入れ替わる 公園に遊びに来た飼い仔実装(=以降:飼い)とそこに居た野良仔実装(=以降:野良)が、偶然話をする機会があった。 (飼い実装の飼い主は、携帯電話で話に夢中の状態だ) (野良の親は、餌を取りに出かけて留守) 「飼い実装って良いテチねぇ〜、毎日美味しいごはんが食べられるし、ふかふかベッドに寝られて。 ワタチなんか、ママ次第でごはんが有ったり、無かったり、有っても腐った生ゴミを食べないといけないテチ。 毎日、栄養のある美味しいごはん食べたいテチ。 それから雨が降らないと飲み水が無いし、ワタチは、未だ経験していないテチけど、夏は暑いし、冬は寒いし季候によって野良は死ぬ事もあるってママに聞いたテチ」 「でも飼い実装は、一見良い様に見えるけど、産まれた時からブリーダーに厳しい躾をされて躾を覚えなければ、即殺されてしまうテチ。 そして躾をクリアーして売りに出されても、売れなければ殺されてしまうテチ。折角産まれて来ても生きる事を、ニンゲンに認めて貰えないと殺されてしまうテチ。 食事も沢山出されるけど、毎日脂っこい物ばかり、ごはんの食べ方も上品にしないと怒られて取り上げられるテチ。 それに毎日、毎日、御稽古事とか、自分の時間が無いテチ。息苦しい程、時間が束縛されているテチ。野良の様に自由な自分の時間が欲しいテチ!」 「じゃあ〜、こっそり入れ替わるテチか?」 「ワタチ一回野良を経験して見たかったテチ」 「ワタチも飼いが羨ましかったテチ」 2匹の意見が合意したので入れ替わる事にした。 服を交換した2匹は、お互いの情報交換をして3日後、この場所で落ち合う事にした。 「マーガレット!帰るわよ!こっちに来なさい!」 「ハイテチ!」 「長女ぉ〜!ごはんデス!早くこっちに来るデスゥ〜!」 「ハーイテチ!」 お互い入れ替わった2匹だが......。 「うっ!この実装服臭いテチ!鼻がよじれそうテチ!でも念願の野良になれたテチ!我慢!我慢!」 今迄経験した事の無い、所謂≪ドブ≫の臭いに辛抱して、飯を喰いに帰ると......。 『テッ!何テチ!』 飼いの前に出された野良実装の食事のラインナップ。腐ったバナナの皮、魚の骨、ベタベタになった腐った肉。 「今日のお昼はこれデス。沢山あるから遠慮なく食べるデス」 「いっただっきまぁ〜す!」 野良の仔実装達は、出された生ゴミに群がった。 食べ方も手づかみで「ペチャ!ペチャ!」音を立てて喰う。 更に口に物が入った状態で口を開けて喋るから、見ている飼いは、吐き気を催しだした。 「長女どうしたデス!お前の好きな御馳走ばかりデスよ!」 「ちょっと!ちょっと気分が悪いテチから、遠慮するテチ」 飼いは、段ボールの外に出て横になった。 「こんな状態で3日間はきついテチィ〜」 一方、上品そうな夫人に連れられた野良と言えば......。 「マーガレット!一体どうしたの?その臭いニオイは?いつも綺麗にしていなければダメって言ってるでしょ!」 夫人は、嫌な顔をして怒り出した。 「今晩は、幹事の二場夫人の実装ちゃんや他の奥様方の実装ちゃん一緒に【ビィバルデイのバイオリン協奏曲を聞きながら夕食を......】に行くって何度も言ったでしょ。 そんな臭いニオイがしてちゃあ〜、皆の前でママは恥ずかしいじゃないのよぉ~。私に恥をかかす積りかしら。家に帰って直ぐにお風呂に入りなさい」 その内家に到着した。野良が、車から出てみるとその婦人の家と言えば、御殿の様な大きな家だった。 「テ......テチャァァァ〜!御殿の様なおうちテチ!これがワタチのおうちテチか?」 「マーガット!何ですか、大声をあげてはしたない!もっと女の子らしく控えめにして居なさいと言ったでしょ! 最近言う事を聞いていると思っていたのに、今度同じような事をすると、実装回収に出すか、ブリーダーに返しますよ!」 そして、家に入ればお手伝いさん3人に熱いシャワーを掛けられて「熱い!熱いテチ!」