飼育用仔実装3 【実装との会話はリンガルを使用しているものと思って下さい】 黒髪産業が第3弾の飼育用飼い実装を発売した。 今回のキャッチコピーは......。 「綺麗なおうちで過ごすテチィ〜!ワタチがゴシュジンサマに代わってお部屋をピッカピカにするテチィ〜!」 と言う唄い文句で「飼育用お掃除仔実装」(以降=お掃除仔実装)が販売される事になった。 販売当日の日曜日、実装ショップの前は黒山の人だかり、沢山の人が「お掃除実装」を買う為に並んだ。 値段は1ケース3000円と格安! 開店 30分前に若い女子店員が、店先に出て来て、「大勢並んで戴いて有難うございます!皆さま全員に販売したいのですが、数に限りがあります! 朝早く並んで戴いたお客様は、確実に購入できますが、後ろの方は購入できないかもしれませーん!ですが、来週にも入荷します。 当店には、200ケースの割り当てがあります!今回は、100ケース!来週にもう100ケース入荷しますので、今回整理券賀もらえなかった方は、 来週、9時〜10時迄の1時間以内に来られたら、確実にお買い求めいただける様に赤色の整理券をお渡ししま−す。 この人数ですと整理券は、全員に行き渡るので遅くても来週には、GET出来ますよぉ〜!本日、GET出来なかった方は、申し訳ありませんが来週お越しください! そう言うと、数人の店員が出て来て、午前9時になると同時に整理券を配り出した。 先着100人には、白い紙に番号を書いた整理券を貰い、100人以降は、赤い紙の整理券を貰った。 「本日は、165名並んで戴きましたぁ〜!赤紙の整理券を貰った65名の方は来週お越し下さーい!」 お掃除実装を購入できなかった者は、赤い整理券を貰って帰った。 「先着順だから!仕方無いか!1週間待てば買えるし!1週間経てばお掃除実装の評判も耳に入って来る!」そう自分に言い聞かせた。 見事に100番以内の整理券を貰った、3つのタイプの男女が、お掃除仔実装を買って帰った。 1.超面戸臭がり掃除大嫌い男 年齢48歳の「やすとし」ワンルームマンションに一人暮らし、とにかく掃除が大嫌いな男。 見た目は、不潔な彦摩呂。 関取の様に太っているから当然、健康管理もしていないのだろう。 小学校時代に【自分の苦手な事】と言うお題で宿題作文を書いて提出する様に言われた。 その内容は......。 「僕は、掃除が大嫌いです。算数の宿題をするより嫌いです。学校に大型スーパーの様に掃除専門の業者と置いたらいいのに、何故置かないんだろうと思います」 と書き、更に自分がどれだけ掃除が嫌いか、どうやってサボったか等の具体例を挙げて説明。 個別懇談会で「一体どんな育て方をしたのですか?」と母親が担任より厳しい指摘を受けて、その日の夕食を抜かれた経験がある。 掃除が嫌い=身だしなみにも気を使わない。 と言う事で身なりも当然汚い、着ている服の首と腕廻りには、黒い垢が付いて汚い。 風呂は、一応入っている見たいだが、湯に浸かるだけで石鹸を使って綺麗に洗わないのだろう、体臭がキツイ上に髪の毛はフケ塗れ。 夏場でも同じ服を2〜3日着ている。会社の上司に「そのくさい臭いどうにかしろ!」と注意されてやっと着替えてくる。 【特に夏場は悪臭が凄いので事務所に入る事を禁止された事もあった】 「ホント!彼奴は、下着の交換してんのかねぇ〜!」と言われる始末。 満員電車に乗っても彼の隣だけは誰も座らないし、タクシーに乗車拒否をされる事、数え切れず。 家の中に入れば、くさい臭いの靴が、散らばっていて、風呂に行けば黒カビが生えている。 キッチンに行けば洗われていない食器が散乱している。 