タイトル:【観察】 山実装のコロニー襲撃(特別編2)
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初投稿日時:2018/03/05-16:01:14修正日時:2018/03/07-00:01:36
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  山実装のコロニー襲撃(特別編2)    RETURN OF THE GENBU

 虹滝渓谷の這松実装酒(以降=酒)を巡って、あきとし達と対峙して敗れた菖蒲滝の玄武。
 虹滝の玄武エリアで爪楊枝実装達の攻撃を受けて滝壺に落ちた彼女だったが、息を吹き返した。
 彼女は普通の実装石には1つしかない偽石が2個あると言う特異体質だった。

「おのれニンゲン!虹滝の実装共!ワタシは、死なないデス!戦力を立て直してリベンジしてやるデス!」
 彼女は、体力が回復するまで、虹滝渓谷を離れて虹滝上流にある筥滝渓谷に身を隠した。
 当然、玄武に使えていた部下達も彼女に偽石が、2個あるのを知っている訳だから、コッソリ彼女の元に集結した。
「暫くは、身を隠して体の回復を待つデス!者ども後半月もすれば菖蒲滝周辺は、氷の国に代わってしまうデス!
 それまでに、菖蒲周辺に散らばっている、陸戦隊を集めるデス!それから、菖蒲滝南方の雨滝渓谷にいる四獣神
 黄龍(おうりゅう)白澤(はくたく)馬腹(ばふく)蜚(ひ)と下僕の獣装石も呼んでくるデス!」そう言って部下に号令をかけた。
「奴らは、性格に問題があるデス!何を考えているか分からない事があるデス!裏切る可能性もあるデスが、もうそんな事は、言ってられないデス!
奴等は、青竜達よりも身体能力が優れて居るデス!先に青竜達では無くあいつ等を呼んでおけば、ニンゲンにやられる事も無かったデスが......。
 獣装石すら奴らの非道さ恐れおののくデスから!もう一度虹滝を占領してやるデス!」

 一週間程して黄龍を筆頭とする四獣神と残存勢力の陸戦隊、更に2匹の獣装石が玄武の元に集まった。
「玄武、話は聞いたデス!我々が来たからには、真冬になる迄には、虹滝等簡単に制圧してやるデス!獣装石を使って逆らう者は一網打尽にしてやるデス!」
「黄龍お前を攻撃部隊のリーダーに任命するデス!それでは四獣神お前らの特殊な能力で邪魔者を消すデス!」
 彼女ら四獣神には、黄龍は黄色、白澤には青色、馬腹は緑色、蜚は桃色の羽を着けさせた。
 四獣神は、獣装石と陸戦隊を使って虹滝征服に向けて早速行動を開始した。

 四獣神は、4つのエリアに散らばり、邪魔な爪楊枝実装を攻撃した。
「こいつ等を始末したら、後は雑魚だけデス!」
 菖蒲軍の爪楊枝部隊が、一斉に爪楊枝を放つと、不意を突かれた爪楊枝実装達は次々と倒された。
「デッスゥ〜!」
「デボアァァァァ〜」
「デジャァ〜!」
 更に一番下のエリア(旧白虎)と二段目のエリア(旧朱雀)は、獣装石を使って制圧し、三段目は黄龍除く三獣神が攻撃した。

 獣装石は、強力な爪と牙で「デアッ!」「デッスゥ〜!」逆らう者を切り刻んだ。
 三獣神達は、素早い動きで次々に爪楊枝実装を始末していった。
 虹滝の実装も一段目の滝に主力戦隊を配備していたが、黄龍が滝壺の水を≪サーッ≫と撫でると......。
 水の波紋がカッターの刃の様に広がり爪楊枝実装の上半身と下半身を真っ二つに切り裂いた。【レイの南斗水鳥拳の様な感じ】

「な......。ワタシの下半身が無いデス!」≪パキン!≫
「何だか気分が悪いデス!」≪パキン!≫
「デ......。いつも間に!か......。体の下が無い!」≪パキン!≫
「ボーガンを引く力が入らないどうしてデ......。」≪パキン!≫自分が既に殺された事すら解らない状態だった。
「お前ら!逆らうと仔実装もろとも皆殺しにするデス!もうわかっているデス!自分達では、敵わない事位は!」僅1日で虹滝を制圧してしまった。
「もうニンゲンは、此処へは来ないデス!大人しく命令に従えば最低の生活は、保障してやるデス!」
 玄武を筆頭に四獣神は、虹滝の長に降伏する様に迫った。
「し......。仕方無いデス!降伏するデス!」虹滝は、菖蒲軍の前に陥落してしまった。

