タイトル:ふたば愛護公園壊滅事件(スク祭用・テーマ愛護)
ファイル:ふたば愛護公園壊滅事件.txt
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初投稿日時:2007/09/29-12:58:46修正日時:2007/09/29-12:58:46
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ふたば愛護公園壊滅事件


出典: WEBフリー百科事典『ジソペディア(Jisopedia)』

    以下の記事全文は、実装石愛護研究の目的で上記サイトより参考引用させて
    いただいております。(転載認可済)


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ふたば愛護公園壊滅事件(ふたばあいごこうえんかいめつじけん)は、1990年8月18日に
「」県双葉市虹浦町(現・虹鳴町)の双葉公園内で発生した実装石大量死滅事故と、これを要因
とする副次的事件の総称である。
今も尚各方面で議論されている実装石問題を取り扱う上で、大変重要な課題を残した事件であり、
現在の実装石に対する心象を決定付けた点でも重要である。
事件の内容や被害規模・原因から、愛護公園全滅事件や実装石大量死事件とも呼ばれる事が
ある。


目次 

1 概要 

2.事件現場の成り立ち

3 ふたば公園

4.実装石コミュニティ
 4-1.コミュニティの内情
 4-2.実装石の住居
 4-3.実装石の食料
 4-4.コミュニティの自主管理体制

5.事件発生

6.コミュニティの現実

7.テープ内容

8.事件の原因

9.公園内の状況

10.虐待派の存在

11.真犯人(容疑者)

12.もう一つの問題点

13.後に指摘された盲点

14.事件後の影響 

15.社会的影響

16.関連項目

17.参考文献


[編集] 1.概要

1990年8月18日未明、「」県双葉市虹浦町にある市営施設「ふたば公園」内で生活していた、約
二万匹に及ぶ実装石が大量死するという異常事態が発生した。
更に公園内の一部施設が倒壊した上、「公園脱走者」による近郊家屋への被害が続出した。
加えて、19日未明に発生した火災事故を皮切りに細かな事件が各所で同時多発した影響で、
虹浦町はほぼ丸三日間に渡り、一般生活に困難を来すほどの深刻な状況に陥れられた。
21日未明に一応の沈静化が計られたが、この事件による死亡者は8名、負傷者多数、行方不明
者は3名にも上った。
想像を大きく上回る被害規模から、一時は「虹浦町全滅」との誤報も流れた。[要出典]





[編集] 2 事件現場の成り立ち

当時の双葉市役所は、近郊の帆観呼山(ほかんこさん)より大量移住し、市内各所で様々な
悪影響を及ぼし始めた実装石に対する駆除対策を巡る議論が日々重ねられていた。
帆観呼山は、かつて実装石をはじめとする小型野生動物にとって理想的な生活環境が整って
おり、地元では"動物達の最後の理想郷"と呼ばれていたが、近年の樹木伐採や、双葉市の
ベッドタウン化に伴う住宅街拡張を目的とした無理のある土地拡張工事の影響を受けて環境が
悪化。
そのため、“山実装”と呼ばれる比較的賢い実装石達が山林部での居住を諦め、少しずつ虹浦町
やその近辺に流入するようになっていた。

野良となった実装石達による食料品強奪やゴミ捨て場荒し、また住民に対する威嚇・攻撃(主に
石やゴミ、糞便などの投下)・食料の要求などの被害は一気に増大化。
90年初頭までに、市役所に寄せられた被害報告や苦情はなんと一万件にも達し、当時市長・
鳥付擦明(とりつきすれあき)氏は緊急対策会議を開きこれの対応に努めた。

当初は、保健所による大規模な駆除活動を行い実装石の全滅及び市内からの締め出しを遂行
するべきとの意見が大半を占めたが、後に提出された実装石の生態に関する報告書が方向性を
捻じ曲げた。

実装石の駆除と必要な人員・人件費を含む予算等の割合、それに対する実装石の出産増加率・
生活圏拡大能力、更に極端な体格差からくる探索に費やされる時間や労力の釣り合いがまったく
取れず、更に帆観呼山から双葉市にかけて続いている森林部周辺の特殊な地理形状が薬物
散布や人員による駆除効果を著しく低下させる可能性が高い事から、これではいつまで経っても
決着が着かないという見込みが強まり、駆除による徹底殲滅案は一旦暗礁に乗り上げる。
これは、市長をはじめとする当時の会議参加役員のほぼ全員が、実装石の生態に関する基礎
知識を持っていなかったせいだった。

大規模駆除の代行案として、当時市長助役だった磨消敏子(すれけしとしこ)氏によって提出
されたのが、「実装石を市の保護下に置き育成管理する」というものだった。

この案は当初は軽視されたものの、実装石の「安全かつ平和な環境が与えられれば、大きな移動
をしなくなる」という生態に基いた根拠と、一匹ないし一家族単位の実装石が生活に必要とする
範囲面積、そして育成に必要な飼料とその調達・予算などの様々なポイントを抑えた追加資料が
大きな評価を得るに至り、また駆除活動にかかる費用よりも割安で済む可能性が明確に示された
ため、数十回に渡って行われた会議の方向性は逆転した。

だが後年、磨消氏により提出された研究資料にはかなり盲点が多く、実装石の突発的行動が
及ぼす悪影響がまったく考慮されていなかった点、また個体ごとの生活必要面積や飼料の分量
などは良く飼育された特殊環境対応型の実装石(所謂、飼い実装)だけを基準とした物である点
などが指摘されている。
更に、本件後に辞任退職した磨消氏が翌月早々に実装石愛護運動協会に所属した事からも、
この資料は所謂「愛護主義者により都合の良い部分だけを摘出・まとめられた一方的な見解に
よる内容、または捏造だったのではないか」とも分析されているが、事後確認された膨大な関係
資料からは何故か該当物が一切発見されず、ある職員が個人的にコピーしていた資料のごく
一部しか現存していないため、現在はあくまで推測の域を出ていない。
いずれにせよ、この時の会議の方向性が駆除活動に終始していたら、後の大事件は発生
しなかった可能性は著しく高いと、各方面の専門家は分析している。
(冥送出版刊・双葉市の悲劇は何故起きたのか)

事件後、市役所は「事故調査委員会」を独自に設立、本件の追及を行った。
これは、本件における数多くの謎を解明する目的で、航空機や鉄道関係の事故発生時に活動
する事故調査委員会の存在を参考に組織されたものであり、期間限定で警察からの資料提供権
や事件対策本部参加権を持ち、また公園施設関連の調査に限っては警察並の調査権限を特別
に認可されたものだった。
メンバーは保健所職員・市役所役員だけでなく警察関係者、事故研究専門家、実装石専門家、
著名ブリーダー等の実力派が集められ、また航空・鉄道事故調査委員会の運営・調査進行方式をも
参考にして、2005年12月の実解散に至るまで大々的な活動を行った。

尚、この委員会は市営ではあるものの調査のためであれば親元の市役所や警察側の不備・問題
点も容赦なく指摘・発表するという徹底したスタンスを維持し続け、数多くの疑問点を解明しただけ
でなく後年の実装石関連業界にも多大な影響を与え、その活動は国内外を問わず大きな評価を
得ている。





[編集] 3.ふたば公園

双葉市は、当時虹浦町にある広大な所有敷地に、地域住民を対象とした大公園の設立を進めて
いた。
「ふたば公園」と名付けられたこの施設は、総面積142,523.31平方メートルに及ぶ規模で、これは
東京の日比谷公園にほぼ匹敵する面積である。
また各設備や景観なども、日比谷公園の規模に及ばないもののかなり参考にされている。
敷地内は複数のブロックに分けられ、それぞれに児童用の遊具、ベンチ、身障者の利用をも考慮
した公衆便所、コミュニティセンター、管理事務所、災害時の避難設備等が設置され、また数多くの
樹木や芝生が贅沢に植えられ、更に初期段階から園内美化を前提に清掃活動を徹底していた
ため、とても綺麗で快適な公園として高い評価を得る。

当初は地域住民達の憩いの場として設立計画が練られたが、先述の「実装石の保護管理」を効率
よく行う場が他にないため、ふたば公園は開園とほぼ同時に実装石を受け入れるための専門施設
的な扱われ方をする。
だが、この件が住民に巧く伝えられていなかったため、当初から公園利用者による市役所への
クレームが多発。
これに対し市役所は、公園内に住み付いた実装石達が地域住民と共存していけるように環境を
整える活動を開始。
公園管理事務所には本来の業務に加え、実装石の生活環境管理や防犯対策等の、これまでに
なかった新しい仕事が与えられた。

後に、公園管理事務所は事故発生要因を未然に発見・排除出来なかったとして被害者遺族団体
から激しいバッシングを受けるが、事件当時管理事務所に勤務・殉職した職員達がまとめていた
運営計画及び緊急対応策の内容は大変理想的なものである事が証明され、後年事故調査委員会
によって発表された際は、多くの被害者遺族が職員遺族・関係者に謝罪を行った。




[編集] 4.実装石コミュニティ

双葉市は、駆除しても単体生殖で無尽蔵に増殖する野良実装対策案として、「実装石を管理下に
置くと同時に生活を保護する」というアイデアを掲げたが、これは大変に苦難の伴う長い道のり
だった。

市長は、市役所内にふたば公園実装石コミュニティ管理部を設立し、元飼育業者や保健所役員、
飼い実装ブリーダー経験者など実装石の生態に詳しい人材を多数募集した。
管理部は、実装石管理確立のためにはいくつもの課題をクリアする必要があると延べ、また当初
はある程度の駆除もやむなしとも唱え、まず悪質な性格の個体排除と、「人間に都合の良い」実装石
コミュニティの成立準備から実行に移す事を決定した。

保健所職員と実装石ブリーダー有志、その下で専門教育を受けたアルバイトがふたば公園に派遣
され、簡単なテストを行い悪質と思われる個体を選別・駆除。
並行して、事前選別された特別賢い個体や、売り物にならなくなりペットショップから処分対象と
された老齢飼い実装を集め、専門ブリーダーによる再教育・訓練が行われた。
これらを悪質個体駆除活動後に公園へ放ち、野良実装達のリーダー的位置付けに立たせようと
した。
同時に、駆除班では対応しきれない糞蟲個体の処理は、リーダー格実装石達の判断に任せ
られた。
当初は、ブリーダーがリーダー格実装石を補助する形でコミュニティ内の実装石に呼びかけて
いたが、徐々に介入を減らして自主的な活動が出来るように仕向けた。

