飼育用仔実装 「あなたの御傍にずっと居たいテチューン!」と言うキャッチフレーズで玩具メーカーの黒髪産業が、飼育用仔実装セットの販売を始めた。 どの様な商品かと言うとB4サイズの箱に、プラスチックのケースが入れてあり、その中に、飼育用仔実装(緑の実装服、靴、頭巾、パンツ、偽石はセット済) とポシェット、栄養を取る為のスポイド、取扱い説明書が入っている。【当然糞抜きはしている】 ひとり暮らしの独身男性、おたく、ニート、彼女が居ない歴の長い男達が、こぞって買って帰った。 だがしかし、飼育用仔実装は、可愛がる為だけを目的として販売されていない。 当然虐待派や中立派【無関心派】が飼う事も想定されているのだ。 この商品は、実は食用石を販売しているTOSHIAKIFOODSと黒髪産業が、共同開発した商品だ。 TOSHIAKIFOODSの加工技術と黒髪産業の商品化技術を融合させた物で、偽石は、強力な栄養剤で、コーテイングしている。仔実装自らが≪パキン!≫する事が出来ない。 そして頭の悪い食用石に、商品としてパッケージに入れるまでの毎日24時間睡眠学習をさせた。 どんなバカでも、一通りの社交辞令は覚える、更にニンゲンに依存するという本能も抑え込む事に成功した。 しかし、幾ら勉強しても洗脳しても、本能は治らないバカはいる。そんな、最低ランクの仔実装が、特売商品として発売された。 当然、学習が良く出来、依存本能を完全に消去出来た仔実装は、今後追加発売される お手伝い仔実装、癒し系仔実装、留守番仔実装として8000円で販売される。 出来の悪い仔実装は、大量生産されて虐待される為に売られていくのだ。 つまりキャッチフレーズは、あくまで愛護派から文句が出ない為のカモフラージュである。 買われて、可愛がられるか、虐待されるかは、運次第と言う事。 又、愛護派は飼育用仔実装などを買う事は無い、有名ブリーダーの躾を受けた実装しか買わない。 買うとすれば、面白半分に小学生が親に買って貰うか、虐待派に買われるかいずれかである。 販売初日の早朝、目的は違うが3人の男が開店前から並んでいた。 そして販売開始と同時に飼育用仔実装を買って帰った。 【としあきの場合】 3人の内1番最初に並んでいたのは、彼女居ない歴30年で年齢40歳の「としあき」だ。 恋愛したのは、小学校の時、テストで偶々学年トップの成績を取った為、一時的に女から注目を浴びた程度。 見た目は、ケンドーこばやしの容姿で、短足で腹が出ている。 いつも「ショートHOPE」をトレードマークの様に咥えていて、市内の中小企業の運送会社にドライバーとして勤務している。 自己中で、何をやらしてもダメ。心配した親が何度も見合いをさせたが、デートの食事代を女に出させたり、気遣いが全く出来ない。 【当然結婚はしたかったみたい】 見合い相手を仲介した仲人より何度も常識の無さのクレームが、親元に着て「今後は、お見合いの相手は紹介しない!」とまで言われた。 親の顔に泥を塗る様な事を何度もした為、遂に親にも『しゃじ』を投げられ「お前は勘当だ!二度と家の敷居を跨ぐな!」と言われてしまった。 会社では、商品の配達間違いも多く、得意先よりクレームも頻繁に来る。若い女子社員にバカにされ、全くうだつが上がらない。 早退、遅刻の常習犯で休む時は、いつも親兄弟が死んだと言い。「あいつは、一体、親が何人いるんだ!」と言われる始末。 親が会社の株主だから、クビにも出来ない。本人も当然親から勘当された事等、口が裂けても言えない。 だからいつも10歳年下の上司に呼ばれる時は「おい!嘘つき!ちょっと来い!」と言われ、怒られるときは「給料泥棒!」と言って怒鳴られている。 