 玄武は「それでは、大改革を行うデス!唐滝の黒松実装酒製造エリアは、放棄するデス!
 此処、虹滝と更に上流にある筥滝渓谷に製造エリアを置くデス!筥滝に製造エリアを作れば、誰にも気づかれず酒を作れる事が出来るデス!
 更に万が一ニンゲンが来ても、こんな酸素の薄い高地迄来たら、たちまち高山病になってしまうデス!
 菖蒲滝の様な高地に住居を構えていたワタシ達なら筥滝で活動しても平気デス!」
 そう言うと、再び虹滝の仔実装を石質(人質)にして以前の様に重労働に着かせた。
 獣装石は、眠らせて祠に入れた。
「お前達は、ワタシのボディガードデス!何かあれば起こすからそれまでここで寝ているデス!」

 玄武は、裏切り者が出ない様に今回は、虹滝の実装達にカースト制度を取り入れて、階級を作った。
 玄武と四獣神は、神に仕える立場と言う事で『バラモン』と呼ばせ、更に菖蒲の部下達は、『クシャトリア』と言う地位を与えた。
 虹滝の実装でそれなりの地位にあった者を『ヴァイシャ』、更にその下を『スードラ』『アチュート』と階級を付け奴隷の様な扱いをされる者を『ダリット』とした。

 更に『ヴァイシャ』には5段階の位を付けて、それなりの待遇を与え虹滝の部下の管理監督をさせて、不穏な動きがあればそれを密告すれば、階級を上げて食糧を増やした上に
 生活場所も住み心地の良い好条件の立地にした。

『スードラ』『アチュート』にも同じ様に段階を付けて『ダリット』を見張らせた。
 ダリットには、逆に上の位の者も見張らせその成果に応じて褒美を与え、目に付く様な働きをすれば、アチュートとの入れ替えも行った。
 虹滝の実装達は、疑心暗鬼になってしまい仲間を完全に信じる事が出来ない様になり次第に敵対し出した。

 上流の筥滝渓谷の酒造りは、玄武が仕切り、白澤、馬腹、クシャトリアが、ヴァイシャとアチュート、ダリットの位の者を見張るという格好になり、
 その下の虹滝には、黄龍と蜚、残りのクシャトリアがスードラ、アチュートとダリットを見張るという体制になった。
(つまり虹滝の下級の実装を半分ずつに分断した)
 山頂の這松伐採は、主にアチュートの仕事で、数十匹のアチュートが、早朝2回、午前中1回、午後2回夕刻1回と決めて、松を滝壺に漬けて酒を作る作業は、ダリットの仕事と言う事にした。

 筥滝の滝壺を半分に仕切り、松を浅瀬も漬けて、上から踏みつけて汁を取り、水の色が変わると仕切った場所を完全に堰き止め、自分達にしか解らない特殊な製法で、発酵させ酒を作らせた。
 同じ様に下の滝壺や虹滝でも同じ製法で酒を作らせ、更に今回は、甘い酒を精製する事にも成功した。
 酒が出来ればバラモンに献上させ、月1回のペースで上流階級バラモン、クシャトリアだけで酒宴を開いた。
 その他のヴァイシャ、ヴァイシャにもおこぼれ程度の酒と食事が与えられた。
 虹滝の実装は、少しでも美味い物が食べたい、楽をしたいと一生懸命働き、仲間のダリット達を扱使った。
 その為以前に比べて酒の生産量が3倍に跳ね上がった。
 結局、菖蒲の実装に恨みを持つ者は、ダリットの最下級の労働石だけになってしまった。玄武達が、攻撃を加えて僅1ヶ月で虹滝の実装を分断してしまい、完全に自分に忠誠を誓う様にさせてしまった。

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 その頃、あきとしは従来の生活に戻って実装駆除の仕事をやっていた。
「最近、暖かくなって来たな!もうすぐ春だな!もう山実装狩りが、始まっているだろうな!爺に電話して成果を確認してみるか!」
「おお!あきとし!久しぶりだな!元気そうで良かった!良かった!」
「爺も元気そうだな!そろそろ雪解けの時期だから実装狩りが始まるんだろ!」
「そうだな!お前の言ったとおり少人数でグループを作って狩りに行けば、ある程度の山実装が捕まる様になった。今は、村人が3人一組で、5〜6隊のグループで山に登っているぞ!」
「良かったじゃねぇ〜か!これで実装肉に困らねぇ〜!」
「そうそう!お前の持って帰って来た仔実装を漬けていた液体なあ〜!あれ、酒だったなあ〜!美味かったぞ!どこの渓谷で取って来たんだ!」
「いやあ〜!忘れた!」そう言ってとぼけた。
「もしも山に登る機会があれば是非探して来てくれ!是非!是非!探してくれ!小遣いやるぞ!」
『ちぇ!姪っ子のとし子と一緒にするなよな!』(*山実装のコロニー襲撃前篇参照)そう思いながら......。口先では「はい!お爺様、承知致しましたぁ〜!」と言っておいた。

