子供なんか産むんじゃなかったデス! 「もう!台所に実装の糞が落ちているじゃないの!」母の怒鳴り声が、2階の私の部屋迄聞こえて来た。 『又、ミドリの子供が粗相をしたのね......。これで何回目なの!』 私は「はあ〜!」とため息を漏らしながら父が、言っていた事を思い出していた。 私の名前は亜季この家の一人娘。私の家では、ミドリと言う実装を飼っている。 そのミドリとの出会いは今年、中学3年の夏休みである。 中学の生物の宿題が「実装石の生態」について調べる事であった。その宿題提出の為にミドリを買ったのだ。 飼い実装が、当たり前になった昨今、中学3年にもなれば実装についての生態位、知っておくようにとの事から、この様な課題が決定されたらしい。 実装嫌いの父兄会からの反応は悪かったが、高校入試の内申書に響くので仕方なく、課題を受け入れた様だ。 その宿題に乗り気でなかった父や母も私が、手を合わして「お願い!」と言うと「仕方ない!」と実装を買う事を承諾した。 しかし飼うのが短期間でも、躾をされていないのを買うのは、どうかと言う事で少し高いが、躾済の仔実装を勝った。 当時、私がミドリを買った店では、自分の店で買った仔実装なら夏休み期間中は、販売価格の半額で買い戻して くれる「躾済仔実装、買い取サービス」と言う物があった。私の家も当初はその予定だった。 しかし躾済と言う事で、決められた約束事はきっちり守るし、少し位なら何か手伝いもしてくれるので 父も母も「まあいいや!」となってそのままズルズルと今迄来てしまったのだ。 夏休みが終わって2学期になる頃には、中実装になったミドリは「子供が欲しいテス!」と言う様になっていた。 「ちぇ!やっぱり買い取ってもらうんだったな!でも中実装ならもう無理か!」父はそう言って舌打ちをした。 そうは言う物の体が大きくなった分、仔実装に出来ない様な力仕事もしてくれる。 だが、父は「もし子供が産まれたら俺達は、これまでの様な生活は出来ないだろう。今の内に釘を刺す!」 そう言ってミドリを座敷に呼び出した。 「お前、子供が欲しいと言っているらしいな!」 「そ......そうテス!欲しいテス!絶対欲しいテス!許可してくれるテスか?」 「バカか!お前は!産みたければ、お前の勝手にすれば良い。しかし、俺は困る、産むならこの家から出て行け!産まないなら今迄通り死ぬ迄飼ってやる!」 「そ......そんなぁ〜!ゴシュジンサマ殺生テス!」 「殺生なのは、お前の方だ、誰に断ってガキを産もうとしている!ガキが産まれれば、この家の汚れるし騒がしい、それにガキが腹の中に居れば今迄の倍の餌が欲しくなる。 言って置くが餌は増やさんからな!産めばこの家から叩き出す!俺の言いたい事は、以上だ!」 10月にもなれば中実装だったミドリも今は成体実装になった。 あれほど子供を産んではいけないと注意されていたのにもかかわらず、ミドリはこっそり妊娠していた。 程なく両目が真っ赤になっているのを家族全員が気付いた。 父は、「やっぱり、妊娠しやがった。飼い主をコケしやがって、奴はそれなりの覚悟があるのだろう!」 10月の後半のある日、成体になったミドリは、家の縁の下に潜って黙って出産した。 出産した日の夕方、家の下から「テチ!テチ!」声も聞こえ、糞の臭いもし出した。 「やっぱり産みやがったか!糞蟲!」そう言って父が畳の下をめくると10匹の仔実装がいた。 床下から10匹の仔実装を掴みだし、そのまま庭に放り出した。 「テ......テッチャ〜ァァァ!さ......寒いテチィ〜!」 10月も後半、しかも夕方ともなれば、日中と違い気温は格段に下がるし、吹く風も冷たい。 ≪ブルブルブル≫「さっ.寒いテチ!凍え死んでしまうテチ!」冷たい地面に直接放り出されたのだ。 体が弱い小さな仔実装の体温を、冷たい地面が容赦なく奪っていく。 更に生まれたばかりの仔実装の体は、脆いし少しの寒さでも体にこたえる。 10匹の仔実装は体を寄せ合って震えていた。 「何だ!お前ら床下から外に放り出したらそのザマか!そのまま死ね!」