余談だが、この時行われた「老齢の売れ残り飼い実装を別個体の専門教育係に採用する」という
アイデアは大きな評価を得ており、現在も各方面で幅広く採用されている。

また、ふたば公園内に配備された「公園管理事務所」に実装石の実質的な管理対応を委任。
実装石を巡るトラブルの対応や、実装石の育成監督・管理ではない、コミュニティ内の一部問題
解決、園内環境の変化記録、またそれらの総合記録の提出が命じられた。
管理事務所は、基本二人、最大四人の職員が交代制で勤務し、24時間体制で運営された。
事務所施設は、公園南東部ブロックにある人工池のほとりに建設された二階建てのプレハブで、
一階が事務所、二階が職員の休憩室とその関連設備に用いられていた。
2007年現在、この建物は撤去され鉄筋コンクリート製の同規模設備に置き換えられているが、
これは本件において職員が施設内で死亡・殉職するという予想外の被害が発生したためである。


[編集] 4-1.コミュニティの内情

園内の実装石の数が多すぎるため、コミュニティ管理部は公園管理事務所と協力し、公園を4つの
ブロックに分け、それぞれに別なコミュニティを形成させる事にした。
これは、一つのコミュニティ内の個体数が増加すると、その中枢に立つリーダー格実装石達に
かかる負担が増大する上、管理が行き届かなくなり園内の治安(この場合は一般公園利用者も
含めた意味)が乱れる危険を考慮した対策であった。
先にリーダー格実装石として選別された個体は一時的に再回収され、コミュニティ管理部に
よって充分な知識を与えられた上で、あらためてそれぞれのブロックに放された。
同時に、各コミュニティブロック内にいくつかの暗視機能付監視カメラを設置し、常時観察が
行われる事になった。

これら地道な活動を約一年間行った結果、公園からは徐々に悪質性質個体が淘汰され、また
実装石達の生活レベル・清潔度・人間との共存意識が向上した。
一方、公園管理事務所は実装リンガルを用いてリーダー格実装石との綿密なコミュニケーション
を取り、人間では感知出来ない範囲での生活上の満足・不満点の確認や、実装石だけでは解消
困難な問題点を細かくチェックし、その対応に当たった。
これにより、リーダー格実装石と管理事務所職員は大変理想的な関係に至っており、ある職員
が記していた業務日誌の片隅には、特定のリーダー個体に対する思い入れの厚さを感じさせる
記述も散見できた。[要出典]

ふたば公園には、実装石の生活を守るために数々の厳しいルールが設定されていた。
これは「他の動物を絶対に入れないこと」「実装石に餌をやらないこと」「実装石を無断で持ち帰った
り、傷つけたり殺したりしないこと」という内容が中心で、一見ごく普通のものに思えるが、その
ルールの徹底ぶりは尋常ではなかった。
公園管理事務所は、園内で犬の散歩をしている人を見かけると即座に出向いて退出させ、愛護派
の人間が餌を無断でバラ撒けば厳重注意を行い、それでも繰り返す場合には罰金を課すほど
だった。
当然、虐待現場などが発見された場合の処置はもっとも厳しく、事件発生までに数十人もの人間
が厳罰に処されていると言われている。[要出典]
また、公園内に住み付いたホームレスへの対応は強行かつ強引で、管理事務所は実装石への
悪影響を考慮し、開園直前から徹底的排除に努めた。
これにより、人権団体から「人間よりも動物の生活を重視するのか」という激しい非難を受ける事に
なるが、当時双葉市各所ではホームレス流入による様々な問題が発生していた事もあり、双葉市
は強硬な態度を示し更なる対策を進めた。
これにより、管理事務所に報告された範囲での「ホームレスによる実装石の被害」は最後まで発生
しなかった。

余談だが、公園内における実装石虐待で身柄を拘束された者の中には、実装石からの反撃(大量
の糞投げ)を受けて公園管理事務所に救助を求めてきたというケースも数件あった。
この時の実装石は特に処罰を受けなかったため(注:市及び管理事務所側は正当防衛と判断)、
後年各方面で行われた実装石の扱いを巡る議論において問題視された。



[編集] 4-2.実装石の住居

一方、公園内保護対象の実装石も、安定した生活を送るためにそれなりのリスクを支払わされた。
最大の問題である「住処確保」「餌・水分補給」「同族間の治安維持」のうち、前者二つは公園管理
事務所が一切を担当し、後者一つは実装石コミュニティに一任された。
これはある水準以上の治安・風紀維持意識がない限り、どのような環境を与えても無意味になる
だろうという、ブリーダー経験者各人からの意見を反映させた結果である。

実装石の住処として、大型ダンボールをビニールで包み防水性と耐久性を向上させた物や、古い
木箱に撥水塗装処理を施した物などが主に与えられたが、これらは家族単位ではなく個体数
いくつに対して一つというような配分で、いわば詰込型の共同住宅式だった。
更に、公園の景観を維持するため住処の配置は厳格に決定されており、それ以外の場所に配置・
移動させる事は一切出来なかった。
各住居設備は、物理的破損が発生しない限りは(実装石達の力では)絶対動かせないように、
底部には廃材等を用いた重りと楔が埋め込まれていた。
ただし、この住居設備は特定体積ごとにパーティションで区切られていたもののかなり大型だった
ため、ほぼすべての個体を収納する事が可能だった。
また、リーダー格実装石をはじめとする特殊な位置付けの個体は別途専門住居が与えられ、
これによりコミュニティ内に明確な上下関係が存在する事の認知と、それに伴う様々な意識改善を
促した。
その配置は主に植林部の奥や公園外周柵の近辺、また大きな木の裏側など、公園の一般利用者
からは目立たなくなるように工夫されていた。
また配色も濃緑色や茶色、黒が用いられ、特定の季節を除いて大きく目立つ事のないよう配慮
された。
何かしらの理由で住処から退出した実装石も野ざらしになる事はなく、一部の古い遊具を解放して
一時的な雨避けや休憩に利用できるようにしたり、また可能な範囲で住処の増設を行い対処した。
一軒の住処は、当初は仔実装以下の個体を除けば最大50匹前後が収納可能な一階層構造だった
が、数が増えた後年は高さ1メートル50センチほどの二階層構造にする事で約100匹単位の居住が
可能になった。
事件発生当時は、これが公園内に約200〜250軒配置され、計画では95年頃までにより大きなタイプ
のものを更に200軒追加する予定があった。[要出典]
ただ、この住居は当の実装石達にとっては決して住み良いものではなかったらしく、身長50センチ
クラス以上に達した成体には相当狭かったようで、
仔実装以下の個体が親や仲間の寝返りや徒歩で踏み潰されてしまう事故が多発していた。
これはリーダー格実装石らも同様で、個別住居であるという以外の利点はほとんどなく、狭さは一般
住居より若干ましという程度でしかなかった。
公園管理事務所の記録によると、これらは「ほとんど寝る時だけしか利用されていなかった」という。
当時公園を利用していた住民達は、公園の隅や陰に延々と続く濃緑色の箱の群れに、複雑な感慨
を抱いていた。
(双葉市役所発行・ふたば通信第82号「ひとびとの声」)

実装石の生活における次の問題点「排便処理」について、市は公園内に専用のトイレを設けるという
前代未聞の対応を行った。(※1)
これは各所に設けられた公衆トイレに隣接する形で作られ、高さ1メートル、幅3.5メートル、奥行き
2.5メートルの直方体構造で、簡素なモルタル構造だった。
中には50センチ幅に区切られた計12の個室があり、それぞれに水洗の小型和式便器が設置されて
いた。
便器の周囲には四つの小型椅子が置かれ、ここに腰掛けた仔実装の糞はそのまま便器に落ち込む
構造になっていた。
この特殊な形状のため、成体は便器をまたぐのではなく末端部に尻を寄せる形で排便するスタイル
を強要されたが、一度に複数の個体が用を足せる事、また構造上個室内に長時間居座るのが困難
になる事など利便性も高く、これまでに散見された「人間用便器を利用したために発生していた事故」
は大幅に減少された。
ここに加え、人間用便器は男性用の一部を除き洋式が用いられたため、実装石達はこれを利用
しようとしなくなり、トイレ内でのトラブル軽減も叶えられた。
実装用トイレ個室の排水は奥の壁にあるボタンを二度押す事で行われる仕組みだったが、これは
便器が出産にも用いられる可能性を考慮した誤作動防止構造であった。
ボタン二度押しはリーダー格実装石や風紀実装達によって操作が伝えられ、ごく希に流し忘れが
あったものの概ねきちんと利用されており、野良実装が使用している割には清潔な状態が維持
されていた。
また、一般利用者への影響も考慮して実装用トイレは必ず遊歩道から死角になる位置に設置され、
消臭処理も万全に施された。
トイレは屋根を取り外す事で簡単に清掃が行われる構造になっていたが、ジョイント部には特定の
手順を踏まないと解除できないロックが組み込まれていたため、悪意ある一般利用者による
いたずらは行えないように工夫された。

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[編集] 脚注

※1:技術提供・設計は、双葉市から依頼を受けたローゼン社日本支部によるもの。




[編集] 4-3.実装石の食料

コミュニティ管理部と公園管理事務所が特に神経を遣ったのは、実装石特有の同族食いを
起こさないようにするというポイントだった。
そのため、餌の供給を途切れさせる事は最大のタブーとされ、最も注意が払われていた。

実装石の餌は、公園管理事務所職員が午前7時〜9時と午後5時〜7時の二回に分けて実装フード
を配給していた。
与えられていたのは、一般ペットフードでは中級〜下級の徳用品クラスが主で、栄養価は重視
されたものの実装石の嗜好には決して合うものとは言えなかった。
しかし、これは予算上やむを得ない事で、最盛期には最安値の実装ドライフード(成体一食
100グラム換算とした場合)を用いたとしても、当時価格で一日に平均40万円前後もの費用が必要
になった。(※1)
これは各方面から大きな問題として取り上げられ、動物愛護団体からは配給餌の質の向上が、
コミュニティ管理部からは更なる予算の削減が唱えられた。
また、仕入先のペットフード業者もあまりの納品数に在庫切れを起こす場合が多々あり、一食でも
餌を抜くと猛烈な飢餓感に襲われ暴走す可能性がある実装石の性質を考慮した上で、より的確な
対応を考慮する必然性に迫られた。
コミュニティ管理部は「公園内に果実の成る樹木の植樹」「廃棄家畜の肉(を簡単に加工したもの)
の配給」や「野菜栽培の教育」の三つの対策を講じた。
公園内の一角を開放して畑を作り、各種野菜(季節によって種の種類を変える)を栽培させるため
のノウハウを教え込み、ある程度の自給自足を促した。
これにより、実装石はトマト、じゃがいも、茄子、胡瓜、南瓜、人参、大根、ミニキャベツなどの育成
が行えるようになり、中には人間が育てたものと大差ないほど立派なものを育て上げる個体まで
出現するようになった。
また、実装糞を醗酵させて肥料を作る技術も伝授された。
尚、野菜はある程度の期間保管できる種類が選ばれ、季節によっては育てやすい果物や、乾燥
させる事で摂取に適したものになる野草類等が与えられた。
後年、主に仔実装達の娯楽目的として、食料には向かない花や草などの種も与えられるように
なった。
この対策の結果は実装石生態研究家達の注目を集め、ハイレベルな植物栽培能力を持つという
実装石の意外な一面が明確化される事に繋がった。