そんな男が、飼育用子実装を買った。 目的は飼育用仔実装を可愛がる為ではない、ストレス発散のため虐待する為に買うのだ。 初回版特価として3500円が1980円で発売された。彼は3ケース買って帰った。 「うひひひひぃ〜!こいつは、虐めがいのある商品だ。じっくりじっくり甚振って、ストレス解消に使ってやる。 3匹も買ったし、プラケースに入れたままだと3か月は眠ったままだ、半年は遊べそうだ!」 説明書を見ると、『スポイドの中にある栄養剤を口に入れれば暫くすれば目を開けます.・・・』と書いてある。 パックを開けて、スポイドを取り出し口の中に栄養剤を入れた。 暫くするとごそごそ動き出し、目を開けゆっくり立ち上がった。「テチ!ワタチを買ってくれてありがとうテチィ!これから宜しくテチ!」 そう言って手を挙げて抱っこして欲しいという態度を示した。 彼は、片手で持ち上げぎゅっと握った「テヒィ〜!い……痛いテチ!痛いテチィ!離してテチィ〜」≪ボスッ≫下に落とされた。 「痛いテチィ〜!痛いテチィ〜!」仔実装は床の上を転げまわって痛がった。 その内痛みが引いた仔実装は、むっくり起き上がって「どうしてテチ!ワタチが何をしたテチィ〜!」怒った様に詰め寄ると……。 「ふん!御主人様に対して有難うテチだと!普通は『有難う御座います』と敬語を使うだろうが。 それに何だいきなり抱っこか?お前舐めているだろう!」と逆に文句を言い返した。 「そ……そんな!ゴシュジンサマは、ワタチを可愛がる為に買ってくれたのではないテチか?」 「誰が、可愛がる為に買うかよ。ストレス発散のためだよ!これから死ぬ迄、痛めつけてやるからよ!」 としあきから、罵詈雑言を浴びせられた仔実装は、段ボール箱の中に入れられた。 「ゴ……ゴシュジンサマァ〜!ごはんが欲しいテチ!お腹が空いて倒れそうテチ!」 「だから言っているだろうが!人にお願いする時は敬語を使えって、何ごはんが欲しいテチだ!ごはんを下さいだろう!今日は飯抜きだ、そこで反省していろ!」 そう言って段ボールの蓋を閉めてしまった。 「何テチ!ワタチがどんな粗相をしたテチ?ゴシュジンサマに甘えたいだけなのに!」そう言ってその日は、空腹のまま夜を過ごした。 次の日の朝、部屋の中でごそごそする音がした。 仔実装は慌てて起き「ゴ……ゴシュジンサマごはんを……ごはんを戴けますかテチ!」 「仕方ねぇ〜、敬語使ったから飯をやるよ」そう言ってキットに付属していた栄養剤を放り込んだ。 「美味しいテチィ〜!」栄養剤を飲み始めたが、しかし目から自然に涙が溢れ出した。 「情けないテチィ〜!悪い事をしてお仕置きされるなら仕方無いテチ、でも敬語を使わないとか 甘えたとかでこんな仕打ちを受けるのは、おかしいテチィ〜!虐待する為だけに、買われたなんて辛いテチ!運が悪かったテチか?」 この飼育用仔実装は、どちらかと言えば賢い部類だった。 ≪仮に逃げ出したとしても生きてはいけない、一体どうしたら≫そう考えても簡単な事でもない。 実際のところ逃げ道等ないし死ぬまでいびられるだけだ。 「考えても無駄テチ!取り敢えず寝るテチ!」そう言って仔実装は、段ボールの中で寝てしまった。 その日の夜、”むっと"した表情でとしあきが帰宅した。 「くそ!あのボケ課長、自分の失敗を俺の責任にしやがって、糞生意気な野郎だ!俺より年下の癖によぉ〜!」と怒って≪ボン!≫「テチャーァ!」段ボール箱を思い切り蹴飛ばした。 「何時まで寝ているんだよ!この糞蟲、『ゴシュジンサマおかえりなさい』と出迎えろ!」と仔実装を睨みつけた。 「テッ!すみませんテチ、寝てしまっていたので申し訳ありませんゴシュジンサマ!」と謝ったが……。 