そう言って笑った。 そこにミドリが生ゴミを持って帰って来た。 「デッ!ゴシュジンサマ!そんな所に置いたら、こ......子供が死んでしまうデス!寒さで震えているデス! 床下に.......床下に入れてあげてデス!」 そう言って、ミドリは、自分の一番近くにいた5匹をとっさに抱き上げた。 「うるさい!お前が約束を守らないから、そんな目に遭うのだろう、明日、捨ててやるそのまま死んだら良いんだ!」 「ゴシュジンさま、そ......そんな殺生な!お願いデス!暖かい所に......暖かい所に入れてあげてデス!」 そんな問答をしている内に、抱っこされていない、5匹の仔実装が、地面にうつ伏せになり、ぐったりしているのに気付いた。 「次女、6女、7女、8女、9女、どうしたデス!ああっ!体が氷の様に冷たい、い......息もしていないデス!子共達ぃ〜死なないでぇ〜!オロローン、オロローン」 産まれたばかりで、体力もない仔実装が、温かい床下から寒風が吹く、外に放り出されたのだ。 多分、死んだ5匹は特に体が丈夫では無かったのだろう。外に出されて直ぐに死んでしまった。 私は、ミドリが哀れに思えて「お父さん、暫く様子を見て、から判断して、今ここで殺すのは可哀想よ。 もし仔実装が言う事を聞く子達なら可哀想だし、少しだけ私に免じてお願い飼わせて!」と言ってしまった。 基本、私が頼めば、殆どの事は、OKだった!「お前がそう言うなら1週間だけ様子を見る!しかし、こつらが、全く改善の兆しが無ければ捨てる!解ったな!」。 そしてミドリに向かって「此処に居るのも、出て行くのも自由だ!それまでにガキの躾をしろ!そうでなければ、今度は娘に頼まれてもお前達を叩き出す!」そう言った。 しかし、子供を殺されてショックを受けているミドリにその言葉は伝わらなかった様だ。 飼い実装は飼い主から離れて生きてはいけない。のたれ死ぬか同族の餌になるかだ。 しかも夜は冷える晩秋のこの時期に、外に放り出されたら仔実装はたちまち死んでしまうだろう。 仔実装の躾の為に1週間だけ家に置いて貰えているのに、ミドリはそのまま飼って貰えると思ったみたいだ。 私は仔実装のトイレの教育に入ったが、3日経っても4日経っても、5匹は全く覚えようとしない。 ミドリは、どうするのかと言うと、家の手伝いはしないし、仔実装の教育は全くしない。 こっちが、「ちゃんと覚えないと家から放り出されるよ!」と仔実装に注意しても......。 「ゴシュジンサマ、子供にはのびのびさせてやらないと可哀想デスよ!」とこんな具合で、1週間前事など、遠の昔の様な態度だ! 『実装って本当にバカなのか、忘れっぽいのか、そこまで研究しておくんだった』そう思っている内に、とうとう期日の1週間が来た。 その期日の今日に台所で仔実装が、糞をしたものだから「亜季ぃ〜!一体どうなっていの?ちっとも躾が出来ていないじゃない! お父さんの前であれだけの啖呵切ったのだからねー。1週間経っても躾ができないのじゃあ、捨てる事に異論はないよねぇ〜!」 普段余り怒らない母が、久しぶりに切れた。 夜、家に帰って来た父は、台所での糞の事は既に知っていた。 父は、私に「約束した通り明日捨てる!実装ゴミの日だ!それをミドリに伝える! 多分お前を頼って来ると思うが、絶対に甘い顔をするなよ!本当にこんな面戸臭い事になる位なら最初にガキ10匹、皆殺しにしておけば良かったよ!」今度は、私が嫌味を言われた。 「お父さん!私の口から言うわ!その方が、良いと思うけど!」 「好きにしろ!」 私は、ミドリの所に行って「ねえ!今からあんた達のママと話があるから少し部屋から出て行ってよ!」 仔実装達にそう言ったが......。 「ママと一緒に居るテチ!」 「ゴシュジンサマ一緒に遊ぶテチ!」 「抱っこしいて欲しいテチ!」 「ワタチもお話聞きたいテチ!」 「うんこ出たテチ!」 全く言う事を聴く気耳を持たないそれどころか、ミドリ迄「ゴシュジンサマ、前にも言ったデスけど、子供はのびのびと育てるのが一番デスよ!それに子供がいても話は出来ますデスよ!」 