売れ残り 東京見本市展示場と言う所で、毎年有名ブリーダーが、飼育した仔実装の展示即売会がある。 全国の愛護派が、注目する程の一大イベントである。 会場には、財布に大金を入れて来る者、欲しい仔実装が居れば、金に糸目は着けないと手書きの小切手を持ってくる者や 一応大金は持参して来てはいるが、買う気が有るのか、無いのか解らない様な、面白半分の冷やかしだけに来ている者と様々である。 ブリーダー毎にブースが決まられていて、人気のブリーダーの所は、黒山の人集りである。 人気のブリーダーは、選りすぐりの優秀な仔実装ばかりを持ってくるから、当然、展示会の会場に連れて来る仔実装の数は少ない。 その為、より優秀な仔実装を買う為に会場は、オークションの様になってしまい、何百万単位の金が飛び交うのだ。 販売価格は表示されて貼っているが、あって無い様な状態になってしまう。 今年も、代議士の大黒金蔵が、1匹800万円で一番人気の仔実装を落札した。 「新しいゴシュジンサマ宜しくテチ!」 「ああ!宜しく!お前は、今日からサファイヤと言う名前だ!」 「嬉しいテチ!早速素敵な名前迄付けて戴いて、光栄テチィ〜!」 金蔵は、隣に控えていた秘書に「もうあの我侭者のルビイ(今飼っている実装の名前)は要らない!保健所に捨てる様に連絡して置け!」と命令した。 彼の自宅では、「嫌デス!何処に連れて行くデス!無礼を働くと奴隷ニンゲンに言い付けるデスよ!」 「言いたきゃ言えよ!その奴隷ニンゲンの御主人様が、保健所に捨てろと言っているんだよ!」 「デッス—ゥ!あの奴隷ニンゲン!ワタシを裏切りやがったデスゥ~!一生大事にしてやると言った癖にぃ~許さんデスゥ~!」 必死に抵抗しても無駄、頭を棒で殴られて、ぐったりしたところを家から無理やり運びだされてしまった。 哀れ、ルビイは、気を失っているうちに、保健所に連れて行かれ捨て実装として、気が付けば、暖かいベッドの中ではなく冷たい檻の中にいる事だろう。 僅か1年生きる事も許されずに、焼却炉で燃やされてしまうのだ。 来年の今頃になれば、サファイヤもブリーダーの教えを忘れて、傍若無人の成体実装になっている。 そして飼い主を奴隷ニンゲンと呼ぶルビイの様な、立派な糞蟲になっていて、捨てられる運命だろう。 そのブリーダーの仔実装は完売してしまえば、2番人気のブリーダーの元に愛護派は向かうのである。 当然、来場している愛護派の人数以上に販売されている仔実装は多い。 金持ちの愛護派と言っても、購入する仔実装の数は基本1匹だけだ。 時間も経ち、後1時間で閉店と言う事になり、会場にいる愛護派もまばらになって来た。 自分の思った価格で価格以上に優秀な仔実装を手に入れて満足して帰る者。 どちらかといえば、不良品を買わされて、大金をドブに捨ててしまい、内心怒り狂って、家に帰る迄に何処かに捨ててしまおうと考える者。 自分が探していた仔実装に巡り会えず、ただ時間だけ潰しに来て終わった者。 色々な事があった愛護派が、家路に着き出した頃、あるブースで1匹の仔実装が、未だ売れずにいた。 最初の販売価格は35万円で販売されていた、仔実装は、その価格に大変満足していた。 自分より価格の安い仔実装に対して、鼻で笑ったり、嫌味の様な事を呟いたりしていた。 当然、愛護派は上質の仔実装やそれに匹敵する者を、購入しに来ているのだから、常に最新の高性能リンガルを起動させて、どんな仔実装か居るのか物色している。 仔実装は有名ブリーダーのランク順に売れて行くので、その日の仔実装の相場によっては、あまり金を持って来ていない愛護派達は、 『ランクが少し位下がっても構わない!』と思い、競争率の低いブリーダーの所に行く。 『中には、掘り出し物も居るかも知れない!』と思うからだ。 価格も手ごろなその仔実装の前で止まるが、リンガルを見ると、自分の価値を鼻に掛けて、「チブブブブ!ワタチは、このお店で一番、高貴で最上級の仔実装テチ!お前らと位が違うテチ!」 そんな事を呟いて居るから、必然的にスルーされてしまう。 最初は、自分より価格の安い仔実装が売れても『貧乏人に買って貰って、不様な生活をするくらいなら、ワタチの金額に見合う金持ちに買って貰う方が、よっぽどいいテチ!』などと思ったり、つい呟いたりしてしまう。 そんな事はかりほざいているから一向に売れない。 