「えー、近隣住民への理解を無事終えたので久々に規模の大きな駆除を行います」



装害駆除要員を集めた会議の冒頭で胡麻塩頭を隠すために髪を伸ばし続けている課長がダラダラと話し始めた。



「実装石は今まで公園や廃屋などで巣を作る事が常々でしたが最近新しいタイプが出始めましてー...」



ことの始まりは独居老人が野良実装石によって“殺害”されたことが端を発した。食糧を求めて人間の家に侵入することもあるのだが入った家の住人が寝たきりの老人が故にいえの食糧が乏しいとなるや腹いせに老人の顔面に糞を盛り上げて窒息死させたのだ。

世間では既に少数派になった愛護派や実装飼い主が比較的多いこの街では駆除に関して度々、苦情が来ていたこともあり衛生環境を盾に駆除地域を街の管理する極一部の場所に限られてきた結果として繁殖し過ぎた実装石によって引き起こされた事件だった。



「公園等を離れた実装石が斜面に洞窟状の巣を作り数を繁殖させている事が調査で判明しました。こちらの資料を見て下さい。」



会議室の画面には街中にある自然公園の斜面が映っているが突然ズームアップした



「画面正面にありますここが実装石の巣であると見られ、多くの巣穴は入り口が枯れ枝や段ボールでカモフラージュしてあり中には個体数と音波探知によって奥行きが最大2m以上のものも存在していると予想されます」



映されている巣の入り口からは枯れ枝を退けて周囲を窺いながら数匹の実装石が出てきた



「この巣は最大級であると推測され巣の上にある木が急速に枯れたことからかなりの数がいると推測されます」



比較の為のスライドが映し出され数ヶ月前までは青々としていた木が今では枯木となり葉っぱ一枚すらない。実装石による糞害による典型例だと資料で読んだ通りで斜面には空気穴のためか幾つかの小穴やスロトーが突き出ている。



「この巣を放置すると街の衛生状況も更に悪くなるので早急に駆除を実施します」



説明後に資料が配られ自分の役割を確認すると今日の会議は解散となった



?そして当日?



「それじゃ各班ごとに作業を開始してください。くれぐれも安全管理には気をつけるように」



まず包囲班は巣穴付近にかすみ網の包囲網を敷き始めた。実装石からも見えているはずなので手早く包囲網を完成させて逃亡を防ぐ準備を整える



「それじゃ巣穴の入り口を...よいしょっと！」



駆除班員が巣穴の入り口の枯れ枝を取り払うと



テチャ！！デヂィィィィ！！(人間デチ！どっか行けデチ！！)



穴の中から実装石の声が聞こえるので当たりと判断して出入り口を土嚢で塞ぐ



「よーし、穴を開けるぞ」



バールで空気穴の付近の地面を抉り巣穴の天井に穴を開ける。ちょうど穴を開けた真下には数匹の親指や仔実装が震えながらポッカリ開いた穴を見つめているが土砂に体を埋もれさせたヤツもいた



テェーン..テチテッチィー！！(痛いテチ..助けてオネチャー！)



テェェエ！デチッデデ！！(イモウトチャ！お家に何するデチ！！)



「そら、発煙筒」



点火した発煙筒を巣の中に投げ込み開けた穴を素早く土嚢で塞ぐ



テホテホ！テェェン！？テチテッチ！(ゲホゲホ、火事テチ！？ママーッ！大変テチ！)



デデデ！デッスデース！(何でデス！皆んな逃げるデース！)



デチ！デチ！！(ママ！入り口が真っ暗で開かないデチ！)



土嚢の向こう側から薄らと実装石が叫んだり叩いたりする音がするが袋目一杯まで入れた土嚢袋を実装石の力で動かすことは到底かなわなそうだ



「おーい、抜け道があるぞー！土嚢袋と処理袋を持ってきてくれー」



塞ぎ損ねた抜け穴からはベソを掻きながら出てきた仔実装が処理班のバールで頭を突き刺されて糞と血を撒き散らして何体か転がっている



テ...チ...デッチ！！デヂ！！(死にたくないデチ！誰かワタチを助けるデヂ！)



内臓をぶち撒けた実装石が腹から出た内臓を引き摺りながら這って逃げとうとするのをバールを振り下ろして留めを刺す



デッ！....



デ...デチ...