「良いよなぁ〜お前は、好きな時に寝てりゃあ良いんだからな!」そう言っていきなりデコピンを食らわせた。 「テッチャァ〜!」仔実装は部屋の端まで吹っ飛ばされた。 「腹が減ったぜ!飯でも食うか!」としあきは、お湯を沸かしてカップヌードルを作った。 朝からキットに添付されていた栄養剤しか飲んでいない仔実装は、寝ていたとはいえ何か物足りない。 仔実装は、としあきが餌をくれるのを黙って待っていた。 「おい!欲しいか食え!」そう言って仔実装を呼んだ。「ご……御飯が貰えるテチか?」喜んで仔実装が近づくと、箸で摘ままれ、カップの中に≪ドボン!≫と落とした。 「熱い!熱いテチィ〜!助けてぇ〜」大騒ぎする仔実装を机の上に放り出し、としあきは、ラーメンを全部喰った後で再びカップの中に熱湯を入れそこに仔実装を放り込んだ。 カップが倒れない様に押さえて、熱湯の中で仔実装が熱さで苦しむ様子を、薄ら笑いを浮かべて眺めていた。 「そろそろ飽きた!」そう言うとシンクに汁ごと仔実装を流し、割りばしで押さえながら水を上から浴びせた「テッチャーァァァァ〜!冷たあ〜い!」 今度は冷水をぶっかけられた仔実装は、シンクの中で気を失ってしまった。 「やっぱ!汚ったねぇ〜なぁ〜!此奴はもう捨てるか!」そう言って生きたままゴミ袋に放り込んだ。 次の日の早朝、としあきは、ゴミ袋をゴミ捨て場に持って行き捨てて会社に出かけた。 時刻は8時、ゴミ収集車が、ゴミステーションのゴミ回収を始めた。 仔実装は、未だ気を失ったままの状態だ。 そして遂に仔実装の入ったゴミ袋が、収集車の中に入れられ回転板がゴミ袋を圧縮してタンクの中に押し込み始めた。 「テッ!痛いテチ、此処は何処テチィ〜!チボウ!」仔実装は、押しつぶされて死んでしまった。 その夜、家に帰ったとしあきは、瓶に入れた仔実装の偽石が粉々に割れているのに気付いた。 「死んだか!中々虐めがいのあるおもちゃだったな!じゃあ!2匹目を出すか!」 としあきは、居間の棚の上に無造作に置いた、飼育用仔実装の箱を破って仔実装を取り出した 『このまま潰したらどんな反応するんだろう』と思いながらも「いやいや、こいつは苦しめる為に使わにゃあ! 1匹目は速攻で殺したな、今度は、1980円税別の元をとるか、じっくり甚振ってやる」そう言いながら仔実装の口に栄養剤を入れた。 「テッチィ〜!ゴシュジンサマ、ワタチを買ってくれて有難うテチ!これから宜しくテチ♪」 「ようこそ!生き地獄へ!お前は少なくとも3か月は、嫌と言う程可愛がってやるよ!」 【よしあきの場合】 一人暮らしの「よしあき」30歳、国立大卒のモデル並の美人の彼女が5人もいる。つまり5股を掛けている。 自分自身も菅○将暉並の美顔をしていて背も高く会社行く時は、ティラノのオーダースーツを身に纏う。 大手企業に勤めて営業成績は、いつもトップ、7ヵ国語を駆使して、海外の大手企業の新規開拓など彼に任せれば、100発100中で仕留めて来る。 若干30歳にして既に取締役に迄のぼり詰め、「次期社長」と迄言われている。 京大卒のエリート中のエリートで何をやらしても完璧で隙のない男。会社の女子社員の憧れの的。 金持ちの癖に金に細かい御曹司おぼっちゃま、そんなモテ男も飼育用仔実装を購入した。 彼は、虐待派でも愛護派でも無い、どちらかと言えば、中立派と言う感じである。 5人も彼女が入れば、ワガママ者もいるし、デートのお金は彼氏持ち、そうかと思えは、絶対ワリカンを主張する者、気遣いができる優しい者、世話焼き等 性格も多種多用の彼女がいる。デートでは、ポルシェを乗り廻して悠々自適な彼の悩みが、いつも困るのは女との話のネタ。 