タイトル:【虐・馬・クトゥルー】 屋上の戦場(微修正版)
ファイル:トクサツデデデッ!?.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:514 レス数:1
初投稿日時:2019/03/26-20:34:56修正日時:2019/06/16-02:38:09
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【トクサツデデデッ!?】


< のん、のん、のん♪ のん気♪ のん気ホーテ♪
 クレーム満点♪ 激ヤバジャングルぅ♪ >

春らしい穏やかに晴れた日曜日。
大手ディスカウントショップ屋上の特設会場に集まって来る
たくさんの親子連れ。
もうじき人気の特撮ヒーローショーが始まるのだ。

「トシ子先輩、私ヒーローショーって初めてなんですけど、
 やっぱり親子連ればっかりですねー。」

「そうねぇ。一応子供向けの番組ってことになってるから、
 子供とお父さんの組み合わせが多いみたいねぇ。」

一応というのは、最近はヒロイン役の若手女優を目当てに
父親が一緒に視聴することを前提に番組が作られているからで、
今では若手女優の登竜門とも言われている。
実際、ヒーローショーの会場に集まってくるのは
母子連れよりも父子連れの方が圧倒的に多い。

トシ子こと歳子 明子(とし あきこ)と一緒に
目立たないよう最後列の椅子に座っているのは
大芝 流花(おおしば るうか)。
トシ子と同じ大学の後輩だ。

元々は隠れ特撮オタクだったのだが、
最近トシ子と偶然知り合ってからというもの、
一緒にカラオケに行ったり古いビデオやDVDの貸し借りをして
今では特撮番組の感想を熱く語り合う特オタ仲間である。

今日のヒーローショーの主役は
仮面実装ダブルユー。

実装シリーズの能力を使って悪い実装石を退治する
2人で1人の新しい変身ヒーロー、正確には変身ヒロインだ。
そんなわけで今日の特撮ヒーローショーも
正確には特撮ヒロインショーなのだが、
こまかい事は気にしない。

「さ、今のうちに準備するわよ。」

「はい!」

2人がバッグから取り出したのは
使い捨ての合羽ズボン。
ディスカウントショップの中にテナントとして入っている
100円ショップで買ったものだ。

ちなみに特設会場の入り口では
同じ物が300円で売られているのだが、
これが意外と売れている。


*****************************************


『『『『『『『『『『テチー!!!』』』』』』』』』』

いきなり特設会場に乱入してくる
仔実装の群れ。

『スシー!テンプーラ!コンペーイトー!』

『ドレイニンゲン、早くごちそうを献上するテチー!』

『お腹がへって、もう死にそうテチー!』

『早くしないと華麗なワタチのウンチボンバーが炸裂するテチー!』

『×××(自主規制)が×××(自主規制)を
 ×××(自主規制)してもいいんテチかぁーっ!?』

仮面実装ダブルユーの舞台である架空の都市
糞都(ふんと)にはびこる糞蟲役の役者さんだ。
もちろん糞蟲の演技をしているのではなく
本物の糞蟲であるのは言うまでもない。

