タイトル:【虐】 成功? これで終わりです。流行の実装食
ファイル:弱肉実装ショック その二.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:6253 レス数:4
初投稿日時:2006/07/12-06:12:47修正日時:2006/07/12-06:12:47
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「」は部屋をすっかり綺麗になった部屋を見渡した。
割れたガラスはアパートの管理人に言うとすぐに業者を手配してくれ、
その昼のうちに業者が割れた戸に新しいガラスをはめ込んだ。こういうときは共通規格は便利である。
無論水槽はこのとき、布と積んだ雑誌類でカモフラージュして覆い隠した。

床も綺麗になり、糞の汚れもガラスの破片もない。
冷蔵庫も掃除し、この先2日の食材を買い込んだ。

そんなこんなで日はすっかり暮れ、窓の外は夕日が傾きつつある。

夜になれば仔実装に晩御飯を何とか工面しなければならない。

アゴ無しに目を移す。
「……………………」
仲間を平気で屠殺するような人間に水槽に閉じ込められ、アゴを引きちぎられ、声も髪も服も失い、
さらにはいくら暴れても喚いても放置されている状況に絶望し、放心しているようだ。

にごった瞳の奥で、いずれは自分も……などと思っているのか。

——今すぐにその想像通りになるんだが。

台所に行き、ゴム手袋をはめ、洗っておいた包丁を手に取る。

そして今の水槽の蓋に手をかけ、開ける。
「!!!!!!………………!!!!」
アゴ無しは「」の手の包丁を見て驚き、ブバババと糞を勢い良く漏らし、
イヤイヤと首を振って必死で「」の手を跳ね除けようとする。
鳴らない喉でコヒューコヒューと何か言おうとしてるのは、怨嗟の罵倒か命乞いか……。
しかしそこは実装と人間の差、「」は後頭部を鷲掴みにし、水槽の上まで持ち上げる。

「!!!!!!!!!!!!!!!!」
必死で暴れて逃れようとするアゴ無し。必死で暴れる、暴れまくる。
糞はだだ漏れ、いや、糞と汗と涙と鼻水と……体中から出る全ての液体を噴出して抵抗している。

「」は構わず無言で包丁を胸に押し当てる。切っ先がほんの僅かに実装石の体内に沈み込む。
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
暴れていたのがぴたりと止まり、ガタガタと振るえ、汗と涙を垂らしながらイヤイヤと首を振る。


「!!!!……………………!」
ここで「」は手を止めた。



——さあ、やってみろ。



「」は実装石の本能を試した……


アゴ無しは「」が手を止め、自分をじっと見つめているのに気づいた。
こちらを見ている……? 殺すのが惜しくなった……?

藁にもすがる思いで、アゴ無しは最後の賭けに出た。


————手を頬に当て

————首をかしげ

————笑顔を作り


媚びた。



「——ハイきた!」


ズム!!!!!

包丁が勢い良く、アゴ無しの体内に突き入れられる。

「!!!!」
ビクビクッとアゴ無しの体が震え、媚びのポーズのまま硬直した。
目は、なぜ?と問いかけるように「」の顔を見つめている。

「媚びれば助かると思った? そういうところが嫌いなんだって」

「」はそういいつつも、内心は喜悦に染まっていた。
「」にとって、実装石はこうでなければいけない。こうでなければ殺しがいがないのだ。

そのまま包丁を一気に下に下ろして体を引き裂くと、切れ目から内臓がドバドバとこぼれて水槽に落ち、音を立てる。
「!!!…………!!!………………」
ビクビクと痙攣を起こしながら、自らの内臓が落ちていくさまを放心した顔で見つめ……
アゴ無しは絶命した。

もうすこし、その待遇差を見せ付けて、嫉妬の炎で苦しませたかったが
そんなことで今日の実装石の食費が新たにかかるのもばかばかしかった。


「」はそのまま隣の仔実装の水槽を見る。

「テェ〜ス……テェ〜ス……」
気持ちよさそうな寝息を立てている。
少し騒がしくしてしまったため、仔実装を起こしてしまい、
コレが見られるかと思ったがどうやら杞憂だったようだ。

手にアゴ無しの死体を持ちながら、片手で水槽をその下にあてがい、血が床に落ちないように
それらを台所に持っていった。死体をシンクにおいて、水槽を床に置く。

……さて、今日は別メニューにしよう。
四肢を切り落とし、大きな骨を抜き取る。皮は残したままでよく水で洗う。
火で炙って産毛を焼く。そして内側と外側に満遍なくスパイスとオリーブオイルを塗りこむ。
加えて内側にいくつかの香とニンニクの微塵切りを摺りこみ、ネギ、ピーマン、マッシュルーム、
チーズ、トマト、などの野菜とベーコンを一口大に切ったのを積め、ここで実装石の栄養剤も忘れずにいれ、
腹を糸でとじ、水あめを塗ってオーブンに入れる。

「(うまそうには見えるがやはり匂いが……。)」

本格的な、野菜詰め実装焼きである。
四肢と頭はミキサーに荒くかけ、ひき肉にする。明日の仔実装の朝飯にしよう。

ここでアゴ無しの水槽を綺麗にすることにする。
もう四方が中から見えない水槽で遊ぶ意味もなくなったので、
仔実装は今度から少しだけ広く、なにかと融通の利く、こちらの水槽で飼うことにする。
中の糞と内臓をゴミ箱にぶちまけ、大雑把に水でゆすいだ後、たっぷりの洗剤とタワシで擦る。
たった一日もそこにいなかったため、糞などもこびり付いていることも無く、すぐに綺麗になった。
水気を切ったら再び仔実装の水槽の横に据える。


