タイトル:【虐】 夢にまで見た異世界転生なのに実装石とかマジですか!?プロローグ
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作者:謎の覆面の男 総投稿数:4 総ダウンロード数:1261 レス数:2
初投稿日時:2017/10/06-02:11:32修正日時:2017/10/06-02:11:32
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『 夢にまで見た異世界転生なのに実装石とかマジですか!? 』






〜 プロローグ:なろうぜ、実装石! 〜




神秘的な星々の輝きが頭上で瞬く蒼穹に、ふたつの影が漂っていた。


愛しき大地は足元の下に遥か遠く、
本来であれば呼吸すらままならない極寒の成層圏の下部に、あるはずのない影があった。


そう、影のひとつは俺である。


何故、こんな状況になってしまったのか…、はっきり言って困惑している。


取り敢えず、今の俺に分かっている事は、
今、目の前にいる、俺以外のもうひとつの影が俺に笑えないジョークをぶちかましてくれた事だ。


こちらの影…“ 自称・女神(笑)のテラ ” と名乗られた、頭の中がお花畑な お姉さんが、
とんでもない事を俺にお告げになられたという事だけだ。




……
………




…さて、貴方は、なろう系小説をご存知でしょうか?

ごく平凡な一般人が、不慮の事故やら何やらで異世界に転生したら
とんでもないチートスキルを身につけてたり、とんでもない種族に転生してて、
俺TUEEEE!な冒険を繰り広げるテンプレートな展開の小説なんですけど…。

はい、俺もよく見ていましたよ。
だいたい最初の2〜3話みたら飽きてしまい見切りつけてましたけど、
一部には、夜を徹して最後まで読破したくなるほど面白い小説とかもありました。

…あー、まあ、何が言いたいかっていうとですね。
だいたい、そういうのって、俺TUEEE!!!が話のメインじゃないですか?

平凡な一般人が、何の努力も血筋も身分も関係なくチートな能力を手に入れて、
転生先で幅を利かせてる強者を軽くいなしてしまうストーリーにカタルシスを感じる人が多いから流行ったテンプレだと思うんですよ?

そりゃ俺だって男の子なんで、俺TUEEE!!!な展開になるならワクワクしましたよ?
だっていうのに、普通に今の状態でもYOEEE!!!な俺がですね?
更に俺YOEEE!!!!!な展開になったとして、それを誰が面白がって見ようと思うんですか?

ねえ?ちょっと聞いてます?
おーい、ちょっとテラおねえさーん?






……
………





まあ、そんな感じで小一時間ほど成層圏の片隅で、
苦笑いと半泣きで平謝りしているテラお姉さんに、俺が延々と語っているわけなんですが…。


事の起こりは、2時間ほど前。


珍しく仕事が早く終わったので、さっさと家に帰ってゲームして寝ようと足早に帰宅していたんだ。

なのに、ちょうど開かずの遮断機とか言われてる地元じゃ有名な踏切に引っ掛かって、
溜息つきながらスマホを片手にネット小説を読んでいたらさ、踏切を乗り越えようとする子どもがいるじゃないですか。

そりゃー、普通、常識的な大人なら止めるでしょ?

…で、止めようとしたんだけど。
その子、靴が線路に引っ掛かっちゃって、大パニック。

なんやかんやしてたら、普段はなかなか来ないはずの電車が猛スピードで来たわけですよ。

さっさと緊急停止ボタンを押してりゃ、こんな事にならなかったのになあ…。
なんで俺、飛び出して子ども庇ったんだろうね…。


キィィィィィッ!!!
ドォォーーンッ!!!


けたたましいブレーキ音と、強い衝撃を受けたのは覚えてるんだけど。
気付いたら、ここ、成層圏にいたってわけさ。
なんか体も半透明だし、たぶん幽体?とかいうやつだろうね。


あ、これ確実に死んでるわ、ははは。


なんて乾いた笑いをしていたら、すうっと目の前に影が現れたんだわ。

普通ならビビったけど、どうせ死んでるし、もう何も怖くない!って感じになってたからさ。
死神だろうが何だろうが、こんな何もない成層圏から連れ出してくれるなら、むしろ大歓迎だと思ってね。


影が人型になった直後に、


「ヒャッハァー!待ってたぜェこの瞬間をよォ!?」


なんて台詞を舌を出して、ファックのハンドサインを造りながら喋ったんだよね…。
そしたらさ、現れたのは、死神どころか巫女服を着たストレートヘアのお姉さんじゃないのさ。