「うわー、トシ子先輩、始まりましたよ!
 本物の糞蟲!糞蟲ですぅ!」

「はいはい、落ち着いてね流花ちゃん。」

流花の生まれ育った街でも糞蟲など珍しくもないが、
テレビで観ているキャラクターが目の前にいるとなると
やはりテンションダダ上がりである。

< さあ、良い子のみんな、力を合わせて悪い糞蟲をやっつけるぞぉ! >

マイクを持った司会のお姉さんがわざとらしく観客席の子供達を煽る。

「クソムシなんかに負けないぞぉ!」

「やっつけろぉ!」

小学校に入ったか入らないかくらいの
小さな男の子達が仔実装を踏み潰す。

テレビでは成体実装や中実装の糞蟲も登場するが
ヒーローショーでは子供達に害を及ぼさないように
仔実装の役者さんばかりを用意している。

もちろん子供達に踏み潰されるのは
最初から予定されている使い捨てである。

特設会場の入り口で使い捨ての合羽ズボンが
売られていたのもこのためだ。

< デース、デスデスデス…! >

< お前たち、よくも可愛い手下をいたぶってくれたデスね! >

< お前達を踊り食いの刑にしてやるデスゥー! >

仔実装があらかた踏み潰された頃に現れた3匹の実装さん。
こちらは人間の役者さんが中に入った着ぐるみだ。

< うわぁー、悪い幹部実装さんだー!
 食べられちゃうぞー!逃げろー! >

今度は子供達を脅かす司会のお姉さん。
なんとなくお約束で怖がっているふりをしてくれる子供達がほとんどだが、
中には本気で怖がって泣き出してしまう子供もいる。

< さあ、良い子のみんな、一緒に糞都の守護神ダブルユーを呼ぼう!
 正義の味方ダブルユー! 仮面実装ダブルユー! >

「「「「「「「「「「ダブルユー!!!」」」」」」」」」」

MCのお姉さんと一緒に
ダブルユーを呼ぶ素直な子供達。

< デース、デスデスデス…! >

< そう都合よくダブルユーが… >

キュインキュインキュイン!
キュインキュインキュイン!

< デェスゥ! >

< ルゥートォオー! >

<< 変身! >>

偽石メモリーのシステム音声に続いて
ダブルユーに変身するフィルと左 翔子(ひだり しょうこ)の掛け声が響く。

< デェスゥ! >

< ルゥートォオー! >

さらに偽石メモリーを挿入した変身ベルトのシステム音声。

東京の大きな遊園地なら
フィル役の須玉 沙紀(すだま さき)と
左 翔子役の桐谷 真恋(きりや まれん)も
出演してくれるのだが、
地方都市に設営された特設会場だと、
事前に録音してある声に合わせてスーツアクターさんが
アクションしてくれるだけというスタイルが普通だ。

<< さあ、お前の罪を数えろ >>

キメ台詞と共に右半身が緑、左半身が黒い
変身ヒーローが物陰から現れる。

「うわぁっ、トシ子先輩!
 実装石=実装燈フォームですよ!」

「うんうん、やっぱり実装石=実装燈は
 基本フォームよねえ。」

< デース、デスデスデス…! >

< この街ではワタシが法でありルールデスゥ! >

< ワタシがどんな悪いことをしても
 罪になんてならないんデスゥ! >

< まあ、しいて言えばこの美しさが罪デスかねぇ。 >

< デース、デスデスデス…! >

実装さんとはいえ実装石が糞蟲なのは
現実でもドラマでも同じである。

<< ふざけたことぬかしやがってぇ、
  フィル、一発かますわよ! >>

<< わかってる、まかせて! >>

ダブルユーは翔子の体にフィルの意識が合体して
変身しているという設定なので、
戦闘中に二人の意識が会話するシーンはお約束だ。

< 偽石ブレイク! >

変身ベルトを操作すると
システム音声が必殺技の起動を告げる。
実装石=実装燈フォームの必殺技は
実装燈の飛行能力を使って強化したキックだ。

<< パラライズフェザーキック!!! >>

トランポリンを使って高く跳んだダブルユーが
空中で1回転してから左端にいた実装さんにキックして
恰好よく着地する。

< うわー!やられたデスゥー! >

わざとらしく倒れた実装さんはステージの向こう側へ転がり落ちて消え、
それにあわせて火薬が爆発する音だけが流れる。
消防法の都合で特設会場では本物の火薬は使えないからだ。

< おのれダブルユーめ、
 せっかく良い子のみんなを踊り食いしようとしていたのに
 邪魔しやがってデスゥ!! >

今度は右端の実装さんが殴りかかると、
ダブルユーは攻撃を華麗にさばきながら
バックステップして物陰に消える。

< カシラァ! >

< ボォークゥウゥー! >

変身ベルトのシステム音声に続いて
今度は右半身が黄色、左半身が青の
ダブルユーが現れる。

ダブルユーは変身中に偽石メモリーを交換すると
フォームチェンジできるという設定なのだ。

「うわぁっ、トシ子先輩!
 今度は実装金=実蒼石フォームですよ!」

「うんうん、実装金=実蒼石は射撃が強力な
 超攻撃型フォームよねえ。」

もちろんヒーローショー用のスーツが本当にフォームチェンジするわけはなく、
実装石=実装燈フォームのスーツを着たスーツアクターさんと
実装金=実蒼石フォームのスーツを着たスーツアクターさんが
物陰で入れ替わっているだけだが、子供達は大喜びだ。

ダブルユーは左胸に固定されていた傘型の銃を抜くと
実装さんに向けて引き金を引いた。

ダダダッ!

ダダダッ!