自分の飯はコンビニの弁当で済ませていると、「テチー……テチー……」とかすかに仔実装の声がする。
オーブンから漂う実装肉の焼ける匂いに目を覚ましたのだろうか。

水槽を覗くと

「"ママ"ー、おなか空いたテチィ。いい匂いがするテチッ♪」
と飛び跳ねて空腹を訴える裸仔実装がいた。

そうだ、服を着せておかないと。
乾かしておいた服を持ってきて仔実装に見せる。
「あっ、ワタチの服テチ! 返しテチッ!」
「」は笑顔のまま渡してやる。

「綺麗で良い匂いがするテチュ♪」
といそいそと服を着る仔実装。しかし、少々きつくなったようだ。
着るのに少し手こずる仔実装。それは栄養満点の餌と運動と快適な睡眠で良く育った証拠であった。

実装石の服は生まれたときから着ている状態だ。繊維質の実装の肌は、その繊維の肌から服を作る。
そしてその服は成長に合わせて肌から繊維を受け取り伸びる、一種の取り外せる皮膚なのだ。
今はきつくともすぐに服は馴染むだろう。

着替えが終わると安心したような顔をする。実装石にとっては服は宝と言うのは本当らしい。
……お別れの際には目の前でビリビリに引きちぎって焼いてやろう。

きゅるるるる、と仔実装のオナカが鳴る。
「ママー、今日もステーキテチ?」
と涎を垂らして聞いてくる。

「そうだよ、うちではステーキしか出ないんだ。」
適当に応えて台所に行き、オーブンから野菜詰め実装焼きを取り出す。

……「」はまだこの実装肉の焼ける匂いに慣れず、その不快に思える匂いに耐える。
鉄板から紙皿に移し、塩と粗引き胡椒を良く振ってから水槽に置いてやった。
布団は回収。

「こんなに食べられないテチィ♪」
と言いつつも早速かぶりつく仔実装。
表面の皮はこんがり焼けてあめ色で、一目に同じ実装だとは思うまい。

「ステーキうまうまテッチュ〜ン♪ 今日も幸せいっぱいテチュ♪」
がっつくように食べる仔実装。育ち盛りなのか、以前よりも遙かにペースも速い。

三分の二ほど食べたところで仔実装は満腹になったようで、膨れる腹を抱えて横になった。
「オナカいっぱいテチ♪」
食べかすだらけの口でそう言う。見れば洗ったばかりの服は食べクズや肉汁でベトベトだった。
恐らくまた風呂に入れる必要がある。一日に二度、風呂に入れるとはなんて無駄……。
「」は心底うんざりした表情を見せた。


再びそっと満足げな顔で横になっている仔実装をメジャーで計る。
……一気に大きくなっている。気色の悪い虫だ。
「」は内心はそうおもっても顔には出さない。

"これならば数日後には計画通り出来そうだ……"。
ポーカーフェイスの裏でそんなことを思っていた。


消化もある程度できたのか、仔実装は起き上がり
「ママー、遊んで欲しいテチュッ!」
と言い出した。

「ああ、いいよ。」
再び「」は指でサッカーをしてやる。

「テリューッ!」
「テチャーッ!」

以前よりも力強くボールを返す仔実装。成長の手ごたえを感じた。
先よりは長持ちしたものの、やはり疲れるようで、10分もしないうちに

「ママ……疲れたテチィ……。」
と仔実装はへたり込んだ。

「そうかい、じゃあここまでにしよう。」

「テチ。」
横になって息をつく仔実装。それでも顔は満足げだ。


「それじゃあ、次はオフロにしようか。」

「テチッ!? アワアワテチッ!?」
へたり込んでいた仔実装はガバッと起き上がり、目を期待に輝かせ、「」の顔を見上げてきた。

「そうだよ、それじゃあ行こうか。」

「テッチュ〜ン♪」
仔実装の顔には極上の笑顔がうかんでいた。


すっかりお風呂が気に入ったのか、仔実装は洗ってる間も歌を歌ったりはしゃいで泳ぎ続けた。
「」は簡単なシャワーで済ませ、上がることを言ってもイヤイヤと泳ぎ続けたぐらいだった。

それでも何とかたしなめて風呂から上げて拭いてやり、パンツも換えてやった。
服はもちろん朝にならないと乾くまい。今回もとりあえず布団に入れてごまかそう。

ご機嫌の仔実装を抱えて居間に戻る。

そして今度は透明な方の水槽に入れる。
「今日からコレに住むんだよ。」

「明るくてひろびろテッチュ〜ン♪」
仔実装は黒い壁の閉塞感の無い、こちらの水槽を気に入ったようで、テチテチと走り回っている。
おまると餌皿を移し、端の方に布団を敷いてやる。