 だが内心『俺もあんな美味い酒飲みたいよ!でも山中で一泊しないといけない程の山奥迄もんなぁ〜!でもやっぱり飲みたい!う〜ん!よしあきに連絡してみるか!』
 夜になってよしあきの携帯に電話して爺との話の内容を説明すると......。
「何だ!あきとし!もしかして山に登る気になったのか?」
「爺が、這松実装酒を飲みたいと言うんだ!」
「そう言いながらお前が飲みたいのじゃねぇ〜のか?」
「いや!本当に爺がそう言っているんだ!日程を合わせて行こうぜ!」
「俺、来週からアラブに出張するから、行けるとしても再来週だ!帰国したらお前に電話するよ!」
 3週間後、よしあきから連絡があって、いつでもOKとの事だった。
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 俺は、実家に戻って登山の準備をしていると、よしあきがやって来た。
 今回も前回同様に取り敢えずは、午前中には、蒼滝は突破する。そして唐滝手前迄行く。
 キャンプはそこでして、早朝に虹滝渓谷で実装酒を汲んで午後4時遅くても午後6時には下山すると言う計画を立てた。

「あきとし!よしあき!何度もすまん!」そう言って爺が見送りに出て来た。
「本当にお前の爺さんって、我侭だなぁ〜!今度は、実装酒が飲みたいとは!」
「歳を取れば誰でも我侭になるよ!しかし、俺もあの酒は飲みたいと思うけどな!」絵師山を経由して、11時には、蒼龍滝に到達した。
「何度も来たら要領も解るし双葉乃山も俺達の庭の様になったな!」
「よしあき!お前良く言うぜ!熊や猪に未だ出合った事が無からそんな事が言えるんだ!」
「爺なんか、元気な頃には山に登る時は、熊や猪避けにライフルや散弾銃を持って登山していたぞ!」
「でも、結局後ろから襲われれば銃も役に立たないけどな!」そう言いながら、蒼龍奥のキャンプをした開けた大地迄来た。

「此処を抜ければ、唐滝渓谷だ!あの実装達元気にしているかなぁ〜!」
「でもよぉ〜!世にも珍しい這松の酒だろ!あの菖蒲以外にも凶暴で、がめつい実装が狙っているかも知れないし!」
「熊や猪も狙うかもしれない!そうなれば実装酒を作れる者が居なくなるな!」俺達は、何だかんだと酒の話をしながら唐滝が見渡せる丘の所迄来た。
「今日は、此処でキャンプしよう!」そう言ってテントを組んで明日に備えて早々と寝た。
 だが、しかし次の日は小雨が降っている上に霧が発生して周囲が真っ白だった。
「こりゃ!動けんなぁ〜!天気予報では、今日は晴れだったのによ!」
「仕方ない!山の天気は変わり易い。霧が晴れる迄此処にいようぜ!下手したら遭難してしまう」結局その日は、霧が晴れずに俺達は、その場所に足止めを食らった。
「そう簡単には、酒を手に入れる事が出来ないぞ!と山の神が言ってるのかぁ〜!」


 次の日は、晴天だった。
 俺達は、唐滝を経由して虹滝に行く事にした。
 だが、唐滝に到着したら、そこは荒れ放題だった。
「どうしたんだろう!あの実装達居ないぜ!」
「まっ!青龍の実装も出て来なかったし、菖蒲の奴らも始末したし、わざわざ美味くも無い黒松実装酒を無理やり作る必要もないし!」
 そんな事を言いながら虹滝を目指すと......。 
 滝の入り口で爪楊枝ボーガンを持った、無数の実装の死体が転がっていた。
「こいつらは、爪楊枝実装じゃねぇ〜か!一体どうしたんだ!」
「又、酒を狙って他の滝の実装が襲撃して来たのでは......。」

 俺達は、怒鳴り声のする滝壺の方に行き岩陰からこっそり覗くと......。
 黄色の羽根を付けた大きな実装が、岩の上に寝転がり、もう1匹桃色の羽根を付けた大きな実装が隣の大岩にどっしり座って作業を見つめていた。
 その目の前には......。
 数匹の実装が、生木のムチを持って水の中で作業している数十匹の実装を見張っていた。

「ええっ!あいつら又、他の実装に攻められたのか?」
 今度は、前回と違い、虹滝の滝壺4段を全て使わず、相手からは防御しやすく攻め易い場所、つまり上から2段目の滝壺の旧青竜エリアだけを使っていた。