テッチ！テッチ！テチ？！(ハァ！ハァ！何テチ？！)



運良く抜け道から逃げ出した何体かの実装石もかすみ網の包囲網に絡めとられて身動きできなくなるが理解出来ずに?いて余計に絡まる様は思わず笑える



「ははは！無駄だって」



絡まった実装石の目の前でバールを振り回してやると



デジャア！ジャアアア！！(辞めてデヂ！ママーッ！)



イゴイゴともがく実装石を網から無理やり引き剥がすと腕や足が簡単に千切れた拍子に地面に落ちて絶命しなかった実装石をバールで次々と処分していく



ヂッ！



デギャ！！



テピャーッ！



あちこちで断末魔が聞こえる中で他の巣穴にも次々と駆除とは名ばかりの実装石を殲滅するための掃討戦が始まっている。学者の研究向けに巣穴を温存する発煙筒で燻している巣穴以外には殺実スプレー以外にも火炎放射器が使われている



「オラオラ?！汚物は消毒だ?！！」



人気漫画にあるセリフを言いながら元々は芝生除去用の火炎放射器の筒先を巣穴に突っ込んでから中を炙ると



ジュアアアアアアアア！！デギィィィイイイイイ！！！！！



もはやリンガルが解読不明な声を上げる断末魔が数多く聞こえ、巣穴から飛び出した途端にバールでトドメを刺されるか巣穴の中で焼死するかは生あるものとして少し気の毒になる



「先輩、ほらモグラ退治で使う何でしたっけ....可燃性ガスを使って巣穴ごとアイツら爆破出来ないンスか？」



処理班になった俺は淡々と処理した実装石を入れたゴミ袋をトラックに投げ込みながら一番年下の後輩が訪ねると



「あぁ..最初は検討されたみたいだが他所の街でそれをやっちゃった訳よ。そしたら吹き飛ばしたのは良いがぶち撒けられた土と糞を被る羽目になるというオチが付いてるから却下されたそうだってさ」



確かにと納得しながら



「そうなんスカ...じゃーね！」



お喋りの隙を突いて逃げるためにコッソリとかすみ網を持ち上げようとしていた実装石を後輩が勢い良く安全靴で踏み潰す



デギャッ！



デッブ！



足裏に煎餅を踏みつぶしたような感触を感じて足を上げると靴底の形に沿って赤緑の汚れと成り果てて潰れている



デチ！デチデチ！！(ママ！怖いデチ！！)



テェ?ンテェ?ン



縋る仔実装を抑えながら親実装が何処からか持ち込んだ五寸釘を振り回しながら巣穴から飛び出した



デスス！！デスーッ！(死ねデス！クソニンゲン！！)



デス！デッス！デッ....(お前たち早く逃げ...)



巣穴から出て振り回している間に巣穴に篭ったままの仔実装がいた巣の入口からは盛大に火を吹き出している



「ははは、あまり役に立つか分からなかったけど芝生除去用の火炎放射器は実装石相手だと楽で良いですね」



「でもお前、実装石はよく燃えるから火災事故にならないように燃えながら出てきたヤツはしっかり殺せよな」



「へーい...おっ」



後ろ髪が焦げただけの仔実装が数匹巣穴から転がり出て必死に走るがスピードなどたかが知れる



テッチ！テッチ！テププテチューン)(はぁ！はぁ！バカママを囮に逃げるワタチはやっぱり賢いテチュ)



テチュテッチ！(さすがオネチャテチ！)



テチューンテププ！(バカなママなんか捨てて飼い実装になるテチ！)



逃げ出していた仔実装たちに前に回り込んで正面から火炎放射器で炙る



デヂヂヂヂィー！(あづいデチ！！ママー！)



デチャアアアアア！！((どうしてデチュー！！)



あっという間に火だるまになった仔実装はパンコンした糞から更に燃え上がりパキンして逝く



デスーッ！デッスウウウウ！！！デデッス！？(娘たちー！どうしてこんなことするデス！？)



五寸釘を振り回し歯茎を剥き出しにして叫ぶ実装石を俺は後ろ髪を掴む



デギャ！！デデッス！！(離すデス！今なら許してやるデス！！)



新しい処理袋に落とし込んでから投げ入れて口を縛る



デギャ！！！オロロローン！！！(家が！仔が！！！)



「どうしてかって？お前らの存在がゴミだからだ...よっ！」



処理袋を大きく振り回して地面に叩きつけると



パン！



という乾いた音と共に肉塊へと成り果てたであろう実装石を無視して処理したりかすみ網に引っかかっている実装石を詰めていく



デッチ...デッチ...デヂィ....