「さあ、お布団にはいりなさい。」

「フカフカおふとんテチュ♪」
仔実装は素直に応じ、布団に滑り込んだ。その上から掛け布団をかけ、
昨日と同じようにオルゴールをかけてやる。

♪パンポロパンポンパラリラポロポン……♪

「テチュテチュ〜♪ 今日もいっぱいいっぱい幸せテチュ♪」
と仔実装はオルゴールに合わせて歌を歌って、幸せな一時に酔いしれていた。


——そのときだった。


ポフポフ……キューッ  ポフポフ……

窓から妙な音がする。

「?」
「テチュ?」

仔実装と「」は同時に窓を見る。


そこにいたのは、一匹の野良実装石だった。
必死な形相で直したばかりのガラス戸を叩いて、どうやら進入したがってるようだ。

「なんだあいつ……。」
「」はそういうと立ち上がり、とりあえずどこかに放ろうとした。

しかしふと仔実装に目を移すと、どういうわけか、頭まで布団をかぶり、ガタガタと震えている。

「? どうしたんだい?」
「」は問うと

「怖いテチ虐められるテチィ……」
と、テェェ……と泣きそうになって応えた。

「どうして?」

「あの実装はワタチのおばさんテチィ……(元の)ママのいないときにワタチを食べようとしたり、
ワタチの食べ物をとったりされたテチィ……怖いテチ……!!」
とガタガタと震えながら応えた。

「」は合点がいった。
恐らく最初の夜、姉妹で我が家に侵入し、一目散に逃げた実装が今のアレなのだろう。
帰ってこないから気になって見に来たら、子供がぬくぬくと幸せに暮らしてるのを見て、私も入れろということだろう。


さて、どうしよう。再び実装石を黒い水槽に移して、前のようにアレのあごを砕いてエサ用とするか。
……いや、もう飽きた。水槽の入れ替えも今更面倒だし、それに仔実装を納得させるのも億劫だ。
ただ仔実装のエサ用としては魅力的である。

「」はしばらく考えた後、肉にするなら先に殺して保存しておいた方が手間がかからない、と結論付けた。
嫌いな相手なら仔実装の目の前で処分しても、ストレスは無いだろう。


「わかった。私に任せなさい。」
そういうと台所に行き、包丁を手に窓に向かう。

「……テチィ?」
恐る恐る布団から顔を出し、水槽から「」を見守る。

「」がガラス戸を開けると
「デププププ!! あんな裸のクソチビより高貴な私を飼うがいいデスゥ!」
と開口一発に臭い口で下品に叫んだ。

「………………。」

「」は無言で包丁をドスリと腹に刺した。

「デッ…………!!??」

腹の感触に何がなんだかわからないという顔をする野良実装石。

「」は頭を抑えつけて、続けてすばやくドスドスとめった刺しにする。
同情も躊躇も必要なかった。ただ粘土を鉛筆で突くがごとく、無感動に淡々と刺す。

「デッ…デデッ……デッ……!!!??」

腹を刺されていると判ったのが先か、死んだのが先か……、どこで偽石を突いたのか
十五、または二十度目くらいの突きを入れたあたりで実装石は絶命しているのに気づいた。

「ふう……。」
死体をそこに放置して、ガラス戸を締める。エサ用となった死体は、仔実装が寝静まった後に
こっそり回収して、明日のご飯にしてやろう。


水槽に向かって
「もう大丈夫だよ。」
というと、仔実装はキラキラとした目で、布団を跳ね飛ばして
「すごいテチ! ママは最強テチィ!」
と「」を称える歌を歌って踊り、大喜びした。

同属を殺されても、自分の憎い相手なら喜びしか感じてないあたりは、子供でもやはり糞蟲である。
手を差し伸べた先でテリュテリュと指に甘えて縋る仔実装を見つめる目は、冷淡だった。


「ママとワタチはずっとずーっといっしょテチュ!!」



その夜は興奮して甘える仔実装を寝かしつけるのに一苦労だった。


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次の日から、ご飯も風呂も布団もくれ、さらには天敵もわけ無く蹴散らす「」は、
仔実装に全幅の信頼を置かれるママとなった。

ご飯のじかんでは、「食べさせテチ♪」「フーフーしテチッ」と甘え、
お風呂の時間では、「ママを洗うテチュ♪」と作業効率悪く手を洗われたり、
「」がトイレに立てば「ヤダ〜〜ッ!!」と泣き出し、「ダッコしテチュ♪」と少しでも離れることを嫌がったり、
寝る時間になれば「ママと一緒に寝るテチュ!」と言い出したり。

「」にとっては虫唾の走る日が続いた。

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さらに数日後。
「テェ〜ス…………テェ〜ス…………」
「」は幸せそうに寝ている仔実装を計る。
すでに中くらいの実装と言っても良い大きさになったのを確認する。

よし……そろそろだ。

「」はほくそ笑んだ。
"そのための準備"もとっくにしてある。
眠る仔実装の体にこっそり麻酔をかけて、偽石を取り出してすでに栄養剤につけていたり。
今日のお風呂は特に念入りに洗った。

「ムニャムニャ……ママ……だいすきテチュ……♪」
仔実装がどんな夢を見ているのか、そんな寝言を言う。

「……悪いな。俺はお前らなんかクソ以下にしか思っちゃいないよ。」

——「」の本音は寝ている仔実装には届かなかった。

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次の日
「今日はバーベキューをするぞ!」
と「」が朝食の時に言った。

