タイトル:【微虐】 季節外れですが、久しぶりの雨に思い出して書きました
ファイル:あらしのひ.txt
作者:ki-61 総投稿数:4 総ダウンロード数:3085 レス数:1
初投稿日時:2011/11/20-15:50:43修正日時:2011/11/20-15:50:43
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=====お詫び=====
特に、盛り上がりもオチもありません。
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あらしのひに


その日は朝から、台風の接近に伴う大雨が降り続いており、風も徐々に強くなってきて
いた。
出社こそしたものの、電話・メールとも極端に少なく、開店休業状態とはこの事だなあ
と、日ごろ出来ない資料整理をちまちまと片付けていた。お昼の天気予報では夕方から
夜にかけて直撃は確実のようだ。

午後からも資料整理を続けていると、本社の総務部から電話が掛かってきた。
「はい、・・・はい、・・・ええ、・・・はい、判りました。」
総務からの電話に、みんな聞き耳を立てている。電話が終わった。
「みんな、今日はキリの良いところで仕事終わって帰るように。」
上司の声に、みんなそそくさと帰り支度を始める。
やれやれ、やっと帰れるか、もう少し早く決断して欲しいもんだなあ。
窓の外を見ながらため息をつく。外の風雨は午前中よりも明らかに強くなっている。
「じゃあ、みんな気をつけて。○○君は家が近いんだから、戸締りよろしく。」
そう言うと、電車通勤2時間の上司は、真っ先に飛び出していった。電車止まらなけり
ゃいいけど・・・




他の社員が帰ったので、戸締りを確認して帰ることにした。
こんな時は傘は役に立たないので、カッパと長靴に着替えた。(こんな事もあろうかと
用意してあったのだ。)
事務所の出入り口の施錠をし、雨の中に踏み出そうとした時、
「デスゥ」「デスデス」
ん?
辺りを見回すと、事務所のエントランスのちょうど雨風が防げるところに、野良実装が
いた。
数組の親仔の様だ。近くの公園から逃げてきたのだろう、ずぶ濡れでブルブル震えてい
る。親指実装や蛆実装を抱きかかえているモノや、仔実装の手を引いているモノもいる。
仔実装を抱きかかえているモノもいるが、仔実装は紫色の舌をだらりと垂らし、目は曇
りガラスのようにくすんでいる。仔が死んだことにも気付かない位、体が冷え切ってい
るんだろう。

「まずいな・・・」
実装は群れる性質がある。こんな所に放置しておけば、その内に避難してきた実装石で
すし詰め状態になってしまうだろう。
明日の朝一番から、大量の糞や死体の処理をする事になるだろう、考えただけでうんざ
りする。
何かいい方法がないか?考えろ○○!何か有る筈だ。何か。
そうだ!!裏の駐車場にブロックがあったっけ。

先日、近所のオバサンが事務所の駐車場に無断駐車していたのを注意したら、逆切れさ
れて収拾が付かなくなり警察を呼んだら、警官の目の前で車をブロック塀に突っ込んで
しまったのだ。はじめのうちは、車の運転をミスしたのは警官がいて緊張したからで、
警察に連絡した人間のせいだから、車の修理代を払えと食って掛かってきたが、さすが
にそんな超理論が通るはずも無く、昨日からようやく塀の修理に着手出来たのだ。人間
にも糞蟲はいるものだなあ(この場合は糞ババアだけど)

ブロックをせっせと運ぶと、エントランスの周囲を囲っていく。
不思議そうに見ている実装石たち。媚びたりちょっかいを出してこないのは、多少は賢
いのか人間の怖さを思い知っているのか・・・まあどっちでも良いけど好都合だ。
高さは3段位でいいかな?一箇所だけ開けた状態でブロックを積み終わると、中の実装
石を蹴り出した。
ゴロゴロと雨の中に転げ出る実装石。
「デギャァ」  ベシャ「チベッ」
仔実装は親の体に掴まっていた為、遠心力が大きく働き、親よりも遠くへ飛んで行き潰
れた。
ぷちっ「「レピャ」」
親指や蛆たちは親に抱かれたまま潰れて爆ぜた。親の腕の中で最後を迎えられるなんて、
実装にしては幸せな方だろう。

