タイトル:【虐】 キャンプ
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作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:6274 レス数:7
初投稿日時:2007/09/16-23:04:49修正日時:2007/09/16-23:04:49
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[キャンプ]

今日は町内の子供会のキャンプ。夏休みに毎年開かれている。
小学生の子供達がマイクロバスに乗って山のキャンプ場へ出かける。

お昼ちょっと前、集合場所の公民館には既に子供達が集まっていた。
シュラフなどもあり結構大きな荷物なので、みんな地面に置いてマイクロバスが到着するのを待っていた。

公民館の脇で何かが動いた。よく見ると仔実装が一匹、荷物の方を見ている。
仔実装はきょろきょろとあたりを見回している。
子供達が自分を見ていないことを確かめるとひとつのリュックサックに向かって走りだした。
どうやら食べ物の匂いに惹かれたようだ。
仔実装はリュックにしがみつき、少し開いている口に頭を突っ込むと
短い手足をばたつかせ、リュックの中にムリュムリュと入っていった。

マイクロバスが公民館の前に横付された。
付き添いの大人が子供達に声をかける。

「大きい荷物はバスのトランクにいれてくださーい」

子供達は荷物を持ってバスの横側にあるトランクに集まった。
運転手が荷物を受け取り手際よく奥の方から詰め込んでいく。
仔実装が入り込んだリュックも持ち主の子供がバスの方へ持っていく。

「テェェェ?」

いきなりの振動に仔実装はリュックの中で転がる。驚いてここから出ようと這い上がろうとするが
揺れるので思いどおりに動けない。

「テチャァァ!」

叫んだが誰も気づかない。仔実装が入ったままリュックはトランクの中に押し込められた。
そうして全ての荷物が積みおわりトランクはしっかりと閉められた。

トランクの中は真っ暗。しかも密閉されて暑い。仔実装は何がなんだか分からず恐怖に震えパンコンしていた。
上の座席とは違い防音などされていないトランク内はエンジンの音がもろに伝わってきた。

「テヂャァァァァ!」

仔実装は今まで聞いたことのない振動音にさらに驚愕して絶叫した。

子供達はクーラーのきいた涼しいバスの車内で昼食のお弁当をもらい、わいわいやっている。
一人の子供が窓から外を見て言った。

「おい、実装石がいるぞ」

数人が外を見ると、薄汚れた成体実装が見送る人達のうしろをきょろきょろしながら歩いている。
どうやら、リュックにまぎれこんだ仔実装の親のようだ。子供を探して出てきたのだろう。
そのうち仔実装の声(もしくは匂い?)に気づいたのかバスに近寄ってきた。

「デデ!」

どうやらトランクの中に仔実装がいるのが分かったらしい。
ポスポスと扉を手で叩き出した。

「デシャァァァァ!デシャァァァァ!」

「何やってんだあいつ?」
「さぁ、餌でも欲しがってんじゃないの?」

子供達はどうでもいいという感じだった。

「じゃ出発しまーす」

付き添いの大人が声をかけるとマイクロバスは「フォン!」とクラクションを鳴らし動き出した。
見送りの大人達が子供達に手を振っている。子供達もバスの中から親たちに手を振った。

何事も無くバスは出発した、が…
バスの後を一生懸命追いかけてくる親実装が一匹。
子供達もすぐにそれに気がつき騒ぎだした。

「なんだあいつ、必死だな」
「すげー顔、キッタネー」
「あ、こけた」

だんだん離れていくバス、何回も転びながら道路の脇を必死で追いかける親実装。
しかし、どんどん離されついにバスは見えなくなった。

親実装は熱いアスファルトの上に座り込んで悲しみの声を上げている。
しかしうるさい蝉の鳴き声にかき消され誰も気づかなかった。

-------------------

バスは順調に走り、山のキャンプ場についた。
ここは近くに渓流があり、釣りや魚つかみ、アスレチックなども体験できる。

バスのトランクが開けられ荷物が出された。

「なんか変な匂いしない?」

一人の子供がそう言ったが、他の者は特に気にしていない様子。
荷物を受け取ると子供達は班に別れ、
まず支給されたテントを張ることからとりかかった。

仔実装の入り込んだリュックの持ち主は俊明といっておとなしい小学6年生の男の子。
俊明の班には他に一朗と彰、義男がいた。いずれも同級生の遊び仲間だが、
一朗がリーダー格的な存在。あとの3人は一朗のとりまきのようなもの。
なかでもおとなしい俊明はパシリにされるようなこともあった。