リーチを掛けられて即、当たり牌を振り込んだ本人が、こんな調子なら仕方ない。 「本当にあんたは救い様の無いバカね!何を呑気な事を言っているの!この家に住めるのは今夜で終わりなのよ!あんたら一家、明日捨てるから今夜日中に準備しないといけないのよ! 今夜中にダンボールにあんたら家族入れて、庭に出すのよ。今夜は庭で過ごして、明日の朝、お父さんが実装ゴミにあんたら全員捨てるのよ!」 そう言うとミドリの顔から血の毛が引いた。 「そ......そんなぁ〜!ゴシュジンサマいきなり言われてもワタシ達は......」 「捨てるなんて酷いテチ!」 「横暴テチ!あ……あんな寒い所では寝られないテチ!」 「発言を撤回するテチ!」 「野良は嫌テチ!」 「外は嫌テチ!死んでしまうテチ!」 「1週間前の約束はとうに忘れて、よくそんな事が言えるものね!私は毎日注意したわよ!早く覚えないと追い出されるってね!」 私の表情がいつもと違い険しいのに何時も違うと察した様で......。 ミドリは「少し家族で話合うデス!時間が欲しいデス!」そう言って奥にある自分達の部屋に戻ろうとした。 すると廊下でその話を聞いていた母が凄い剣幕で部屋に入って来た。 「あんたらが、何の話をする必要があるのよ!寄りにもよって台所に糞をするなんて!早く出て行け!そう言って持って来たダンボールに実装親子を全員放り込んで庭に放り出した。 そして、実装達が愛用していたおもちゃやコップ、お皿、実装服を別の段ボールに放り込んで実装親子の横に投げ出した。 「ああ!ワタシ達のコップやお皿が!」 「あれは、ワタチが大事にしていたぬいぐるみテチ!」 「ワタチのおもちゃを捨てないテチィ〜!」 「ゴ......ゴシュジンサマ酷いテチ!ワタチは本気で怒ったテチ!ぶっ殺してやるテチ!」 「ゴシュジンサマァ〜!捨てないでぇ〜!......どうして捨てるテチィ〜!」 実装親子は泣きながらそう言ったが時既に遅かった。 躾済みの実装は、仔実装の教育が出来ないと言われて居たが、全くその通りだった。 躾らしい躾が出来なく自由奔放に育てていて、糞蟲にはなっていないが、我慢が出来ない状態になっていた。 こちらが本気で捨てに掛かっている事に実装全員が気付いた時、既に、実装親子の日用品は全て捨てられていた。 「ミドリ!あんたが子供を作らなければ、例え産まれてサッサと始末して入れば、こんな事にならないで、死ぬ迄飼って貰えたのにね!」 母が、薄ら笑いを浮かべてこんな捨て台詞を吐いた。 「助けてテチィ~!」 「ゴシュジンサマァ〜!どうしてテチィ〜!」 「捨てないでテチ!」 「どうしてテチィ~!」 「冗談は辞めるテチィ~!おうちの中に入れる事を許可するテチィ~!」 この後及んで「未だ許して貰える。中に入れて貰える」と実装親子は、そんな甘い考えをしていた。 家の戸が≪ピシャリ!≫と閉められ、電燈が消され周囲が真っ暗になった時点でミドリ一家は、こちらの本気度がやっと伝わったみたいだ。 「み.....皆、ゴシュジンサマは、本気でワタシ達を捨てる積りデス!このまま捨てられたらワタシ達は絶対に死ぬデス!何とか考え直して貰うデス!」 「悪い冗談テチィ~早く中に入れるテチィ~!」 「何度も同じ事を言わせるなテチィ~!早く入れないとぶっ殺すテチィ~!」 「暗い外は怖いテチ早く~!中に入れてテチィ~」 「ワタチ達を捨てるなんて酷いテチィ~」 「中に.....中に入れてぇ~!」 「どうしてこんな事するテチィ~!」 父が「中に入れろ!どうしてこんな事する!ばかりで一言も自分達が悪いと言うのを詫びる事をしない!喧しいからリンガルを切れ!」そう言ったが.....。 しかし、リンガルを切れば「デス!デス!」「テチ!テチ!」余計に騒々しい。 父がネムリスプレーを持って来て「近所迷惑だ!寝ていろ!」そう言って掛けると、実装親子は、たちまち眠ってしまった。 「最初から問答無用でこうして捨てればよかったんだよぉ〜!このまま明日は捨ててやる! 丁度、実装回収が始まる頃には、ネムリが切れているだろう!