植樹による果実の提供は様々な意見が述べられたが、最終的に柿・グミ・ヤマブキ・どんぐり・
ヤマモモ・ユズリハ等が選ばれ、各所に配置された。
実装石は、人間の食用には適さない木の実も食べられるため、その後も様々な樹木が植えられた。
これは、後に公園の樹木に彩りを加える副次的効果も生み出し、一般利用客にも好評を得た。
またこれと並行し、冷暗所を利用した食用キノコの育成ノウハウも伝えられ、これも実装石達の
自給自足生活の大きな補助となった。
更に、これら樹木を目当てに集まってくる昆虫類の一部も実装石の餌となった。

元々家畜業者が多く在住していた双葉市にとって、廃棄家畜の肉を実装石達に与える事は一石
二鳥の対策だった。
肉は、主に年老いた廃棄牛・豚・鶏が簡易裁断された状態で収められ、園内に残留する可能性の
高い骨類は与えられなかった。(※2)
肉類は適度な間隔を開けて与えられ、腐敗の関係で保存は厳禁とされ風紀実装達により厳しく
チェックされた。
肉の配給は実装石達にとって週末のお楽しみ的なものとなり、各コミュニティは肉の配給日が
近付く度に活気付いた。
肉は、血液や不純物・老廃物を流水で洗浄してカットしただけのもので、味付けや調理は一切
されていなかった。
また量に限りがあったため、必ずしもすべての個体に行き渡る事はなく、公園管理事務所は
ブロックごとに配給タイミングをずらして対応した。

しかし後年、事故調査委員会はこの対応が最悪の選択であった事を指摘している。

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[編集] 脚注

※1:2007年現在の換算では、商品値上げの関係から約50万円程度になる。

※2:当初は食べ残し肉による腐敗被害が発生するとの懸念も示されたが、肉に固執
   する実装石がこれらを食べ残す事はほとんどなく、実際には保管したくても出来
   ないほどの大きな需要があった。




[編集] 4-4.コミュニティの自主管理体制

生活圏を確立された実装石達には、厳しい自主的管理体制も必要とされた。
先述のリーダー格実装石達の指示と教育により、糞蟲の間引きや凶暴なマラ実装の排除、また
どんな理由があっても、外部からの来訪実装をコミュニティに加えないといった規則が徹底され、
違反する者は容赦なく制裁が加えられた。
これは、コミュニティに属していない部外者を招き入れる事で発生する同族間混乱を避ける意味と、
実装石間で頻繁に発生する「集団意識の悪化(悪意ある個体の性質に善良な個体が同調して
しまう)」の予防、想定外のトラブル(寄生虫の侵入や、生活主観・倫理観の相違による意見対立)
を未然に防ぐためという理由があった。
また、飼い実装の公園内侵入が厳しく規制させていたのもこれが理由である。

規則に基く処罰・排除や、自然死で発生した実装石の死体は、特定の場所に集められ定期的に
管理事務所職員に回収されるシステムも存在した。
更に、職員から定期的に配給される飼料と、コミュニティ内で定められた自主栽培物及び園内
果実以外の物を口にする事は固く禁じられており、生活エリアごとに定められた以外の水場
やトイレの利用も禁止された。
また常に清潔でいられるように、一定年齢以上のすべての個体は洗濯と身体洗浄のスキルを
身に着け、それを子供達にも教えていく事が義務付けられた。

これら細かい規則は人間側だけでは充分に管理出来なかったため、リーダー格実装石を頂点と
する「風紀実装」十数体(最大期は百数十体に及んだと言われている)によってチェックされ、
違反者には同族による容赦ない制裁が施行された。

基本的な罰は、厳重注意→生活環境の隔離(テリトリーからの追放)→身体的損傷を伴う制裁
行為→精神的損傷を伴う制裁行為→公園追放→処刑という段階を踏んでいた。
なんと人間にとっての牢獄に近い施設まで作られており、深く掘られた穴の中に落とし入れられた
個体も多数存在した。
但し、これら制裁行為は一般の実装石の目前では決して行われず、特定の隔離エリア内でのみ
行われ、罰を与える専門の実装石も存在していた。
また制裁行為を外部から覗いた個体にも、同様の罰が課せられた。
これは同族の不幸をあざ笑うという実装石の性格と、それにより公園在住実装石としては
相応しくない思考が感染する可能性を考慮した対応であり、その結果実装石の間では「罪と罰の
重さ」という概念が充分に浸透し、中には罰を課せられると知った途端に偽石を自壊させてしまう
個体も存在した。
尚、処刑は実装石間では決して行われず、生きたまま死体扱いで保健所行きにされるというもの
で、これは実装石達を最も恐れさせた罰則だった。[要出典]

一方、規則徹底によるストレスの影響も考慮され、一部エリアには実装石専用の遊具が設置された
り、特定の間隔で金平糖などの駄菓子が均等に分け与えられた。
更に、リーダー格実装石には大量の金平糖が預けられ、コミュニティ内の功労者への特典・賞与
として与えられるというシステムを構築させ「リーダーのカリスマ」の育成・発達にも配慮が成された。

この些細な特典は公園管理事務所が想定していた以上の効果を発揮し、賞与を得るために一部
の実装石グループが結束、協力して公園美化に努めたり、テリトリー内の仲間の住居修復を補助
したり、野菜の栽培効率を高める研究を始めたり、親を失った子供達を引き取り育成する場を設立
したりと、それまでの実装石観を大きく覆す働きを見せた。
この「有能な実装石グループ」の発足は別テリトリーの実装石達にも伝染し、善業を自ら行おうと
する実装石の多数発生を促す結果に結びついた。
特に南西部の実装コミュニティブロックは清掃活動に精力的で、一時期は「ゴミ箱要らず」とまで
言われるほど徹底した活動を行っており、火が着いたタバコの吸殻を回収・消化・処分する仔実装
達の活動が映像記録として残されている(尚、吸殻廃棄時のミスで衣服と毛髪に引火し焼け死んで
しまった個体が居たが、最期まで吸殻を放り捨てようとしなかった事から、実装石愛好家の間では
美談として長年語られ続けている)。

実装石研究家として名高い氏原腑仁雄(うじはらふにお)氏は、この特異な現象に注目し、市の
認可を得た上で園内の実装石の研究・記録を一年に渡り行い、「実装石は、悪意だけでなく善意も
伝染させ、広く行き渡らせる事ができる」という見解・証明をレポートにまとめ、ペット雑誌「実と装」
上で発表、各方面から高い支持を得た。

だが、この賞与システムはリーダー格実装石が豊富な餌を大量にストックしている事を大きく
アピールする事も意味するため、時折これの奪取を目的としたコミュニティ内部の反逆行動も発生
していた。
そのほとんどが風紀実装によって制圧されたが、83年には北東部のコミュニティほぼ全体が離反
してリーダーと風紀実装達を殺害するという事件が発生したため、公園管理事務所は対策の考慮
を余儀なくされた。
その結果、ごく一部の風紀実装に武装を与えた上、反逆意志を発生させやすい「潜在的糞蟲性質」
を持つ個体の更なる徹底選別が行われた。
これら対策により、後述する北東部コミュニティ事件直後、公園内全体の約1/10に及ぶ個体が
追加処分されてしまい、一時双葉市は動物愛護団体や保護計画推奨者達からの大きな反発を
受けた。
尚、この時与えられた武装は人間には危害を加える事が出来ないものという制約があったため、
金属類や鋭利な形状のものは選ばれず、わりばしや木の棒を加工した打撃根、細いロープや網、
弱性実装コロリ、ブラックジャック(先端部に砂の詰まった皮袋)等が与えられた。
これら武装は、実装石達に与えられる前に入念なチェックが行われ、「実装石の能力では複製
できない」「人間(特に子供)に当たっても負傷させられない」「複数回の攻撃を与えないと実装石の
戦意を喪失させられない」性能に留められる事になった。

負傷した実装石の治療は、実装石の生命力・回復力を見越した上でコミュニティ内で処置する
ようにされていたが、中枢幹部クラスの個体の生命維持や伝染病発生の可能性、また著しく回復
が困難であると判断された個体については、専門獣医の診察・治療を受ける事ができるシステム
が確立された。
もっとも、これを受けるためには厳重な審査が必要であり、実際にはごく限られた個体しか治療が
施されなかった。[要出典]
これは、自身の身体に無根拠な不安を覚えた個体が殺到する可能性を考慮したためで、獣医の
診察を受ける前にコミュニティ内の“医療係実装石”の診察を受け、認可を得なければならなかった。
この医療係実装石は、実装石の身体問題を判別できるように専門教育が行われた個体で、大変
数が少なく公園全体でもせいぜい数十体程度しか居なかったと言われている。
また医療係実装石には買収行為に対する厳格な罰則が別途設けられていたため、隠し持っていた
餌に釣られて嘘の認可を与える者は居なかったと言われている。

このように、ふたば公園内の実装石コミュニティは、各エリア間で多少の差異はあるもののいずれ
も大変高度な独自生活圏を形成し、またモラルやルールの自主的徹底も相まって、理想的な
「人間と共存する者」となりえた。
一般利用客も、次第に実装石の存在を受け入れるようになり、開園一年半を過ぎる頃には実装石
と戯れる児童や家族の姿なども散見されるようになった。
現在においても尚、ふたば公園の実装石ほど大規模かつ優秀なコミュニティが形成された例は
ないという説もあり[要出典]、実装石を管理する必要性に迫られた各方面の機関は、双葉市の対応
とアイデア、公園管理事務所がまとめた研究報告レポートを大いに参考にしている。

しかし、その内容の一部は反面教師的な意味合いで参考にされる結果ともなっているのが現実
である。





[編集] 5.事件発生

1990年8月17日午後22時15分頃から、ふたば公園付近の住民より「実装石が異常な鳴き声を
上げている」という通報が警察に殺到した。

双葉市警察署は、ふたば公園にもっとも近い虹浦第二小学校前交番から二名の警官を派遣させ、
公園管理事務所の様子を確認させた。
当時勤務していた過去野敏明(かこのとしあき)巡査長と塩穂上郎太(しおほあげろうた)巡査は、
通報から約十分後に現場に到着。
午後22時58分、二名は公園管理事務所に到着。
午後11時7分、事務所施設内より過去野巡査長が本庁へトランシーバーで連絡。
「公園のいたる所から悪臭が漂っていて、沢山の実装石が鳴いています。窓を閉めているのに
ハッキリ聴こえてくるほどです」という内容だったが、これがこの時点で確認されていた園内生存者
からの最期の通信報告となった。
この間の事務所内のやりとりはわかっておらず、また警官が到着するまで管理事務所がどのような
対応を取っていたのかもわかっていない。