大人達に手伝ってもらいながらも、なんとか全てのテントが張られた。

「じゃあ夕飯の支度の時間まで自由時間にします」

付き添いの大人の声に子供達の喚声が上がった。

「ニジマスつかみにいこうぜ」

一朗がそういうと他の三人も賛成して川の方へ向かう。
子供たちがみんな遊びにいって辺りは静かになった。

テントの中に俊明たちの荷物は置かれていた。

リュックの中の仔実装はあまりの恐怖に気絶していたがやがて目を覚ました。
振動もなく音も静かであまり暑くない。しばらくわけもわからずぼけーっとしていたが、
ここから出ようと思ったのか、外が見えるリュックの口を目ざして登っていった。

が、登っている途中でまたいい匂いがしてきた。見ると紙袋がありそこから匂ってくる。
紙袋を引っ張ったり噛みついたりしてこじ開けた。
すると中にはお菓子がたくさん入っており、甘い匂いが充満していた。

仔実装は甘い匂いに大喜びで紙袋に飛び込むと、チョコ菓子に包装紙もかまわずかぶりついた。
くちゃくちゃやっていると中から甘いチョコが出てくる。

「テ、テチューン!!」

仔実装は野良なのでまともな菓子を食べたことなどもちろん無い。
あまりのおいしさに頭がくらくらした。
何も考えずむしゃぶりつき、舐めまくり、かじりまくる。
口の周りだけでなく手や足、服にチョコレートがつくのも気にしない。
他のお菓子にも手をつけ手当たり次第に食いあさる。
さすがに仔実装一匹には多い量なので全部は食い切れず、満腹になり気持ちよくなって寝入ってしまった。

遠くで子供達のたのしそうな声がする。
夢見心地の仔実装には子守唄のように聞こえた。

--------------------

「ピー!」

集合を知らせる笛が聞こえた。
自由時間がおわり夕飯の支度をする時間になり、子供達がテントに帰ってきた。
一朗たちもニジマスを捕まえて大満足。さっそく塩焼にする準備を始めることにした。

俊明もとりあえず家から持ってきた食材などを出そうと、リュックサックの口を開けようとした。
しかし甘いような、くさいような変なにおいがして思わず「うっ」となる。
おそるおそる開けてみると…。
リュックの中はなぜか緑色の液体のようなものがそこらじゅうにこびりついている。

「うわぁ!」

俊明は思わず大きな声を上げた。

「なに?どした?」

その声に他の三人も気づいて俊明のリュックの中を覗き込む。

「あーなんだこれ!」
「くせーよ!なんだよ!」
「もしかして動物の糞じゃないか?」

俊明はなぜこんな事になったのかわからず涙目になっている。
すると子供達の声で仔実装が目を覚ました。破れた紙袋の中でもぞもぞと動く。

「あ、なんかいるぞ!」
「開けてみろ、開けてみろ!」

泣きそうになっている俊明は動こうとしないので、彰がしょうがないなという感じで
おそるおそる紙袋を持ち上げた。中の仔実装が驚いて声を出す。

「テチャー!」
「あ、実装石だ!」

彰は破れかけた紙袋をさかさまにした。とたんに中のお菓子などと一緒に仔実装が下に落ちる。
散らかしたチョコレートの包み紙や、糞にまみれたお菓子の山から
仔実装が這い上がってきて上を見ると四人の子供達が自分を見つめている。
仔実装は驚いて動くこともできず、