ブリーダーも「他石を見下したり、バカにしたりする様な発言は慎め!お前の値打ちが下がるぞ!」と注意する。 しかし『お前はもうワタチと今日で、関係無くなるテチ!黙れ!』と思い言う事を聞かない。 売れないとブリーダーは、価格を下げないといけなくなる。 終了2時間前から、35万→30万→28万→23万→20万→15万と、1時間で一気に20万の値下げをしたが、客は一向に来ない。 ブリーダーも持って来た仔実装を何とか完売させて帰りたい。 15万→10万→8万→5万→4万→3.8千円→3.5千円と2時間で一気に100分の1の価格迄下げた。 更にトドメとばかりに「貴方の仔実装のストレス解消に如何ですか?」という張り紙をゲージの前に貼る。 だが、この場に来ている愛護派が、虐待目的で仔実装を買いに来ている訳でも無いし、『自分の買った仔実装が同族虐めをする程、下品な子では無い!」 と思っているからそんな張り紙を見れば、逆に目を背ける。 自分の販売価格がどんどん下がっていくのを目にすれば、つまらないプライドが傷ついた仔実装は......。 「何でテチ!高貴なワタチの価格がどうして、こんなに安いテチ!」 そして自分を育てたブリーダーを捕まえて「オイ!お前ワタチを見る目が無いテチ!」逆に怒りだす。 「お前が、他石を貶す様な事を言ったり、自分が高貴などと言うから、誰も見向きもしなくなる!俺はお前をそんな風に教育した覚えはない!」と怒鳴り付ける。 やがて、赤と緑の涙を流し、前掛けはきたなく汚れ、パンコンして嫌な臭いもし始める。 「パンコンまでしやがった、此奴はもう売れないな!」とお手上げ状態だ。 金額もこの頃には、3.5万→1.5千円→9980円→980円→500円→350円と1000分の一迄下がりタダ同然の価格になる。 とうとう販売価格は、100円になったが、しかし、そんな薄汚い汚い仔実装に誰も見向きもしないし、タダでも欲しくない。 当然、ブリーダーも自分に楯突く様な事を言って、売れ残る様な仔実装を生かして置く気も無い。 「今日、売れなければ、お前をぶち殺してやるからな!覚悟して置け!」 「殺すなんて言わないでテチ!おりこうな仔実装になるテチ!だからもう1回、もう1回チャンスを与えてテチ!」 「五月蠅い!散々逆らいやがって!今更遅い!お前にもうチャンスが有る訳が無いだろう!一生懸命躾したのに、展示会で俺に恥をかかせやがって!」 そう言われると余計に涙も出て来るし、パンコンもする。 やがて即売会終了の時間が来ると同時に、仔実装の命の終了時間のカウントダウンも始まった。 「売れ残りはお前だけだ!死んで俺に侘びろ!この不良品!」 そう言って1匹だけ残った仔実装のゲージを乱暴に台車に乗せた。 この後、帰り道の人目に付かない所でこの仔実装は、惨たらしく殺されて捨てられてしまうのだ。 連れて来た仔実装が予想以上の高値で完売して喜ぶ者、あまり売れなくてガックリしている哀れな者。 半分趣味みたいに片手間で、ブリーダーをして思った以上の売り上げにに満足している者。 このブリーダーの様に、自分の店の一押しが売れ残って怒る者と様々だ。 今年も例年通り喜怒哀楽に満ちた展示会となった。 こうして仔実装展示即売会は静かに幕を下ろした。 FIN
1 Re: Name:匿名石 2018/10/09-12:55:48 No:00005623[申告] |
!!!デス---------------------(●△○)-------------------ン!!!!
*こんな感じですね。 |
2 Re: Name:匿名石 2018/10/16-06:37:22 No:00005628[申告] |
この絵の仔実装、実にいい表情だなw |
3 Re: Name:賞金首 2018/10/18-22:12:05 No:00005633[申告] |
悲喜こもごも、いいですねえ |
4 Re: Name:匿名石 2024/03/26-16:40:24 No:00008952[申告] |
お前ブリーダー降りろ |
5 Re: Name:匿名石 2024/03/26-19:53:41 No:00008953[申告] |
!が多すぎ |
6 Re: Name:匿名石 2024/03/27-14:12:37 No:00008956[申告] |
ただの糞虫と駄目ブリーダーじゃないですかやだー!
何故これが売れると思った |