「あきとし、見ろ!今度は桃色と黄色い羽を付けた奴が2匹も居る!」
「だが、以前来た時とどこか様子が違うなあ〜!」
「おかしい!何かおかしい!少し様子を見てみよう!」

「デッスゥ〜!何度も同じ事を言わせるな〜!お前は要らん死ぬデス!」そう言って1匹の実装が滝から突き落とされた。
 俺達は、その実装が下に落ちる前にキャッチした。
「おい!一体どうしたんだ!一体は彼奴等何者だ!黄色い羽を付けていたが、又、菖蒲の実装か?」
「デ!助けてくれて有難うデス!そうデス!彼奴等は、菖蒲の実装達デス!
「彼奴等は、虹滝の上流にも拠点を構えて居るデス!今度の奴が、前回より凶暴で知略デス!」助けた実装から事の一部始終を聞いた。

「う〜ん!仲間が、仲間を信じられなくなったら終わりだな!助けようにも助けられない!」
「お前を滝から突き落としたのも仲間の実装だろう!」
「そ......。そうデス!」
「俺達が、出来るのは、新しい幹部を倒す事だけだ!後は、お前達次第だが......。」
「下手をしたら菖蒲の実装もろとも虹滝の実装も全滅してしまうぞ!」
「しかし今度は、虹滝の実装の全面協力は得られない。状況が解らなければ手の出しようが無い!」
「デ......。ニンゲンさん、ワタシはもう仲間を信じられないデス!いっその事全滅してしまえばいいデス!」
「だが、一番階級の低い奴ならもしかして協力してくれるかも......。な!」
「おい!敵の親玉は、一体何処のエリアにいる?」
「敵の親玉は、筥滝に拠点を構えて居るデス!あそこは、酸素が薄くてワタシ達でも頭痛がするデス!」
「筥滝といえば山頂に近い場所だ!高山病になる危険性があるな!」

「まず仕留めるのは此奴等からだ!黄色の此奴は、武器が水面を波立たせて、カッターの刃の様になるって言ってたよな!そんな小細工がニンゲンさんに通用するのかぁ〜!」
「まっ!取り敢えずあの桃色から始末するか!」
 俺達は、今は下流エリアと呼ばれる黄色の羽根を付けた実装が、牛耳っている所からの攻撃を開始した。

 下流エリアにいる実装に気付かれない様に滝壺を見下ろせる位置に着いた。
 そしてよしあきと一緒に「せーのー!」でピンクの羽根を着けている実装目掛けて上から飛び降りた。
「デボッ!」≪パキン!≫一撃で始末してしまった。
「そりゃ!ニンゲンさん2人が上から飛び降りて踏み着けりゃ死ぬわな!」

「デッ!蜚!よくもお蜚を殺したデスね!さては、お前達が玄武の言っていたニンゲンデスか!」
「何が『ヒッ!』だ!お前、ニンゲンさんを見て怯えているのか!」
「それよりもあきとし、玄武が未だ生きているみたいだ!」
「ふん!所詮糞蟲だ!直ぐに始末してやるよ!」

 俺と黄色い羽根を付けた実装の会話を周囲の実装共は、かたずを飲んで見守っている。
「お前がこのエリアの親玉か?」
「そうデス!しかしワタシは、菖蒲滝の実質No1デス!青竜や朱雀の様な飾り物ではないデス!」
「ほーう!てめえは、NO1で飾りではないと……。じゃあてめえを倒せば玄武なんか糞だと!」
「彼奴は、口ばかりで大して強い事は無いデス!彼奴は、ただ卑怯なだけデス!菖蒲滝の実装が周辺の渓谷を攻めてエリアを拡大出来たのもワタシのお陰デス!ワタシなくして菖蒲は無かったデス!」
「本当に大きく出たな、面白え!俺の名前はあきとし!お前の名前は!」
「ワタシの名前は、黄龍!菖蒲では、ワタシに敵う者は居なかったデス!ニンゲンワタシに刃向った事を後悔させてやるデス!」
「本当にえらいたいそうな自身だな!なら自称No1がどれ程の物やら見てやるよ!掛かって来な!」

