柿の木

二葉市の外れにある公民館の庭先に1本の柿の木がある
たまたま俺が公民館のそばを通りかかったら柿の木の下に1匹の実装石が居た

両手を目一杯上に上げて万歳の体勢で必死になってジャンプしている
どうやら鮮やかな色に実った柿の実を取ろうとしているようだ
頭が重く脚が細くて短い実装石のジャンプなんて3cmも浮いてない
実装石は俺に気づかず何度も何度もジャンプを繰り返している

どうせ暇だし少し観察していこう

何度目かのジャンプでついにバランスを崩して後ろに転び後頭部を地面に強打した

デシァァァ

悲鳴を上げる実装石
俺は公民館の影で必死になって笑いをこらえた
実装石はしばらく手足をばたつかせながら地べたで泣いていたが立ち上がり柿の木の幹に向かって行った
そしてまるい両手で幹を力一杯押した
何度も何度も押した

当然柿の木はびくともせず実どころか葉の1枚も落ちてこない
ついに怒りだした実装石

デスデースデッスーーーン

叫びながら木に向かって全力で走り出した

木の幹にタックルでもするつもりか？
と思ったら足元の小さな土くれに足を取られて躓き見事に幹へ顔面からダイブした
実装石捨て身の顔面タックルの威力のおかげか柿の実1つと葉数枚が落ちてきた
そして柿の実は木の根元で気絶している実装石の背中に直撃した

デボッ

さすがにこらえきれず大笑いしてしまった
実装石はまだ気絶したままなので落ちてきた柿の実を拾って公民館の裏へ投げ捨てた

そろそろ帰ろうかと一歩踏み出したら実装石が目を覚ました

デェー

情けない声を出しながら周りを見る
俺と目が合った

デェェーッ

驚いたように赤と緑の目を見開いて立ち尽くした
さらに一歩踏み出したら実装石が声を出しながら追いかけてきた

デースデスデスデデス

俺のズボンの裾を左手で掴み右手で柿の木を指していた
ほう、俺に柿の実を取れという事か
よし、取ってやる
リンガルは持ってないが実装石には何となく伝わったようだ

俺は柿の木の幹に一発蹴りを入れた

ポトッ
柿の実が1つ落ちてきた
そいつを拾い上げて実装石に渡してやる。

デスデスデッスデースデス

うれしそうに何度も頭を下げている
実装石に感謝されてもなぁ

柿の実を大切に抱えて実装石が帰って行った

あいつ嬉しそうだったな仔へのエサかな実装石が食えるかどうかわからないけど
この柿の木は渋柿なんだけどな


～二葉市第五児童公園のとある段ボールハウス～

お前たち今帰ったデスよ
おとなしくしていたデスか

ママーお帰りテチー
おかえりーテチ

お前たち姉妹にごちそうを取ってきたデスよ

誇らしげに柿の実を仔実装姉妹に見せる

ママすごいテチ
このきれいな色はアマアマに決まってるテチ

親実装は早速平べったい石の上に柿を置いてとがった石で切り分け始めた

さぁお前たち仲良く食べるデスよ
いただきまーすテチ
いただきますテチ

パクっ

！！！

テチャーーーーッ！

悲鳴と共に地面をのたうち回る仔実装姉妹
口から柿を吐き出し糞をたれてパンコンしている

お前たちどうしたデスか

苦いテチ
渋いテチー
こんなまずい物を食わせるなんてとんでもない糞親テチ

何を言うデス
こんな新鮮でおいしい果物にはなかなかありつけないデスよ

そういいながら親実装が柿の実を口に運んだ

デシャャァァァァー


おしまい