以降、翌16日未明(正しくは午前3時前半頃)、近所を通りかかった惨系新聞虹浦町販売店の配達
員が公園内から逃走してきた実装石達に巻き込まれて転倒・負傷するまで、園内の様子は一切
わかっていない。

午前3時頃、公園付近の住居に辿り着いた配達員は、新聞を配るため自転車を降りた直後、道路
上を埋め尽くすほどの実装石の波に押し流され、自転車ごと激しく転倒して頭部を強打、意識を
失った。
この時、配達員はイヤホンで音楽を聴いていたため、実装石に気付かなかった。
実装石は大きな喚き声を上げながら公園周囲の住宅敷地内に侵入し、窓を叩いたり縁の下に潜り
込んだり、或いは路上を当てもなく彷徨い続けた。
この騒ぎは就寝中の近郊住民を起こすほど大きなものだったが、脱走が始まったと思われる時刻
から約一時間後の午前4時22分、虹裏町三丁目二番付近の交差点で、23歳の女性が運転する
軽自動車が飛び出してきた実装石達を避けようとして角の民家の塀に激突し、同乗者の25歳男性
と共に即死した。
この時の衝突音が近郊住民の多くを目覚めさせ、事態の異常さが伝染した。
双葉市警察署に、近郊住民から初めての通報が入ったのは、それからさらに遅れた午前4時52分
だった。

通報を受けた警察が現場に駆けつけた時、公園の周辺は凄まじい量の汚物と実装石の体液・死体
で汚染されており、園内もいたる所にぼろぼろの実装石の死体が散乱していた。
また、公園管理事務所のプレハブは完全に倒壊しており、その一部は人工池の中にまで
落ち込んでいた。
中にいた職員と、二名の警官はいずれも倒壊に巻き込まれて死亡しており、更にその周辺にも
多数の潰された実装石の死体が発見された。
これにより、監視カメラによる映像記録はまったく回収できず、園内で発生した事態は益々不明瞭
となってしまった。

警察はふたば公園の封鎖を決定し、更なる増員を現場に送り込んだ。
ふたば公園の四箇所の入り口は封鎖され、園内に一般利用者が残っていないか入念に確認された。

一方、民家に侵入した実装石はそれぞれ奇怪な行動を取り始め、住宅侵入を試みて窓を割る者や、
鍵を閉め忘れた窓や扉から侵入し食料を奪取する者、人間に保護を求める者(※1)などが現れた
が、大変に怯えていたり、激しく憤っていたり、また異常なほど興奮していたりと、いずれも普通とは
思えない奇妙な反応を示していた。
その多くは身体を負傷しており、いくつかの者は手足や耳、実装服や頭髪が欠損していた。
中には完全に頭髪と実装服を奪われた個体が、比較的健常な別個体複数により激しい暴行を
受けている様子も確認された。

午前6時7分、警察の要請により緊急召集された保健所職員は、実装石の死体を回収し数台の
トラックで運搬処分したが、身を隠した実装石まで回収する事はできず、また明らかに生きている
個体は回収せず、ほんの三時間程度の活動で早々に撤退してしまった。
この時の保健所の対応には大きな疑問が残り、現在も様々な憶測が述べられているが、一説では
「ふたば市側より、まだ生きている実装石を回収する(=殺す)事が禁じられていたのではないか」
とも言われている。
しかし、後年市役所及び保健所側はそのような旨の指示をした覚えはないと断言しており最終的に
は現場の判断の結果であると断ぜられた。

午前8時41分、保健所から追加人員が派遣され、ふたば公園内の調査が開始された。
この時点で、公園から脱出した“まだ生きている”実装石の数はまったく確認されておらず、各家庭
内に潜り込んだ個体による被害は進行中だった。
現場の警察官は、各所でランダムに発生するトラブルの対応に追われ、この時刻には公園の封鎖
監視も手薄になっていた。[要出典]
尚、この間も継続して園内から脱走する実装石が存在し、出勤途中の住民によって多数確認
されている。

午前11時15分、保健所の調査係は「園内で何か大きな事件が発生し、怯えた実装石が一斉に
脱走を行った」ものと判断して警察と市役所に報告した。
ただしこの時点では、あくまで園内限定の報告であり、近郊被害については明確な情報が
まとめられていなかった。

午後2時過ぎ、公園北西部にある多目的コミュニティセンターより、それまで未発見だった大量の
実装石の死体が発見された。
コミュニティセンターは人間専用の鉄筋構造施設であり、各種イベントで使用される時以外は基本
的に閉鎖されているため、実装石が入り込めないように床を地上1.2メートルほど高くして入り口前
に階段を設け、更に縁の下に潜り込めないよう隙間には目の細かい金網が張られていた。
この金網の穴に、無数の仔実装以下の個体が詰め込まれていた。
仔実装達は頭や脚部から無理矢理穴に押し込まれたようで、そのほとんどが金網に身体を
削がれて身体損壊を起こしていた。
仔実装にとって高い所に吊るされたためか、ほとんどが衰弱死または餓死、自壊してしまった
らしく、頭部が確認できる死体のほとんどが恐怖に引きつった表情を浮かべていた。
また、金網部分に激しく打ち付けられたと思われる顔面部を損壊した成体実装石の死体も十数体
発見された。
後日談になるが、この一件によりコミュニティセンターの金網は貼りかえられる事になったが、
その際縁の下の更に奥から無数の蛆実装の死体が発見されている。
事故調査委員会は、この状況からコミュニティセンターの床下部は実装石達の私設処刑場のような
扱いをされていたのではないかという仮説が唱えられた。

午後3時頃、南西部に設置されている災害避難設備の一つ、震災対策用備品倉庫施設からも
実装石の死体が大量に発見された。
これは、ふたば公園が参考にしていた日比谷公園にも設置されている設備で、大規模な災害
発生時に利用するための保存食や炊き出し用品、毛布や携帯用トイレ、工具等が収められている
24立方メートルほどの鋼鉄製の箱(外観は物置小屋にも見える)だが、公園外周沿いに置かれて
いる上に手前には多くの木々が生い茂っているため、発見が遅れていた。
実装石達はこの箱の天井面に降り立っており、そのまま降りられなくなって全滅していた。
当初はどうやって上ったのかと思われたが、すぐ脇に幹が斜めに傾いている巨木があるため、
これをつたって乗り移ったものと考えられた。
12平方メートル程度の狭い天井面には、なんと成体・仔実装以下個体含めて300体以上もの
実装石が上っており、大半は他の個体に踏み潰されたり、身体の一部または大部分を食い
千切られていた。
また箱の周囲には落下したと思われる個体の死体も数多く発見されており、この数も含めると実に
500体を悠に超える個体が密集していた事になる。
尚、落下した死体も部分的に食い荒らされている物が多く、この時点で、コミュニティ内では厳禁
とされていた同族食いが頻発していた事が確定的となった。

午後4時55分、公園敷地内で確認された実装石の死体は事故調査のため現場で確認作業が
行われ、40センチ以上の成体個体で18,253体、中実装以下の個体で29,888体と発表された。
ただしこの数は、千切れた断片も含まれているため、実際の個体数と釣り合っていなかった。
炎天下で行われた確認作業は困難を極め、次々に腐敗していく死体から発生する腐臭は公園
周辺に及び、住民から大きなクレームが出た。(※2)

公園から脱走した実装石は、身長40センチ以上の個体(※3)だけでも総数4,800体以上で、これら
が連れていた仔実装以下の個体や、逃走先で
出産した個体数をすべて含めた場合、一万体を超えていた可能性が高いとされた。

午後6時を回った時点で、ふたば公園ないしその周辺は一旦平静を取り戻したが、炎天下の影響
から各所に散らばった実装石の死体が急激に腐敗し、凄まじい異臭が漂っていたため、保健所は
再び駆り出される羽目になった。
同時刻頃、隣接する民家との壁の隙間約20センチ間に潜り込んだ30匹越えの仔実装が窒息及び
圧死して発生させた腐敗臭により、自宅内で寝たきりになっていた80歳の男性が呼吸困難の末に
死亡するという、痛ましい事故も発生。
それ以外にも、人間が駆除困難な狭い隙間に潜り込んだ小さな体格の実装石による副次的被害
が多発し、21日午前9時から14時間以上に渡って保健所により行われた流水洗浄が完了するまで、
町内は悪臭による被害を受け続けた。
これにより、12名以上の住民が病院に収容され、2名が重傷と判断され長期入院を余儀なくされた
が、そのうち1名は数日後に死亡した。

午後8時12分、ふたば公園付近のある民家より、警察へ110番通報が入る。
帰宅した家族が荒らされた自宅内の様子を見て空き巣侵入と判断したのだが、これは後に家屋内
に侵入したふたば公園の実装石である事が判明。
これを切り出しに多数の通報・被害届が続出し、警察と保健所は対応に追われる一方、19日
午前1時頃、虹浦町二丁目の民家から火災が発生し、隣接住宅を次々に巻き込みながら延焼。
出火場所の立地条件の悪さが災いし消火活動が遅れ、完全鎮火まで約6時間を要した。
この火災により、出火元及び延焼家屋内から老若男女合わせて計8人が犠牲になった。
また重軽傷者は7名、行方不明者3名に及んだ。
全焼した家屋からは出火原因と思われるディスポーザブルライター(所謂チャッカマン型の着火口
が長いタイプ)が発見されたが、当時出火元の家族は全員外出していた。

尚、現場からは実装石及び実装石と思われる痕跡は一切発見されておらず、出火過程が不明瞭
とされていたが、後に事故調査委員会が実装石の焼却実験(※4)を行い、一般家屋を延焼させる
温度約1200度ではほぼ完全に燃え尽きる事を立証。
これにより実装石がライターを弄った事が原因である事が突き止められた。

その後、各所で民家に紛れ込んだ実装石によるトラブルの通報が相次いだが、火災や人身事故
に発展するほどのものは起きていなかった。
しかし、一部の個体はふたば公園から2キロ以上も離れた「虹浦町えんじぇる商店街」にまで至って
おり、20日午前11時の通報より同日午後8時(商店街の各店舗が閉店し始める時間帯)まで、主に
食料品店を中心とした盗難が多発。
そのすべてが実装石による仕業である事が判明し、紛れ込んでいた40匹ほどの個体は町内会の
勇士によって捕獲され、翌日加工された状態で保健所に引き渡された。