こちらも事前に録音しておいた発射音だけだが、
ハサミ型の銃弾が実装石を切り裂くという設定だ。

< イテテ!痛いデスゥ! >

< コイツめ!ブッ殺してやるデスゥ! >

右側の実装さんが再び殴りかかって来るのをヒラリとよけて
通り過ぎたその背中に狙いを定める。

< 偽石ブレイク! >

変身ベルトを操作すると
システム音声が必殺技の起動を告げる。

キュイーーーーーーン!

実装金=実蒼石フォームの必殺技は
エネルギーを溜めてから発射する強力な銃撃だ。

<< フルバーストシザース!!! >>

パッシューーーーーッ!

チュドーンッ!

< うわー!やられたデスゥー! >

わざとらしく倒れた実装さんはステージの向こう側へ転がり落ちて消え、
それにあわせて火薬が爆発する音だけが流れる。
消防法の都合で特設会場では以下同文だからだ。

< こ、こうなったら逃げるが勝ちデスゥー! >

<< まて、逃がさないわよっ!!! >>

走って物陰に消える最後の実装さんと
それを追って同じく物陰に消えるダブルユー。

< ナノダワッ! >

< カワァーイソォーウゥ! >

変身ベルトのシステム音声が鳴り響き
実装さんとそれを追いかける
右半身が赤、左半身が銀色のダブルユーが現れる。

「やったぁっ、トシ子先輩!
 今度は実装紅=雪華実装フォームですよ!」

「うんうん、実装紅=雪華実装は攻撃力、守備力共に優れた
 最強フォームよねえ。」

フォームチェンジが多いということは
その分スーツアクターさんの人数が多くなるので、
人件費が増えてしまう。
だから収容人数の少ない地方都市の特設会場などでは
あまりフォームチェンジをしないのが普通だ。
3フォームも披露してくれた今回のショーは当たりと言えるだろう。

<< さあ、もう逃げられないわよ! >>

斜めに背負っていた透明な
先の曲がったバールのようなものをスラリと抜き
変身ベルトを操作すると
システム音声が必殺技の起動を告げる。

< 偽石ブレイク! >

片手で透明なバールのようなものをかまえて、
最後の実装さんとの間合いをつめるダブルユー。

<< クリスタルインパクト!!!! >>

横薙ぎに実装さんの胴を払いながら駆け抜ける。

『デスゥ?』

「ん?」

最後の実装さんがここで倒れて退場するはずが、
なぜかステージの上に棒立ちのままだ。

「おい、どうした?」

ダブルユーのスーツアクターが
客席には聞こえないように
小声で実装さんに話しかける。

「次で倒れろよ。」

<< でやぁっ!! >>

さらに袈裟斬りに一撃を加えるダブルユー。

『デッスゥ?』

これでも最後の実装さんは倒れない。

「おい、ふざけるなよ!
 クリスタルインパクトは雪華実装の力を使った
 最強の必殺技っていう設定なんだぞ!」

<< うりゃあぁっ!! >>

さらに胴の真ん中に向かって突きを加えるダブルユー。

『デデデッ!?』


*****************************************


パチン!

指をならす音と共に
ステージの上も観客も、世界の全てが止まった。

「よっこいしょっ…と。」

「夜具外雄(よぐそとおす)さん、
 いきなりどうしたんですか?」

「この至近距離で見ていてわからぬとは、
 まだまだ修行が足りないのう、倍悪兵衛(ばいあくへえ)」

全身黒ずくめの男が2人、特設ステージの上に現れた。

ショーの裏方として潜入していた忍業の旧月のメンバー、
夜具外雄と、同じく倍悪兵衛である。

「至近距離で見ていてわからないって、
 何のことです?」

「この着ぐるみの中身は人間じゃなく
 本物の実装さんだってことだ。」

「ははは、そんな、ご冗談を…」

そう言いながら倍悪兵衛が着ぐるみの頭部を外すと、
中からは本当に実装さんが現れた。

「これは!いったい…!?」

「これが今回の任務の目的だな。
 おそらくは愛誤派の仕組んだ事だろうよ。」

実装さんの頭をペチペチと叩きながら
夜具外雄が説明する。

「将来虐待派に育ちそうな子供達に、
 実装石を虐待しようなんて気も起きないくらいの
 強烈なトラウマを植え付けようって魂胆だろう。」

「愛誤派を増やすのではなく、未来の虐待派を減らすのが目的
 …ということですか?」

「元々中に入る予定だった役者殿は今頃
 どこかに監禁されて逃げられないように縛られているはずさ。」

夜具外雄が斜めに背負っていた
先の曲がったバールのようなものをスラリと抜く。

「ちょっと待ってください!
 そのような悪だくみ、断じて許せません!
 コイツは私にやらせてください!」

倍悪兵衛も斜めに背負っていた
先の曲がったバールのようなものをスラリと抜く。

夜具外雄がニヤリと笑う。

「まあ、譲ってやってもいいが、
 あまり周りを汚すんじゃないぞ。」

「わかっています。」

パチン!

