『仔実装ちゃん言葉』 ------------------------------------------------------------------------------------------------ 膝を抱えて座り込んでいる水槽の中の禿裸仔実装ちゃんに、ニンゲンさんが言いました。 「——さあ仔糞蟲ちゃん、ギャクタイの時間だよ」 「……テェェェェェ……」 顔を上げた仔実装ちゃんは、泣き腫らした眼にさらに涙を浮かべて首を振り、 「イヤイヤテチィ、もうイタイイタイはイヤイヤテチィ……」 「ダメダメ、仔糞蟲ちゃんはギャクイタイされるために生かされてるんだから」 ニンゲンさんは水槽に手を入れて、仔実装ちゃんの身体を鷲づかみにします。 そして、 ——ポキン! 「テヂャァァァッ!?」 ——ペキン! 「ヂャァァァァァッ!?」 左右の膝を本来とは逆方向に折ってしまいました。 さらに、 ——ポキッ! パキッ! 「テギャッ!? ギュォァッ!?」 左右の肘まで逆に折られてしまいます。 これではニンゲンさんの手から離れてテーブルの上に転がされても、逃げることもできません。 「……テェェェ……おててイタイイタイテチ……あんよイタイイタイテチ……」 ふるふると身体を震わせる仔実装ちゃん。涙はとめどなく流れます。 「ワタチ何も悪いことしてないテチ……それなのにどうしてニンゲンさんワタチをイジメるテチ……?」 「それはね、糞蟲には同属に喰われるかニンゲンにギャクタイされるか二通りの生き方しか許されないからさ」 ニンゲンさんは仔実装ちゃんの左右の手をつまみ、ぎゅぅっと強く引っぱります。 腕だけ引っぱられて宙に持ち上げられた格好の仔実装ちゃんは、足をばたつかせて悲鳴を上げます。 「イタイイタイテチ! イタイイタイテチ! ニンゲンさんやめテチやめテチ! おてて千切れるテチィッ!」 「千切れるように引っぱってるんだよ。それもわからないおバカさんなのかな、仔糞蟲ちゃんは?」 「イタイイタイイタイイタイ! やめテチやめテチやめテチやめ……テヂャァァァァァッ!?」 ——ぶぢっ! 鈍い音を立てて、仔実装ちゃんの右腕が肩から引きちぎれました。 ぱっとニンゲンさんが手を離し、仔実装ちゃんは大きな頭からテーブルに落ちました。 「……テビャァッ!?」 「ハハハ、ごめんごめん、頭をぶつけちゃったね。どれ、たんこぶが出来てないか見てあげるよ」 ニンゲンさんは、わざと痛めつけたばかりの左手を引っぱって、仔実装ちゃんをうつ伏せに転がします。 仔実装ちゃんは抵抗もできず震えるばかり。 でもパンコンはしていません。とっくにニンゲンさんに総排泄口を焼き潰されていたからです。 「……テヂャァァァ……おててイタイイタイテチ……おつむイタイイタイテチ……」 「この空っぽ頭を仔糞蟲ちゃんは、おつむって呼ぶんだね。叩くといい音がしそうだね」 赤く腫れ始めていた仔実装ちゃんの後頭部をニンゲンさんが指で弾きます。 「テピィッ!?」 「ハハハ、ぶよぶよしているばかりで鈍い音しかしないね。どれ、たんこぶはどこかな?」 腫れているので一目でわかる筈なのに、ニンゲンさんは仔実装ちゃんの後頭部をあちこち指で強く押します。 もちろん、わざとやっています。 「テヂャッ!? テギィッ!? ニンゲンさんヤメテヤメテチ! イタイイタイイタイテチィッ!」 「ハハハ、仔糞蟲ちゃんは、いい声で鳴くなあ」 「もうイヤイヤテチ……イジメられるのイヤイヤテチ……お願いテチもう許しテチ……テェェェェ……」 「そうだね、そろそろ僕も仔糞蟲ちゃんのウザったいカワイこぶり言葉を聞き飽きた」 「……許してくれるテチィ……?」 