「テチューン…」

いきなり媚びるポーズをとった。本能とでもいうべきか。

「……。」

しばらく子供達は何も言えなかった。

「…おい、俊明、お菓子がほとんどダメになってるじゃんかよ」

一朗が切り出した。

「そ、そんなこと言われても…」

俊明は今にも涙がこぼれそうだ。
このお菓子は班にひとつずつバスに乗る前に配られたものだった。
俊明が自分のリュックに入れたのだが、縛りかたが緩く仔実装の侵入を許してしまった。

「他のモノは大丈夫なのか」

義男が言うと、俊明は中のモノを調べた。
幸いにも米などの食材はしっかり袋に包んであったので無事のようだった。
子供達は少し安堵の表情になったが、お菓子をダメにした仔実装に再び目が向けられた。

「ああ、バスを追いかけてきた実装石、あれがこいつの親か」
「どうするこいつ…」
「……」

「ま、お菓子の償いはしてもらわないとな、とりあえず…」

一朗はそういうと、仔実装を乱暴に掴み、破れた紙袋で仔実装の頭をすっぽりと覆うと
簡単にとれないように端をギュッとねじった。
そして、そのへんにあった紐で仔実装の腕を体ごと縛りあげると、
テントの外に持っていき近くの木の枝に縛りつけた。
宙ぶらりんにされた仔実装は恐怖に叫んでもがこうとするが口は袋にきつく覆われた上、
手も動かせず体をよじらせるのが精一杯だった。パンコンし糞がぼとぼと落ちる。

「うわ、ホントキッタネーな」
「俊明、そのゴミとか始末して汚れたリュックとか洗ってこいよ」
「わ、わかった…」
「俺らは夕飯の支度してるからな」

子供達はテントを離れていった。

しばらくして俊明が汚れたものを洗ってテントに戻ってきた。

「ヂューーーーー!」

あいかわらず仔実装は、頭を紙袋で覆われてうまく声を出せず
宙ぶらりんで体をクネクネよじらせている。
はずしてやろうとは思わなかったが、なんか哀れで可哀想にも思った。
洗ったリュックやタオルを木にぶら下げると、夕飯の準備をしている仲間の方へ走っていった。

---------------------------------

自分達で作った夕飯を食べ後かたづけを済ませると、子供たちはテントに戻ってきた。
仔実装の頭にかぶせられていた紙袋は下に落ちていたが、紐は解けず吊られたままだった。

「チュァァァァァァァァ!」

涙を流しながら叫びつづけている。もともと小さい体なので大した声ではなかったが
他の子供に見つからないよう、一朗が仔実装を木から外した。
吊るされるよりは人の手の方が安心なのか仔実装は少し静かになった。

「テチュゥゥゥゥゥ…」

「チッ」

手に汚れがついたので一朗は露骨に嫌な顔をした。

「…みんなちょっとついてこい」

そう声をかけ歩きだした。
着いた先はキャンプ場近くの川。

一朗が他の三人の前に立った。そしてにやっと笑うと、

「イッツショータイム! 汚いから洗いまショー!」

いきなり仔実装を片手に持ち上げそんなことを言ったものだから彰と義男が笑う。
俊明はきょとんとして見ていた。

「まず、汚れた服はもう使いものにならないので捨てちゃいまーす」

一朗はそう言うが早いか、仔実装の頭巾を掴んで頭からはがす。
そして仔実装の頭を掴むと反対の手で服を力任せに下にひっぱって無理矢理服を剥ぎ取った。
服はそのまま川に投げ捨てられ暗い闇に消えていった。