指をならす音と共に
ステージの上と観客と、世界の全てが動き出す。


*****************************************


チュドーーーン!!

「「「「「「「「「「「おおぉ〜〜〜!!!」」」」」」」」」」」

観客席から驚きの声が上がる。

ダブルユー最強の必殺技を受けた最後の実装さんが
ステージ上で本当に爆発したのだ。

いや、爆発というのは正確な表現ではない。
火薬は使っていないし、
爆発音も事前に録音しておいた音をピッタリのタイミングで流しただけだ。

だが強力な衝撃で液状にまで粉砕された実装さんの身体が周囲に飛び散るこの状況を
爆発と言わずして何と呼べばよいのか。

「トシ子先輩!見ました!?
 凄いですよね!
 クリスタルインパクトの3連発ですよ!」

「あの実装さん、本物だったのね。
 最後にこんな演出をするなんて、
 まさに特撮魂だわ!」

ステージ上では必殺技を繰り出していたダブルユー役のスーツアクター本人が
自分の技の威力にビックリして固まっていたが、
黒ずくめの服を着た音響さんが親指を立ててうなずいたのを見て
あわててキメポーズをとった。

<< この街は私達が守る! >>

「きゃ〜!ダブルユー!カッコイイ〜!
 これはもう円盤買っちゃうしかありませんよね〜。」

「ほらほら流花ちゃん、落ち着いて。
 この後握手と写真撮影があるから並ぶわよ。」


*****************************************


「結局派手に汚しちまいおって。
 ステージに近いお客さんは実装さんの血を浴びて
 文句言うとったぞ。」

「すみません、つい力が入り過ぎて…」

「まだまだ修行が足りないな。」

「…はい。」

屋台で酒を飲んでいる黒ずくめの2人。
夜具外雄と倍悪兵衛である。

こういう場合ドラマなどではおでんかラーメンの屋台が定番だが、
2人が食べているのは串焼き実装と実装焼きそばだ。

「ま、作戦は一応成功だし、良しとするか。
 ほれ、乾杯じゃ。」

「はい。」

チン…

ガラスのコップがぶつかる音が
月夜にかすかに響いた。


*****************************************


[あとがき]

どうもお久しぶりです。
デスゥ・ノートの作者でございます。
毎度馬鹿馬鹿しいスクを読んでくださって、
ありがとうございます。

ここのところスランプで全然書けなかったのですが、
トクサツガガガの小芝風花が可愛いかったのと
菅田将暉主演の学園ドラマが
仮面ライダーWネタで盛り上がっていたので、
久しぶりに馬鹿スクを書いてみたくなりました。

それにしても最初は忍業の旧月を出すつもりはなかったんですが、
クライマックスが盛り上がらなかったので、
結局夜具外雄と倍悪兵衛を出してしまいました。

いけませんねぇ、安易に便利なキャラを使うのは。
反省、反省。

それではまたお会いしましょう。


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[スク投稿リスト]
・マラ実装エステの時代   08.01.02
・デスゥ・ノート①     08.01.30
・デスゥ・ノート②     08.02.01
・デスゥ・ノート③【完】  08.02.03
・48匹目の実装石     11.01.15
・シン・実装石       16.10.20
・聖バレンタインデーの虐殺 17.02.11
・桃の節句ス-MEN     17.02.24
・ホワイトデー計画     17.03.07
・トシアキ兄弟       17.04.15
・端午の節句ス-MEN    17.04.30
・七夕祭の夜        17.08.07
・ハロウィン・ナイト    17.10.29
・七草の節句ス-MEN    18.01.05
・ジックスパッド      18.02.03
・鬼実装顛末記       18.07.16
・本作           19.03.26

(上記スクの日付は初稿の完成日であり、修正版と入れ替えたスクは
 スクアップローダーの表示年月日と異なる場合があります)





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1 Re: Name:匿名石 2019/04/18-21:19:47 No:00005894[申告]
すだまさきときりやまれん吹いた
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