「やったテチ〜♪ 今日も幸せいっぱいテチュ〜ン♪」

仔実装は喜んだ。なぜならここ二日、肉を食べていなかった。
理由は簡単、実装石の死体が切れたからである。公園で適当に狩ろうにも
「行っちゃヤダ〜〜ッ!!」
っと仔実装が泣き出すので行かれなかったのだ。
ゆえに、ご飯は買いだめしておいた野菜や米だった。

「それじゃあ、まずは買い物だ。一緒に外に出るぞ。」

「ェ……外テチ?」
仔実装は小さい頃の外の恐怖を思い出し、躊躇する。外は仔実装にとって敵だらけの環境だった。
仔実装は「」の家に着てから、一度も外に出たことは無い。

「大丈夫だよ。私が守るから。」
「」が頭を撫でて力強くそういうと

「そうテチ! ママは最強だったテチ♪」
と、「」の手に飛びついて元気良く承諾した。

仔実装を抱いて、外に出る。向かう先は近くのスーパー。
仔実装は手の中でテチュテチュ♪と歌を歌い、珍しいものを見るや
「あれはなんテチ?」
と繰り返し聞いてきた。面倒がりつつも顔や態度には出さず、
「」は最後まで良いママを演じた。

スーパーに入ると、仔実装が驚嘆の声を上げる。
「おいしそうなものいっぱいテチィ♪」
キョロキョロと見渡して、仔実装は何をねだろうか品定めをしているようだ。

仔実装を籠に入れ、それを持って店内を散策する。
仔実装は籠の中で揺れるのが面白いのか、テチュテチュとはしゃいでいる。
すれ違う店員が、つれている実装石を見て、その顔に明らかな嫌悪感を示す。それも当然だ。
食品を売る店には、食品を食い荒らし、そして店前の託児で客足を止める、サルやゴキブリ以下の生命体なのである。

それに気づかないのは籠の中で妙な声をあげている仔実装だけだ。

店員にすまないと思いつつも買い物を始める。

買うものはおもにスパイス、ハーブ、香草などの調味料。
そしていくらかの野菜である。

途中、
「アレが欲しいテチィ。」「おいしそうテチィ」
などと果物やお菓子を要求するが、全てやんわりと却下する。
すると
「イヤテチィ! イヤテチィ! アレが食べたいテチィ!」
終いにはテンテンと泣き喚き、駄々をこねだした。

店員が不快感をあらわにして此方を見つめている。
「わかった、わかったよ。」
放り投げたい衝動を堪え、金平糖を一袋だけ買ってなだめることにする。
「コンペイトウテチュウ♪」
コロリと機嫌が良くなる仔実装。金平糖なんて買っても"誰が食べるのやら"……。

一通りのものを買って、レジに持っていく。
ここで仔実装があることに気づく。
「テチュ? ママ、お肉買ってないテチュ。」


「いや、肉はもうあるからいいんだ。野菜だけ買えば。」
「」はそのまま精算を済ませた。


買い込んだら一旦家に戻り、道具をとることにする。
包丁、携帯式コンロ、まな板、焼き網、注射器と薬品、仔実装の水槽、そして金属製の、シャンプーハットのようなものを
半分に切って半円状にしたようなもの。ついでにバケツと仔実装お気に入りのオルゴールも持っていく。

水槽に買ってきた袋と道具一式を全ていれ、仔実装を肩に乗せ、水槽を抱えて、
「」は近くの川にあるキャンプ場に向かった。
そのキャンプ場、実装石が近くに住み着いて客足が途絶え、開店休業状態のところである。

キャンプ場に向かう間、耳に近い肩で嬉しそうにテチュテチュテ♪と歌を歌い続ける仔実装。
「」は堪えた。

自宅から十分もあるけばキャンプ場についた。
仔実装は川原の風景にすっかりと見とれている。
「テェェ…………」
キラキラと目は輝き、日光を反射して輝く森林や冷たく気持ちよさそうな川の水を見ている。
「楽しそうテッチュ〜ン♪」
「」が適当な場所で水槽を地面に置くと、仔実装は肩からよじよじと服伝いに降りて、
テェェェェと川に向かって突進していった。

「」はそんな仔実装に構わず荷物を広げた。
携帯式コンロを設置し、香辛料を並べ、包丁をだし、野菜をまな板に置く。
川辺からバケツに水を汲み、野菜を洗う。

仔実装は川辺に座って、手で冷たい水をパシャパシャと叩いて遊んでいる。
「テッチュ〜ン♪ 冷たくて気持ち言いテチュ♪」

そのとき、仔実装は背後から視線を感じた。
「テチュ?」
振りかえって見ると、大きな成体実装が、まじまじと仔実装を見定めていた。
「デスゥ……?」


野良の世界は弱肉強食。ママから離れたら他の実装石に頭から齧られる。
仔実装は頭に電気が走ったように(元の)ママから何度も言われたことを思い出した。


「テッ……テェェェェェェ!!!!!」
と叫び、飛び起きると
「ママーッ!!! 助けテチーーッ!!!」
と全速力で「」の方へ走っていった。

「デスゥ……?」
ママ……? と野良成体実装石が仔実装の行く先を見ると……人間がいた。

「デッ!?」

キャンプ場に来る人間は絶好のカモである。強請ればすぐにエサをくれるし、
少し盗んでもその開放的な気分から、ばれない。

しかし、実装石を連れた人間は別である。野良実装に対して注げる愛情など全て買い実装に与えており、残ってない。
強請っても何もくれないどころか、汚く臭く邪魔な野良は石を投げられ川に沈められ踏み殺される。
実装石を連れた人間だけは手を出すな。野良成体実装が仔実装を見てすぐに襲わなかったのもコレゆえである。