付き合っている彼女は、自分の好みだから仕方ないが、彼女も頭が良いから、1回聞いた話の内容は覚えている。 仮に、他の女にするネタをうっかり喋ってしまったら....。「よしあき!何なのその話、私そんな話に興味ないんだけど! 私の興味の無い話なのに、なんだかやけに詳しく教えてくれるわね!どう言う事か、説明して貰おうじゃないの!」となってしまう。 話す相手によっては「浮気しているのね!」と言って泣き出されるのが、一番困る。 本当に話題の仕入れには、苦労するし疲れる、彼女の好みの話を考えるのも面戸臭い。だがしかし、5股は辞められない。 となれば.....。「そうだ!共通の話題を作ろう!」必然的にそうなる。その為に飼育用子実装を買った。 つまり彼は、女との話のネタ程度に仔実装を買った為、可愛がるつもりも無い。 飼育用仔実装とは、どんな生き物が位にしか考えていなかった。 彼は、説明書の通り栄養剤を仔実装の口に入れた。 暫くして「テチュ~ン!ゴシュジンサマワタチを買ってくれて有難うテチ!これから宜しくテチィ〜!」と元気に挨拶して、手を出して抱っこして欲しいポーズを取った。 しかし「ふーん!それで!何がしたいのだ!」と素っ気ない返事を返した。 「ゴシュジンサマ抱っこして欲しいテチ!」 「俺ゴシュジンサマだよなぁ〜!お前ゴシュジンに抱っこ迫るなんておかしくねぇ〜!」 「抱っこしてくれてもいいテチ!」 「抱っこしなければダメな理由を言え!理由を!」 「ゴシュジンサマは、ワタチの事がお嫌いテチか?」 「いや!そう言う事もないけど、お前は、抱っこしないと嫌いになったとかそう言う事を言う訳か?」 「可愛がって欲しいテチ!いや、可愛がるべきテチ!」 「いや!お前は何をどう可愛がって欲しいんだ!具体的に可愛がって欲しい内容を言え!内容を!」 「ゴシュジンサマは、ワタチを可愛がる為に買ってくれたテチよね?」 「いや!そんな事は無い。ただ女との話のネタ位にしか考えてなかったけどな!」 「じゃあ!ゴシュジンサマは、ワタチを抱っこもしてくれないし、可愛がってもくれないテチか?」 「可愛い女の子なら可愛がるけど!お前今日来たばかりの動物だよな!」 「動物じゃないテチ!ワタチも可愛い女の子テチ!可愛がって欲しいテチ!」 「だから、俺は、お前が目を開けた途端に抱っこしてとか、可愛がってとか言う意味が、わかんねぇ〜!って言っているだけ!」 「テッチュ~ン♪」 「な....何だ!何だ!それは何かのまじないか?」 「お愛想テチ!ワタチの可愛さをアピールしたテチ!これでゴシュジンサマは可愛いワタチの虜になったテチ♪」 「嫌!そんな事はない!何だか余計にムカついてきた!1発殴ってもいいか?」 「どうして……どうしてテチィ〜!どうしてこんな可愛い女の子を殴るなんて言うテチィ!ワタチは、ゴシュジンサマに可愛がられて当たり前に設定されているテチィ〜!」 「そんな事、俺は知らん!お前を作った奴が勝手にインプットしただけだろう!」 「そんな事ないテチ!ゴシュジンサマは、本当は、ワダチの事が好きテチ!だからこうやって意地悪しているテチ!」 「そんな事ないってー。嫌いなもんは嫌と言う、お前は、嫌いだ!」 「嫌いと言わないテチ!、ワタチを好きと言ってテチ!」 「えーい!鬱陶しい!黙れそれ以上喋るな!」 「酷いテチ!酷いテチ!か弱い女の子を泣かせるなんてテチ!それからお腹も減ったテチィ〜ごはんも欲しいテチィ〜! と食事の催促をしたものだから……。 「何!お前飯まで催促するのか?俺は、仔実装がどんな生き物か見て見たかっただけなのだが、抱っこしたり、餌を与えたり、可愛がったり世話しないといけないのか? そりゃ面倒くさいなぁ〜、俺はお前が飾り位になってくれたら良い位で買ったんだが、それじゃあ〜!