あっというまにパンツ一枚になってしまった仔実装。

「テヂャァァァァァァァァァァ!」

大事な服を取られ泣き叫ぶ仔実装は服を返せと手を伸ばすが
しっかり捕まえられていてどうにもならない。

「パンツも汚れてますねぇ、これも取っちゃいましょう」

そう言うと仔実装の頭を掴んだまま上に持ち上げると下の方に勢いよく振りおろした。
するとパンコンされたパンツは糞の重みで簡単に脱げて下に落ちていく。

「チュァァァァァァ!!」

裸にされた仔実装は喚きつづけるが…

「あれれー、汚れた服を脱いだのにまだこんなに汚れてるよー」

一朗がコナンの真似をしながら言ったので、彰と義男がまた笑った。

「じゃぁ実装洗濯機でーす、このまま洗っちゃいましょー」

仔実装の体を掴み直すと、そのまま川の水の中に突っ込んだ。

「キレイキレイしましょうねー」

そのまま水中で仔実装を掴んだまま手を渦のようにぐるぐる回す。

「ジュボォォォォォォォォ」

水中に突っ込まれた仔実装は息もできずもがいた。
たまに水中から手を引き上げるが、すかさず水中に突っ込む。

仔実装は大量の川の水を飲みこんだ。
いや明らかに一朗は口が閉じられない仔実装に無理矢理川の水を飲ませているように見える。
そんなことが五分くらい続けられた。
仔実装の体はさすがに汚れは取れてきれいになっていたが…。

「ケポッケポッ」

むせる仔実装。

「じゃぁ脱水しまーす」

一朗は水を飲んで膨らんだ仔実装の腹を両手で掴むと思いっきり手に力をいれて握った。

「ヂュォォォォ」

仔実装の上下の口から水が面白いように出てきた。
しぼりきると一朗が言った。

「仕上げにすすぎをしまーす」

一朗のその声にさすがに彰と義男も苦笑い。
俊明はもう見たくないという感じだが何も言えず突っ立っているだけ。
そうして、仔実装には地獄としか思えない水攻めが同じように何度も繰り返された。

---------------------------------------

川から子供達が戻ってくるとキャンプファイヤーが始まる時間になっていた。
一朗は持っていた裸の仔実装を俊明に渡した。仔実装はぐったりしていたが死んではいなかった。
俊明の手の中で仔実装は体をガクガク震わせ、涙を流しながらかぼそい声で鳴いた。

「テ、テチューン…」

キャンプファイヤーが始まった。大きな炎が子供達の顔を照らす。
歌を歌ったり、ゲームをしたりしてみんな楽しそうだったが
俊明だけは後ろの方で仔実装を見ていてそれには参加しなかった。
冷えた体が少し暖まってきたのか、仔実装はさっきよりは元気になっていた。

「大丈夫か」
「…テチュン…」

リンガルがないので俊明には仔実装の言葉は分からなかったが少しは安心しているように見えた。

ゲームのあと子供達に花火が配られ、あちこちできれいな火が上がった。
他の客にも迷惑がかかるといけないので、音の大きな花火やロケット花火は無く
手に持ってやるような花火しか用意されていなかったので高学年の子供にはちょっと不満だった。

「俊明、ちょっとこいよ」

一朗が俊明を呼びつけた。

「そいつをここに置け」

見ると直径が30cmくらいの切株がある。俊明はちょっと戸惑ったが一朗には逆らえない。
何をするのかはすぐ分かったが…。
切株の上に仔実装を置くと、俊明は後ろに下がった。

「水で冷えきった体を火であたためてやろうぜ」

一朗はそう言うと花火を一本取り火をつけた。そしてまだ起き上がれない仔実装に花火を向けた。
突然の炎と暑さに仔実装がまた絶叫する

「チュワ!チュワ!」

炎から逃げ出そうとするが、体がまだ思うように上手く動かない。頭を手で抱え丸くなって耐えようとする。

「お尻に当てちゃうもんねー」
「チュ、チュァァァァァァ!」

排泄孔に花火をモロに受け、ビクビク痙攣する仔実装。
それを見ていた彰と義男も真似をして花火を仔実装に向けた。
三方から火を当てられ仔実装の髪に火がつきくすぶっている。