それでも昔は痩せていたらしい。 痩せた彦摩呂顔なら、もてても良さそうだが、不潔な上に傍によればキツイ体臭がする。 そんな調子だから、女も傍に寄りつかない、気が付けば48歳の汚いおっさんである。 例によって実装ショップでも誰も彼の周りに近寄らない。 今回、運よく100番以内に並べた為、大喜びをして「お掃除実装」を持って帰った。 「よっしゃあ〜!此奴に家の大掃除をさせてやる!」そう言って箱から出し、付属のドリンクを飲ませた。 「テッチューン!ゴシュジンサ......な......な......な......何テチ!この臭い部屋は!」 「お前掃除実装だろ!早く掃除しろよ!」 そう言ったが、相手は仔実装である。売り手にとっては、机の上に落ちた消しゴミの粉とか、小さな食器の持ち運びのお片付け想定している。 一応、よちよち掃除をしている仕草が可愛いと言うのが、コンセプトとされている。 だが、引きっぱなしの布団、床に散らばっている雑誌や新聞の山、机の上には空いた缶酎ハイの缶の山。 どう見ても片づけられる訳が無い。 「ゴシュジンサマ……。ワタチでは、とても無理テチ!高いテープルの上には上がれないテチ!重たい雑誌やお布団も動かせないテチ!お風呂の段差も高くて通れないテチィ〜!」 「うるせぇ〜!てめえお掃除実装って、名乗っているんだろうがぁ〜!ちゃんと掃除しとけよなぁ〜! 俺は今からパチンコに行く!それまでに片づけて置けやぁ〜!出来なければお前を捨ててやるからな!」そう言って出かけてしまった。 残された仔実装は、「どうしたらいいテチィ〜!全部は無理テチィ〜!取り敢えず出来る事から始めるテチ!」 まず、床に散乱している雑誌や新聞の片づけから始めた。 しかし、ひ弱な仔実装にとって雑誌を運ぶのも至難の業。2時間かけて雑誌10冊を片づけて、新聞を片づけ始めた時にパチンコで大負けして、無茶苦茶機嫌の悪い、やすあきが帰って来た。 「なんじゃあ〜!何にも片付いてねぇ〜じゃねぇ〜かぁ〜!雑誌を右から左に動かしただけかぁ〜!てめえサボっていたなぁ〜!」 「ち......違うテチゴシュジンサマ!ワタチは、休まず一生懸命働いたテチ!小さな体のワタチには、持ち運び出来る物にも限界があるテチ!」 「うるせぇ〜!何の糞役にも立たねぇ〜!掃除の一つも出来ねぇ〜!そんな不良品は要らねぇ〜!」 「ゴシュジンサマ!ワタチは、一生懸命掃除したテチィ〜!でも重くて持てない物は御片付け出来ないテチ!」 「てめぇ〜!ゴシュジンに口答えするのかぁ〜!わかったよ!だったら不良品は捨ててやるよぉ〜!」 そう言って仔実装を手で払いのけると......。 「チボア〜!」壁に叩き付けられて仔実装は潰れてしまった。 「うわっ!潰れちまったよぉ〜!汚ったねぇ〜し!臭っせぇ〜!」 飼育用仔実装と言え潰されたら汚いし、くさい臭いもする。 流石の掃除嫌いの男もこの時ばかりは、壁を綺麗に拭いて、ゴミ袋に仔実装の死体を入れ、ついでに部屋に散らかっているゴミを捨て、新聞、雑誌、机の上の缶酎ハイの空の缶、汚れた服も捨てた。 床も綺麗に掃除機をかけ、半日かけて部屋全体の掃除をした。 自分の体臭や散らかっている部屋に関しては、無頓着の彼も、動物の死体や血に関しては、受け付かなかった様でその事に関しては、神経質になってしまった様だ。 怪我の功名かも知れないが、間接的にもお掃除実装が役に立ったのかも......。 2.大切な書類を無造作にそこら中に置く男 サッカー強豪校、城西第二高校3年「たかあき」(=以降:彼)17歳。 見た目は、日本A代表の柴崎岳を丸坊主にした感じ。 