仔実装は、「」をみて固まる野良成体実装からなんなく逃げ果せた。
「ママ! ワタチ襲われそうになったテチ! 助けテチィ!」
テェェェンと泣きながら「」の足に縋る仔実装。「」は笑顔も優しい言葉もかけず、無表情に仔実装を抱く。
それに気づかない実装石は、絶対に自分を助けてくれるに違いないママに
「テッチュ〜ン♪ ママ大好きテチュ♪」
とすりすりと頬擦りをして「」に甘えた。


しかし……


ビリビリッ ビリッ!!!


「テ?」

仔実装は一瞬何をされたかわからなかった。

「」が仔実装の服を一気に引き裂いて丸裸にしたのだ。

間髪いれず「」はうつ伏せにまな板に仔実装を押し付け、髪の毛を剃り落す。

「テ? テェ? テェェ????」
仔実装はわけもわからずパタパタと暴れる。何をされているのかわからない。

後ろの二つの髪を剃り落したら仰向けにして、額にこびり付いたように生える前髪も剃り落す。

仔実装がそのとき見た「」の顔には確かな笑顔が刻まれていた。

いつもどおりのママの笑顔。しかし今自分はなにをやられた?
仔実装の自問自答に応えるのは誰もいない。


「」は剥げ裸にした仔実装を水槽に投げ入れる。

「デッ!!」
水槽に頭をゴンとぶつけ、妙な声を上げる仔実装。
頭を振って起き上がり、水槽のガラスにうっすら映る自分を見て……驚愕した。

服も無い。髪もない。なんと無様。なんと可愛くない。
仔実装の背中は凍りついた。


なんでこんなことに? だれがやった?

きまってる。ママだ。でも何で優しいママが? ありえない。


「ママ……?」
水槽をパンパンと叩き、「」に問いかける仔実装。
しかし、「」は野菜を切ることに集中して、仔実装に目を向けもしない。


「何で服を取っちゃったテチ? 何で髪の毛取っちゃったテチ?」
悲しいとか許さないとか、一切の感情は無く、純然たる疑問をぶつける仔実装。


「…………………………」
「」は全く応えるそぶりが無い。


「ママ? ママ? ママ?」


「………………………………」
「」は黙々と野菜を切る。

その姿は仔実装には罪を認めているからこそ黙っているように映った。



水槽にうっすらと映る自分のハゲ裸の姿と。ママの意地悪と。
仔実装に感情の波がようやく押し寄せてきた。


「テェェェ………………テェェェェェ…………!!」


「ママの意地悪テチィ!! 何で取るテチィ!! ママなんか嫌いテチィ!!! テェェェェェェン!!!!」


仔実装は泣いた。

何時も泣けばすぐにあやしてくれるママ。

「テェェェェェェン!!! テェェェェン!!!」

今はいくら泣いても見てすらくれない。

「テェェェ………………テェェェェェェェェェェェェェェェン!!!!!!!!!」

なんで?

「テェェェェェェェェン!!!! テェェェェェェェェェェン!!!!!」


仔実装はひたすら泣き続けた。自らの悪い状況を打破するには仔実装には泣くほかに何も無かった。


「テェェェェェェェェン!!! テェェェェェェェェン!!! テェェェェェェェェェン!!!」


仔実装は大声でひたすら泣いた。泣き続けた。泣き続けて、落ち着いて、そして気づいた。



———妙に騒がしい。



テェ……と泣くのを少しやめて周りを見てみる。


そこにはいつのまにか。



野良実装が。
仔実装の水槽を取り囲んで。
仔実装を笑っていた。

「テッ…………テェェェェェ!!??」

野良実装たちは人間に襲われる恐怖感よりも、ハゲ裸実装への興味が勝ってここに集まったのだった。

「デププププ……こいつハゲ裸デスゥ」
「お前、何を考えて生きてるデスゥ? 変態デス? デプププ……」
「良くそんな醜い姿で生きていられるデスゥ。デプ、デプ、デプププ。」
「醜いお前ごときが飼い実装なんて生意気デスゥ。私と変わるデスゥ。」
「ピチピチうまそうデスゥ。ちょっと齧らせるデスゥ。」


「テェェェ!!???」
仔実装はこれほど悪意のある目と言葉に襲われたことは生まれて今まで一度も無かった。
ただ狼狽するほか無かった。

「醜いくせに生意気デスゥ、このぉ……!!」
実装石の一匹が糞を水槽に投げつける。
「テェェ!!??」

ビチャッ!
水槽の壁にぶつかり、糞が弾ける。無論、中の実装石には当たらない。
しかし、実装石には全く生きた心地がしなかった。泣くのも忘れる死の恐怖。
指をさして笑われる恥辱。ぶつけられる悪意に対して、仔実装はなんの手立ても持っていない。
がくがくと頭を抑え震える。