苦しみながら、ゴミ収集車の回転板に押し潰されたら良い!」中立派の父が此処まで言うとは......。 「それから亜季!今後実装は、お前の頼みでも絶対に飼わないからな!解ったな!」 ミドリにいい加減振り回されて、心底参っていた私も今回ばかりは、二つ返事で承諾した。 次の朝になっても怒りが収まらなかった父は、段ボール箱を思い切り蹴飛ばして、それを車に積んで会社に出勤した。 「この糞ガキどもなるべく遠くのゴミ捨て場に捨ててやる!」 家から5km程離れた実装ゴミ捨て場に段ボール箱を放り出した。 「くたばりやがれ!糞蟲!」 その内、ネムリも切れてミドリ達が、目を覚ました。 「こ......此処は何処デス???......」 その内ミドリは自分達が寝ている間に捨てられたと察した。 「子供達目を開けるデス......捨てられた......ワタシ達は捨てられたデス!早くここを出てゴシュジンサマに謝りに行くデス!」 そう言って段ボール箱を倒して箱の外に出たが、目の前には、金網が立ち塞がる。 「どうやって出れば良いデス?」そう言ってもたもたしている内に回収車が到着した。 「ちぇ!生きた実装を捨てるなら、段ボール箱の蓋が開かない様にガムテープで封をしとけよ!」 そう言って作業に取り掛かったが......。 しかし、運が良いのか悪いのか、段ボールの底にガムテープが貼っておらず、ただ箱を組んだだけだったので 実装達の尿や糞でふやけていた。箱の外に出ていた実装達を段ボールに入れて、勢いよく持ち上げて金網の外に出した途端≪ズボー!≫箱が破れて実装達が箱の下に落ちてしまった。 糞やふやけた段ボールがクッションになり怪我をする者は、誰もいなかった。 6匹は、一目散に逃げ出した。 作業員も「面戸くせえなぁ〜!」 「追いかけるのも邪魔くさい!ほっとこうぜ!」 「どうせ飼いだ!そのうちに死ぬさ!」そう言って追いかけもせず逃がした。 ....................................................................................................................................................................... ゴミ捨て場から逃げた実装親子は......。 「早く、ゴシュジンサマに土下座して謝るデス!そして今度こそ心を入れ換えて飼って貰うデス!」 そう言って、ミドリが仔実装の頃亜季と散歩した道を思い出しながら、亜季の家を目指した。 暫く走ると、立派な門構の和風の家が見えて来た。 皆んな昨日から、何も食べていないのを我慢しているのに、一番辛抱の無い10女が「ご......御飯テチ!」 そう言って門の前に置いてあった皿の中に顔を突っ込んだ所「ガウッ!」飼い犬にうなじを噛まれて、上に持ち上げられた。 「マ......ママァ〜!助けてテチィ〜!」 「じゅ......10女!」 「ママ助けるテチィ〜!」 「末っ子ちゃぁーん!」 「あ......あれは、犬と言う動物デス!ワタシ達の天敵デス!皆は犬に殺されたいデスか?」そう言うと全員首を振った。 「じゃあ!10女は、残念デスが見捨てるデス!」そう言って10女は見捨てられてしまった。 「マ......ママァ〜!お姉ちゃぁ〜ん!見捨てないテチィ〜!置いて行かないテチィ〜!」 10女は見捨てられてしまった。 犬は、10女を片足で押さえつけて、もう片足で器用に実装服を破っていった。 「やめてぇ〜!ワタチのお服破らないでぇ〜!止めてぇ〜」 次に、左側に生えている毛を引っ張り出した。 10女は犬の鼻を≪ペチ!ペチ!≫叩いた。 ゆっくり、じわじわ髪の毛を抜いていた犬は、鬱陶しいと思ったのか、一気に左側の毛≪ブチィ〜!≫を抜いた。 「テッチャーァ〜!痛いテチィ〜!」 そして今度は額に生えてある毛を仔実装の顔面を押さえて......。 「痛い!痛い!止めてテチィ〜!」≪ブチィ!≫額の毛も抜かれた。 何とか右側の毛は死守したい。