邪魔だな!出て行ってくれ!」 「テッ!ゴシュジンサマそんな事、言わないで可愛がってテチ!可愛い女の子を追い出すなんて男の風上に置けないテチね!」 「動物にどう思われようと結構、邪魔だ!早く出て行け!」そう言って部屋の外に摘まみ出した。 ≪トン!トン!トン!≫泣きながらドアーをノックして、「ゴシュジンサマぁ〜!可愛いワタチを捨てないでぇ〜おうちに入れてぇ〜! テェ〜テンテンテン!テェ〜テンテンテン!」外で金切り声を出して騒ぎ出した。 「こりゃあ〜近所迷惑だ!取り敢えず、何かに入れて明日捨てよう!」そう言ってドアーを開けたら 「ゴシュジンサマァ〜寂しいテチィ〜やっぱりワタチが1番好きなんテチね!」そう言って飛びついて来た。 「ああ!鬱陶しい動物だ!ここに入っていろ!」そう言って海苔が入っていた缶に放り込んで蓋を閉めた。 更にガムテープで蓋が開かない様に閉め、ナイロン袋に入れ入口を硬く結んだ. 「ゴシュジンサマァ〜!ゴシュジンサマァ〜」未だ少し声が外に漏れる。 「本当に喧しいなあ〜!こんな物買うんじゃなかった!大金をドブに捨てた様なものだぜ!」 そう言って、自分が着る事が無くなった服を押入れから出して何重にも巻いて最後にガムテープで巻いた。 「うん!これで静かになった、明日はゴミの日だ!さっさと捨てよう」そう言ってその日は寝た。 仔実装はと言うと、目からボロボロ涙を流して「ゴシュジンサマァ〜!どうしてテチィ〜!どうしてテチィ〜! ワタチは、何も粗相はしていないテチィ〜!寂しいテチィ〜!寂しいテチィ〜!」 海苔の缶を≪ペチ!ペチ!≫叩いて大騒ぎした。しかし、上から何重にも布を掛けられ、台所のゴミ袋に入れて 戸を閉め切っていたので外には仔実装の声は全く漏れなかった。 次の朝、一番にゴミ捨て場にゴミ袋を持って行ったが、先客のとしあきがゴミ捨てを済ませていた。 2人はすれ違いざま「おはようございます!」「おはようございます」と挨拶を交わした。 よしあきは、大あくびをして家に向かっていたら、向こうから、たかあきが、ゴミ捨て場に向かって行った。 よしあきが捨てた仔実装は、泣き疲れて眠っていたが、≪ドサッ!≫放り投げられた感じで目が覚めた。 「テ!ゴシュジンサマ!ゴシュジンサマ!早く出して欲しいテチィ〜!」と再び騒ぎ出した。 暫くすると外からは、トラックの留まる様な音がして「よぉ〜し!入れるぞ!」と言う声がかすかに聞こえる。 すると、再び≪ドサ!≫放り投げられ、続いて≪ドサ!≫≪ドサ!≫≪ドサ!≫≪ドサ!≫自分の上に何か乗せられた感じがした。 そして…….≪ゴオオ〜ン!≫≪ゴオオ〜ン!≫と大きな音がし出した。 「な……何テチあの音は?」そう思っていると≪グシャァ〜!≫「テジィ〜!何かに押しつぶされるテ……くるじい〜!」≪パキン!≫押しつぶされてしまった。 結局、彼女はただ単に鬱陶しがられるだけで、殴る蹴るの暴力による虐待は受けなかった。 と言うか、仔実装を購入したニンゲンが、単に実装石の事に関しての知識が全くなく、ただ生き物の世話をするのが苦手なニンゲンだったと言う事だけだったが......。 しかし、この仔実装は、ニンゲンに必要とされないという寂しさを強要され、精神的な虐待をされて最後は捨てられたと言う事だろう。 【たかあきの場合】 ニートのたかあきも飼育用仔実装を失業保険で購入した。【税金でそんな物買うなよ!】【作者談】 年齢45歳彼女いない歴45年、見た目は津田寛〇の容姿で背も高くてブオトコでもない。 そんな男が何故生まれてこの方彼女が出来ないのか?それは、彼の異様な性格にある。