「デピャピャピャピャ!! こいつびびってるデスゥ! ハゲ裸の上に根性なしデスゥ!」
「デピャピャピャ!!! まさに聳え立つクソ蟲デスゥ! デピャピャピャ!!!」

一斉に周りの実装石が笑い出す。その騒音に心臓がつぶれそうになる。

「テ……テェェェ…………テェェェェ…………テェェェェン!!!」
思い出したように泣き始める仔実装。
しかし、仔実装の泣く声に優しい反応を返してくれるママのような存在はここにはいない。

「デピャピャピャピャ!!!」
「デププププ!!!!」
「デップーーーーープップップ!!!!」

泣き喚くハゲ裸仔実装に対して笑いが巻き起こる。


もういやだ。ここはもういやだ。家に帰りたい。ママと一緒の家に。
ママ。 ママ! ママ!

「テェェェーン!! ママァー!! ママァァーーー!!!」
もとより、仔実装は「」に助けを求める他無かった。



———しかし見上げた先のママは、他の実装石同様に、笑っていた。



……なんで? いや どうでもいい! ママ! ママ! 助けて!!


「ママァー!! ママァァー!!! テェェェェン!!!」

何度泣いても、助けてくれないママ。おかしい。なんで?

「テェェェェ………………」

仔実装が再度泣いて助けを呼ぼうとしたその瞬間。


——ベチャ。


仔実装の頭に、何か溶けたようなものがあたった。

「……??」

頭の中が違和感で覆われ、泣くのはぴたりとやんだ。頭を触れると、そこには異臭を放つ、糞が。


何でワタチのあたまに汚い糞が?


理解できない状況に一瞬思考が停止する仔実装。

その耳に実装石の下品な笑い声が届く。


「「「「デピャアアアアアアアアアアアアアアッピャッピャッピャッピャ!!!!!!!」」」」


笑い声の騒音。悪意の塊。

笑われてしばらくたち、ようやく自分がされたことに考えが至った。
糞を投げ入れられ、頭にあたったのだ。

「ハゲ裸うんこ実装デスゥ!!! この世で最も下等な生物デスゥ!!! デピャピャピャピャ!!!」
「お前そんなんでもまだ生きてるデスゥ!!?? 早く死んだほうが世界のためデスゥ!!!」

「「「デピャピャピャピャピャピャ!!!!!」」」


「テ……テェェェェェェェェェン!!! ママァー!! ママァー!!!」
裸でハゲでうんこまみれで大勢に笑われて。
仔実装は「」に縋るほか考えが回らなかった。「」のほうに両手を伸ばし、助けを求める。

ママなら助けてくれる。間違いない。ママ! ママ!!

「テェェェェェン!!! ママァ! テェェェェェン!」


———そのとき、「」がスッと手を伸ばし、仔実装を抱え上げた。


「テェェ……テッ?」
仔実装の泣き声がぴたりとやむ。


「」は仔実装を抱え、
「クソぶつけんじゃねえ!!! うるせえんだよ!!!」
と笑い騒ぐ野良実装石らを一喝し、身近な一匹を思い切り蹴り飛ばした

「デボォァアアア!!!!」
妙な声を出して目を飛び出させて遠くに吹っ飛んでいく野良実装石。

騒いでいた野良実装石の集団は一気に凍りつく。
……不味い。人間を本気で起こらせた。

「「「「「「デ、デェェェェェェェェ!!!!!!!」」」」」

散り散りに逃げていく野良実装石。

仔実装はぽかんとした顔で見ていたが、やがて「」の手の中で安堵感が戻ってきた。
いつもどおり大好きなママが助けてくれた。もう大丈夫。

そう思うと仔実装の目に自然に涙が溜まる。うれし泣きである。

「テェェェ………………テェェ………………テェェェェェェェェン!! ママァー!!」
より強い抱擁を求めて、仔実装は両手を差し伸べる。


「……ぴいぴいうっせえんだよ糞蟲。」



「」はそういうと水の張ったバケツに仔実装を突っ込んだ。

「ガバゴベガババゴボガベベゴババ!!!???」

仔実装は突然の息苦しさと水の浮遊感にパニックになる。

「(何でワタチは水の中にいるテチ? いま、ママなんていったテチ?)」

「」は水の中でごしごしと仔実装を擦り、糞を洗い落とす。
一通り擦ったら水から上げ、持ってきたピンの日本酒を全身にかけ、さらに擦る。

消毒である。

「テ? テ? テェ?」

仔実装は「」が何をしているのか、何を考えているのかいよいよわからなくなり混乱している。

いつも優しくて、でも意地悪して、でも助けてくれて、また意地悪?

「」はまな板に仔実装を載せると、持ってきた注射器を取り出し、薬品を吸い上げ、
それを仔実装の頭に挿し、注射をした。

「テッチャアアアアアアアアアアア!!!!????」
頭に鋭い痛みを感じ、痛みと言うものを殆ど知らない仔実装が絶叫する。

「大丈夫、すぐに感覚はなくなる」

?

