タイトル:【馬】 仔実装がお守り!?
ファイル:お守り.txt
作者:防災双葉 総投稿数:18 総ダウンロード数:2384 レス数:3
初投稿日時:2011/04/08-22:45:17修正日時:2011/04/08-22:45:17
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-----お守り-----


某県 白保市。

ここには一風変わった習慣があった。

町外れにある白保神社。

お参りに来る客は主に若い夫婦。
家族連れもいる。

若い女性達は皆、腹部が大きく膨れている。
そう・・妊娠しているのである。

『では、妊婦さんはこちらにお並び下さい』

巫女が声を掛ける。

全員が並ぶと、神主が厳かに現れた。
準備が整い、頭を下げた女性達の前で神主が玉串を振るいながら祝詞を上げる。

その後ろでは携帯電話やビデオカメラで撮影する男性。
お腹の子の祖父や父親たちである。

一連の行事が終わり、最後に巫女から各家族に仔実装が一匹づつ渡される。


帰り道。

『お義父さん・・・この実装石は何ですか?』
婿養子として、この地に来た夫が尋ねる。

『ん?これか?安産祈願のお守りみたいなものだよ。
 ここでは、臨月に入った妊婦は、皆あの神社でコイツを貰って飼うんだ。
 なぁに、心配は要らない、所謂糞蟲じゃないから』