と大騒ぎをしたが上から押さえつけられて......。 「何よ!マーガレット!今朝お風呂に入って綺麗にしたばかり何に、一体何をしたのよ?泥の中にでも落ちたの?臭いし汚いし!」 「い......痛いテチィ〜!」 たわしの様な物を使われて全身皮が剥けそうになる程、擦られて更に頭は、シャンプーを掛けられて≪ゴシゴシ≫髪の毛を思い切り引っ張られる様にして洗われた。 シャンプーが目に入って「目が!目が痛いテチィ〜!止めて!止めてテチィ〜!」と言っても、「あんたお風呂が好きだったんじゃないのぉ〜! 少しは静かにしなさいよぉ〜!」と『一切聞く耳持たん!』と言う感じで只々全身を擦られた。 「口の中も臭いわ!」そう言われ、口にシャワーを掛けられ、歯磨き粉を付けた歯ブラシで≪ゴシゴシ≫歯が折れると思う程の勢いで擦られた。 更に「この臭いニオイは内臓からだわ!」そう言われ、シャワーの水量を高圧にして、口から一気に湯を入れられ内臓にある臭いゴミを押し出す。 ≪ドボ!ドボ!ドボ!≫排泄溝から、汚い糞と一緒に、ゴミも押し出した。 約2時間掛かって、マーガレットの様に一応綺麗になったが、未だ何となしに臭いニオイがする。 とどめとばかりに「これを掛けとくか!」そう言われて芳香剤とファブリーズ口の中に入れられ、全身に掛ける事により何とか野良の臭いは消せた様だ。 ぐったりして、奥さんの前に行った野良は「ごはん食べたいテチィ〜」と言ったが......。 「何を言うのマーガレット!御飯の前に実装バイオリンの練習をするのよ!二場夫人の飼っている実装ちゃんに負けない様に練習してから御飯よ!」 それから実装バイオリンの講師が付いて約5時間練習をさせられた。 しかし、バイオリン等初めて握った野良は、持ち方も知らない。これは何をする道具かも解らない。 講師も呆れてしまったが、大金を貰って雇われている以上、教えないといけない。必死になって教えた。 そのかいあって、バカでもやれば出来るのか、5時間後には、バイオリンから音を出す事は出来た。 「何よ!そのザマは!殆ど忘れているじゃないの!しっかりしなさいよ!ごはんは、夕食迄お預けよ!」そう言って夫人に連れられて車に乗せられた。 車の中でも奥さんは、野良の一つ一つの仕草にも≪ガミガミ≫文句を付けて来る。 「解っていると思うけど、毎日、毎日レッスンさせて来たのだからね!私に恥をかかせると承知しないからね!」そう念を押した。 市内にあるコンサート会場のホテルに行く途中例の公園の前を通ると、先程自分と入れ替わった仔実装が、うつろな目をしてすべり台の上に座っているのが目に入った。 『やっぱりあの子もワタチと一緒で、今の状態に馴染めないテチね』 ............................................................................................................................................................................. 時間の都合で、二場夫人の実装とバイオリン協奏はしなかったが、コンサート中あくびばかりする野良を見て夫人は、大変機嫌が悪い。 更に、テーブルに並べられた御馳走を見て......。 「テチャァァ〜!こんな分厚いお肉初めてテチィ〜!」と大声を挙げてはしゃぎ廻り、涎を垂らして飛び掛かり手づかみで≪ムシャ!ムシャ!≫≪ペチャ!ペチャ!≫。 更に「げっぷ!」をした上に、食べ物を口の中に入れたまま≪ぺちゃくちゃ≫喋り倒し、周囲のセレブの奥さま方に、≪くすくす≫失笑されてしまった。 顔に泥を塗られた飼い主の奥さんは、内心怒り狂っていたが......。しかし、セレブである自分が大声を出して怒るのは、はしたない。 「マ......マーガレット!いい加減にしなさい!今日はあなたおかしいわよ!何時もと違うわ!何かあったの?」