【本人は、岡崎慎司に憧れてサッカーを始めたらしい】 昨年の全国高校サッカー選手権大会で、通算10ゴールを挙げて優勝し、大迫勇也の大会記録に並ぶ偉業を成し遂げ、2年生ながら最優秀選手に選ばれた。 周囲は、彼の事を「ハメス・ロドリゲス、リオネル・メッシ、クリステアーノ・ロナウド顔負けの天才ドリブラーだ!」 と呼び、2年生が挙げた大会通算10ゴールは、当分誰も破れないだろうと言われている。 現在U−18の代表選手に選ばれている。 将来、日本A代表に必ず招集され、その内セリエA、プレミアリーグ、ブンデスリーガーのいずれかに行くだろうと誰もが言う実力者。 だが、華やかなサッカー生活とは違い、日常の彼の生活(部屋)は、大変乱れている。 彼の部屋はいつも散らかっているのである。 母親が、彼の部屋に入ると、昨日掃除したはずなのに、今日にはそれ以上散らかっているし、汗臭い臭いもする。 「は〜あ〜!あの子は、全く片づける事をしないのだからぁ〜!」そう言って掃除を始めた。 その日の夜、部活から帰って来た彼が血相を変えて部屋から出て来た。 「母ちゃん!俺の部屋に置いてあったメモ知らないか?」 「どんなメモよ!」 「ほら!俺のベッドの上に置いていた広告の紙だよ!」 「あら!それなら捨てたわよ!」 「何やってんだよぉ〜!最近付き合いだした彼女の電話番号とメルアド書いていたのにぃ〜!」 「ええっ!あのナメクジが這った様な字が?」 「それと、今月のサッカーの試合日程書いた紙、棚の上に置いてあったけどもしかして……。」 「あの棚の上にコーラの飲みさしのペットボトルを上に置いて宙ぶらりんになっていた破れた紙ねぇ〜!あんな薄汚れた紙、当然捨てたわよ!」 「どうしてくれるんだよぉ〜!責任とれよ!」 「何を言っているの!毎日!毎日掃除しろ!と言っても全く片づけもしないじゃないの!大事な物なら広告の裏なんかに書いたり、ペットボトルで落ちない様にしたりしないで、ちゃんとファイルするか、スマホに登録しなさい!」と怒られた。 彼は、むっとした顔をして部屋に戻った。 当然サッカー部の練習とは、学校のある日は朝練、放課後練、学校の休みの日も朝から晩まで練習で走り廻る。 疲れて家に帰って来て、とても掃除なんか出来る状態ではない。 「母ちゃん五月蠅いしなぁ〜!如何したらいいのか!」 そんなある日、顧問の都合で休日練習が中止になった。 彼は、学校のグランドを後にして家に向かっていると、大勢の人が並んでいる、実装ショップの前を通った。 すると「お掃除実装販売中」文字が目に入った。 「実装が掃除ねぇ〜!ちょっと並んでみるか!」そう言いながら、100番の整理券を貰って並んだ。 そして店員を捕まえて「すみませーん!お掃除実装って、どんな商品ですかぁ〜!」と聞くと......。 「いらっしゃいませ!お掃除実装とは、忙しくて部屋の掃除も出来ない方の為に作られた最新アイテムですぅ〜!」 「ちゃんと掃除をしてくれるのですか!」 「そりゃもう!完璧にやってくれます!見て戴ければ解りますが、沢山のお客様が並ばれています。貴方は100番です。 残っているのはこれが最後です!今でも、取り置きを依頼される電話があるのですが、当店は店頭販売しかやっておりません!と御断りしています。 これが最後の1個ですが、如何されます?」 彼は、『3000円は高いなぁ〜!』と思ったが、『でも母ちゃんに怒鳴られるよりましか!』と考え実装を買って帰った。 彼は、家に帰り実装に付属のドリンクを飲ませた。 「テッチューン!ゴシュジンサマ、初めまして宜しくテチ!」 「お前が、お掃除実装か!早く部屋の掃除をしてくれよ!俺は下の部屋に居るから終わったら呼んでくれ!掃除はベッド周りだけで良い!