まあ、白と茶色のメッシュが入った水色の髪とかいう、なかなかパンクな髪色してたけど。


「ひっ!?」


なんて短い悲鳴をあげちゃってるし、なんか申し訳なく思ってしまいましたよ。


「あ、ごめんなさい。なんか訳の分からない状況に置かれたせいか、
 変にテンション上がっちゃって…、悪ノリしちゃいました、すみません。」


つい平常心に戻って頭を下げてしまった。


「あ、いえいえ、こちらこそ申し訳ございません。
 わたくし、テラと申しまして、なんといいますか、地球の化身…女神みたいなものをさせて頂いております。」


目の前のお姉さんも、俺に合わせて頭を下げる。

…ていうか、女神って(笑)

そんなパンキッシュな頭して巫女服を着てる人が女神って(笑)


「…あのー、なんか、すっごい失礼なこと考えてません?」


自称女神(笑)さんが、頬を膨らませながら可愛らしく俺を睨む。


「さーせん、女神(笑)がツボに嵌っちゃって(笑)
 で、わざわざ出てきたって事は、俺になんか用があるんすよね?」


俺は笑いを噛み殺しながら、女神(笑)のお姉さんに問いかける。
お姉さんは、そんな俺の態度に少しだけ頬を引くつかせながらも、笑顔を崩さずに俺に語り掛けた。


「えーっとですね。
 先ほど貴方は轢死されたのですが、私が女神に就任してから、貴方で丁度100億人目の死者だったのです。
 …で、別の女神が管轄している“ある世界”でも、先ほど…丁度100億人目の死者が…出たのですよ…。
 …あー、その…、それで…貴方には大変申し上げにくいのですが…。
 その…、節目の死者が重なった場合…、それぞれ互いの世界に死者を転生させて…その様子を観覧するっていう…。
 まあ…、そんな馬鹿みたいな取り決めが…その…あるのです、はい…。」


お姉さんは、所々言い淀みながら、そんな事をごにょごにょと呟いた。
なぜか、本当に申し訳なさそうに目を伏せているのだが、そこまで気に病む必要があるのだろうか?


「おおお!異世界転生モノじゃあないですか!
 なんでお姉さんがそんな申し訳なさそうにしてるの!いいじゃない!
 むしろ死んで終わりだったはずなのにラッキー!!
 ねえ、それで俺が転生する世界って、剣と魔法のファンタジーな世界!?それともSFな世界!?」


俺は心臓が高鳴るのを感じた。
まさか、自分自身がなろう系を体験する事になるなんて思ってもみなかった。

やはり異世界と言ったら、中世ヨーロッパ風の世界だよな!

くふふ、そんな異世界に行ったら、たとえチート能力を身につけてなくても
自炊で培った生活知識や雑学で成り上がれるだろうし。
もし、何かしらのチートスキルが手に入るなら、それこそ英雄にだって成れる!



「…あー…えと…その…。普通の現代社会で…。あ、その…まあ…実装石の存在する世界…ですが。
 …で、貴方…、転生先を…。その…実装石…に設定されちゃって…。」


お姉さんが、苦笑いをしながら、ぼそぼそと呟いた。
え、今、なんて言った?
実装石って、え? まさか…アレ?

あの不快生物って設定のスクが乱立してる実装石? 虐待スクで有名なアレ?

いやいやいや、ちょっと待ってよ!?
いや、仮に実装石のいる世界だとしても!!
なんで、わざわざ実装石に転生させんの!?


「ハァァァァッ!?」


俺はお姉さんに詰め寄って肩を掴み、思いっきり揺さぶりながら奇声を挙げる。


「ひぃぃぃっ!?ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!
 わたくしも、ちゃんと断って別の転生先の種族を希望したんです!
 でも実装石が嫌なら、あとは餌用のレッドローチかミルワームって言われたんだもん!
 餌用だもん!飼育用ならまだいいけど餌として食べられる生活を100年なんて、あまりにも可哀そうすぎるもん!!
 誕生から成体になるまで単純に2か月掛かるとして、600回生まれ変わっては食い殺されるなんて見てるこっちも気が狂っちゃうよっ!!!」


え、なに、今、新しい情報出なかった?
なに100年って?