「「「デギャー」」」
実装石が叫びながら駆け寄ってくる。ゴメンゴメン、子供たちが死んだのは不幸な事故
だったね。仔共が死んだ事を責めていると思ったのだが、実装石はそのまま素通りして
エントランスに駆け戻っていく。あれ?仔共の死より自分の方が優先なのね。非難より
避難ですか、韻を踏むとは小癪な奴め。

再度、実装石を蹴り出すと、ブロックをずらして中に入れなくした。蹴り出した実装石
はポスポスとブロックを叩いているがビクともしない。よじ登ることも出来ないだろう。
何かを踏み台にする可能性はあるが、その時はあきらめて掃除するさ。
まあ、そんな芸当をするそこそこ賢い実装石は、人間を警戒してこの中に入ろうとはし
ないだろう。
よし、これでオッケー。だいぶ時間がかかったな。早く帰ろう。

実装石をそのままにしておくと、他の実装石が集まって来るかも知れないので、適当な
場所でリリースするつもりで、実装石たちを蹴り転がしながら帰途につく。
ボスン ゴロゴロ 「デギャァ」 
バキッ 「デグゥ」 ズザザザザッ
アンバランスな形をしている割に、思ったより実装石はまっすぐ転がる。新発見だ。
「デスデスデス!!」 ドカッ 「デッ!」 ブババッ
パンコンして糞を撒き散らしているが、カッパと長靴で防御しているので気にしない。
実装石はアスファルトとの摩擦で、靴が脱げ、服は破け、あちこちから血を流している。
髪の毛もずいぶん短くなってきた。

小学校の頃、よく小石を蹴りながら帰ったなあ、あの石は最後どうしたっけ?昔通った
田舎道を思い浮かべる。大概は途中で飽きて小川に蹴りこんで終わりにしたんだっけ・・・

丁度、いつも通勤で通る土手に差し掛かった。
「よし、ここでサヨナラだ。元気でな!」「シュート!!」
「デェェ・・・・・・」「デェェェェッ」「デギャァァァァ・・・」
ひゅるるるる〜〜 ドボン 
次々に実装石を川に向かって蹴り飛ばす。イヤイヤをするモノや、這いずって逃げよう
とするモノもいるが構わず蹴ってゆく。実装石は頭が重いからか、みんな頭から着水す
る。川は増水し、河原は水没していた。流れも早く、実装石は瞬く間に濁流に飲み込ま
れていく。何か叫んでいた気もするが気のせいだろう。




土手を歩いてゆくと、前方に立ち止まる女子中学生達がいた。朝よく見かける制服だ。
会社の近くの学校だろう。
「どうしました?」
「あれが・・・」
指差す方向を見ると実装石の集団がいた。ちょうど高架の下で、そこだけ雨が当たらな
い様だ。道路上は実装石で埋め尽くされている為、掻き分けるつもりで無ければ通るこ
とは出来ない。年頃の女の子には無理な話だろう。

「実装石は好き?」
大きく首を横に振る少女たち。
「見るのも嫌です。」
「じゃあ、ちょっと待ってて」
丁度、フェンス?(工事現場なんかにある黄色い奴ね)が畳んで置いてあったので、そ
れを持つと実装石の群れに突進した。板を斜めにして実装石を川のほうに寄せながら進
む。除雪車みたいな感じだ。

「デスデス」「デギャア」「テチィ」「デスゥ」「デスゥゥン」
抗議の声を上げるモノも居れば、媚を売るモノも居る。色目を使うモノまで居るのには
さすがにあきれた。
ぼろぼろと土手から転げ落ちる実装石。そのまま濁流に飲み込まれていく。実装がまる
でゴミの様だ。(元々ゴミか・・・)
プチブチと靴底で何か踏んでいる感触があるが気にしない。しっかし、実装臭いなぁ。

二往復もすれば、十分人が通れるスペースが空いた。
「おーい。これで通れる?」
「はーい」
中学生は実装地帯を走り抜けると、こちらに向き直り、「ペコリ」と頭を下げる。
「おじさん!ありがとう!」
おじさん・・・・・・えぇ?