以上の時点までで、警察及び保健所、市役所側が確認したコミュニティ所属実装石の総死亡数は
推定約4万匹以上に達し、(※5)公園外で捕獲・処分された個体数もカウントした場合、コミュニティ
に所属していた二万体はほぼ間違いなく全滅したものと判断された。
尚、これは仔実装以下の個体もカウントされている上、管理事務所他が認知し切れていなかった
成体も含まれている。

コミュニティ管理部は公園管理事務所職員を招集し、警察署内の対策本部に出向き、本件の発生
原因及び公園内の実装石コミュニティ内で起こっていた事情の分析を開始。
数々の物的証拠から、17日夕方から18日未明にかけての間にコミュニティ間で何かが起こり、
パニック状態に陥った実装石達が全ての規律を放棄して逃走したのではないかという仮説が
立てられた。
この時の対策検討会議に参加した面々から選出・結成された事故調査委員会は、この見地から
本件の調査を開始したが、何故パニックに陥ったのかという原因は、長年追究しきれなかった。

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[編集] 脚注

※1:たまたま飼い実装を飼っていた人が、実装リンガルで会話を成立させ確認した。

※2:当初は、隣町にあるふたば体育館(現・ふたば産業会館)を利用する予定だったが、
   管理者が強く反対した上、それ以外に膨大な量の死体を回収できる場がなかった
   ため、苦肉の策として現場での確認作業を行う結果となった。
   この作業中、4人の保健所職員と12名の警察官が不快を訴え、嘔吐・卒倒し
   数名が病院へ運ばれた。
   また当日の最高気温は34度にも及んだため、熱中症で倒れる者も続出した。

※3:これは事件後に回収された成体実装石の個体数を計算した物で、正確な数は
   22日未明に事態が沈静化するまでに回収された物だけでも4,879体に及ぶ。
   ただし、これは事件発生中に公園外から侵入した者や一般家庭の飼い実装も
   含まれている可能性が高いため、すべてが公園在住の個体だったとは断言できない。

※4:実験には、成体実装石10体と仔実装40体が用いられ、そのうち半数は条件の変化による
   影響を測定する都合上、生きたまま実験に用いられた。

※5:中実装・仔実装・親指実装までカウントされているため、公表されていた総数約二万体より
   遥かに数が増えている。
   また分断した死体を基に計上している都合上、あくまで概算であり正確な数とは言えない。




[編集] 6.コミュニティの現実

本件「ふたば愛護公園壊滅事件」は、長年その発生原因が突き止められておらず、多くの警察
関係者や事件研究担当者を悩ませた。
だが事件から十年後、かつてふたば公園付近に在住していたと自称する一般人が事件原因究明
難航のニュースを知って名乗り出て、ある実装石の鳴き声を保存した膨大な量のカセットテープを
事故調査委員会に提供した。
これは、本来は飼い実装との思い出を記録する目的で保存されていた物だったが、後年飼い主が
その音声を実装リンガルソフトで翻訳したところ、いくつかの奇妙な発言内容が確認されたため、
提供を決断した。

総合約280時間に及ぶカセットテープの翻訳結果からは、それまで人間側では気付けなかった
「実装石視点の問題点」が数多く発見され、これが事件概要判明の大きな糸口となった。
また、この記録は他にも存在した「公園脱走実装石を保護した人々」や地域住民らの発言とも符合
するポイントが多く、実装石コミュニティの真実が浮き彫りになった。
事故調査委員会は、これらの情報を更に一年間に渡り細かく統合分析し、「実装石コミュニティ
では、人間が想像する以上の“極限の緊張感”が常に満ちている状態だった」と結論、これが本件
の根源的原因の一つであるという判断を下した。

尚、カセットテープを提供した人物は、脱走した実装石の態度や発言内容から公園に対して大きな
危機感を覚え引越ししていたために、幸いにも事件に巻き込まれずに済んだが、それまで住んで
いた家屋は火事に巻き込まれ全焼している。





[編集] 7.テープ内容

公園内の実装石達は、コミュニティを問わず、人間側・リーダー格実装石とその配下個体、
風紀実装らの存在を過剰に恐れていた。
元々精神力の弱い実装石は、自分の見えていない部分で発生した変化を、自身にとっての危険
要素であると信じ込む性質があり、これに対する心理的防御を行うようになる。
これが災いし、リーダー格実装石達によって処罰される同族の様子や、ある日突然姿を見せなく
なった仲間の状況などはすべて悪い方に捉えられ、何も悪い事をしていない温和で善良な個体達
も「いつかは自分も同じ目に遭って殺される」ものだと信じ込んでいた。
そんな精神的圧迫のため中にはストレスで精神に異常を来してしまった個体もおり、これらが捕縛
・処罰される事が益々同族の疑心暗鬼を煽る結果に繋がり、コミュニティ内の「不信感」が膨張して
いった。

公園外からの同族侵入が戒められていたのと同様、公園内からの脱走も厳しく処罰されるため、
実装石達は完全に逃げ場を失った形となっていた。
また、これほどの厳重な管理下にありながらも、一部の近郊住民は実装石を虐待するための活動
を行っており、ごく僅かとはいえ犠牲者も確実に存在していた。
これが実装石達のストレスを益々発達させ、事件発生一ヶ月前頃には、もはやピークとも言える
ほどにまでなっていたという。

脱走実装石のカセットテープによると、脱走に成功した実装石が出現し始めた頃は、ちょうどこの
時期と一致する。
現在となっては、なぜそれらが公園から無事に脱出出来たのか定かではないが、一部では愛護派
住民がこっそりと脱出を補助していたのではないかという説もあった。
だが、これを裏付ける証拠もまったく存在しないため、今なお不明瞭となっている。

以上のように、ふたば公園の実装石は極限の緊張状態を維持したまま、人間の前では温和で友好
的、無害で健全な動物というスタイルを演じ続けなければならなかった。
このストレスを充分に解消する手段もないまま、実装石達は苦しい生活を続けさせられていた。
これはいわば「突けば割れる風船」のような状態で、実装石達は何かのきっかけで抑圧を爆発
させてしまいかねない状況であったと考えられた。

だが、そんな実装石達の様子を当時から既に理解し、利用しようと企んでいる悪意ある人間が居た
ことが、後に判明する。
そしてその人物が、本事件発生の引き金を引いていた。





[編集]8.事件の原因

この事件は、実装石が原因で発生した物の中で、2007年現在最大規模の被害を引き起こしたが、
その根源的原因は事後十年以上不明であり、一時は迷宮入りの可能性もあった。
だが、カセットテープによる脱走実装石の発言や、それを裏付ける数々の証言や物的証拠から、
2001年9月事故調査委員会は、この本件が「悪意ある者の手による人災」であったと発表し、その
発生経緯の分析結果を公開した。

その内容はなまじ信じられない物で、現在もなお真偽を問う議論が繰り返されているが、双葉市
及び同警察署は、これが考えうる限りもっとも確実性の高い事実であると断定し、真犯人を追及
したが、残念ながら2005年で本件の公訴時効が成立した。

尚、本件の発生経緯は複雑なため、以下では状況と要因を区分して解説する。
また、事故調査委員会は以下の発表内容に多くの「憶測」が含まれている事も認めている。



[編集]9.公園内の状況

公園管理事務所をはじめとする、ふたば公園内を知る人々の実装石に対する評価は、大変良好
なものだった。
中には実装石と遊び戯れる事を目的に公園に通う人々も居たほどで、コミュニティ確立から事件
発生までに、実装石から被害を受けた一般市民はいなかった(但し、これはあくまで通報が
なかっただけで完全とは言い難く、衣服を汚されたりした軽度被害を受けた人が居た可能性は
ある)。
また実装石達も人間との共存を強く意識していたようで、コミュニティのリーダー格実装石などは
頻繁に管理事務所の職員と会話をしており、それぞれが強い倫理感や統制意識を持っていた事
が確認されている。

しかし、二万匹を超える実装石すべてが統一意識を持っていたわけではなく、実際にはかなりの
抑圧が働いていた。
元々自我が強く、欲望の大きな種である実装石は、何者かに抑圧される事を強く嫌う性質があるが、
リーダー格実装石達はそれを自覚している分、人間以上に過酷な制圧を行っていた。
リーダー格実装やその配下の風紀実装達は、いわばコミュニティにおける「王と兵」に相当しており、
少しでも人間との共存に相応しくない要素が発見され次第、過剰にその排除を行った。
特に、低確率で生誕するマラ実装(男性器に酷似した器官を持つ突然変異種)は、その外観が
一般利用者に相応しくないという理由だけで、その知能の高低に関係なく淘汰され、またマラ付きの
仔を隠蔽していた家族は、発見次第重い処罰を受けた。
コミュニティ内では、断罪による処刑行為は厳禁とされていたため、マラ実装は偽性器器官と四肢を
切断、断面部の焼却が施された上で保健所に送られた。
また、蛆実装(生誕時のトラブルや母体の身体異常により発生する未熟児)や親指実装(蛆実装と
同)はコミュニティ内の厳格な審査を受け、糞蟲と判断されたり、充分な基礎知能が備わって
いないと判断された場合は、親の意向に関係なく処分対象とされた。
事件後、公園各所から発見された遺留品の中に、蛆実装や親指実装で満たされたペットボトルが
多数発見されており、自主的な処分が実行されていた事を裏付けた。

風紀実装は、当初管理事務所側が見込んだ数の数倍に及び、交代制でコミュニティエリア内を
巡回していた。
これは人間に例えれば警官の巡回というより「魔女狩り」に近いものだったようで、少しでも規則
違反を行った個体はどんな時でも容赦なく引きずり出され、過酷な拷問を加えられ二度と住処に
戻れなかった。
風紀実装の一部は仔実装以下の個体の教育も行い、およそ実装石の生態からは考えられない
ような高度な知識や倫理感を与えたが、これはむしろ支配欲や優越感を満たす行為の延長で
あった可能性が高く、教育というよりは「罰則行為の伝授(言い換えれば処罰を与える口実の羅列)
」に近かった。

一部のコミュニティでは、本来禁止されている筈の実装石間処刑行為が平然と行われていた。
また罰の種類の中には仔を提供するという内容のものもあり、規律に従った親実装は二度と子供
と逢えなかった。
更には、身体の弱い個体や問題を起こし仲間から爪弾きにつれた個体の頭髪や衣服を奪い、
奴隷同然に扱っているエリアも存在しており、酷いものになると穴の中に糞便を落とし、それを糧に
奴隷を育成するグループまで存在した。
この穴は野菜栽培用の肥料貯めに見えるよう巧妙に偽装されていた。
これらの点から、双葉市が望んでいた「悪質的性格の個体完全排除」が、実際には失敗していた
事が明確となった。