【当然彼女は欲しいと思っている】 彼の異様な性格それは.....。 昔から何か1つの事に没頭すれば周りが見えなくなり、人の忠告にも一切耳を貸さない。 切手収集、古銭・コインの収集、日本国中の城めぐり始めたかと思ったら、プロ野球阪神タイガースの応援の為に、甲子園のライトスタンドの年間指定席プレミアムシート117,000円を購入。 試合のある日は毎回甲子園に通いつめ、公式ファンクラブ会員特典でもらった「Tigers」のロゴの入った黄色いタオルを首に巻く。 試合には背番号1「TORITANI」のユニフォームを着て、選手個人の応援歌を全部暗記し熱唱。 阪神の応援旗を振りまわして、1年を通して阪神の応援にのめり込む。 敵のチームが得点しようものなら、大声で怒鳴り散らし、阪神のチャンスに、前にいる観客が興奮して、立ち上がろうもんなら、後先の事を考えず平気で蹴り倒す。 阪神が勝てば、涙を流して大声で『六甲おろし』を熱唱して、阪神が負けようものなら、真っ赤な顔をして、敵のチームに対して、耳を疑う様な罵詈雑言のオンパレード。 次はJリーグ(J1)の観戦にのめり込みガンバ大阪の応援の為、北は北海道から南は、九州まで行ったり来たり。 「Panasonic」背番号10、今はプロゴルファーになったはず?「磯貝洋光」名前の入ったユニフォームをいまだに着ている。 ホームでは青、アウェイでは白を着てガンバのサポーター席の最前列に立って、応援団顔負けの派手な応援をする気合の入れよう。 この御時世に片手にチアホーンを持って吹き鳴らす。 周囲の観客から白い眼で見られてもお構い無し。そして、博多の森競技場でチアホーンでの応援を注意した、警備員と乱闘騒ぎを起こして球場から摘まみ出され。 それに飽きれば次は、AKBの追っかけ、ペンライトでの踊りも完璧にマスターし、AKBメンバーの「こじはる」個人のファンになり、ブロマイドを買い漁り、こじはるの顔を印刷した、うちわを持っての大応援。 こじはるが、AKBを卒業した後は、SKE → NMB → HKT → 乃木坂 → 欅坂それから、AKBとはなんの関係も無い「橋本環奈」のファンに変遷して、もはや『美少女タレントおたく』の状態。 チケットが手にはいらなけれは、チケキャン、モバオクで高値で落札してコンサート会場に行く。 人間に飽きたら、その次は、初音ミクのフィギア収集を始め、最期は、初音ミクのフィルムコンサートを見に日本各地を駈けずり廻る。 次から次へとする事を変えて、長続きせず熱しやすく冷めやすい性格の男。 そんな事ばかりしているから、仕事も長続きし無い、金も無い、そんな男には女も近寄ら無い。 ナイナイ尽くしの計画性の無い関西出身のダメ男が今回、はまったのは、実装石。 どちらかと言えば、たかあきは、愛護派の部類である【あくまで自称だが......】、愛護派と言っても野良を愛する事は無い。 むしろ飼い実装派で、仕事も行かずに実装ショップに行く毎日だった。 それが、仕事中に実装ショップへ行って、ウインドショッピングをしているのを偶々、得意先に営業に行く部長に見られてしまった。 更に悪い事に1時間後、営業を終えてその場を通った部長に見られて「仕事をする気が全くない……顛末書を書くように」と言われたが、それも拒否した。 「仕事をやる気が全く無い!」と部長に言われて逆切れ「うるさいこのハゲ!死ね!」と言ってしまい当然クビになって現在ニートの身である。 彼は、とにかく仔実装が好きである、実装ショップのウインドウの前で1日過ごす事もある。 だが、ペットショップの躾済みの仔実装は、1匹10万位が最低ランクで彼の失業保険で買う事など出来ない。 