「こしゃくな!ワタシの事を自称No1と言うな!いくデス!」と言ってそっと水の上を手で撫でると......。滝壺の水がカッターの刃の様に俺を襲って来た。
 そのカッターの様な波紋は、俺の足元に勢いよく来たが......。
 ≪チャポン!≫
 一瞬、ヒヤリとしたが......。痛くも痒くも無い、ただの波が当っただけ!
「何だぁ〜!そりゃぁ〜!水遊びか?」
「そ……そんなバカな!何かの間違いデス!もう1回!」
 ≪チャポン!≫
「死ね!糞蟲!」
 俺は、黄色の羽根を着けた実装の後頭部へ回し蹴りを食らわせた!
「デバッ!」≪パキン!≫奴は俺の回し蹴りを食らうと目が飛びだし、口から血を吐いて即死した。
「実にあっさりだったな!」
「本当!口だけだな!」
「でも!彼奴が技を出した瞬間、怖く無かったのか?」
「怖い訳ねぇ〜だろう!実装がニンゲンを越えられる訳ねぇ〜からよ!」≪実は怖かったけど!≫と思ったが。

 暫くすると助けた実装が、仲間の実装に襲い掛かった。
「何故デス!何故デス!仲間だったのに死ねとは!酷過ぎるデス!」そう言って馬乗りになって何回も何回もその実装を殴った。
「おい!その辺にしておけ!それが奴らの狙いだ!お前らに階級を付ける事によって、仲間同士が手を組めない様にしたんだ!誰でも命が欲しいだろ!仕方ねぇ〜んだよ!」

 そんな話をしているとムチを持った数十匹の実装が、その場を逃げようとしていた。
「ちょっと待てよ!てめえら立場が悪くなったら逃げるとは卑怯じゃねぇ〜のか!」
 俺とよしあきがそいつらに駆け寄り持っていた山刀で片っ端から叩き潰した。
 だがしかし、2〜3匹の菖蒲の実装が、掻い潜って逃げた。
 ムチを持っていても逃げずにその場に居たのは、虹滝の実装だったみたいだ。
 そいつらは、皆がっくり膝を付いて泣き出した。
「ゴメンデス!自分が助かりたいばかりにお前達を殴ったりして」
「ワタシ達は、卑怯者デス!このムチで死ぬ迄殴ってくれデス!」
「い…..良いんデス!ワタシでも逆の立場なら同じ事をしていたデス!」
「悪いのは、菖蒲の実装デス!気にしないで良いデス!」
「良かったじゃねぇ〜か!結局元の鞘に収まってよ!」
「ニンゲンさん!しかし今回は、敵の本体は筥滝に有るデス!それに今度は獣装石を2匹も連れて来ているデス!」
「獣装石ってのは、実装獣の事だろ!前もあっさり始末したしあんなのが2匹居ても平気だ!」
「だが今度は、奴らは空気の薄い高地に本拠地が有る。どうするんだ!」
「俺達が、そんな所へ行く必要も無い、奴は、自分からこの場所へ下りてくる。俺が奴の立場ならこの情報が耳に入れば居ても経っても居られない。黄龍の言っている事を聞いたか!奴は、玄武を全く信頼していなかった
 玄武もしかりだ!奴も同じ事を考えるだろう!信頼出来ないが力は有る!だが裏を返せばもしかして自分を裏切るかもと!
 絶対奴は、実装獣を連れて全軍で此処にくる!前と同じ様な事をして奴らの度肝を抜かしてやる!」
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 下流の虹滝から、上流の筥滝の玄武達の元へ、助けを求めて数匹の実装が行くと......。
「な、な、な、何デスと!又ニンゲンが来たデスと!蜚が上から踏み潰されて、黄龍が一撃で殺されたデスと!」玄武は、驚きを隠せなかった。
「まさか黄龍がやられるなんて……信じられないデス!何かの間違いデス!もしかして、もしかして奴の芝居かも!彼奴は、場合によっては、平気で仲間を裏切るデス!
 だが、ワタシを裏切ればどうなるか彼奴は、解っているはずデス!直ぐに......。直ぐに下に下りるデス!もし黄龍がやられたのなら、ニンゲン共を蹴散らすデス!全軍出撃デス!」
「玄武!今は動かずに此処でニンゲンを迎え撃つデス!空気の薄いこの場所では、ニンゲンも思う様に動けないデス!玄武!玄武!聞こえているデスか?」
「うるさい!ワタシは虹滝迄下りて行ってニンゲンを始末してやるデス!獣装石を2匹出せ!」
「ま......。待つデス!取り敢えず偵察隊を出して状況確認をした方が良いデス!下手に動かない方が良いデス!」
「馬腹!白澤!お前達何時からそんな臆病者になったデス!怖いのならお前は此処に居て良いデス!
 今度は、獣装石が2匹居るデス!もしニンゲンがいたとしても絶対に勝てる!」
「し......。しかし!玄武!」
「だが、万が一この話は黄龍の狂言かもしれないデス!最初に力のある黄龍を連れて来ずに、青竜を連れてきたのは何故か!彼奴は、他石を騙し打ちにするのが得意デス!裏切る可能性があったからデス!
 しかし、青竜亡き後、虹滝征服には、奴の力が必要だから、仕方なく呼んだデス!菖蒲滝周辺のエリア拡大も殆どが、騙し打ちデス!それに彼奴は、野心を持っているデス!菖蒲のトップになろうと言う魂胆が見え見えだったデス!
 事が上手く進めば、ワタシが黄龍を逆に騙し打ちにする積もりだったデス!確実に自分の目で状況を確かめて、本当に裏切ったのなら見せしめの為に、奴を始末しないといけないデス!」
「だが!黄龍が裏切ったのなら余計に動くのは禁物デス!罠が張って有るかも知れないデス!」
「そんな罠等、獣装石が入れは怖くは無いデス!」
 そう言って、玄武は白澤と馬腹の忠告も聞かずに獣装石を引き連れて、虹滝に出撃する準備を始めた。
 流石の馬腹も臆病者呼ばわりされてまで、筥滝に留まろうと思わず玄武と一緒に下に向かう事にした。
 だが白澤は「こんな計画の立案もせずに、その時の気分で行動する奴には着いていけないデス!昔はもっと計画を立てて動いていたデスのに!ワタシ危険を冒して迄、命を懸けられないデス!もう降りるデス!」 
 そう言って、勝手に部隊を離れてどこかに行ってしまった。
白澤の離脱を聞いた玄武は「臆病者は、足手まといデス!要らないデス!」と吐き捨てる様に言った。
 結局、玄武は信じられるのは自分だけといった態度が、馬腹にも伝わった。