机の周りは触るなよ!ゴミは、このポリ袋にゴミを押し込んで置いてくれ!」 「解ったテチ!」 彼はそう言って、実装が上がる事が出来ないベッドの上にあるゴミを全て下に落として部屋を出て行った。 実装は、散らかった彼の部屋をせっせ、せっせと片づけ始めた。 今の時間は、母親は、買い物に出かけて留守、1時間は、帰って来ない。 彼がテレビを付けると「フランス対アルゼンチン」の再放送をやっていた。 時間は後半始まったばかりの5分、結果は知っているが、映像を見るのはこれが始めて、彼は没頭してしまい、「お掃除終わったテチ!」と実装が呼ぶ声が聞こえなかった。 「ゴシュジンサマ!呼んでも返事が無いテチィ〜!」そう言いながら机の周りを見ると、お菓子の包紙やら空のペットボトルが置いてある。 「テッチ!こっちは触るなと言われたテチけど、散らかっているテチィ〜!」そう言って机の周囲を片づけ始めた。 彼はと言うと、サッカーの試合を見ながら眠ってしまい、「これ!たかあき!起きなさい!」と帰って来た母親に起こされた。 「へえ〜!ソファーに横たわって寝るなんて余裕ねぇ〜!部屋の掃除しなさいって言ったわよねぇ〜!ちゃんと終わっているんでしょうね!終わってなかったらお昼ご飯抜きよ!」 彼は飛び起きて、部屋に戻った。 母親も続いて部屋がきっちり掃除出来ているか見に来た。。 「へえ〜!凄いじゃない綺麗に片付いているわねぇ〜!やれば出来るじゃない!」そう言って母親は、昼食を作りに行った。 機嫌が良くなった母親とは、対象に彼は真っ青になった。 「つ......。机の周りは触るなといっただろう!終わったら何故呼ばなかった!」 「ゴシュジンサマ、呼んだテチけどお返事無かったテチ!ワタチは、お掃除実装テチ!散らかっている所を掃除するのがワタチの仕事テチ!だから片づけたテチ!」 「ち......畜生!彼女の携帯電話番号とメルアドを書いた紙を今度は破って捨てられたぁ〜!しかもビリビリに破って捨ててやがる〜!」 彼は、フランスに負けたメッシの様にがっくりうな垂れて......。 「もう駄目だぁ〜!流石に3回目は、聞けな〜い!あれだけ苦労して彼女の連絡先聞いたのにぃ〜!失恋したぁ〜!」と泣き出した。 大事な書類は、きっちりとファイルしないと......。 それから彼は、大事な書類だけは、きっちり保管する様になった。 お掃除実装は、彼の両親に歓迎された。そして今日もせっせ、せっせと彼の部屋の掃除をしている。 3.「ちり一つも落とさぬ!完璧主義の潔癖症女」 お掃除用仔実装を買って帰った「明代」(=以降:彼女)年齢51歳バツ1のOL。 見た目は、老けた有村架純。 文武両道で中学3年の時に現役東大生でも合格が難しい英検1級試験に合格する偉業を達成。 運動の方では、女子テニス部に所属し中学3年間、県では無敵を誇り出場機会のある全ての大会を出場して優勝。 インターハイ女子テニス部門で3年間負けなし。周囲から生神女と呼ばれて一目置かれた。 高校に入れば、女子テニス部で優勝街道をひた走りながら、その傍ら男子硬式野球部も掛け持ち(大阪桐蔭の様な強豪校レベル)、マネージャーを務める。 そしてその天才頭脳を駆使し、対戦校のデーターを収集、相手投手の球筋、ウイニングショットを徹底研究、 相手打者の性格、苦手なコース、打球の飛んでいく方向を完全分析をして(膳所高校の様な頭脳派野球を展開)打者に応じてシフトを決め、ヒット性の打球を全てキャッチさせる。 県大会全試合を完全試合で勝ち進み、気が付けば、甲子園大会では、春夏負け無し史上初の5期連続優勝。 