「テヂァアアアアアアア!」

火からなんとか逃れようと再度必死に動こうとするが、あおむけにひっくりかえる
今度はまともに顔に火を喰らい前髪まで燃え始めた。

「チュワッ!チュワー!」

手で火を消そうとするが前髪に手が上手く届かない。
そうして花火がなくなるまで火攻めは続いた。

仔実装は皮膚が火傷で黒ずみ髪はすっかり焦げてチリチリになっている。
途中からは声を出すこともできなくなり、じっと臥せって丸まったまま動かなくなった。
一朗が火の消えた花火で仔実装をつつくがほとんど反応しない。一応生きてはいるようだ。

「こいつらすごい生命力だから、明日になったらピンピンしてるかもな」
「うわー、ひでーやつ」
「ははは」

キャンプファイヤーも終わり、一朗達はテントに戻っていった。
俊明は仔実装をどうしようかと思ったが、つれていっても何もできないと思い
切株の上で丸まっている仔実装を残したままそこを後にした。

寝袋の中、俊明はあの仔実装が気になっていた。

『確かに悪いことをしたけれど、あんな小さな生き物をあそこまで苛めるなんて…。
 明日まだ生きていたら連れて帰って元いた場所に返してやろう。』

俊明は目を閉じた。

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翌朝、ラジオ体操をするために昨晩キャンプファイヤーをした広場に子供達が集まってきた。
俊明は切株のところに走っていった。しかし仔実装は切株のところにはいなかった。
自分で動いてどこかへいったのだろうか、
それとも誰かにつれていかれたか、あるいは鳥にでも食べられたのか。
そのへんを見渡したが仔実装は見つからなかった。

朝食を食べ、テントを片付けた。
帰る時間まで自由時間となった。

俊明はもう一度切株のところに行ってみた。だがやはり仔実装はいない。
あきらめて戻ろうとしたとき

「…テ、テチューン…」

小さいが確かに仔実装の声が聞こえた。
あたりを見渡す。しかしどこにいるか分からない。

「…テチューン…」

やはり聞こえる。

もう一度見渡してみると…いた!
キャンプファイヤーの跡、水をかけられ燃え切らなかった木の下に仔実装がいた。
夜露をしのいでいたのだろうか、ともかくそこにいた。

俊明は駆け寄って仔実装を拾いあげた。髪は昨日と同じだが、体の方はずいぶん良くなっている。
だが弱っているのは確かだ。とりあえず水を飲ませてやろうと川の方へ走った。

川に着き川辺に仔実装を降ろした。仔実装は昨日のこともあるので少し恐がっていたが
おそるおそる水に口をつけてぴちゃぴちゃと飲み始めた。

俊明はもし仔実装がいたらあげようとポケットの中に小さなトマトをいれていた。
それを取り出して仔実装に食べるようにと差し出す。しかし仔実装にはトマトをかじるだけの力がなかった。
それを見てトマトを手で割ってやると、仔実装は中の柔かい部分を吸うようにゆっくり食べ始めた。

「おーい俊明!何やってんだ」

突然一朗の声がして、驚いて振り向く俊明。

「あーまだ生きてたんだそいつ!」
「え、なになに?」

彰と義男もやってきた。
恐い顔で俊明に詰め寄る一朗。

「なんだよ俊明、こんなもんに餌やってどうするんだよ」
「可哀想だから連れて帰ろうかと思って…」
「おまえ本気かよ、こいつに何されたのか覚えてんだろう!」
「もう許してやってよ…」
「何言ってるんだ、こいつら人間がいなきゃ生きられないのに、迷惑ばっかりかける害虫なんだぜ」
「で…でも…」
「とにかくな、こんなやつはこうすりゃいいんだよ」

一朗は俊明から仔実装を無理矢理取り上げた。仔実装は一朗を覚えていた。
『この人間は自分に痛いことばかりするひどい人間』と。

「テチャァァァァ!」

仔実装は弱った体でありながら一朗の手を叩き威嚇し必死に抵抗した。
手ではダメだと分かると噛みつこうとした。
しかしまったく無駄なあがきだった。

「ほらみろ、自分のしたことなんかひとつも悪いと思ってないんだぜ」
「やめてよ、もうさんざんやったからもういいじゃないか」
「うるせー!俺に指図するんじゃねえ!」

一朗は仔実装のチリチリになった後ろ髪を掴んで引っ張った。仔実装の頭が後ろにカクンと倒れる。
そしてそのまま力をいれて引っ張ると、髪はブチっと鈍い音がして全部抜けた。

