タイトル:【虐/食】 とある生食
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作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:7535 レス数:6
初投稿日時:2019/02/11-20:32:06修正日時:2019/02/11-20:32:06
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小腹が空いた。
ので。
先日買っておいたアレを、試しに食べてみようと思った。



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とある生食

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アレとは、いわゆる生食用実装石である。
生きたまま食べられる様に、品種改良を施された実装石の総称だ。
通常実装石との主な違いは、端から髪も服も持たない裸禿(らっぱ)で生まれてくる事。
もう一つは、総排泄孔や消化器官もまた、元より存在しない事。
実装石の不潔の元凶である糞便が作られる余地が無いため、安心して食べられる。

従来は業務用食材だったが、このたび一般向け流通が開始された内の一つが、コレだ。
専用のフードパックに、個別に真空処理されて眠りこけている、三匹セット。
体長は10cm程度で、一般的な子実装と同じだ。
各々の頭部の横には、付属のタレ瓶が収められている。
中身は、製造元が販売している焼き肉のタレが流用されている。

貼付されている食べ方の手順を追って、とりあえず一匹食べてみる事にする。
まず、包装を解いて真空から解放してやると、ものの数分で子実装は蘇生する。
それを待つ間に、先程のタレ瓶を一つ取り出し、醤油皿に中身を全て注ぐ。
通常の個体を弄る時もそうだが、意識が戻るのを待つこの時間帯は、少年時代の遠足前夜
の様な高揚感をもたらしてくれる。

「……ン……テェ…?」

三分程経過すると、徐に身をよじらせ、子実装がゆっくり目を開いた。
見知らぬ場所にいる困惑で周囲を忙しなく見渡しつつ、こちらに気づくと不安そうな声を
漏らし、目で何らかの救済を請うている。
己の運命を知らない無垢さが少々不憫だが、だからといって今後の行動は変わらない。
俺は醤油皿を指差し、中の液体を飲め、と指示した。

「テ…? テチュゥゥン♪」

言われて初めてタレの香りを知覚したのか、途端に顔から不安が消え失せ、期待に満ちた
嬌声を発し、皿に駆け寄って縁から身を乗り出し、タレを手で掬って一舐めした。

「チュパ! チュパッ! テッチュルルパッ!」

期待に沿う美味さだったのだろう。
子実装は歓喜の声を上げつつ、一心不乱にタレを貪った。
手で掬うだけではもどかしくなったのか、顔を突っ込んで直接舐め取る。
量が少なくなってくると、皿にダイブして一滴も逃すまいと吸い尽くす。
そうして子実装がはしゃいでいる間に、当人の体には変化が起きていた。

子実装がタレを飲めば飲む程、その体が、腹部を中心にタレ色に変化していったのだ。
要するに、動く食べ物が、自らその身を味付けしている構図である。
消化吸収の代わりに、食べた物がスポンジの如く体に染み渡っていく構造になっている。
全身がタレ色に染まった、今この時。
ここがまさに、食べ頃という寸法だ。

「テプーゥ♪」

丁度腹一杯になり、子実装はどっかり座り込んで、若干膨らんだ腹を突き出し、景気良く
さすって一息ついている。
今のが最期の晩餐だったとも知らずに。
良い所に来た、これからはこんな幸せがずっと続くんだ。
等と考え、希望に満ち溢れている所だろう。

上げ落としも兼ねているとは、『我々』向けの実に良い商品である。

「テェ?」

暢気な子実装の胴体を掴んで持ち上げ、きょとんとこちらを見上げる間抜け面を拝む。
日焼けした様に真っ茶色に染まり、彩度の高い赤と緑の眼球がいつもより際立っている。
この危機意識ゼロの清い眼差しが、ただいまを以て、真っ黒い泥沼に変質する。
その刹那もまた、遠足のバスが出発する瞬間の様な、決行の興奮を呼び起こす。
胸が高鳴る中、俺は子実装を横に倒し、未だ何もわかっていないその身を口に近付ける。