 ≪結局、此奴は、自分が可愛いだけデス!仲間を道具の様にしか思わない此奴は、エリアを治める力も無いデス!
 頃合いを見計らって此奴を見捨ててワタシも白澤と同様に逃げた方が良いデス!やっぱり根性が腐っている奴に命を懸けるのは、バカバカしいデス!ワタシの直属の部下に此奴を見捨てて逃げる態勢で居る様に命令するデス!≫と馬腹も玄武を見限った。

「おい!石質の仔実装全部を出すデス!大きな木に括り付けて盾にするデス!これならニンゲンも簡単に手出しできないデス!」だが、事もあろうに玄武は、自分の部下の仔実装迄盾にした。
「離してテチ!怖いテチ!」
「ワタチがどんな悪い事したテチ!下してテチ!」
「怖いテチ!高い所は、怖いテチィ〜!助けてテチィ〜!」
「玄武!話が違うデス!どうして仲間の子供迄、危険な場所に連れて行くデス!」
「五月蠅い!戦いにおいて使い物にならない様なお前達より、代わりに子供を盾に参戦させた方が充分役に立つデス!成体も仔実装も関係ないデス!使える者は何でも使う!それがワタシのやり方デス!ワタシに逆らったお前達は、死ね!」
 そう言うと大きな獣装石が、逆らった実装を強力な爪で次々八つ裂きにして、そのまま全軍虹滝に向かって一気に山を下った。

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 実装と言え数百匹が一気に山を下って来る。その気配は、虹滝に居たあきとし達にも伝わった。
「見ろ!玄武の奴下に下りてきただろ!」
「本当!すげえなお前の勘!」黄龍と蜚に仕掛けをして俺達は、岩陰に隠れた。

 虹滝に入って来た玄武と馬腹は思わずたじろいだ!
 頭を踏む潰された上に全身を踏まれぺちゃんこになった蜚と両目が飛びだし口から舌を出し、腹を切り裂かれ惨たらしい死に方をしている2匹が、木に首吊りの様な恰好で吊るされていた。
「黄龍、裏切っては、いなかったデスね!本当にニンゲンに殺されたデスね!オイ!彼奴等を下に下してやるデス!あんな惨い殺され方でも誇り高い菖蒲四獣神デス!」
 そう命令されて部下の実装が、黄龍の死体に近寄った途端、≪パン!パン!パパン!≫俺達は、火の着いた爆竹を投げてやった。
 死体の傍に居た実装は、全て粉々になって吹き飛び、その後ろに居た実装は、飛んで来た破片や風圧によって吹き飛んだ。
 口をポカーンと開けて茫然とする玄武の前に俺達が出て行った。
「玄武!しぶとく生きていた様だな!お前は本当に執念深い奴だな!」
「デ.......お前達は、前回のニンゲン!」
「この虹滝の酒は、定期的に俺達が貰う事にしたんだ。お前の様な奴が飲める酒はねぇ〜よ!」
「獣装石此奴等殺せ!やってしまえ!」
 そう玄武が言うと前回より一回りデカいのが、2匹俺達の前に立ちはだかった。