『・・・はぁ・・・』
夫は納得したようなしないような曖昧な返事を返す。

『これからお願いしますねー。仔実装ちゃん。ワッハッハ!』
大きめのケージを覗き込みながら義父は大声で笑った。

「テチィ?」
リンガルを使わない言葉に仔実装は不思議そうに返事を返す。


夜。先ほどとは別の家族の家

一緒にソファに座り、テレビを見ていた少女に声をかける。
『お姉ちゃん。実装ちゃん連れてきて』
『はぁい!』

”お姉ちゃん”・・・今の少女にとって最も嬉しい呼ばれ方である。

少女は仔実装を母に渡す。
母は仔実装を掌に載せると、自分のお腹の前に持ってくる。

「テチテチテチ」 ポフポフポフ・・・
仔実装は大きく膨らんだお腹を軽く叩く。
・・・いや、撫でると言った方が正しいかも知れない。

『ママー・・・私も私も!』
少女は服の裾を持ち上げ、ペロンとお腹を出す。
『はいはい・・・』
母はクスクス笑いながら、少女の剥き出した臍の前に仔実装を置く。

「テチテチテチ」 ポフポフポフ・・・
仔実装は同じ様に少女のお腹を叩く。
くすぐったくて少女はキャッキャとはしゃぐ。

『私がママのお腹にいる時も、仔実装ちゃんにして貰ったの?』
『そうよ。元気に育つようにね・・・5年ぶりかぁ・・・』

それから毎日、この行事は行われた。

「テチテチテチ」 ポフポフポフ・・・

『お姉ちゃんは弟と妹とどっちがいい?』
母はその度に聞いた。
『ん〜・・・』
少女は一生懸命悩んで答える。
『妹!!』

友人に弟がいれば弟。
アニメの主人公に妹がいれば妹。
時として双子。

・・・聞く度に違う答えが返って来るのはご愛嬌であろう。




それから約一ヶ月。

あの時の家族達は再び神社を訪れていた。
違うところがあるとすれば、それぞれ一人づつ家族が増えている事だろうか。

婿養子に説明をしていた初老の男性の腕には、ベビーブルーの服を着た赤ん坊がいる。
初孫の誕生が余程嬉しいのだろう。下がる目じりがえびす顔になっている。

仔実装にお腹を叩いて貰っていた少女の横には、パステルピンクの服を着た赤ん坊が
ベビーカーの中ですやすや眠っている。

『では、お母様とお子様はこちらにお並び下さい』

巫女が声を掛ける。

全員が並ぶと、神主が厳かに現れた。
準備が整い、頭を下げた女性達と赤ん坊の前で神主が玉串を振るいながら祝詞を上げる。

『お父様はこの中に実装石をお入れ下さい』
巫女が段ボール箱をもって来る。


「オネーチャ!久しぶりテス!」
「イモートチャ!大きくなったテス!」
段ボール箱の中で抱き合う2匹。
約、一ヶ月ぶりの再会である。

「ちゃんとお役目務めたテス?」
「大丈夫テス!ちゃんとポンポン出来たテス」
2匹共、今では立派な中実装に育っていた。

「ワタシのオウチにはニンゲンさんのオネーチャもいたテス。
 ニンゲンさんのオネーチャにもポンポンしたテス」
「それは大変だったテスゥ」
和気藹々と談笑する姉妹。

「ワタシに仔が出来たらイモートチャにポンポンして貰うテス」
「ワタシに仔が出来たらオネーチャにポンポンして貰うテス」
将来の夢を語り合う姉妹。


『それでは皆様、こちらにどうぞ』
巫女に案内された場所は神社の裏手。

そこには木で櫓が組まれてあった。

神主は巫女から箱を受け取ると、櫓の上に静々と置き、祝詞を上げる。
そしてその櫓に火が放たれた。

「テ?なんかヘンなニオイがするテス?」
「なんか暑いテス?」
異変に気づく姉妹。

櫓の材料には油が染みこませてあるのか、勢い良く燃え上がる。

『おお・・・これは見事だ・・・!』
婿養子は感動している。

『すごーい!』
少女は感激している。

「テスァァァァァ!熱いテス!!痛いテス!!」
「助けてテス!死んじゃうテス!!」
姉妹はのたうち回っていた。

「イヤテス!ワタシも仔を産んでママになるテス!!」
「オネーチャのオナカポンポンするんテス!!」

「「死ぬのはイヤテs・・・!!」」


『今までありがとうな』
初老の男性は呟く

『実装ちゃんバイバイ』
少女は手を振る



神主は皆の方に振り向く。
『それではお子様方の健やかなるご成長をお祈りしております』
恭しくお辞儀をすろ。
皆も合わせて頭を下げる。


帰り道。

抱いた初孫をじっと見つめる初老の男性。
『やはり孫というのは可愛いものだな・・・』
若い夫婦に振り返りニヤリと笑う。
『どうだ?あと2、3人作ってみないかね。次は女の子がいいなぁ』

『『ちょ・・・ちょっと!お(義)父さん!!』』
若い夫婦は真っ赤になる。



ワゴン車の中で少女は妹の頭を撫でていた。

母はその様子を目を細めながら眺めている。
『今日はお七夜だからご馳走よ』
その言葉に喜ぶ少女。

『ママ・・・あのね、あのね・・・』
少女は目を輝かせながら言葉を続ける。

『次は弟がほしい!!』
少女が叫ぶ。

『よ〜し!パパ頑張っちゃうぞぉ〜!!』
左手でガッツポーズを取る父。

『んん〜・・・?』
赤ちゃんを産むのは母なのに、なぜ父が頑張るのか・・・
腕を組んで首を傾げる少女。
答えを知るには、まだ時間が必要だった。

『私も赤ちゃん産みたい!!』
再び叫ぶ少女。

『よ〜し!パパ頑張っch・・・グゲェェェ・・・』
赤ちゃんを産むのは自分なのに、なぜ父が頑張るのか・・・
更に、なぜ母がにこやかな笑みを浮かべながら、父の首を絞めているのか・・・
ますます判らなくなる少女であった。





数日後。

あの神社と神主が、テレビに映っていた。

”世界のぶらり遠くへ小さなふしぎ発見いい旅”
という番組であった。

『・・・はい。この神社は仔実装を臨月を迎えた妊婦さんにお渡しします。
 実装石はお産が軽いですし、良く仔を産みますから子孫繁栄の意味合いもありますね。
 ・・・それと、一番重要なのが、その昔、出産は”穢れ”として扱われていました。
 その”穢れ”を実装石に託すために、毎日仔実装に妊婦さんのお腹を叩いて貰うんです。
 そして、お七夜前後に”穢れ”を溜め込んだ仔・・いや、中実装を”お焚き上げ”します。
 使う仔実装は専門のブリーダーさんに頼んであって・・・』

(終)




『この物語はフィクションであり、実在する個人、団体、番組、生物
 とは一切関係ありません』


あとがき

前作にご感想頂いた皆様、本当にありがとうございます。
また、挿絵を頂いた虐待様、心より御礼申し上げます。
(リッチテキストに起こし直し、挿絵を組み込んでいます)


過去のスクリプト

温泉地の山実装
雪玉
いまどき
いまどき・II
手袋
ショートストーリー
ショートストーリー・II
ショートストーリー・III
しゃぼんだま
煎餅
実装石の人間観察
公園の夜
降る
無い
なりかわる
虐殺派
あるくめデスゥ
ハンバーガーショップ


今回の大震災で亡くなられた方々のご冥福をお祈り致しますと共に、
被災された方々のお見舞いと、一日でも早い復興を、この場をお借り致しまして
心より祈っております。

防災双葉

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1 Re: Name:匿名石 2018/07/25-03:45:58 No:00005515[申告]
ニンゲンの子供よりも自分や仔をと言い出す糞蟲も多い中でニンゲンさんの子供のことを考える善良な蟲だったのにかわいそうに
と思ったけど自分たちの出産なんか考える実装石は糞蟲だ
焼け死ぬがいい
2 Re: Name:匿名石 2023/09/17-19:03:17 No:00007982[申告]
生物である以上仔を残す欲求は当たり前なんだけどな
3 Re: Name:匿名石 2023/09/18-05:59:12 No:00007986[申告]
飼ってくれるのが当たり前、豪奢な生活当たり前、周りが傅くのが当たり前
そんな連中が世界を自分の仔で溢れさせれば幸福が当たり前は残念ながら通らない
あと普通に生物なのかも何か怪しい
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