ママの言っていることが判らない。

でもママは優しいし。

今も助けてくれたし。

……大丈夫だろう。

仔実装はそう自分に言い聞かせ、混乱の中から落ち着きを取り戻そうとした。


すると、「」の言うとおり、仔実装の体に痛みは泣くなり、一種の浮遊感のようなものさえ感じられた。
意識も混濁してくる。

「ふあふあ……気持ちいいテリュ……」
思わず呂律の回らない声でそういう仔実装。

「よし、回ったか。頃合だな。」
「」は金属製の半円のシャンプーハットのようなものを、仔実装の首につけた。
仔実装から首から下は見えない。ただそれをやるためだけの道具だ。

「テリュ……?」
混濁する意識の中で自分が何をやられているか確認しようとするが、良くわからないし、動けないし、気持ちいい。


「やっとだな……」

「」は感慨深げに包丁を持ち……仔実装の腹につきたてた。

悲鳴は無い。麻酔は効いてるようだ。

「行くぜ……!」

縦に引き裂き、腹を割る。そして、内蔵を掻き出す。本格的に調理開始である。
偽石を家の栄養剤の中に漬け込んであるのでこれでもしばらくは死なない。

まず四肢を切断する。ゴトン、ゴトンと骨ごと切り、それを既に熱してあるコンロの網の上で炙る。
産毛を焼き取ったら今度はオリーブオイルをまぶして焦げないように焼く。

手足の肉を焼いている間に本体の処理にかかる。

内臓を掻き出した腹を日本酒でよく洗う。そしてニンニク、香草などの微塵切りをよく刷り込んだ。
そして、前もって切っておいた野菜を詰める。そしてオリーブオイルをたっぷりと掻けて、
調合したスパイスもふりかけ、腹の中でそれらをよく掻き混ぜる。

「テリュ……、ママ……? 何をしているレチュ……?」
混濁した意識の中で「」に問うが、「」は何かに夢中で返事は無い。

そうこうしている間に手足の肉が焼けている。
火から上げて、焼き加減を見る。

……よし、上出来だ。

四本の手足肉を縦に切り、それぞれ骨をうまく取り出す。
取り出したら肉を細かく刻み、スパイスをまぶして腹に詰めて、再度腹の中をかき回して、腹を縫い合わせる。

「よし……いよいよクライマックスだぞ、糞蟲」
体にブランデーを降りかける


「テリュ……?」

ママ…………糞蟲って…………誰のこと?


本体を頭の部分だけ焼けないようにコンロの外に出して、焼く。

コンロに乗せた瞬間、ボワッとブランデーに発火し、燃え上がる。
産毛を焼ききるためだ。
火が消えたら、オリーブオイルを刷毛で塗りながら、転がすように焼く。
コロンコロンと視界が転がる様は、混濁した意識の仔実装にとって妙に愉快に思えた。

「テププププ…………。」

「笑ってやがる。キモい蟲だな……。」
「」はもう言動に内心を隠さない。

周囲に肉の焼ける匂いが漂う。
一度は逃げた実装石たちも、どうにかすればおこぼれを貰えるかもしれないと、じわじわと終結しつつあった。

「」は実装肉の焼ける匂いはイヤだったが、"思ったとおり、仔の肉なら臭くなかった"。

「なんかいい匂いがするレチュ……ステーキレヒュ……バーベキューテリュウ……」
仔実装はうわごとのようにつぶやいた。


「よし、できあがりだ!」
適当な皿も無いので、川の水でさっと流しただけのまな板の上に
"焼きたて活き仔実装の野菜詰め"を乗せた。
これぞ珍味中の珍味。仔実装の泣き声を聞きながら食べると言う素敵料理である。

「テェェ……何が終わったレチィ……?」

「おっと、忘れてた。」
「」はそういうと注射器を取り出し、先ほどとは別の薬品を注射器に満たし、仔実装の頭に注射した。

「テリュウ……?」

すると、次第に混濁した意識だけが元に戻っていく。
「ママ、ママ……?」

仔実装はなにがなんだかわからないが、縋るように「」を呼ぶ。

「ママ………何をやってるテチュウ? もう帰りたいテチュウ……!」


「」は今までに無い笑顔で
「よし、気づいたな。出来たぞ糞蟲! さあ、ごらん!」
と言ってシャンプーハットのようなものをはずした。

「テ……テェェ……テェェェェェ!!??」

仔実装は自分の体を見た。そこにあるのは美味しそうなお肉……。
いや、そんなバカな。なぜ自分の体がステーキ?

「どうだ、美味しそうだろ。……まあ、お前は食えないんだけどな。」
今まで見たことの無いような笑みで仔実装に話しかける「」。
その顔に浮かぶ表情を人は愉悦と呼ぶ。

「おっと、お前のためにこれも持ってきたんだった。」
と言って、「」はオルゴールを取り出し、蓋を開けた。

♪パンパンポロパンパンパンパンパンパララララ……♪
綺麗な旋律が、仔実装の頭のすぐ上で鳴らされる。

「お前コレ大好きだったろ? だからまあ、レクイエムとして……な?」

———「」なりの最悪の演出だった。

想像もしえない自らの状況にただただ絶句する仔実装に「」は
「それじゃあ、いただきまーす」
と言ってフォークとナイフを突き立てた。

「テェェェェェェ!!!!???」

…………………? 痛くないテチュ?