【当然、彼女に掛かれば相手校も丸裸】 自軍の投打もマスコミに評価されたが、彼女の研究に基づいた、完全なデーター野球だった事が、世間に知られると、大手IT企業に破格の年俸でスカウトされる。 だが、今は誰でも大学に行く時代。破格の年俸を蹴って東京大学理工Ⅰに主席で合格。 入学式では、入学生代表で挨拶も行う。元々、美人である彼女は、文句無しでミス東大に選ばれた。 テレビ出演やイベント出演でいつの間にか彼女は、全国区になってしまった。 大学を卒業してからは芸能界には進まず、大手IT企業に就職する。 人間性はと言うと、人当たりも良く、面倒見も良い、部下が同じ失敗を何回しても決して怒る事は無い。 そんな彼女だから、大勢の男性社員にプロポーズをされ、その中から営業成績の良いイケメン社員と結婚した。 だが、結婚とは、産まれも育ちも違う者同士が、24時間寝食を共にする。当然摩擦も生じる。 更に彼女は、完璧主義の潔癖症である。 物が所定の場所に置いてなかったり、ゴミが落ちていたり、掃除の邪魔をされたら気に食わない。 「もう!何度言ったら解るの、読んだ新聞はちゃんと捨てる袋に入れてよ!」 「またぁ〜!廊下に髪の毛が落ちている〜!さっき掃除したばかりよぉ〜!」 「日曜日だからって、何時まで寝ているの〜!さっさと布団を上げて掃除したいのよぉ〜!」 そんな感じで、潔癖症の上、全てが自分のペースで事が運ばないと気が済まない、ホコリ一つ、チリ一つ落ちていたら気に食わない。 そんな彼女と上手く行く訳が無い。結婚生活僅2年で離婚する羽目になってしまった。 【会社に居る時は、8時間我慢すれば良かったのだが、流石に24時間X2年の我慢はきつかった】 「もう結婚するのも怠いしこのまま独身で居るのも良いわね!」そんな事を思いながら仕事をしていたら何時の間にか51歳の中年熟女。 その内、自分の事を心配してくれて、一番の味方だった両親は死んでしまった。 遂に天涯孤独になってしまった。 更に悪い事は、続くもので彼女は、盲腸を患い、医師の手術ミスで腸捻転を引き起こし生死淵を彷徨う。 昔なら、周囲の男が挙って見舞いに来のだが、51歳のオバハンには、誰も見向きもしない。 自分の女友達は、幸せな家庭を築き、子供の話になれば「今年、上の子が高校にはいるのよぉ〜!」とか「今度の日曜日、下の子の運動会なの!主人と娘が二人三脚で出場するのよ!」等の話を聞けば、羨ましい。 だが自分はどうか、主人も子供も居ない、体も年老いて来て、何かあっても相談相手も居なければ、心配してくれる人も居ない。やっぱり一人ぼっちだと心細い。 そんな時、目にした新聞広告に「癒し系お話実装」(*前作=柏餅参照)販売中、今週末にも「お掃除実装」新発売が目に入って来た。 以前、友人が「癒し系お話実装」を買ったが、「上の子が赤ちゃんだった頃を思い出したの!子育てしている様で本当に楽しかったわぁ〜!」と言っていた事を思い出した。 そんな、話を聞いて仔実装なら寂しさを紛らわしてくれたり、話の相手や愚痴の一つでも聞いてくれるだろうと、実装ショップに買いに出かけた。 店に到着すれば、いきなり店員から「88番」の整理券を渡され、直ぐに実装の販売が始まる。 暫くすると「88番さーん!こちらにおいで下さーい!」と呼ばれ3000円と引き換えに箱の中で寝ている仔実装を渡された。 【癒し系は箱に梱包されておらず動いている物だが......。そんな事は彼女は、知らない】 家に持って帰って、説明書に書かれている通りドリンクを飲ませたら......。 「テチューン!ニンゲンさん!初めましてテチ!宜しくテチィ〜!」 そう言って元気が良い仔実装が飛び出して来た。 「こちらこそ宜しく!貴女のお名前はなんて言うの?」 