「許してあげてもいいよ、ただし仔糞蟲ちゃんギャクタイ卒業試験に合格したらね」 「……テェ……?」 ニンゲンさんは仔実装ちゃんを仰向けに転がします。 そして、それまでの笑顔とは違い、厳しい眼差しで仔実装ちゃんを見下ろして言いました。 「いいか糞蟲、俺は仔糞蟲専門の虐待派だ。オマエが仔糞蟲を卒業できたら虐待も終わりにしてやる」 「……テェェェ……ワタチは糞蟲じゃないテチ……」 「まずそのテチを卒業しろってんだッ!」 ニンゲンさんは片手で仔実装ちゃんの胴体を押さえ、もう一方の手で左腕を引きちぎりました。 「……ヂャァァァァァッ!? イタイイタイイタイイタイテチィッ! おててがッ……ママァァァァァッ!!」 「テチは卒業しろっつってんだよッ!」 ニンゲンさんは、さらに仔実装ちゃんの右脚も根元から毟るように千切りとります。 「ヂャァッ!? ヂォァッ!? おててがッ!? あんよがッ!? イタイイタイイタイイタイッ!」 「おててじゃねえッ、手だッ! あんよじゃねえッ、足だッ! さあ言ってみろッ!!」 「おててイタイイタイあんよイタイイタイ! ママママママママ助けテチィィィィィッ……!!」 「……ふんぬッ!」 怒ったニンゲンさんは仔実装ちゃんの残る左脚も根元から、もぎ取りました。 「ヂュピィィィィィッ!? イタイイタイイタイイタイイヤイヤイヤイヤッ! イヤテチイヤテチイヤテチッ!」 手足を喪いダルマのような姿で、激しく首だけを振る仔実装ちゃん。 千切りとる部分がなくなったので、ニンゲンさんは冷たい眼で仔実装ちゃんを見下ろすだけです。 頭まで千切ったら仮死に陥って黙ってしまうので面白くありません。 ちなみに仔実装ちゃんは偽石の摘出処置済ですから、この程度のギャクタイでは、まだまだ死ねません。 「……テッ……テッ……おててもあんよもなくなっテチ……テ……テテ……レ……」 おやおや。 泣き続けていた仔実装ちゃんの眼が、次第にうつろになってきましたよ? 「おててナイナイレチ……あんよナイナイレチ……これじゃ蛆チャレチ……蛆チャレフレフ……レフゥ……」 あらあら仔実装ちゃん。 死にはしませんでしたが精神崩壊したようです。 「レフレフ……♪ ワタチは蛆チャ♪ 蛆チャだからワタチじゃなくて蛆チャって名乗るレフ♪」 「……おい、仔糞蟲?」 「レフー? ニンゲンさんがいるレフ、蛆チャをプニプニしてレフー♪」 「これじゃ卒業じゃなく落第だな。仕方ない、俺の虐待は仔糞蟲専門だ、予定外だが終わりにしてやるよ」 「レフレフ? プニプニしないレフ? 蛆チャをつかんでどうするレフ? 窓を開けて日なたぼっこレフ?」 ニンゲンさんのアパートの部屋は二階にあって、窓を開けると外は公園です。 野良実装の声がうるさく、糞の臭気も強烈で家賃格安物件ですが、ニンゲンさんは気に入って住んでいます。 虐待の獲物を気軽に捕まえに行けるからです。 「さあ仔糞蟲落第の糞蛆ちゃん、これでサヨナラだ」 「バイバイレフ? ニンゲンさんお別れのプニプニ……」 「しねーよ! あばよ糞蛆ッ!」 ニンゲンさんは手足を喪った仔実装ちゃんを公園に向かって放り投げ、ぴしゃりと窓を閉めました。 仔実装ちゃんがそのまま死んだか、生きたまま野良に喰われたかはニンゲンさんは興味ないようでした。 ------------------------------------------------------------------------------------------------ 【終わり】