また、縄張り意識の発展からかコミュニティ間の交流・行き来は絶対禁止となっており、それぞれ
のコミュニティに属する実装石は、人間の目の届かない所では激しく反目し合っていた。
迷子が発生した場合、各コミュニティはその個体の所属が判明した場合は処分し、不明瞭の場合
は自分のコミュニティの個体として育成した。
結果、後から他コミュニティの親が名乗り出たとしても、子供は絶対に戻してもらえなかった。

これらは、各コミュニティ間で平均的に見られた問題点だったが、北西部コミュニティは特に対立
意識が強く、リーダー格・風紀・一般実装のほぼすべてが同じ意志の下、他コミュニティを敵視して
いた。
そして事件は、この北西部コミュニティが起こした「革命」によって発生していた。





[編集]10.虐待派の存在

ふたば公園が実装石の楽園であるという噂は日本全国に広まっており、これが所謂「虐待派
(実装石に過激な虐待を加え、時には死に至らしめて喜ぶ嗜好を持つ犯罪者)」の注目に繋がって
いた。
インターネットなどの情報通信機関がなかった当時は、裏ルートで刊行されている虐待派専門
雑誌の投稿欄や一般ペット書籍上に、隠語で「ふたば公園の実装石を虐待しよう」といった意味の
呼びかけが頻繁に行われていた。
しかし、虐待派の乱入を予め見越していたコミュニティ管理部と公園管理事務所により、虐待行為
をした者は多数逮捕または拘束されており、監視体制も他の公園を遥かに凌駕する規模だった
ため、ふたば公園は「不落の要塞」のように扱われていた。
事件発生の数ヶ月前には、もはやふたば公園は手を出してはいけない聖域であるかのように
語られ、ほとんどの虐待派が攻略を諦めた。[要出典]

しかし後年、実装石専門誌「実と装」1990年6月号の読者投稿欄上に「不落の砦にも隙はある」
という意味深な記述があった事が判明し、これが後述する真犯人による犯行予告だったのでは
ないかと言われている。
ちなみにこの投稿は、神奈川県横浜市消印の無記名ハガキによるものだった。(※1)

------------------------------------------------------------------------
[編集] 脚注

※1:「実と装」編集部がなぜこの投稿を掲載したのかは不明。





[編集]11.真犯人(容疑者)

(以下はカセットテープ内に残された実装石の発言が根拠であり、部分的に不明瞭に情報が
含まれる)

2001年9月、事故調査委員会は「北西部の実装石コミュニティが起こした暴動に人間が関わって
いる」と発表し、その根拠と理屈を説明した。
事件発生の少し前、北西部の実装石と平和的に接触し続けた男性が、実装石達に「あるもの」を
与えた。
実装石はこの「あるもの」に魅了されてしまい、男性から「これと同じ物を他のコミュニティは沢山
貰っている」といった意味の入れ知恵を施された。
この言葉を信じた実装石達は、数日後他のコミュニティに夜間襲撃をかけ「あるもの」を摸索。
その後、攻撃を受けた側の生き残った実装石達にも「あるもの」の情報が伝染し、最終的には公園
内のほぼすべての実装石が公園内を荒らし回った。
しかし、この動乱は非好戦的で平和的性質の個体を激しく恐怖させ、これが公園脱走を行い、
近郊住宅へ避難、保護を求めた。
園内の実装石は「あるもの」を求める側と、脱走した側とに二分し、それぞれが別々な形で被害を
拡大させていた。
また公園内に残った側も、この動乱を期に「戦争」に似た状態に突入し、激しい殺し合いに発展した。

事故調査委員会は、事件直後に公園内より発見された残骸・状況・遺留品を再検査し、男性が
与えた「あるもの」が“醤油”であったと結論した。

事故調査委員会は、それまで一般利用者が投棄したと思われていたゴミ類から、空になった複数
の醤油ペットボトルが南東部に、大量の醤油入れ(持ち帰りの寿司などに付属する魚型の小型容器)
が北西部のみに落ちていた事を認めた。
また、当時毒物関係の疑惑から行われた「実装石が食したと思われる残留物」の分析結果に、
醤油と酷似した成分が多量に不着していた事、調査解剖された一部の実装石の消化器官内から
高濃度の塩分反応が出ていた事にも注目し、ここにカセットテープの発言内容を重ねて判断した。
尚、醤油に関係する遺留品は他のエリアからは一切発見されておらず、また醤油をかけられたと
思われる各種残留物も、南東部と北西部以外からは発見されていない。
南東部では、醤油に似た液体をかけられた草や砂、石や昆虫の死骸も見つかっている。

事故調査委員会は、カセットテープの発言内容から実装石達が食料に対して大きな不満を抱いて
いた事、そして何者かがそこにつけこんで「調味料の存在」を教え込んだ事が、事件の根本的原因
であるとした。


以下は、事故調査委員会が「推測である」という前提の基に、「ふたば公園実装石事故精密解析」
(冥送出版)上で発表・報告したレポートである。

廃棄家畜の肉は一切調味料が使用されておらず、実装石達は生のままで食するしかなかったが、
男性が持ち込んだ醤油を降りかけた肉が大変な好評を博した点は、テープ内の発言にはっきりと
示されていた。
男性は、これで実装石に新たな価値感を植え付け、あらゆる食料に醤油をかけさせたが、圧倒的
に量が足りず、コミュニティ内では更に大きな不満がつのった。
男性は、そこにつけこんで他のコミュニティが醤油を持っていると嘘を吹き込み、元々他コミュニティ
に敵対意識を抱いていた実装石達を焚きつけた。
男性がこのコミュニティの性質を見抜いていたか否かは定かではないが、実装石達は実際に暴動
を起こし、他のコミュニティを襲撃した。
男性は、別途用意しておいたペットボトル入りの醤油を南東部エリアに隠し、これを発見させる事で
更なる混乱を引き起こさせ、公園内で培われた規律やモラルを破壊した。
しかし、被害は公園外にまで広がり死亡者まで出してしまった。

公園を脱出して民家に潜り込もうとしていた個体も、当初は単なる避難だと見られていたが、本当は
醤油を奪取または分けてもらう目的で侵入したのではないかという説も浮上した。
事実、カセットテープに録音された実装石の音声内容から、この個体も醤油の魅力に目覚めていた
事が窺い知れ、実際に醤油で味付けした鶏の唐揚げを飼い主に執拗に要求する会話が十数か所
に渡り収められている。
醤油をかけられたり、醤油浸けにされていたと思われる蛆実装や親指実装の死体も、多数発見された。
また、実装石に荒らされた留守宅から「黒い液体(ウスターソース等)」が狙ったように引き出され
ばら撒かれていたというケースも多数報告されており、公園内の実装石が醤油に深く魅了されて
いた事はもはや疑いようのない事実であると唱えられた。

無論、醤油のような高塩分の調味料を実装石が好む筈がないという反論も各方面から述べられた
ため、事故調査委員会はまったく別な場所から集めた実装石二十体に「醤油で味付けをした
角切りステーキ」を与える実験を行い、一体の例外もなく歓喜・摂取したというレポートを提出して
反論者を沈黙させた。

尚、犯人が実装石と醤油をどうやって結びつけたかは定かではないが、86年に出版元が検挙
されたため廃刊した虐待派向け専用雑誌(裏ルート品のため現在は禁書とされている)
「実を葬」85年12月号には、様々な調味料を与えて実装石の反応を確認し、もっとも好評だった物
を長期間与え続けた上でいきなり摂取を禁じ、強いストレスを付加するという虐待法が紹介されて
おり、犯人はこの記事を参考にしたか、或いは執筆者本人だったのではないかという憶測が
囁かれた。

事故調査委員会は、事件発生前に公園を訪れていた怪しい人物の特定と、事件前後に双葉市
ないしは虹浦町から引っ越した人物の情報を集め、犯人特定を急いだが決め手にはならなかった。
また、犯人のものと思われる指紋や毛髪類はまったく検出されていない。
犯人像は、事件後17年が経過した現在においてなおまったく不明であり、またその存在を誇示する
ような行動もまったく見られていないため、高度な犯罪経験者説・死亡説などがネット上をはじめと
して各方面で囁かれている。
警察は、犯行の手口から犯人を「大変知略的で、なおかつ高度な観察能力と分析力、計画性を
併せ持つ知能犯」であると分析し、長い実装石育成(または虐待)経験を持つ推定年齢二十〜
三十代の人物であると判断したが、決め手にはならなかった。





[編集]12.もう一つの問題点

本件が最も問題視されたのは、虐待派と思われる犯人の計略的行動ではなく、それまで実質的に
無害と思われた実装石により、住民の中から多くの死傷者が発生したという点である。

最初の犠牲者を出した公園管理事務所施設プレハブの倒壊原因は、事件直後最大の謎であった。
倒壊したプレハブは15.4平方メートル、二階層構造で高さ6メートルという直方体型で、西側に階段
が取り付けられており、園内南東部の人工池のほとりに建設されていた。
公園開設時に利用されていた工事事務所のプレハブ小屋をそのまま転用した物だったため、所謂
「仮設プレハブ」と呼ばれる小屋レベルに過ぎず、また二階層の割には背も低く、お世辞にも施設
などと呼べるような立派な物ではなかった。
この施設は、開園当時から景観を損ねるという指摘が多かった。
これほど大きな公園の管理という大仕事を行う事務所施設が、簡素なプレハブだという事は長い間
疑問視されており、また現場で勤務する職員からも不満が述べられていたが、事件発生まで一切
環境改善が行われる様子はなかった。

施設内は空調設備すらなかったため、夏は室温が40度以上に達する事もあるという劣悪な環境
だった。
そのため、夏は全ての窓を全開にして通気しなければならなかったが、これにより事務所内には
人間が常駐している事が実装石に知られており、普段から餌やおやつ、また遊びをねだりに訪問
する個体が多数存在していた。

倒壊は南側方向から北側に向けて押し倒されるような形で発生しており、二階部分の大半は人工
池内に沈下、一階部分は二階部分に真上から押しつぶされるような形で圧壊した後、二階部分の
重さに引きずられるような形で池の方向へ流れていた。
事件当時は特に強い風も吹いておらず、その倒壊状況からも風圧による倒壊でない事は明らか
だった。
管理事務所職員一名と警官二名は一階圧壊時に即死、もう一人の職員は二階ごと池内に落とし
込まれ、瓦礫に身体を挟まれたまま水死していた。
一階の三名は、それぞれ西側と南側の壁付近におり、倒壊時に後方へ転倒、そのまま顔面に落下
してきた二階の床部分を受け止めたため、顔面部及び頭部が激しく損壊していた。
施設内の四人は、なぜプレハブから脱出しようとせず倒壊に巻き込まれたのか、またどうして倒壊
直前に二階や壁際に移動していたのか等、本件には数多くの疑問点が挙げられた。

同施設は事件前から「階段を上ると振動で小屋全体が揺れる」や「一階の窓が突然勝手に割れた」
等の問題点が職員から寄せられており、根本的な構造的欠陥があったのではないかという説も
後に述べられた。