「テヂャァァァァァァ!」

仔実装の叫ぶ声、しかしお構いなしに一朗は仔実装を反対の手に取ると、今度は前髪を掴んで引っ張った。
強い力に仔実装の頭が前にカクンと傾く。そしてまた力を入れると…あっさり前髪も抜けた。
仔実装の前で前髪をひらひらさせパラリと落とす。それを見た仔実装はショックのあまり過呼吸になり

「チベ…ヂ、ヂ、ヂ」

と今にも発狂し、死にそうな顔になっていた。

「止めろー!」

俊明は一朗につかみかかった。
今までこんな俊明を見たことが無い一朗は少し驚いたが
さすがに力の差は如何ともしがたい。俊明を簡単に押し倒すと、

「連れて帰るだぁ?こいつはここで山実装として一生を終えるんだ!」

そう叫ぶやいなや仔実装を川向うに思いっきり放り投げた。

投げられた仔実装は放物線を描き水面を越え、運悪く向こう岸の石の上に頭から落ちた。
落ちた瞬間、「ペチョッ」と言う音とともに緑と赤の液体が周囲に拡がった。
首は潰れて無くなり胴体が石に刺さっているようなかっこうで手足がピクピク動いている。
が、パタッと倒れるともう二度と動かなくなった。

「最初からこうしときゃ良かったぜ」

一朗はそういうと突きとばされ座り込んだままの俊明を置いてキャンプ場の方へ戻っていった。
彰と義男も何も言わず後についていった。

俊明は仔実装が潰れたあたりをしばらく見ていた。



俊明の頭にある光景が浮かび上がった…。

実は俊明は母親を1年程前に事故で亡くしていた。
事故後、意識が戻らぬまま一ヶ月後に亡くなった。

仔実装を親のもとに返そうと思ったのは、自分の姿が仔実装と重なったからかもしれない。
もう一度母親に会わせてやりたいと言う気持ちが俊明を動かした。

しばらくして俊明は我に返った。悲しかったが涙は出なかった。
昨日会ったばかりの仔実装にそれほどの愛着はない。
そう思うことでたいしたことはないと自分に言い聞かせようとした。

立ちあがり服に着いた砂を払う。すると下に何か落ちているのに気づいた。
昨日一朗が脱がせた仔実装のパンツがそこにあった。

俊明は乾いて干からびたパンツを拾った。死んだ仔実装の方をもう一度見る。
仔実装は確かに生きていた。そして死んだ。
あまりにもはかない命だったが、そんな小さな命を大切に思う親実装がいることを俊明は知っている。

「おまえのママにこれ返すよ」

そういうと俊明はそれをポケットに入れて戻っていった。

帰りのバスがエンジンをふかせて子供達が乗り込むのを待っていた。

----------------------------------

子供達を載せたバスが公民館につき、その場で解散となった。
迎えにきている親も何人かいたが俊明を迎えにくる人はいない。父親は会社で仕事中だ。
だが俊明ももう6年生だから大抵の事は一人でできる。
誰とも挨拶を交わさずそそくさと家に向かった。