「前より一回りデカいのが来たな!」
「脳みそが、それ位デカけりゃ俺達に刃向う様な事はしないのにな!」
「ピーナッツ並みの脳みそじゃあそれが解んねぇ〜だろうな!」
「五月蠅いニンゲン!殺してやる!」そう言って実装獣が襲い掛かって来た。

 俺達は、水面から陸上の上に実装獣を誘い出して、持っている爆竹に火を着けて奴らに向けて投げた。
 ≪パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!≫数十発の爆竹が実装獣の周りで爆音を上げた。
 当然、実装獣の体目掛けて投げている訳だから、数発が同時に爆発すれば怪我もするし驚きもする。
 山に住んでいた実装獣が、爆竹を知っている訳が無いし、驚きと傷の痛みで怯んだ隙に、山刀で俺とよしあきが同時に実装獣の頭をかち割った。
「前回と同じ様な殺され方をされたな!」
「お前ら!ニンゲンに刃向うなら少しは学習させとけよ!ただ大きいだけじゃあ!ウドの大木だぜ!」
 玄武が自信を持って連れて来た実装獣も、前回同様に攻撃する事すら出来ずに、俺達に殺された!

「だ……だから言ったデス!戦うなら高地デスと!」
「今更何を言っても無駄デス!ワタシ達がニンゲンを倒すデス!」
「周囲を見てみな!お前達の仲間の実装は、逃げ出しているぜ!」
 玄武が、慌てて周囲を見渡すと、既に山道迄逃げた見方の軍の後ろに続いて、馬腹と馬腹直属の軍が、逃げようとしていた。
「てめえ逃がす訳ねぇ〜だろ!」そう言ってよしあきが、馬複の軍の前に回り込み、列の前にいる実装を山刀で次々潰していった。
「た…..助けて!ニンゲンワタシを殺さないで!」そう言って馬腹が土下座して命乞いを始めた。
「情けない奴デス!」そう言って玄武は、馬腹を追いかけて行って、折れて地面に落ちていた実装獣の爪を拾って「ゲバァ〜!」馬複の頭を突き刺し≪パキン!≫殺してしまった。

「これでお前1匹になったな、玄武!だが2度もニンゲンに盾を着いたんだそれなりの覚悟は出来ているんだろうな!」
 しかし、この場に及んでも玄武は、石質の仔実装を盾にして......。
「ワタシをこのまま逃がすデス!ワタシが死ぬ訳にはいかないデス!ワタシが死ぬ事それは、菖蒲の崩壊を意味するデス!菖蒲は!菖蒲は!死ぬ訳には行かないデス!
 生き続けなければ駄目なんデス!ワタシは生きて!生きて!生き抜いて、菖蒲の血筋を守らないといけないデス!」
 だが、石質の仔実装は、菖蒲の仔実装だったみたいで、木に吊るされて来ただけで偽石に、ヒビが入っていたのに、今度は仲間と信じていた、玄武が盾にした事で≪パキン!≫恐怖で偽石が割れてしまった。
「おりゃあ〜!」よしあきが隙を突いて玄武の首を山刀で≪パキン!≫刎ねた。
 ボテ!胴と首が離れた玄武の死体がその場に倒れた。
 すると虹滝のダリットの実装数十匹が、一斉に玄武と馬腹、更に木から下して黄龍、蜚の死体を踏み着けだした。
「よくも、ワタシ達を酷い目に遭わせたデスね!」
「跡形も無く潰してやるデス!」
「2度も!2度も虹滝を攻撃しやがって!」
 頭を踏み着ける者、胴体を踏み着ける者、暫くすると玄武と四獣神の死体は粉々になって後片も無くなった。
「もうその辺で良いだろ!今回はお前達も悪い!位を付けられただけで平気で仲間を裏切り攻撃する。お前らの売りは、暴力を好まない平和を好む実装だったんじゃねぇ〜のか!」
「そ......。そう!デス!長であるワタシが、悪かったデス!皆ワタシを許してくれデス!」
「まあいいじゃねぇ〜か!あきとし!実装酒も勝手にだけど沢山貰ったし......。」