96年、事故調査委員会はこの公園管理事務所施設が構造的問題により極端に倒壊しやすい状態
にあり、そこに不慮の力がかかったため事故を起こしたのではないかという推論を立て、同じ箇所に
同規模のプレハブ小屋を建設し、半年に渡り検証を行う事にした。
その結果、プレハブ小屋の設計・補強が的確であれば、よほど大きな台風の直撃でもない限り
倒壊はありえないという結論が出された。
しかし事故調査委員会は、プレハブが長期間使用された場合の影響・変化の可能性、また階段
昇降時に小屋が揺れたという報告に着目した。
コンピューターによる測定シミュレーションを行った結果、公園管理事務所施設はプレハブの大きさ
や形状に対して西側の階段の重量が過剰になっており、常に全体が西側に引っ張られ続けていた
事が判明。
その状態で二階部に持ち込まれたロッカーやテーブル、大型冷蔵庫、テレビなどの配置が更に
重量バランスを崩しており、西側を中心とした各支持部分に微妙な負担をかけていた可能性が
指摘された。
このシミュレーション結果に基づき、事故調査委員会は西側の壁と支柱をわざとゆがめたものに
交換し、更に二階部にロッカーや冷蔵庫などの家具を忠実に配備したところ、二週間程度で
一階北側の窓ガラスが自然破損するという異常事態が発生した。
一ヶ月後には階段昇降時に過度な揺れが発生し、また一階入り口の戸が完全に閉まらなくなった。
これらは以前施設を利用していた職員にも確認され「あの時とほとんど同じ状態」であるとされた。
この状態のプレハブ小屋は、成人が数名で壁を押すと二階部では軽い地震と同じくらいの横揺れ
が感じられるほどになっており、職員が長期間滞在勤務するには無理のありすぎる状態にあった
事が明確となった。

次に、倒壊の根元的原因の究明に移った事故調査委員会は、倒壊現場から多数の実装石の死体
が発見された事に再注目。
倒壊の原因は、大量の実装石によって施設が押されたためではないかという仮説を立てたが、
体格の割に非力な実装石では不可能であるという反論も多かったため、再びシミュレーションが
行われる事になった。
現場から発見された実装石の死体から、平均体格40センチ以上の成体を仮想し、これと同じ程度
の育成状態の実装石の体力テストを2000回以上行い、平均的な運動能力を検出した。
これにより、実装石は自己の身体損壊をまったく考慮しなかった場合3.21kg重mまでの仕事が
行えると定められた。
それに対し、実験に用いたプレハブ小屋は西側と南側からそれぞれ平均約82kg重mの力で
押されれば、事故時とほぼ同じ状況で倒壊する事が確認された。
これを基に計算測定された「プレハブ小屋を倒壊させるために必要な実装石の数」は、接触位置
の高さや力の分散度などを考慮した場合、一方向につき50匹前後で充分という驚くべき結果が
はじき出された。(※1)
更に、60センチクラスの個体は4kg重mを越える仕事が行える事、力をかけるポイントが40センチ
クラスよりも遥かに高い事から、これが混じっていた場合は更に必要数が減少し、40匹未満でも
条件を満たしかねないという計算結果が出た。
更に2ヵ月後、追試により「恐慌状態に陥った個体の仕事量」が通常の1.5倍以上に達する事が
判明し、仮に実装石が全てパニック状態にあったと仮定した場合、総合計60匹前後も居れば充分
倒壊させられた可能性がある事を付け加えた。(※2)

ただしこの実験結果には疑問を差し挟む余地がかなりあり、80匹以上もの実装石がプレハブを
倒壊させるという統一意識を持ちえたのか、また何故倒壊を狙う必要性があったのか等、実験結果
発表後も各メディア上で様々な疑問点が述べられた。
これに対し事故調査委員会は、推論として「非戦闘的実装石が人間に救いを求めて殺到した」
「施設内に醤油があると信じ込んだ個体が密集した」等の可能性を示したが、いずれの仮説にも
無理があり、充分な説得力があるとは云い切れないと反論も多い。
しかし、このシミュレーション及び事故再現実験の結果は、事故状況を忠実に再現する事に成功
しているため、不可解な点も多々あるものの、2007年現在最も可能性の高い事故原因解析だった
という評価も多い。

「何故職員と警官は脱出しなかったのか」「他に救援を求めなかったのか」という疑問点については、
倒壊実験時に述べられた一説が有力見解となった。
壁を押し倒すほど多数の実装石が施設周辺を取り囲んでいたため、扉が塞がれるか歪んだ壁の
せいで開閉不可能な状態となり、犠牲者達は脱出及び通信不能に陥ったのではないかとされ、
二階に居た職員は、施設に近寄ってくる実装石達の群れの様子などを窺おうとしてそのまま降り
られなくなったのではないかと見られている。
但し、この見解も疑問視するべき部分が多く、今なお議論が絶えていない。

施設の電話回線は、倒壊時に切断されていた事が確認されているが、これが倒壊前に発生した
ものなのかは確認できていない。
また当時は携帯電話がなく現在のような通信設備が整っていなかった事も災いした。
尚、二名の警官が所持していた筈のトランシーバーは最後の通信時以外にまったく使用されて
おらず、現場の過度な混乱状況が予想されるとする見解もあるが、今だ具体的な分析結果は
出されていない。

------------------------------------------------------------------------
[編集] 脚注

※1:プレハブ小屋の土台部の高さは平均体格実装石よりも低い位置にあるため、実装石は
   壁だけを押す事が可能であった。
   また壁の下側のみに過度な力が加えられた場合のシミュレーションも行われている。

※2:ただしこの結果は、全ての実装石の力が均等になおかつ連続的に加えられ続けた場合
   に限定されるため、あくまで理論値に過ぎない事を、委員会は強調している。





[編集]13.後に指摘された盲点

コミュニティ管理部は、事件発生前の6月12日ふたば公園北西部エリア内で出火騒動があり、
管理事務所職員によって鎮火されたという報告を述べた。
これは特に被害は出ておらずすぐに収まったが、出火原因及び犯人はいまだ特定されていない。
当時は一般利用者がいたずらで行った焚火だったのではないかと考えられたが、燃やされていた
物の中に廃棄家畜肉と思われる炭化した肉片が含まれていた事、その後各所で小規模な焚火
消化跡が発見されていた事から、事故調査委員会は「公園内の実装石は火を使い物を焼く知識と
技術、消火の知恵を身に着けていたのではないか」という仮説を立てて調査を続行した。
言うまでもなく、実装石は火を特に恐れる動物のため、当初これは絶対にありえない見解であると
言われていたが、一方では、現状証拠と本件における火災事故要因の考察結果を比較した場合、
決して無視出来ない分析であるとも評された。
事件後の現場からは数個のディスポーザブルライターが発見されているが、その中には回収の
時点でまだ使用に耐えうる「チャッカマン」も含まれており、事故調査委員会は「一部の実装石は
これを用いて安全に火が使える事を理解していた可能性」を提示。
公園脱走し民家侵入に成功した実装石が、キッチン内でチャッカマンを使用したために火災が
発生したと判断可能な状況が確認された点、事件後、北西部コミュニティ居住エリア一角の土中
から「腐敗した“焼き跡のある”鶏肉の一部」が発見された点、更に公園内全体から数体の
「焼却された実装石の死体」が発見された点が、事故調査委員会の判断を更に裏付けた。

事故調査委員会は、これらの物的証拠から「食料加工」「攻撃手段」「悪戯」を目的とした「火の
利用」が、実装石によってかなりの頻度で行われていたのではないかと唱え、同時に、なぜ
そのような事態に管理事務所がまったく気づけなかったのかという問題提議を行った(※1)。
尚、このライター類がどのような経緯で実装石達の手に、または生活圏内に持ち込まれたかは
定かではないが、一般利用者による単純な投棄だった場合は、実装石達の自主的清掃によって
回収されている筈であり、事実そのような形で廃棄処分された100円ライター等も多数存在している
事が確認されている。

以上の点から、何者かが故意にライターを与え、その使い方と利点を教授しという考えがまとめ
られる運びとなった。

------------------------------------------------------------------------
[編集] 脚注

※1:その後、コミュニティ管理部と公園管理事務所から「発見された位置はすべて監視カメラ
   や職員の監視ルートの死角にあたる位置だった」という報告が提出されている。
   しかし、実装石が監視カメラの存在とその位置を把握・意識していた事は考えられず、
   事故調査委員会はこれを運営側からの反論とは捉えていない。




[編集] 14.事件後の影響 

本件は、多数の野良実装石を保護育成し、人間との理想的共存を成立させようという動物愛護
精神的な主観の基に行われた対策が裏目に出たという点で、各所から大きな注目を集めた。

実装石専門研究家・拇志茂樹(おやゆびしもき)氏は、後年この事件における双葉市が失念して
いたポイントとして
  ・実装石の個体数増加率を甘く見積もっていた点
  ・賢い実装石の応用・対応能力を過小評価していた点
  ・実装石を都合の良い部分だけ他の動物と同一解釈し、
   人間に対する影響の大きさを考慮していなかった点」
  ・問題を起こす実装石が必ずしも性質に問題のある個体
   とは限らない可能性を考慮しなかった点
  ・実装石の対応を考慮する側が、直接的なコミュニケーション
   を怠っていた点
  ・実装石が、直接的・間接的問わず人間を傷つける事は
   出来ないと無根拠に信じ込んでいた点
などを挙げ、それぞれにおいて辛辣な批判を唱えた。

事実、事件発生までの双葉市側、鳥付市長や磨消市長助役からは「実装石は躾さえ出来れば
無害である」「人間と同じく正しい環境を与えれば問題を起こさない」といった旨の、大変に偏りの
ある発言があり、現実を充分に直視・認識していたとは言い難かったとされる。

「」地裁は、市に対して「双葉市側が事前に充分な研究を行わず、本来公園に求められるべき
用途を極端にねじ曲げてまで実装石を保護管理しようとした事が原因である」と判断。
(※1)
被害者及び遺族は被害者団体を結成して市を相手に損害賠償を求め、「」地裁は双葉市に損害
賠償を命じる判決を下した。
本件後、鳥付市長と磨消市長助役は責任を問われ辞任を表明。
これをきっかけに、双葉市は実装石愛護的立ち位置を大きく変化させていく事になる。