翌日は台風一過の晴天だった。
路上には様々なゴミと共に実装石の死骸が転がっていた。風に飛ばされたのか、木の枝
に引っかかっている実装石もある。気をつけないと上から糞が落ちてくる。

土手を歩いているとところどころに実装石がいた。ほとんどが成体実装石で、一様に川
の方を見つめている。河原に住んでいたモノ達だろう。仔共を失い、家を失い、僅かな
食料も失い、すべてを失った実装石が呆然と立ち尽くしていた。
そんな実装石を、通学途中の中学生男子が通りすがりに蹴飛ばして行く。
「デー」 ゴロゴロ・・・ジャブンっ
力なく倒れると、まだまだ水かさの高い川に流されてゆく。
流れに沈んでいく僅かの時間、泥水の中に緑色と赤色のオッドアイがやけに鮮やかに映
った。




事務所に着くと一番乗りだった。ブロックのおかげで出入り口が実装の死屍累々という
最悪の状態は避けられたようだ。ふと見ると、一匹の仔実装が半身潰れた状態でブロッ
クの内側に横たわっていた。

「テェェェ」
風に飛ばされて来たものか、覚悟の親実装がせめて仔だけでもと投げ入れたものか、真
相は不明だがそんなことよりも早くしないとな。
ビニール袋を持ってくると、手に手袋のようにはめた、その手で仔実装を摘み上げ手の
ひらに乗せると、仔実装は、動くほうの手をこちらに向けてきた。
「テチュゥ」
仔実装は、ビニール越しの手に頬擦りをしてきた。かまわずビニール袋を裏返し、口を
硬く縛ると、
「テェ?」
ビニール袋を地面に叩き付けた。
「テジッ」
ただそれだけだった。

急いだのは、女子社員が来る前に片付けないと面倒な事になるからだ。
彼女たちはかわいがるだけかわいがって、躾はしない、汚い部分は面倒見ようとしない、
すぐ興味をなくすくせに処分しようとすると、「かわいそう」「冷たい人間」と非難さ
れる。公園に放してあげれば、幸せに暮らすと思い込む。(そんな事は無いと知ってい
るにも関わらずに。)

過去の実例から、彼女たちに見つかる前に処分する必要があったのだ。
ビニール袋をゴミ捨て場に捨てると、ブロックを片付けた。

さて、今日は忙しくなりそうだぞ。




週末、車を海へと走らせる。
台風後の荒食いを期待して、久しぶりの釣りという訳だ。

いつものポイントに着くと車を降り、潮風を思いっきり吸い込む。
「おええええええ〜〜〜〜〜〜」
なんだこの腐臭は!!
腐乱死体でもあるのか?辺りを見回すと本当に有った。
波打ち際に、ゴミと共におびただしい数の実装石の死体が打ち上げられていた。折り重
なるように海岸に延々と続いている。
ここはどこですか?オマハビーチですか?
万を超えるであろう実装石の死体は、腐敗して腹がパンパンに膨れており、あちこちで
破裂している。
ポンッ と思ったよりも軽い音で破裂するモノもあれば、ブシューー というガスの抜
ける音と共に、腐った内臓を噴き出しているモノもある。
長いゲップのような音も聞こえてきた。
(腐敗したガスが、声帯を震わせながら抜けるときに鳴る音だと後から聞いた。)

砂浜には、死体を埋めるためか、パワーショベルで大きな穴が掘られていた。
こりゃあ、しばらくの間釣りなんて出来ないな・・・・・・

「デスゥ」
「わぁっ」
突然の鳴き声に、驚いて条件反射で蹴っ飛ばしてしまった。
しまった!靴が汚れた。
実装石は丸々と肥っており、一瞬飼い実装かとも思った。しかし、全身実装の血や糞で
汚れ、髪も粘土のように固まって、毛髪とは思えないくらいベットリとしていた。
おそらく、実装石の死体を食らって生き延びていたのだろう。
よくよくあたりを見回すと、かなりの数の実装石が生きたまま漂着しているようで、あ
ちこちで死体を漁っていた。

この辺りは実装石の少ない場所だったのに・・・このままでは、実装石が異常繁殖して
しまう。

「デスデスデス」
蹴られた実装石が文句を言っているようだ。
「驚かすとはいい度胸だ」

早々に釣りを諦めて、車載してあるバールのような物を取り出すと、海岸の清掃に協力
することにした。
釣り場はきれいにしないとね。


終


実際にあった出来事を元に、実装石が居る日常を書いてみました。

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1 Re: Name:匿名石 2019/07/16-17:10:49 No:00006067[申告]
長いスクも好きだが、短くてシンプルなのも良いね
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