?何かあったのだろうかと思い
重たい足取りで、重い身体を引きずって玄関に向かい、ドアを開けると…

外では二匹の大きな実装石がデスデス喚きあってもんどりうって転がっていた
「デスデスデス!デェッス!」
「デス!デス!デッスゥーン!!」

そこに少し離れたところに仔実装と親指実装の2匹がいて、なにやら喚いている
「テチュテチュテチュ!」「レチレチレチレチ!」

これが話に聞く実装石というやつか…
これまで自分の暮らしてきた街では見たこともなかったが

そういえば、この街で暮らしだしてから仕事と食事以外で
あまり外に出た覚えが無い、せいぜい本屋か電気屋くらいか
そうだ、電気屋といえば…

玄関先を探す…
あった、例の上司に「この街で暮らすならあったほうがいい」と
勧められたが、外出する機会がなかったため結局使わなかった
リンガル、という、いわゆる実装石の言葉を翻訳する機械である

久しぶりに見るそれは綿埃が絡まっている
無事に動くことを祈りつつ、電源を入れてみる

「ここはうちが先に目をつけたデスゥ!」
「いいや、うちの方が先デス!!」

お、ちゃんと取っ組み合っている実装石の声が拾えた
仔実装と親指実装の方はどうだろうか?

「ママやっちゃえテチュー!」
「やっつけてレチー!」

どうやら、片方の実装石が親のようだ
さて、今度はこっちの言葉が通じるかだが…

「あー、君たち、うちの前で何やってんの?」

途端に固まったように動かなくなる四匹
8つの目玉が一斉にこっちを捉えると、途端に媚びた顔つきになる

すぐに片方の実装石…仔連れ実装石と名づけよう
こちらがすばやく反応する

「ここにうちの子たちがお邪魔してるデスゥ、いまならワタシ達がついてくるデス!」
「ドレイニンゲン、コンペイトウとステーキを用意するテチィ!」
「ワタシタチを飼わせてやるレチィ!」

畳み掛けるように言ってくるため、何が何だかよくわからない
ようするに、飼われてやるから、世話をしろ、ということだろうか
でも、お邪魔しているって、どういう意味だろうか?

さえぎるようにもう一方の実装石が前に出てくる
こちらは頭巾が破れているので、破れ実装石と名づけようかな
破れ実装石は目が合うと、自慢げに口を開いた

「デッスゥ〜ン♪こっちは昼のうちに、ドアポストからうちの仔たちを入れておいたデス!
うちの方が先デス!だからワタシ達こそが飼われるべきデスゥ!!」

とんでもないことを言い出すので、呆気に取られる
ドアポストから入れた?するとうちには破れ実装石の仔が何匹かいるのか?

対して仔連れ実装石の方も負けじと言い返す

「デププププ♪うちの仔たちはゴシュジンサマに気に入られるように特訓したデス!
オマエんとこの糞蟲とは比べ物にもならねーはずデス!
可愛くて大人しいし、トイレも覚えているし、絶対に選ばれるのはうちの仔デス!
現に、ゴシュジンサマはうちの仔たちをオウチに連れ帰ったデス!」

「絶対勝てるテチィ!」
「ウチの特訓はスゴイレチ!」

連れて帰った…?そんなことをした覚えは…
と思い、ふっと思い出す、そういえばこいつら、託児と称して
他人の荷物に自分の仔を入れて、既成事実を作ると聞いたことが

まさか…と思い、慌てて部屋に戻ると
先ほど吐き出したコロッケの残骸を”何かの時のために”
捨てずに取って置いた空のコンビニ弁当の器の上に広げる

よくよく探して見ると、以前は気づかなかったが仔実装のものと思われる
小さな靴が片方、混じっているのが確認できる

思わず気分が悪くなり、手近なビニール袋をたぐり寄せると、思わず吐きそうになる、が
胃の中身が足りないのか出るのは唾と痰ばかり、必死でむせていると
いつの間にか部屋に上がりこんだ実装石達が後ろから覗き込む

震える指で小さな靴を指差し、仔連れ実装石に尋ねる
「なあ、これって、まさか、食べちゃったみたいなんだけど」

「デヂャアアアアアアアアアアア!?」
仔連れ実装石が悲鳴をあげる
続いて、状況を把握したらしい仔実装も叫ぶ
「オネチャ食べられちゃったレチィ!?」

親指実装はと言うと、腰を抜かしてしめやかにパンコンしている

「ま、まだデス!もう一人、イモウトがいるデス!
荷物を探せばきっと、中にいるはずデスゥ!」
「そうテチィ!イモウトチャを見ればクソニンゲンも気に入るテチィ!」
「イモウトチャがいるレチィ!」