しかし、飼育用仔実装の発売は、金の無いたかあきにとっては、喜ばしい事だった。 「これで、俺も仔実装ちゃんが飼える、大事にしてやるぞ!」 彼は、仔実装を買ったついでに、アクリルの水槽、フード、おもちゃ等を買おうとしたが……。 店員は「お客様、飼育用仔実装は、そう言う飼い方をしなくても良いです。 餌を与えなくても、栄養剤を1口飲ませれば10日は生きています。 パッケージには、約20回分の栄養剤があります。それさえ飲ませれば200日は生きますので…….」 店員はそう説明したが、彼は「たった200日だけしか生きていけないのは可哀想じゃねぇ〜か!」 「でもお客様、セットされている栄養剤以外の……」 「うるせぇ〜俺は俺のやり方で飼うからほっとけ!」 そう言って店員の言葉を遮ってしまい「釣りはいらん!」代金を投げる様にして置いて帰った。 「俺の仔実装ちゃんがたった200日の命だとざけんじゃねぇ〜!」 しかし、店の店員は「200日でも長く生きている方だと思うが、2000円未満で売られている仔実装が、それ以上生きていればこっちは商売にならないしな。 それに仮に200日以上生きていたとしても、いつまでもあの可愛い仔実装じゃあねぇ〜だろうしな。それと人の話は最後まで聞かないとなぁ〜」 家に帰った、たかあきは、水槽、おもちゃ、フードを準備して、≪わく!わく!≫しながらパッケージを開け、仔実装を取り出し、栄養剤を飲ませた。 「テッチャ〜!ゴシュジンサマァ〜!ワタチを買ってくれて有難うテチィ〜!」そう言って元気に手を出して抱っこしてのポーズを取った。 「可愛いなぁ〜!そうだ抱っこする前にこれをやろう!」目の前には、水槽、おもちゃ、フードが置かれた。 「それから名前も付けよう。お前はミドリにする。解ったな!今日からミドリだぞ!」 「テチャ〜!お名前まで貰えるテチィ〜嬉しいテチィ〜」仔実装は、飛び跳ねて喜んだ。 「ゴシュジンサマ抱っこしてテチィ〜!」仔実装がそう言って近寄って来た。 「その前に、ごはんを食べたら良いんじゃないのか?」そう言って皿にフードを盛った。 「フ……フードテチィ〜!」そう言って仔実装は、フードが盛られた皿に飛び込み、一気に平らげ2皿目を催促、2皿目も口の中に流し込む様に飲み込んだ。 「ゴシュジンサマもう一杯!」 「お前、すげえ早食いするなぁ〜!慌てて食わなくても、餌はたっぷりあるから落ち着いてゆっくり食えよ!」 たかあきは、小さな仔実装の豪快な食べっぷりを見て嬉しい気持ちになっていた。 「美味しいテチィ〜!美味しいテ……」 「うん!どうしたんだ?」 「く……苦しいテチィ〜!苦しいテチィ〜」腹を押さえて床の上をのたうち廻った。≪パキン!≫ 「えッ!何で……何で….おい!ミドリ!どうしたぁ〜!」たかあきは仔実装を抱き上げたが、既に目は白く濁っていて、口からは涎を出して死んでいた。 「くそぉ〜!あの実装ショップめぇ〜!毒の入っているフードを寄越しやがった!」 怒り心頭のたかあきは、閉店間際のショップに怒鳴り込んで行った。 「おい!てめえ毒の入ったフードを渡しやがっただろう!」そう言って店主を怒鳴りつけたが……。 「お客様、説明書をちゃんと読まれましたか?『仔実装は、餌を欲しがりますが、なるべく同梱の栄養剤を飲ませて下さい。 産まれてから何も食べていないので栄養剤以外のフードを与える場合は一口程度にして日数を掛けて徐々に増やして行くようにしてください』と記載していますよ。 私は虐待派のお客様以外には、お客様の方で手違いが無いように説明しますが、あなたは俺のやり方 飼うとおっしゃって、私の話を聞かずに帰られたじゃないですか! 