「100年って何さ?生まれ変わるって何さ!?
 まさか、転生先で死んだら、設定された種族に何度も生まれ変わるとかですか!?
 それを100年繰り返せと!? 実装石でっ!?」


「えーん!ごめんなさぃぃ〜!!!」




……
………





…と、まあ、そんな感じで。
苦笑いと半泣きで平謝りしているテラお姉さんに俺が問い詰めている冒頭の場面に至る訳です。




「本当にごめんなさい…。」


テラお姉さんは、未だに涙目になりながら平謝りしている。
さすがに、始終そんな姿を見せられると責める気も萎えた。


「…まあ、普通に考えたら俺、本当は挽肉になって終わってるわけだし。
 仕方ない、実装石以外の選択肢がないなら、やるしかねぇ。
 取り敢えず、その転生の取り決めってやつの目的とルール、できる限りの詳細を教えてもらっていい?」


俺は透けている手で頭を掻きむしる動作をしながら溜息を吐く。


「引き受けてくれるんですね!?よ、よかったぁぁぁ……。
 無間地獄に落ちてでも断る!なんて言われたらどうしようかとッ!
 …えっと、転生の目的でしたっけ。その、私もどう言っていいのか。
 神様って定期的に増えるんですけど、まあ、その、新しい神様の通過儀礼というか、要は成人式みたいなもので…。
 この転生者の観覧を成し遂げると、無事に一人前の神様として認められるっていうか。
 認められないと、まあ、その、管轄してる世界が消されるっていうか…。世界の存亡をかけたチキンレース…みたいな?
 で、転生者の種族とか血統は、交換先の神が決める事になってて…。
 あのビッチ女神…。うちの世界は実装石が名物だから(笑)とかほざきやがって…うう…。
 …こほん、それで、こちら側は転生者の希望から2つだけ転生種族の能力を調整可能です。
 あ、でも、チートとかダメで、転生先の種族だったら不思議じゃない範囲の調整…、ですが。」


女神(笑)が申し訳なさそうにゴニョゴニョと説明を垂れ流す。


「世界消滅とか…そんな気軽にできるイベントじゃないと思うんですが…。
 そんな気軽にできるくらい神様やら世界ってのは、いっぱいあるってこと?」


「あー…、パラレルワールドって言葉ありますよね? そんな感じというか…。
 歴史に大小様々な分岐ができる度に、新しい枝葉の数だけ世界と神様が生まれるんですよ。
 …で、それじゃ世界が多すぎるからって、近い世界同士で競合させられて淘汰されていくわけです…。」


…とんでもない舞台裏を見せられた気がした。


「…うーん、勝利の判定条件は? チキンレースっていうなら、明確なゴールがあるはずだよね?
 100年間を生まれ変わり続けるだけなら、どうやって勝敗決めるの?」

「ああ、それでしたら簡単です! 転生者は、どちらも思考能力は転生前の状態そのままなんです。
 期間中は強制的に輪廻転生が繰り返されるんですが、相手がもう二度と生まれ変わりたくないって思考停止したら100年目で輪廻転生が終わります。
 お互いに屈しなかったら、決着がつくまで100年間を何度も繰り返して、最後まで思考停止していない方が勝ちっていう感じで。
 だから、あのクソビッチは実装石なんて持ち出してきやがってッ!!!」


ギリギリと歯軋りしながら、女神さま(笑)が唸り声をあげる。
コミカルな表情で唸ってるけど、こちら側、かなり不利な条件だな、それ。
しかも、相手が100年で折れるような種族じゃないと、エンドレスの延長戦かよ…。


「ふむ、んで、相手の方は転生先、何になるの? 転生先の規約とかってあるの?」


「それが、まだ決めてなくて…。
 動物なら何でもいいので、こちらは普通に人間にして紛争の多い地域の血筋に限定して転生させようかなって…。」


「あ、それ却下。人間ってだけで出来る事の範囲が広いんだから、能力調整次第で舐めプになるじゃねぇか。
 こっちもえげつない種族にしようぜ。 うーん…、あ…(笑) ユーグレナとかどう? あれ動く植物だし…つまり動物でしょ?(笑)」



俺は少し考え込んだ後、ニヤリと邪悪に微笑んで提案した。



「ひぃっ…!
 え、えげつないですけど…それ、いいですねっ♪ その案、いただきますっ♪
 よっし、勝利が見えてきたかもっ!! じゃあ、さっそく転生先に設定しちゃおっと。」