そして、ゆっくり丁寧に左腕を口に含み。



一思いに、付け根から噛み切った。




「ヂ、ヂィィエェェェーーーーー!?」

想定外の暴力を受け、子実装は絶叫し、手の中で暴れ始めた。
無論、子実装の力では、人間の握力を跳ね返せる道理は無い。
無視して咀嚼し、腕の食感を味わう事に意識を集中させる。
腕肉は比較的柔らかめでウインナーに近く、骨がアクセントとして程良い歯応えを生む。
味の方は……普通に焼き肉ダレのソレで、平均より少々濃いが、普通に美味い。

まぁ、生食用実装石の醍醐味は、味覚よりもその過程にある。
単純に殴る蹴るの暴行を加えるのとは異なる、『我々』なりの趣を楽しむのがメインだ。
なおも俺の手から脱出を試みている子実装を再度口元まで引き寄せ、今度は左足を囓る。
子実装特有のピッチの高い金切り声が、至近距離で耳を劈く。
これは少し改善を求めたい所だな。

「ヂョエェェェェーーー!? デヂャアアーーーーー!!」

左の手足があっさり根本から消滅し、痛みと喪失感でがむしゃらに身を捻る子実装。
現段階でこの有様では、先が楽しみな反面、騒音が少々気掛かりだ。
一旦口を手の平で塞ぎ、窓やドアが締め切られているか確認して回る。
一通り見終わった所で口を解放すると、手の中はすっかりタレ色の涙にまみれていた。
手順書曰く、こうして泣かせる事でタレ含有量の微調整も行えるとの事。

確かに、一口目の腕はやや濃かったが、二口目の足は少し薄まっていた気がする。
あまり泣かせ過ぎると、味が落ちる上、水分が減って舌触りに影響が出そうだ。
改良により、体の欠損部から血やタレがダダ漏れる心配は無いため慌てなくても良いが、
程々のタイミングで食事を進めていくのがベターだろう。
続いて、たまたま目に止まった左耳に、的を定める。

「イヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂィィイ!!?」

頭が揺れて直接は噛み辛いため、指で引き千切ってみる。
付け根まで深く摘み、力を込めて少しずつ引っ張り上げる。
ミチミチ音を立てて耳介が裂けていき、子実装は新手の痛覚に歯を食いしばって耐えよう
とし、額に血管が浮かび、涙だけでなく、鼻からもタレが漏れ出て来た。
ちなみに耳の食感は、フライドベーコンぽかった。

「アヂャア!? ベヂィ!! ヂギィィィィィィィィィィィイイ!!!」

左耳を飲み込んだ後、右手足をねじ切って食い、だるまになったショックで身を震わせて
いる隙に、右耳を噛み千切った。
手で千切った時より広く周囲の頭皮ごと引き剥がしてしまい、若干頭部の皮下が露出して
キモイ状態になった。
手足と耳を失った子実装は、掌の上で、芋虫の様に身をくねらせている。

「ヂュウ……ヂィィ……」

一定以上絶望感に支配されて大騒ぎする気力が尽きたのか、断続的に呻きながら悲しげな
目をこちらに向けるだけになった。
経験上、この様に抵抗意識を捨て、相手に慈悲を依存し始めた個体は、もはや末期だ。
並大抵の刺激では、諦観が勝ってまともに反応を示さなくなる。
まだ二匹いるし、そろそろ仕上げにかかっても良いかもしれない。

子実装を仰向けに固定し、頭を向こう側に置き、改めて顔に引き寄せる。
口を大きく開けて見せると、子実装はようやく目を見開いて恐怖の悲鳴を発し、首を左右
に振って、必死に捕食の中止を哀願した。
もちろん、聞き入れる謂われは無く、じわじわ口を近付け、腹部に歯を突き立てる。
子実装は身を仰け反らせて、いよいよ何もかもかなぐり捨てる勢いで泣き出した。

「ヒヂャアアァァーーーーー!!? ヂャヂャーー!? ヂャァァヂャァァァーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