説明書を読みもせずに、又、飼育方法も確認もせずに、ご自分の判断で行われた事まで店が責任を持つ事は、出来ませんよ。 更にそれは実装の生態を理解せずに行動を起こすのは虐待と言っても差支え無いですよ!」 「わかったよぉ〜!じゃあ!もう1箱買う!寄越せ!」そう言ったが……。 しかし店主は「残念ながら在庫切れでもうありません。注文は掛けているのですが、入荷時期は解りません!」 「じゃあ!注文するから1箱置いとけよ!」 「残念ながらそれは出来ません。入荷時期が分かりましたら店頭の掲示板とHPに発売日をお知らせします。その日に店頭に並んで下さい。 今人気の商品の為、出荷が追い付かず、我々もいつ納品されるかわかりませんので、予約は全てお断りしています」そう言って冷たく言い放った。 「そうかい!他で注文するからいいぜ!こんなサービスの悪い店二度と来るか!」そう言って帰った。 家に帰った彼は、「何で俺が、こんな事を言われないとならんのだ!」そう言いながら死んだ仔実装をゴミ袋に≪ポイ!≫と捨ててしまった。 「明日、他の実装ショップを探そう!しかし、あの店員ムカつくぜ!」 次の朝、死んだ仔実装を入れたゴミ袋を捨てて、別の実装ショップに向かった。 彼女は、生きている内は大事に扱われた?(説明書もろくに読まなければ虐待と言っても差支え無い) 死んだらゴミを捨てる様に扱われる。所詮、自称愛護派の行動とはそんなもんだろう。【それがいつまで続くやら疑問だが】 全国で飼育用仔実装が販売されているが、果たして何匹が幸せな生活を送っている事やら。 FIN .
1 Re: Name:匿名石 2017/09/20-00:55:29 No:00004882[申告] |
10歳で彼女持ちとかとしあきは絶対許さねえ |
2 Re: Name:匿名石 2017/09/20-02:15:28 No:00004885[申告] |
うん、やっぱり愛護派は糞だな |
3 Re: Name:匿名石 2017/09/20-08:45:04 No:00004886[申告] |
虐待派、無関心派、愛護派の順で飼い方がまともになってしまうあたり実装石って実装石だな |
4 Re: Name:匿名石 2017/09/20-20:27:01 No:00004888[申告] |
作者の成長が見える |
5 Re: Name:匿名石 2017/09/21-16:35:21 No:00004893[申告] |
登場人物のプロフィールを追記しました。
この3人のプロフィールから、物語に書ききれていない虐待を 想像してみて下さい。 時間が出来れば、私の方で、3人の虐待に関するスピンオフを考えています。 【作者】 |
6 Re: Name:匿名石 2017/09/21-20:51:15 No:00004894[申告] |
独特の擬音表現が癖になってきた
今回は三者三様の死に様がスピーディーに読めて良かった |
7 Re: Name:匿名石 2017/09/22-02:11:07 No:00004895[申告] |
海苔の缶に入れて服で封印と言うフレーズを見て
昔のスクでお茶の缶に詰めて忘れ去られた仔実装が数年ぶりに押し入れから 発見されて持ち上げた衝撃で仮死から辛うじて復活して結局、実験派に 貰われるって話思い出して、もしかしてと思ったが違ったw |
8 Re: Name:匿名石 2017/09/22-19:25:40 No:00004896[申告] |
20Kbyteって、読むと短編だけど
書くと結構長いんだよね この短期間にこれだけたくさんの作品を書くってすごい才能だと思う 文章は書けば書くほど上手になるから この調子でガンガレ~ |