これも当たり前である。麻酔(人間には無毒無効)も打たれ、神経なども焼ききれている。

「あーん。」
「」は仔実装の肉と腹の野菜を口に運ぶ。

「テ…………テェェ………………」
ママが、自分を、食べている。ただ呆然とするほか無い。

オルゴールが鳴り響く。

♪パンパンポロパンパンパンパンパンパララララ……♪

もぐもぐもぐ…… 「」が咀嚼する。

「…………?」
首をかしげて、微妙な表情。


「うーん……もう一口食ってみるか……?」

再び良く焼けている仔実装の体にナイフとフォークを突き立てる。

♪パンパンポロパンパンパンパンパンパララララ……♪

「テェェェェ…………食べちゃダメテチ……ワタチを食べちゃイヤテチィ……。」
力なく首を振って泣きながら最愛のママに訴える。

「」はもう一口、口に運ぶ。
もぐもぐもぐ…………

「……ダメだ。まだ臭みがあって不味い。」
そういって憎憎しげに舌打ちをすると、ナイフを無造作にずどんと"実装のマル焼き"の中心につきたてた。

「テェェェェェェェェェ…………」

痛くは無い。しかし悲鳴は上がる。

♪パンパンポロパンパンパンパンパンパララララ……♪

「どうすんだこのゴミ……」
しばらく逡巡の後
「ああ、アレがいたか。 おーい! お前ら腹へってねえか!?」
と野良実装たちを呼んだ。

「デスッ!?」
「やっぱりもらえるデス!?」
「私のものデスゥ!!!」

呼んだとたん、物凄い勢いで「」のもとに殺到する野良実装石たち。
「お前らコレ、やるよ」
「」はそういってアゴで仔実装を指し示す。

「デブッ!? さっきのハゲ裸デス!?」
「お前料理の材料だったデス!? デプププ!!!」

「チ、ちがうテチ……ワタチとママは……。」

♪パンパンポロパンパンパンパンパンパララララ……♪

「いただきますデスゥ!!!」

ガブッと一匹の野良実装がフライングして食いついた。

「ああっお前何してるデス!?」
「私のものデス! お前らが食うものじゃないデス!!!」

他の実装石たちも仔実装の体にかぶりつき始める。

「ううっ……ウマイデズゥア!!! こんなうまいもの食ったのは生まれて初めてデズァ!!!」
「ガブ……ガフッ……こ、こら! そこは今私が唾をつけたところデズゥ!!!」

餓えた薄汚い実装石に自分の体を食われ、恐怖と嫌悪感にテェェェェェと力なく泣き出すが、
それは野良実装の喧騒の前に掻き消えた。

♪パンパンポロパンパンパンパンパンパララララ……♪

がつがつと体を食われながら、仔実装は目で優しいママを探す。
——ママはとてもいい笑顔で仔実装を見ていた。

ママ……優しいママ……

「ママァ……抱っこしテチュ……♪」

「うまいデズゥア!!! うまいデズゥア!!!」
「お前ら誰の許可を得て食ってるデズゥ!!!!」
餓鬼どもは既に胸まで食い尽くしている。

オルゴールはなおも鳴る。
仔実装の命の灯火にあわせるようにゆっくりと遅くなりながら。

♪パンパンポロパンパンパンパンパンパララララ……♪

「もう肉がないデズゥア!!! これ以上食うなデズァ!!!」
「お前が食うなデズゥ!!!」
「いやお前がry」
「いやry」

「ママ……ママ……♪」
仔実装は愛しいママを呼び続け……

♪パンパンポロパンパンパンパンパンパララララ……♪

「もう頭しかないデズゥア!!!! もうコレは私のものデズァ!!!」
「なに言ってるデズゥア!!! 私が食べるデズゥア!!!」
「お前らいいから死ぬデズゥア!!!」

「ママ……一緒に……おねんね……テ………………♪」




まぶたの裏に、暖かい布団と、綺麗なオルゴールの音の、ママとの幸せな昔の幻影を見て



———仔実装は絶命した。



♪パン……ポロ……パン……パ……ン……パ………

やがてオルゴールも、止まった。
















「やっぱあれだな。蛆か親指から温室養育しないとどうしても臭くなるのかも知れねえなあ……。
いや、今度はハーブだけ与えて育ててみるか……。」
ぶつくさと言いながら纏わりつく野良実装に蹴りを入れつつ、帰り支度をする「」。

ふと一匹の野良実装に目を留める。

「お前……妊娠してるのか?」

「デッスゥン♪」





To Be Continued?


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ここまで読んだあなた。ネ申。

最近妙に某所に実装料理の絵が増えているので、トレンドなんかなあ、と。
ただ、もうちょっともうちょっとってやってる間になんだこの長さはって感じです。
長すぎるので推敲もいい加減という手抜き加減。御容赦ください。

それでは……

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1 Re: Name:匿名石 2019/04/01-08:28:27 No:00005843[申告]
仔蟲のうざさが良かった
2 Re: Name:匿名石 2023/06/01-20:22:27 No:00007263[申告]
食い物にもならんとか都会の実装石はホント糞だな
3 Re: Name:匿名石 2023/09/29-15:18:59 No:00008052[申告]
結局仔実装は幸せなまま死んだんだな
無駄に手間暇かけて上げ落とし失敗してやがる・・・
4 Re: Name:匿名石 2023/10/12-19:46:21 No:00008108[申告]
仔蟲ちゃんのかわいい描写が沢山あって満足
同情心はわかないのが絶妙
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