テラお姉さんは、嬉しそうに微笑みピョンピョンと跳ねだすと、目の前の空間をスマホをいじるようにタップした。
すると、まるでゲーム画面そのままのようなタッチパネルが表示されたではないか。
その画面の中央には、さっそくユーグレナの画像が映し出されている。



「…俺も大概だけど、お姉さんのノリも大概だな。
 さて、そんじゃ、ちゃっちゃと俺の転生先の能力調整とやらも済ませちまおうか。
 実装石ねぇ…。結構スクは読み込んだけど…。やっぱチートになるからカオス実装なんてダメだよね?
 んー…、うーん…。アウトラインが“ 二度と生まれ変わりたくないと思考停止する ”だよね? 死んで次を期待するのはアウトじゃないよね?
 じゃあ、偽石がいつも体内から排出されて他者介入されない所へ紛失する不運な個体で、再生能力が極限まで高い個体……なんて設定できる?」



俺は、実装石の特徴を思い返しながら、2つの個体能力を提案した。
偽石が他人に触れられる状態だと、虐待派に捕まった時点でマズイ事になる。
死んでリセット…もできない拷問生活なんて普通に考えて精神が耐えられない。
いつでも偽石が割れる状態にしておけば、ヤバい状況に置かれたら自死で何度でもリセットできる。
ついでに再生能力も高ければ、不運の権化のような実装石であったとしても、不遇な状況を打破できるかもしれない。



「んーっと…ふむふむ。
 あっ、大丈夫です、誕生の度に偽石がランダムに紛失するっていうのも、パラメータを再生能力に極振りするのもできそうです。
 …えっと、ホントにそれで大丈夫ですか? なんか、ほらステータス画面見てくださいよ、幸運とか不死とか凄そうなのありますよ?」


テラお姉さんが、俺の方を指さすように空間をタップすると、
これまたRPGに出てきそうなステータス画面が表示される。

そこには、さっそく転生先であろう実装石が表示されていたのだが、
確かに能力選択の中に、幸運値とか、不死とかある…。
だが、なんだろう、なんか嫌らしい罠の臭いがする…。


「いや、たぶん、それ地雷だと思う。
 転生先は向こう側が選択できるんだろ?
 たぶん幸運なんて持っていたら、虐待を受けながら奇跡的に余命いっぱい生き抜くなんて状況に追い込まれるかもしれん。
 不死なんて、それこそ、100年間ずっと暗闇の中に幽閉されたりなんかだと、間違いなく発狂する未来しか見えないわ…。」


どんな状況に放り出されるか分からないのに、ノーリトライ&ノーコンティニューなんて、考えただけでも恐ろしい。
せっかく無限コンティニューできるなら、ゲーマーとしてトライ&エラーの繰り返しで模索していくのが醍醐味だろ!


「おお、するどい考察!
 ではでは、“誕生の度に偽石がランダムに紛失する”“再生能力に極振り”の実装石で確定ボタンっと。」



ヴォンッ…
ズズズ……



テラお姉さんが画面端の確定ボタンを押すと、電子音と共に、俺の足元の空間が急激に泡立ち始めた。
なんの余韻もなく転移を開始されてしまったようだ。俺、この世界とのお別れまだ済んでないんですが(笑)



足元から徐々に体が泡立つ異空間に沈んでいく様は、まるで某SF映画2作目のロボットが溶鉱炉に沈んでいくシーンのようだった。



「わたくしの言葉は、たぶん届かないと思いますが、
 100年間、ずっと目を離さず応援してますから〜!
 絶対にッ!絶対に諦めないでくださいね〜〜〜っ!」



なんか凄い悲痛な笑顔でお姉さんが手を振ってくれているので、景気づけの意味を込めて、
俺はお姉さんに向かい、某SF映画のT-800の例のシーンみたくサムズアップして消えてみた。


うん、我ながら、実にアホらしい消え方だったと思う…。
そんな事を考えながら、俺の意識はブラックアウトした。









暗転









ビュオオオオオオッ!