「名前は無いテチ!ゴシュジンサマお名前、着けて欲しいテチィ〜!」 「じゃ!緑色の服を着ているからミドリね!」 「有難うテチ!」 「名前も着けた事だし何かお話しない!」 彼女は話かけたが、仔実装はそわそわしていて、じっくり落ち着いて話をする様な感じには見えなかった。 「ねぇ〜!何でそわそわしているの!お話しましょうよぉ〜!」 「ワタチ!お話苦手テチィ〜!どっちかと言えばお掃除が好きテチ!」 それを聞いた途端彼女は、「癒し系」と「お掃除」を間違えて買った事気が付き、直ぐにショップに交換依頼の電話をしたが......。 「すみません!パッケージを開けられたのでしたら交換は致しかねます!」 「なら!この仔は貰います。癒し系実装が欲しいのです。今から取りに行きます!」 「あの後、遅れて来られたお客様が沢山いらして、お掃除実装が買えなかった方は皆様、癒し系仔実装をお買い求めに成られました。 今、飼育用仔実装は、当店では品切れです。他の実装ショップを当たって下さい」そう言われてしまった。 電話をしている間も、掃除用仔実装は室内をウロウロ、徘徊して回る。 彼女は、潔癖症だし、時間を掛けて掃除をするからホコリひとつ部屋に落ちていない。 だが、今時ホコリ一つ落ちていない家などどこにも無いだろう。 仔実装は、癇癪を起して、部屋の中を走り廻って、花を生けてある花瓶を置いた棚に≪ドン!≫ぶち当たった。≪ガシャーン!≫棚から落ちて来た花瓶が落ちて来た。 生けてある花がばら撒かれ、床の上が水浸しになり、花瓶の破片が飛び散った。 「もう!何をしてくれるのよぉ〜!部屋を汚して何がお掃除仔実装よ!」そう怒鳴っている彼女を横目に 実装は嬉しそうに、せっせと花を片づけ「ゴシュジンサマ!此処が汚いテチ!ゴミ袋と雑巾を貸して欲しいテチ !ワタチが、綺麗にするテチィ〜!」そう言ってくる仔実装に彼女は......。 「こ......この糞蟲ぃ〜!この花瓶は、死んだお母さんの形見だったのよぉ〜!鬱陶しい!出て行け〜!」 彼女は、仔実装の頭巾を掴んで、食品を小分けするポリ袋に放り込んだ。 「テチャー!出してテチィ〜!お掃除するテチィ〜!」奇声を発して、袋の中で大暴れする仔実装の入った袋をキッチンに持って行き、袋の上から水道水を浴びせた。 「ゴボ!ゴボ!ゴボ!ゴボ!」≪パキン!≫仔実装は、袋の中でもがき苦しみながら溺れて死んでいった。 彼女は、苦しみながら死んでいった仔実装の入ったポリ袋を、大きなゴミ袋に入れて、マンションのゴミステーションに捨てて来た。 暫くして冷静になった彼女は、例え実装石とはいえ殺してしまった事を大変後悔して、「私は、やっぱり人とも動物とも一緒に住めない、自己中の駄目な女なのだわ!」そう言って頭を抱えて泣き出した。 その内、お掃除用仔実装は、掃除が行き届いた家やきちんと片付けが出来ている家では、無理やりゴミを散らかし、そのゴミを掃除すると言う欠陥がある事が解かって、リコール対象商品として、返品を申し出た者には、代金が返却された。 FIN 前作「柏餅」にも飼育用仔実装第2弾、「飼育用と柏餅」を掲載しています。 よかったら読んで下さい。
1 Re: Name:匿名石 2018/07/06-21:44:50 No:00005416[申告] |
ニンゲン側の自業自得な面もあるけど何かおかしいなと思ったら欠陥品だったか…
これぞ実装された運用の本懐である… |
2 Re: Name:匿名石 2023/08/09-14:48:07 No:00007744[申告] |
2話目の家では上手くハマって良かったね…
3話目で綺麗に落ちて面白かった |