や重度のヤケドを追い巣穴から出て来たり火を纏ったまま巣穴の付近で息絶えたりとした死屍累々である



「まったく...しぶといよなコイツら」



運良く生き残った実装石もバールで貫かれたる。焼きただれた実装石を火バサミで持ち上げただけで身体が崩れてピンクの内臓を糞と一緒に撒き散らすので俺はシャベルで袋に詰め込む



「おーい、こっち手伝ってくれよー」



同じ処理班だったヤツに呼ばれて応援に行き比較的、浅い巣穴を掘り起こしてみる。中からは飲料水を入れたペットボルトや地面に埋め込まれてトイレや食糧庫変わりの洗面器にミニバケツといった様々な容器が掘り起こされる



「クソ害虫どもが...片付ける身にもなれってんだぜ」



「おっ！」



テェェ...テッチー(ニンゲンテチ....怖いテチー)



テッチュ?ン！(ワタチを飼うテチ！)



巣穴の中に埋めた食糧庫に隠れていた仔実装が何匹か詰まったミニバケツを掘り起こした後輩は



「それじゃードングリと一緒に土に帰りましょねぇ！」



バケツをひっくり返して中をぶち撒ける



チャアアアアア！テェェエ！(いやああああ！ママー！)



テェーン！テェテェエ！！(嫌テチュ！集めたドングリはワタチのテチ！！)



人間からしたら鈍いシャベルでも実装石からしたら鋭い凶器となって頭に突き立てるだけで突き刺さった実装石は見事に真っ二つになる



デギャアア！！デギャ！(オネチャー！！)



血と内臓をぶち撒けながらフラフラ歩く実装石が倒れ込んだあともシャベルでミンチにしてドングリと一緒に大地に返すべく緑と赤のドス黒いシミに変えていく



デジュウウ！！デッジュウウ！！(死にたくないでテチ！！登れないデッチ！)



奇跡的にミニバケツの中にかろうじて残っていたが表面のツルツルした内側を登りきれない実装石を軽く上から下ろしたシャベルでミンチ状にしていく



「あーあ、せっかくのバケツも使えないゴミになっちゃうじゃねーか」



「良いンスよ、どうせゴミとして燃やすんですし」



各所からは駆除作業を終えて道具を片付け始めているので工事業者が巣穴を埋め戻し始めている



「そいや燻し終わったデカい巣穴を見に行こーぜ」



発煙筒が燃え尽きた時間を見計らって巣穴の入り口に置いてあった土嚢を退けられる



「うっわ！すっげぇ！」



入り口の手前では折り重なって死んだ実装石で新たな壁が出来ており偽石も見事にパキンした状態で死んでいる



「案の定パニックになったみたいだな...これだから実装石は...」



酸欠で家族に噛み付いたまま死んだ実装石や乱闘を演じてボロ切れになったり禿になった個体もかなり見られる。その光景からか胸糞悪くなった気を紛らわすために地面に唾を吐く人も多い。



その日の作業を終えてしばらくすると学者から報告書が届いたのでまた会議室に集合が掛かった



「それじゃ一番大きな巣穴の解説をします」



胡麻塩頭の課長が淡々と説明を始める



「巣穴の長さは実際には約3m弱あり内部は2層に分かれていました。下段に仔実装や蛆を詰め込んだトイレがあり上段には手前から子供部屋、寝室、食糧庫で下段にトイレを作ったのは糞の発酵熱によって巣穴の保温のためだと思われます。主に山実装にみられるタイプの珍しい巣穴とした情報提供として各街に資料配布が行なわれます」



長々とした説明の最中も巣穴に内視鏡のようなカメラで撮影した画像が画面に映し出される。内部には雑巾のようなタオルや新聞紙、ペットボトルの蓋が散乱している



「えー我が街が行った駆除方式を他の街も参考にしたとのことで来週に予定されている洞窟巣の駆除計画があるのでコチラの資料を..」



実装石がなんだろうが俺たちは仕事でただ淡々と“処理する側”として俺の日常は過ぎていくのだった