ここまで聞いて、ふっと思い当たって、先ほどのクリームメロンソーダの蓋を開ける
すっかりアイスは溶けきって、表面に白い膜が張っている
意を決して、中身を手近なコンビニ弁当の空容器にあけると…

ストローの先に4センチほどの親指実装が刺さっているではないか!
おまけに、中身を吸い取られたようにぺらぺらになってしまっている
というか、吸い取った心あたりがある

固まる男と仔連れ実装一家
みんな、コンビニ弁当の空容器を見たまま動かなくなっている

その様子を覗き込むと、破れ実装石が笑みを浮かべながら言う
「デププププ、特訓したっていう仔はどこデス?
どれだけすごいのか見せて欲しいデスゥ」

すると、近くの雑誌がもぞもぞ動き出すと、隙間から
5センチくらいの小さな生き物が飛び出した
「ママの声!ママー!助けレチィ!」
両目から赤と緑の涙を流した親指実装が破れ実装石に抱きつく

親指実装は泣きながら喚く
「ウジチャが踏み潰されテチ!コイツはギャクタイハテチー!」

いきなり虐待派呼ばわりされ、気分を害する男であったが
親指実装の指差す先にふっと目をやる、まさか…

先ほど踏み潰したおでんのパックを探す
蓋を開けると…むせ返るような異臭が広がり、思わずえづいてしまった

ぐちゃぐちゃに踏み潰されたおでんに混じって、
おでんに似つかわしくないなにやら赤緑のものが混ざっているが
そもそも5センチもない蛆実装、100キロをゆうに超える巨体で踏みにじられては
原型を留めるはずも無い

「返すテチー!ウジチャたちを返すテチー!」

一気に重くなった空気に、破れ実装石は親指実装に何か小声で言い含めると
親指実装は大人しく泣き止んだ。

ん、待てよ…?
ふっと気がついたことがあって親指実装に聞いてみる
「ウジチャたちってことは、他にもいるのか?」

親指実装が泣きながら指を指し示したその先には…

先ほどのロールケーキの食べ残しがあった

こみ上げる吐き気と戦いつつ、男は考えた
この奇怪な生き物を一日に四匹も食してしまったことに気が遠くなりつつも
味覚障害ではなかったことに安心していた

もっとも、常人なら気絶してしまう野良実装を食べてしまってこの反応
恐らく彼はとっくに味覚障害になりつつあろうが…
そんな男の意識を引き戻したのは足に受けた小さな衝撃である

破れ実装石の子供の親指実装が
目からそれぞれの色にあった赤と緑色の涙を流しながら、足をぽこぽこと叩いている

「ウジチャを返すレチィ!レチェーン!」

たちまち男はものすごい罪悪感に苛まれる
これまでほとんど実装石と関わったことのない生活
人型の生き物から責め立てられてはどうしていいかわからず、たちまち弱気になってしまう

「ごめん、うじちゃんたちを返すことはできないけど…
俺に出来ることなら何かしらできることをしてあげるから」

ふっと破れ実装石が顔を上げる
「じゃあ、ワタシたちを飼うデス!」

仔連れ実装一家が慌てて割って入る
「待つデスゥ!うちもかわいい二人の娘を失ったデス!
うちこそ飼われるべきデス!」
「うちの姉妹の方がカワイかったテチィ!」
「カワイイワタシたちを飼うレチィ!」

お互いに好き勝手にわめき合う
どう収拾をつけたものかわからないし
負い目のためにすっかり弱気になった男が口を挟める状況でもなかった


すると突然、寝室のほうから何かが動く物音が聞こえてきたかと思うと、にごった痛々しい大声が響いた

「うるさいデズヅズヅー!ここは#…bhんjjmk、ワタジが先に目をつけたデヅヅヅヅ!!」

みんな凍りついたように静まり返ると、声のする方を見る
すると寝室の入り口のゴミの山から、鬼のような形相をした実装石が降りてきた

その実装石は苦しそうにゴミの山に背中を預けると、息を切らせながら続けた
「飼うなら…ワダジを飼うデヅ…ヅヅヅヅヅくぁwsdrft#!!」

言葉が不明瞭なためか、ところどころリンガルの翻訳結果がおかしくなる
それよりも気になったことがあるので聞いてみた
「お前…いつから俺の寝室に?」

「デヅ、ヅズヅ!あそこはワタヂの部屋でででデ〒゛!”#$
ドレイニンゲンはばば&’)(べぶばばば寝るデス!!そいつよりワタシを飼うデヅヅヅ」

これには仔連れ実装一家と破れ実装石も怒った
「オマエみたいな糞蟲は飼われるわけないテチィ!」
「ふざけるんじゃないデスー!」
「かえれレチィ!」
「さっさとうちから出て行くデスー!」

顔色の悪い実装石は一斉に罵声を浴びて青い顔を一気に真っ赤にすると
顔にしわを寄せ恐ろしい表情になり、雄たけびのような声を上げた

「デヅ、ワダヂをオゴらせると怒らせるどど、どうなるかわがって=?:」{…ヅヅズヅズヅヅヅヅヅァ!」

パン!