そう言いう奥さんの顔を見ると......。 眉間にシワを寄せて冷たい目をして睨みつけている。 野良は、余りの恐ろしさに、身の毛がよだつ様な思いをした。 そして家に帰ってから3時間≪コンコン≫と説教されて、寝たのは午前1時だった。 あれだけ奥さんが怒っていたのに、殺されずに良かったと言う状態だった。 「野良は地獄だと思ったけど、飼いの方がもっと地獄テチ!」 次の日、奥さんは、野良を置いて朝早くから何処かに出かけた。 「一体何処に行ったテチ?」 そんな事を思っていたら昼前に「さあ〜!こっちへいらっしゃい!マーガレット!」そんな声が聞こえたので野良が、奥さんの前に行くと......。綺麗な服を着た仔実装がいた。 「今日から貴女の名前は、マーガレットよ!」 「ハイ!テチ!」 そして野良に向かって......。 「お前は、この家の子にはふさわしく無い!実装回収センターに連絡したから処分されるといいわ!」 そう言って、野良は服を剥ぎ取られ、ゲージの中に放り込まれた。 暫くして実装回収センターから従業員が来て、野良の入っているゲージ持って帰った。 野良の入ったゲージは乱暴に回収車に乗せられ≪ガチャン!≫回収車の奥に押し込まれた。 「痛いテチ!もっと丁寧に扱うテチ!」 すると「五月蠅い!お前はこの後センターで殺されるんだ!ごちゃごちゃ言うな!」 「テチャ?ワ......ワタチ殺されるテチィ〜!嫌テチ!死にたくないテチ!」 「喧しい!静かにしろ!」 そう言われてゲージを思い切り蹴られた。 ................................................................................................................................................................................ 一方飼いの方は......。 「昨日からおかしいと思っていたデスけど、お前は一体誰デス!ワタシの子じゃないデス!」 「テチャ!そ......そんな事無いテチ!ワタチはママの子テチ!今頃何を言うテチ!」 「嘘を言うなデス!お前の体臭はワタシの長女の体臭じゃないデス!長女を何処にやったデス!」 「し......知らないテチ!」 「さては、長女を殺して入れ替わったデスねぇ〜!お前からは、甘くて美味しい匂いがするデス!」 親実装は、飼いに襲い掛かり「テッチャーァァァァァ〜!」≪パキン!≫殺してしまった。 そして殺した飼いの肉を口に入れると「やっぱり甘くて美味しいデスゥ〜!此奴は飼いの仔実装の味デス!長女は可哀想な事をしたデスけど、久しぶりの御馳走に有りつけたデス!」 野良の親なんて子供に対する想いなんてそんなもん。 結局は2匹の入れ替わりは殺害されるという最悪の結末で終わった。 【隣の芝は青い】と言うことわざの通り他人の生活は良いように見える。がしかし、其処に入れば、それだけの苦労もある。 2匹の仔実装は、死と引き換えにその事を学んだと言う事だろう。 FIN
1 Re: Name:匿名石 2019/05/22-18:14:01 No:00005971[申告] |
野良も飼いも死に様は平等に不幸なのがイイネ! |
2 Re: Name:匿名石 2019/05/22-22:30:06 No:00005972[申告] |
まぁ幸せ回路全開でないと、こんな愚かな行動はとらないわな
糞蟲に相応しい最後だね それにしてもkobeUS氏の書く仔実装はそこまで口が悪いわけでもないのに絶妙に人をイラつかせる… 毎回上手いと感じます |
3 Re: Name:匿名石 2019/05/23-13:59:19 No:00005974[申告] |
よくありそうなパターンの話だけどkobeUS氏の独特な擬音や言い回しだと雰囲気が違うね!
この独特の空気感は他の人じゃそうそう再現できない |