強烈な風を切る音が俺の鼓膜を突き破り、強烈な浮遊感が俺を襲う。

ブラックアウトしていた意識を、ゆっくりと再起動して、
当たりを見渡そうとしたが、下から吹き付ける風圧に目を開けるのも困難な状態だった。


どうやら地面に向かって急降下している最中のようだ。


せめて痛いほど強烈な風から目を守ろうと腕を伸ばそうとしたが、
なぜか、俺の手は顔を覆うことすら出来ない。

いや、違う。
構造上、顔を覆うことができないのか。

短い丸太のような手足、指のない手、口も完全に閉まらない。
下から吹き付ける風のせいで、歯を食いしばっておかなければ、容易に上顎と下顎が泣き別れてしまいそうだ…。



ああ、さっそくなのか。
さっそく、俺は実装石の体になってしまったのか。



さて、この様子なら何もしなければ、
そのまま地面に衝突してトマトが弾けたように一瞬で終われるだろう。


ふふふ、いいね、記念すべきトライ&エラー1回目だな。


そんな事を考えながら、衝突の瞬間に備えていたのだが。

何故か、いつまで経っても地面との熱いベーゼを交わすことができずにいた。
それどころか、落下中の俺の時間を、空間ごと引き伸ばされているような感覚に陥ってしまう。

ふと、俺は自分を取り巻く環境を観察しようとした。
だが…。







無音?





静寂?





風の音が止んでいた。

落下による風圧も、身を切るような冷たさも、強烈な浮遊感も止まっていた。

いや、違う、全てが止まっていた。




そんな静止した時の中で、唯一、堕ち逝く俺の前に、そいつは現れた。




「やっほー♪ 糞蟲ちゃん♪
 まったく、よくも、あのアホ女神に要らない入れ知恵をしてくれたわねぇ?
 おかげさまで、うちの転生者は既に心が折れちゃってるわよ、どうしてくれんの…。
 まったく、緑色の糞蟲がミドリムシを提案してくるなんて、どんな当てつけ?」




ふと気づいた時には、まるで最初からいたように、そいつはいて、そんな事を喋り出していた。


そいつはテラお姉さんと変わらないパンキッシュな髪色と巫女服で、
変わらない容姿で、変わらない声色で、変わらない仕草をしていた。


でも、何かが違う。
何かが決定的に違うんだ。



「デー?(お前、誰だ?)」



俺は脂汗を流しながら、喉奥から絞り出すように声を出した。
だが残念ながら、この体の声帯では、俺の発したい言葉が紡げない。

だというのに、こいつは、俺の鳴き声を受け取ると、まるで内容を理解したかのように自分を指差す。
そして、ニチャッ…と嫌な唾液音を立て口角を釣り上げて、底意地の悪い三白眼を俺に向けて語った。



「私? 私はテラ。“実装石のいる”世界のテラよっ♪
 うふふ、みじめで悲惨で無価値な ク ソ ム シ な ア ナ タ の生まれ先を決める運命の女神様っ♪
 といっても、うちの転生者が既に心が折れちゃってるから、100年後には自動で負け判定〜♪ 負け犬の女神様〜っ♪
 あははは〜♪ というわけで〜♪
 私は消滅確定しちゃったみたいだから〜? どうせなら、貴方で100年間、思いっきり楽しませてもらおうかな〜って?」



この自称女神は、憎悪と悪意を惜しげもなく絡めた視線で俺を睨みつけながら囁く。
ああ、なるほど、あの自称女神(笑)さまと、こいつとの決定的な違いが理解できた。

今回の流れを抜きにしたとして、この自称女神様には恣意と害意としかないようだ。



さすが、実装石のいる世界の女神様ってか? 
いいぜ、付き合ってやるよ、悪魔の台本に。

でも、お前の脚本通りになると思うなよ?
喜劇も悲劇も糞も味噌も全部まとめてひっくり返すぜ?



粘つくヘドロのような自称女神からの敵意を振り払うように、
俺は、ありもしない中指を立てながら自称女神に向かって吠え立てた。


「デププ! デッスーン?(ははは消滅確定かザマァm9(^Д^)! 腹いせに俺を最後の晩餐にしようってか?)
 デスデー?デッシャー!(上等だぜ、最後の一滴まで存分に味わえよ? クソムシの女神さまよォッ!!!)」


俺の雄叫びを受け止めた女神は、心底楽しそうに顔を歪めて嗤う。その様は、正に実装石の如き醜悪な笑顔だ。



そして時は動き出し、



グシャッ…



俺の一度目の実生は、潰れて終わった。










第一話へ続く 


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1 Re: Name:匿名石 2017/10/06-21:20:32 No:00004925[申告]
うーーーーーむ、この時点でもう予想できんw
いったいどうなんのコレ?!
2 Re: Name:CS 2017/10/07-00:24:54 No:00004929[申告]
続き、期待してます!
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