鈍い湿ったような音を立てて顔色の悪い実装石は破裂してしまった
その恐ろしい形相を顔に貼り付け、仁王立ちのまま後ろに倒れる

一同、何が起きたのかわからず、そのまま呆然として見つめていると
やがて実装石の死体がもぞもぞと動き…

「ルトー♪」「ルトルトー♪」「ルトー♪」

中から蝶のような、小さな人形に羽根が生えたようなものが次々と出てきて
それぞれ一鳴きすると羽を広げ、よたよたと飛び始めた

すると、それに呼応するように先ほどから蛍光灯の周りを飛んでいた
ひときわ大きな虫が近づいていって鳴きかける

「ルトー♪」

よく見ると、大きさが違うだけで同じ種類の生き物のようだ
親しげな様子を見ると、どうやらこいつが親らしい

「実装燈デチャァァア!」「デヂャアアアアアアア!?」「デヂィィィィィ!!」
たちまち実装石達が火のついたように騒ぎ始める

そういえば、以前聞いたことがある
実装石には、天敵として実装燈という生き物がいると
卵を産み付けて内側から食い破ってしまう、ということだ

こんなちっぽけなちょうちょみたいなのが、この図太い生き物の天敵?
まさかぁ?と思い、状況も忘れてしばしの間ぼさっと見とれてしまう


「ニンゲン!ここから出すデチャアアアアアア!」
「殺されるテチー!!」
実装石達はパニック状態で玄関に殺到し、狂ったようにドアを叩き始める

その音でふっと我に返り、慌ててドアを開け放つ
ものすごい勢いで嵐のように実装石達は部屋から飛び出して行く

「あっ」

開いたドアからそのまま実装燈たちも実装石たちの後をついて出て行く

街灯に照らされた実装石達の上をひらひらと実装燈たちがついて行き
やがて一行は遠くの夜の闇へと消えていった
何が起こったのかわからぬまま呆然と一行を見送る

ふと、足元に目をやると、ネズミが虫をくわえて部屋から走って出て行った

その光景を見て漠然とこの部屋への恐怖が頭に浮かんできた
食物連鎖が成立してしまうとは、そしてあの悪名高い実装石が逃げ出してしまうとは
俺の部屋は一体どうなっているんだろうか?

次の休みにこそ、早く部屋を片付けないと、と男は誓うのであった。




初スクです。よろしくお願いします。
読み辛いところありましたらすみません。

登場人物
男:巨漢で味覚傷害、汚部屋在住

破れ実装石一家
破れ実装石:昼間に子実装をドアポストから侵入させ、男の帰宅を待っていた
        自分が目をつけた家に子連れ実装石一家が現れたため喧嘩をしかける
親指実装:破れ実装石の子供、蛆実装が死んだので息を潜めていた
       本編に生きて登場した中で唯一糞虫でない
蛆実装1:腐敗したおでんのパック内にいたが、男に踏まれ絶命
蛆実装2:テーブル上のロールケーキ内部にいたが、気づかれずに男に食べられる

子連れ実装石一家
子連れ実装石:会社帰りの男のレジ袋に託児
仔実装(長女):男のコロッケの袋内に侵入、気づかれずに男に食べられる
仔実装(次女):子連れ実装石とともに男の家に現れる
親指実装(三女):子連れ実装石とともに男の家に現れる
親指実装(四女):男のクリームメロンソーダのコップ内に侵入、気づかれずに男にストローで吸われる

顔色の悪い実装石:いつからか汚部屋の中で入り口の塞がった寝室をねぐらにしていた実装石
            実装燈の幼虫に寄生されている
            実は本気を出すとかなり強かったっぽい、出す前に死んだけど

実装燈一家
実装燈(親):いつの間にか部屋に住み着いていた、冒頭にでてきた蛍光灯にたかる羽虫の正体
        顔色の悪い実装石に卵を産み付けていた
実装燈(子供たち):顔色の悪い実装石をねぐらにしていた


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1 Re: Name:匿名石 2017/01/20-13:05:24 No:00003946[申告]
食べた実装石は4匹ではなく3匹だろう。おでんは食べたのではなく踏んだのだから
2 Re: Name:匿名石 2017/03/27-20:55:36 No:00004593[申告]
汚部屋はこれか
これと柿が繋がるわけか
3 Re: Name:匿名石 2018/08/23-15:38:09 No:00005577[申告]
不潔感の描写が実に細かくていい
男に虐待の意思が無いのに結果として実装が惨死してるのもナイス
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