現在、国内で最も実装石駆除に精力的な双葉市は、本件の影響から実装石に対する考え方や
扱い方を再考し、9月初頭には回収した実装石全ての一斉処分を保健所に命じ実行させた。
これにより、公園内でコミュニティに加わっていた実装石のほぼ全ては全滅し(一部、近郊住民に
保護育成された個体は除く)、特にリーダー格を初めとするコミュニティ中枢に位置する個体の
処分は入念に確認が行われ、本個体のみならずその子供と判断される者まで徹底的に処分
された。
この強行手段は、当然ながら動物愛護団体をはじめとした実装石愛護を旨とする各方面からの
猛烈な反発と顰蹙を買ったが、一部では的確な判断であったとの意見も根強く、今なお各所で
その正当性を巡る議論が展開されている。[要出典]

同時に、双葉市は公園内のみならず外部の野良実装石の駆除処分にも力を注ぎ、90年度の駆除
数約12万匹に対し、91年度は倍以上の約26万匹を駆除処分した。
この唐突な対応の変化は市内在住の実装石飼育者を困惑・戦慄させ、ペットとしての登録を行って
いない個体は敷地内であっても発見され次第捕獲・駆除されるという噂が蔓延し、90年秋以降の
実装石ペット登録申請数はそれまでの約7倍に跳ね上がった。
但し、実際には飼い主に無断で飼い実装を駆除するような事は一切行われておらず、同年12月
には、保健所職員を装い民家敷地内から飼い実装を拉致しようとした男性が逮捕されている。

一方ふたば公園は、実装石の侵入が完全禁止とされ、ペット登録の有無に関係なく発見され次第
飼い主ごと強制退去されるようになった。
しかし、現実には外部から侵入してくる流れの野良実装や、引っ越ししたばかりで公園の実情を
知らず、うっかり飼い実装を散歩に連れ込んでしまう一般利用者も跡を絶たない。
公園内の実装石は、表面上は公園管理事務所職員か保健所職員のみが対応する事と定められた
が、実際は発見され次第誰が排除しても咎められる事はなかった。
これを利用し、他人の飼い実装を拉致して公園内に放置し、合法的(勿論実際には違法であるが)
にこれを虐待処分する者が多発し、別な問題として取り上げられる事になった。
しかし、紛れ込んだ野良実装の対応についてはほとんど野放し状態で、90年代中期以降は園内に
堂々と虐待目的の者が入り込み、一般利用者の有視界内で過度な虐待行為を行うという異常な
光景が頻繁に見られるようになった。
・詳細:「ふたば公園実装石虐待派乱入問題」を参照。 

------------------------------------------------------------------------
[編集] 脚注

※1:先述の真犯人については、別途追求が行われた。



[編集] 15.社会的影響

実装石による事件やトラブルは依然から各地で頻発していたが、本件はその中でも最大被害規模
であったため、あらゆる方面に大きな衝撃と影響を与えた。

双葉市同様、帆観呼山に隣接している芋毛市や野奉市も実装石保護及び駆除問題に取り組んで
いたが、本件を機に見直しを計り、双葉市同様駆除方面に力を注ぐよう体制をシフトさせた。
実装石発生率が高いと言われる近畿地方以西では、これまでとは違う形で実装石を危険視する
風潮が生まれ、保護対象とする個体と駆除対象個体の区別徹底化及び対策・対応の再検討が
各方面で行われた。
高度な知識と危険認識力・生存能力を持つと言われていた山実装も、環境変化に応じて一般的な
野良実装と大差ない性質に変化してしまう事が確認された事も手伝い、東北部ではそれまで暗黙的
に守られてきた山実装のテリトリー侵害自粛傾向が破綻し、一部では山狩りレベルの大規模淘汰狩猟
が行われた。[要出典]

実装石関連商品を取り扱う業者も、本件の影響で多大な損害・損失を被り、特にペット業界は
それまでの約三分の一以下の売り上げに下がり、各関連会社の株価も低下した。
実装石ペット商品の老舗ローゼン社日本支店でも、新製品の企画開発中止や商品生産数の削減
を行い、これにより多くの下請け業者に悪影響が及んだ。
90年代末に発売され大人気となった「ノイズ除去式発声型実装リンガル」は、実はこの時点でほぼ
完成形に近いデモ機が完成していたが、発売自粛によりお蔵入りとされていた。
また実装石の個体認識技術で名高い国内大手企業メイデン社は、本件後三年間に渡り自社技術
の一部を封印し、ローゼン社他と同様のペット実装用器具の開発販売に着手したが、蓄積された
技術やノウハウが乏しかったため他社に大きく遅れを取り、91年度は6億7千万円という過去最低の
年間売り上げだった。
反面、実装石駆除技術はこの年に躍進的な進歩を見せ、一般的な製品としては目立つ物は見られ
なかったが、業者向けに致死性が高くなおかつ人体無害なコロリガスや、体内水分を瞬時に凝血
させ吐瀉物・脱糞をまき散らさずに即死させるジソカゲル化合物、登録後一定期間以上の再登録
が行われない場合、実装石の動脈を自動的に塞ぎ死に至らしめる実装管理首輪・リード、実装石
が20センチ以上に成長しなくなる実装成長抑制剤(イチゴ味)など、その後各方面で活用される事
になる製品が多数発表・販売開始されている。

実装石が人を殺しただけでなく、甚大な被害を連続的に発生させたという事実は、一般社会にも
大きな波紋を投げかけた。
特に実装石がプレハブを押し倒したという一見信じがたい報告は長い間誤報であるかのような扱い
をされてきたが、98年に大虐建設が自社のプレハブ建築商品売り込みの際に耐久性実験を兼ねて
行った追試により、現実的にありうる事が判明した。
この件は、それまで常識とされてきた実装石の運動性能・危険性の認識はあくまで単独個体に
対するものでしかなく、数が増えた場合をまったく考慮していなかったという心理的盲点を浮き彫り
にした。
同時に、人間に限りなく近い身体構造と思考能力、応用性、知能の発展性は、たとえ実装石が
人間に友好的であったとしても危険な要素になりうる点、またパニック発生時における集団妄想の
拡大規模の極端な大きさ、異常行動の不規則性は充分な驚異になりうる事が再考慮され始め、
保健所などの専門的設備以外で一定数以上の個体を集める事は禁止すべきという見解が、
各方面で叫ばれ始めた。

80年代から徐々に広まってきた実装石愛護ブームは事件直前までピークに達していたが、この
一件で急激に廃れ、翌年には各メディア上では掌を返したように実装石の危険度アピールや飼育
の批判、またペットショップや動物園、動物病院からの締め出しを唱える過激な意見も散見された。

実装石を飼っている人へのバッシングも過激になり、特に双葉市内の愛好家は大変な心理的被害
を受けたとされ、中には周囲の反応を気にして、長年飼っていた実装石を捨ててしまう人も現れた。
更に飼い主そのものを精神的に追い詰める目的の悪質ないたずらも各地で多発し、大きな社会
問題となして扱われた。
また「週刊解体」92年34号の特集記事上にて、実装石愛好家は精神的に問題のある人間であるか
のような一文が掲載され、発行・編集元の純書店が強く批判されるという事件も発生した。
・詳細:「週刊解体実装石愛護家糾弾事件」を参照。 

実装石専門誌「実と装」も、この時期の売り上げ部数が激減し、最盛期だった82年頃と比較すると
約1/6にまで発行部数が減少し、これは95年秋まで継続した。
一方虐待派の活動も目立ち始め、地方公園や山林部などで実装石を虐殺する者や、野良実装を
大量に捕獲し残酷な危害を加え続ける者などが自分の活動を堂々とアピールするようになってきた。
無論これは一般的には非難対象となる異常行為であるが、虐待・虐殺目的者の行動が非難される
事はあっても、彼らによって殺され被害に遭った実装石が同情を集めるケースはほとんど見られ
なかった。[要出典]
93年夏には、他人の飼い実装を計62匹も虐待・殺害しその死体を遺棄していた高校生が逮捕され
ながらも、動物愛護法の問題で器物破損程度の軽罪として片づけられるという
「飼い実装連続虐殺事件」も発生し、実装石殺害という物理的損害を重視すべきか、被害者の
飼い主が受けた心理的損傷を重要視するべきか、様々な議論が各所で展開された。
(塩保印刷刊「飼い実装は本当に私達の友達か」)
・詳細:「飼い実装連続虐殺事件」を参照。 

以上、本件は様々な部分において大きな波紋を起こしたが、これ以降このような規模の大事件は
発生しておらず、事故調査委員会が残した膨大な量の研究資料と報告レポートは、各方面に多大
な影響を与え、今日においても対実装石を目的とした各種活動の重要資料として取り扱われている。
また、事故調査委員会のレポートの一部は、後に冥送出版から「ふたば公園実装石事故精密解析」
というタイトルで限定出版された。
余談だが、この書籍は実装石をテーマとした一般書籍の中では有数の実用的研究書として大きな
評価を受けており、現在では定価の十倍以上のプレミアが付いている。



[編集] 16.関連項目 

・実装石

・ローゼン社

・メイデン社

・大虐建設

・純書店

・実装リンガル

・実と装

・実装石虐待派

・ふたば公園実装石虐待派乱入問題

・週刊解体実装石愛護家糾弾事件

・飼い実装連続虐殺事件




[編集] 17.参考文献

・比谷羽虐介「双葉市の悲劇は何故起きたのか」(冥送出版)1998年

・ふたば公園事故調査委員会「ふたば公園実装石事故精密解析」(冥送出版)2005年

・尾中不二男「飼い実装は本当に私達の友達か」(塩保印刷)1995年

・実装石愛護研究会「実装石その驚くべき能力」(旧保株式会社)2000年

・コウキナ・ワタシーニ「衝撃!! 実装石はユダヤの尖兵だった!」腐葬舎 1995年

・「実装石解剖新書」(金平糖印刷)1982年

・「実と装 2007年5月号」(実装舎)2007年

・メルティス・サンゴ「実装石の正しいいじめ方と愛し方」(自費出版)2006年


カテゴリ: 出典を必要とする記事 | 実装石を巡る問題 | 1990年 | 8月

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1 Re: Name:匿名石 2014/10/30-23:31:45 No:00001531[申告]
いつ読んでも上手くできてるなあ
感情も虐待の意志もなく淡々と事件世界での事実関係や研究が記されているだけなのに情景が浮かんでくる
参考として記述されてる他の事件の記事も読みたい
2 Re: Name:匿名石 2014/11/04-11:49:55 No:00001541[申告]
実を葬で笑ってしまった
3 Re: Name:匿名石 2018/05/02-20:33:11 No:00005197[申告]
Wikipedia形式のスクとは斬新だったね。
今読んでも面白い!
4 Re: Name:匿名石 2020/01/29-00:30:58 No:00006181[申告]
凄い力作だな
ひぐらしやブレアウィッチプロジェクト(映画じゃない本筋の方)を初めて読んだ時のような興奮を覚えたよ
5 Re: Name:匿名石 2023/08/31-20:20:21 No:00007918[申告]
実際の凄惨な事件のwiki読んでるような怖さがあった
色々断定されないところもリアル
戻る