家に着くと、鍵をとりだして玄関のドアを開けた。
荷物を置くと、また鍵をかけて外に出ていった。

今日もまたこれでもかというくらい暑い。
俊明は途中コンビニに立ち寄り、ペットボトルのジュースと小さなスナック菓子を買った。

公民館に行ってみるともう誰もいなかった。
近くをちょっと探してみる。もちろんあの死んだ仔実装の親を探して。
だがそのへんにはいないようだった。

ベンチにすわってジュースを飲んだ。スナック菓子の袋を開ける。
匂いにつられて実装石が寄ってくるのでは無いかと思ったからだ。

だが親実装は現れなかった。

「やっぱり出てこないかな」

もう待つのはやめて帰ろうかと思ったとき、公民館の脇から実装石が顔を出した。
見覚えのある実装石だ。あの仔実装の親に違いない。

俊明はスナック菓子を親実装にあげようとちらつかせた。
最初は警戒していたが、スナック菓子の誘惑に負けて近付いてきた。
菓子を実装石の前に置いた。

「デデ?デスーデスー?」

食べてもいいのかといっているようだ。
うなづくと実装石はちびちびと菓子を食べ始めた。
食べ終わると、実装石は食べ足りないというような顔で俊明を見つめた。

「…もうないよ」

その声を理解したのか、
スナック菓子の袋を手に取ると残ったカスを舐めだした。

俊明はポケットの中の物を取り出した。

「…あのさ、これなんだけど…」

しわくちゃになった干からびた仔実装の小さなパンツを
手のひらに載せて親実装の前に差し出した。
それを見た親実装は菓子の袋を捨てて俊明の手に駆け寄る。
驚いた俊明は手にしていたパンツを地面に落としてしまった。

親実装は座り込んでそのパンツを手に取ると匂いを嗅いだ。
乾いて匂いが薄れているが、確かに自分の子供のパンツだと確信したらしい。

「デデデー?デスデスー!」

何を喋っているのか全く分からなかったが、たぶん
『なぜパンツを持っているの?私の子供はどこ?』
などと聞いているのだろう。

「…ごめんよ、おまえの子供はもう死んだんだ…」

親実装はしばらく俊明の顔とパンツを見比べていたが
仔実装がもう戻ってこないということが解ったのか、パンツを顔に当てて泣きだした。

「デェェェェェェン、デェェェェェェン…」

そしてふらふら立ち上がる。
俊明のほうを一瞥すると、泣いたままトボトボと去っていった。

俊明はなんともいえない気分になった。

もし仔実装を連れて帰ったら親実装はどんな顔をしただろうか。
服をもぎとられ、髪の毛も抜かれ、体中傷だらけの
みすぼらしい姿に変わり果てた子供でも暖かく向かえてくれただろうか。

この親実装ならたぶんそれでも大事に連れて帰っただろう。
戻ってきたことを心から喜んで…。


俊明は自分の母親のことが頭をよぎった。

そう、生きてさえいてくれればいい…。
生きてさえいてくれたら…。

俊明は空を見上げた。太陽が容赦無く照りつける。

「…畜生…」

ぽつりとつぶやき立ち上がる。そしていきなり飲みかけのペットボトルを地面に叩きつけるとどこかへ走っていった。

蝉の鳴き声だけがやかましく響いていた。

終

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1 Re: Name:匿名石 2014/10/02-01:52:58 No:00001415[申告]
感動した
2 Re: Name:匿名石 2014/10/02-21:37:56 No:00001422[申告]
なんか切ない話やね
3 Re: Name:匿名石 2014/10/02-22:45:26 No:00001423[申告]
なんともいえない無常感があるな
4 Re: Name:匿名石 2019/10/31-22:08:55 No:00006131[申告]
いやー良かった
実装石が苦しみ悶えるほど愉悦は深くなる
5 Re: Name:匿名石 2019/11/04-20:13:21 No:00006133[申告]
糞蟲はどうなってもいいけど
人間は勧善懲悪であるべきじゃないかなと思った秋の夜
まあ、俊明みたいに自分が1番の被害者なのにろくに怒らないようなのがいるから世の中クズが増長するってこと考えると俊明の精神性も良くないんだが
6 Re: Name:匿名石 2020/01/03-01:15:30 No:00006159[申告]
一朗みたいに何も考えず雑に生きた方が幸せなんだろうな
7 Re: Name:匿名石 2023/08/08-17:21:23 No:00007742[申告]
山実装の親に菓子類食わせた俊明が一番無知な上何も考えてないんだよなぁ…
群れに住んでるなら菓子て舌が肥えたせいで絶対問題を起こすだろうし
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