泣き声のニュアンスからして、恐らくママに助けを求めているのだろう。
今まで相手してきた実装石の九割が、今際の際に同様の叫び声を上げた。
こいつらのママは工場に幽閉され、今も同じ穴の妹達を量産し続けている筈だ。
そうでなければ、生産力低下により、殺処分されている筈だ。
いずれにせよ、こいつの願いは天地がひっくり返ろうと実現しない。

「ヒュイィィィィ……!! ヒゥゥゥィィィィィィィイイイィィィィィィ……!!」

胴体は、肉の厚みと満遍なく存在する骨で、思いの外ボリューム感があった。
最期の力を振り絞って暴れ狂っていた子実装だったが、それすら何の意味も為さず首まで
食われ、残った目線と吐息で、魂の決戦を挑んできた。
やはり、こちらに折れてやる筋合いは無かったわけだが。
顔の下半分を噛み潰しても、目にはなお、激しく煮え滾る渇望が顕著に映されている。

俺に勝てない悔しさ。
世界への恨み辛み。
死にたくない恐怖。
死ぬしかない悲哀。
生きたかった夢想。

ちっぽけなれど純粋過ぎる意志が、こちらに向けて真っ直ぐ注がれる一時。

この時、俺は言葉に表し切れない、郷愁にも似た愛おしさを覚えてしまう。
哀れみ、懐かしさ、喜びが混濁した様な、複雑で癖になる感情。
これこそが、生食における最大の調味料となる。
もっと、いつまでも、この感覚を味わいたい。
しかし、この調味料の賞味期限は、儚く短い。

ので。

「ッッ!!! ッッーーーーーーーーーーーー!!!!」

舌で子実装の頭部を半回転させ、正中線に沿って歯を食い込ませる。
いい加減直に見下ろすのは疲れたので、外に出た右半分を、手鏡を通して観察する。
頭が真っ二つになり絶命する、その瞬間まで。
子実装の赤い右目は、休まず俺を見上げ、ありったけの想いを吐露し続けていた。
その表情のまま硬直した残りの右半分も、舌で引き込んで噛み砕き、飲み込む。

頭の方は、中に殻状の物が入っている大福といった食感だった。
中身は目玉と脳味噌が混ざり、レーズンとアンパンを想起した。
今更ながら、連想して気色悪い心境に陥らせてしまったなら、お詫びする。






さて。
まだ二匹も残っているし、せっかくだから一匹目とは異なる手法で楽しみたい。
今日明日の期限でも無し、今度はゆっくり計画を練って色々試してみるか。
そういえば、偽石がどこにあったのかも気づかないまま食べてしまった。
頭を割るまで生きていた辺り、脳内のどこかにあったのだろうか。
その辺も踏まえて、次回はもっと味わって頂かないと。

そう考えつつ、パックを棚にしまって、茶を一杯飲み干した。



ごちそうさまでした。












「とある生食」完

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1 Re: Name:匿名石 2019/02/12-03:46:48 No:00005739[申告]
偽石を取り除いたバージョンも読みたいわ

面白かったので続編希望
2 Re: Name:匿名石 2019/02/12-23:41:45 No:00005740[申告]
処置せずとも偽石が壊れるギリギリまで絶命しないという見事な品種改良
生産者の実装石に対する悪意もとい消費者への配慮が素晴らしいですな
3 Re: Name:匿名石 2019/02/13-17:47:36 No:00005744[申告]
なんか食わずに無意味に生き永らえさせても面白いかもしれない…
食っても消化できず、体内に溜まる一方で、どんどん衰弱して行く様も見てみたいし

どんどん食わせて、パンパンにして、最後は腸詰みたいにして焼いて食うとか
4 Re: Name:匿名石 2019/02/16-01:59:14 No:00005755[申告]
食材を美味しく平らげるとはなんとマナーの良い人だろう
俺も食事マナーを守らないとな!
5 Re: Name:匿名石 2019/02/16-15:32:59 No:00005757[申告]
最後はレロレロレロレロと舌の上で転がして楽しみたいな
6 Re: Name:匿名石 2019/03/25-15:36:50 No:00005815[申告]
実装達磨、最高にヒャッハーでQNQNさせて頂きました
某・巨人気分も味わえるなんて
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