 そんな、話をしていたら、上に逃げた菖蒲の実装が慌てて上から下りて来た。
「何だ!何だ!彼奴等逃げたんじゃ!」
「熊デス!熊が襲って来たデス!」
 今度は、甘い匂いのする酒を作ったもんだから甘い匂いに誘われて3頭の熊が襲って来た。
 逃げる実装達は次々に熊に襲われた。下半身をかみ潰されての「デボア〜!痛い!痛い!」とのたうち廻る者も居れば、大きな手で岩に払い飛ばされ水の入った風船みたいに「デボッ!」破裂した。
 上から足で一気に踏み潰されて「デバッ!」内臓が噴水の様に飛び出す者、上からじわじわ体重を掛けられ「デボワァ〜!来るじいぃぃ〜!ゲボッ!」苦しむ苦痛を味わいながら圧死する者も多数出た。 
 多数の実装が殺され周囲は、さながら地獄絵図の様な光景だった。
 熊は、自分達の前にいる実装達を排除してから、甘い匂いのする実装酒の製造エリアに、一頭は、顔を漬けて≪ゴクゴク≫飲み出した。
 二頭目は、堰き止めたところに飛び込む。三頭目は、木で作った堰を壊し流れて来る酒を飲む者と三者三様だった。

 この調子では、多分、筥滝の方も熊に襲われて全滅しているか、近々襲われるだろう。
 俺達は、逃げるのも忘れて、熊の行動を呆然と眺めていた。

 その内、酒に飛び込んだ熊が、俺達の存在に気付き滝壺から上がって来て、襲い掛かろうとした?
 しかし、酔っ払っていたのか、単にバランスを崩したのか解らないが、堰の中にひっくり返って背中から落ちた。
「やべ!よしあき逃げるぞ!」
「そ......。そうだな!流石に熊には、勝てねえ!」

 折角実装の仲間同士が友情を確認しあったのに、あんなデカい熊に襲われたら奴等全滅するだろう。
 俺達は、来た道を急いで引き換えした。
 後の二頭は、酒を飲むのに夢中だったので俺達には、気付いていなかったのが幸いしたみたいだ。

 命かながら山を下山したのは、午後10時だった。
 俺達は、慌てて車を発進させて逃げた。
「く......。熊は、野生は生まれて初めて見たなぁ〜!怖かったあ〜!」
「俺もだ!この歳で初めて野生の熊を見た!」
「動物園で見るより遥かにデカいじゃん!」
「北海道のクマ牧場で見たヒグマ並にデカいじゃねぇ~か!」
「でもあれ!月の輪熊だぜ!」
「死ぬかと思った!だが、よく間違わずに夜道を下山出来たなぁ〜!」
「それも込みでもう山に登るのは今回で辞めだ!これで最後!」
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 胆を冷やした俺達は、家に帰って爺に酒を渡し、熊と遭遇した事を話すと、爺は心配するどころか......。
 急に「わっははははぁ〜!良い経験したじゃねぇ〜か!お前らも1回は、熊との遭遇を経験して置くものだ!」と大笑いをした。
「何!呑気な事、言っているんだ!その1回の経験で命を落とす奴もいるんだせ!俺はやりたい事が沢山ある!未だ死にたくねぇ〜!て言うか何時の間に酒飲んだんだ!しかももうペットボトル半分以上も、飲みやがってよ!」
「本当にお前の爺さん頭の思考回路が故障してんじゃねぇ〜のか!それに俺が死んだら何十人の女が泣くのか解らんじゃねぇ〜か!俺って罪作りな男だぜ!」
「ただ呑気なだけなのか!もう完全に酔っ払っているのか!どっちかだろうな!それによしあき!お前、何自分に酔いしれているんだ!」
「おい!お前ら!小遣いやるぞ!」そう言って俺とよしあきに一万円ずつを渡そうとした。
「いらねぇ〜よ!とし子じゃあるめぇ〜し!」
「俺、一万円貰って喜ぶ様な生活してねぇ〜し!役員報酬を含む、毎月その金額(一万円)×100倍以上の給料を、会社で貰っているから要らないよ!」

「何んだとぉ〜!金は要らねぇ〜だと!それじゃあ〜!わしが若い頃に山で熊に出あった時の事を話してやる!金をやる代わりだ!これを覚えて置けや。
 山で熊に遭遇しても絶対に大丈夫だ!おいてめえら!耳をほじくって、心して聞ききやがれ!」
 爺は、上機嫌で話を始めた。
「駄目だ!爺の奴、実装酒ごときで完全に酔っ払ってやがる!」
「うぇ〜!俺この話知っている!子供の頃、延々2時間も聞かされた話だ!家に帰るわ!」
「おい!よしあき逃げんな!爺!止めてくれ!もう午前1時だ!頼む!寝かしてくれぇ〜!」



FIN










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1 Re: Name:匿名石 2018/03/14-18:15:35 No:00005171[申告]
めでたし、めでたし、と言う事で。
2 Re: Name:匿名石 2018/04/07-22:41:14 No:00005172[申告]
これは面白い
クマさん怖い
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