もう今となっては、無駄な事だが……。 今度は、仔実装の体をひっくり返しうつ伏せにしてから、髪の毛を銜えて振り回したら……。 ≪ブチ!ブチ!ブッチィ〜!≫結局、10女は、禿裸にされてしまった。 犬は、10女を犬小屋に蹴り込んで「テッチャァ〜!」3日間おもちゃにされ、可愛がって貰えた。 3日後、犬にたいそう弄ばれた10女は、犬にかみ砕かれて犬小屋から投げ捨てられた。つまり家族の中で一番長生きして、一番苦しんだのだ。 10女が犬に弄ばれている頃、実装親子は、車の往来の激しい車道へと出た。 そして双葉高圧ガス株式会社と看板の上がった会社の前に差し掛かった。 「少し疲れたデス!あそこの林で休憩するデス!」4匹は、双葉高圧ガスの敷地内にあった林に向かった。 双葉高圧の林の前には「NL」(DANGER)と書かれたボンベが2本立てて置いてあった。 「皆、気を付けて行動するデスよ!」そう言った口の下から......。 「よいしょ!テチ!」「疲れたテチ!」「テッチ!」3匹の仔実装が同時にボンベもたれた途端 凸凹の地面に不安定な状態で置かれていた、それが倒れた。 すると7女に向かって≪ピシューゥゥゥゥゥ〜!≫中に入っていた物質が、噴出して直撃を食らってしまった。 「テッ!」その物質の直撃を受けた7女は≪カチカチ≫に凍ってしまい≪パキン!≫偽石が割れて即死した。 「こらぁ〜!糞蟲!何をしやがる!」凄い剣幕で3人の従業員が、こちらに走って来た。 防護服を着た従業員が慌てて、ボンベの栓を閉めた。 「こら!誰だ!こんな所に液化窒素のボンベを置いたのは!」 「すいません!俺です!」と1人の若い従業員が申し訳なさそうに名乗り出た。 「案山子産業からもう使い終わったと連絡があったので、新しいのと交換して持って帰って来た分です。 メーカーに引き取り依頼の電話をしたところ『直ぐに引き取りに行く』との事でしたのでそのままにしてしまいました」と釈明したが......。 「これは重大事故だ!顛末書を書いて貰うぞ!!」そう言って先輩らしき従業員に怒られていた。 「しかし、糞蟲共の逃げ足の早い事……うん!何だ!これは?」 「ああ!これは仔実装ですねぇ〜!ボンベの中に残っていた液化窒素の直撃を受けた様ですね!」 「カチカチに凍っているな!これは即死だろう!おい!何かの容器に入れて産業廃棄物の日に捨てて置け!」 「解りました!」 *実際に液化窒素のボンベをこんな屋外の場所に放置する企業は、ありません。 その様子を林に隠れて見ていた実装親子は「な……7女ちゃん!死んじゃったテチ!」 「妹チャン!御免テチィ〜」 「.......」長女に至っては自分がとんでもない事をしてしまったと思い声すら出せずに固まってしまった。 「こ...... こんな怖い所は早く出て行くデス!」実装親子は、従業員が居なくなるのを見計らって、双葉高圧ガスの敷地からそそくさと出て行った。 次に3人少年達がポッキ—を食べながら遊んでいる公園に差し掛かった。 「あっ!ニンゲンさんテチ!御菓子持っているテチ!」 「お腹減っているテチ!何か貰うテチ!御菓子を貰うテチィ〜!」 3女と4女が、同時にニンゲンに向かって走り出した。 「デ......デッスゥ〜!お前達ぃ〜!勝手な……勝手な行動は止めるデスゥ〜!」 腹がへっている3女と4女は、親実装の声が届くはずも無く、ニンゲンの前に息を切らせて出て行った。 「ニ......ニンゲンさんお菓子......お菓子欲しいテチィ〜!」 「ワタシ達、お菓子が欲しいテチ!」 しかし、公園で遊んでいる少年達は、リンガルを持っているにも関わらず、3人とも起動させて実装の話を聞こういなかった。 実は、この少年達は、虐待派ばかりで、実装石と言う生き物は、ゴミ同然と考える者ばかりだった。 「何だ!薄汚い仔実装が来たぞ!」 「首輪はしていない!野良だ!」 「じゃあ!殺すしかないだろう!」 「じゃあ俺が、右側の仔実装の首に石をぶつけて打ち首にして始末してやるぜ!」 「OK!じゃあ!俺はこのサッカーボールを左側の実装にぶつけて吹っ飛ばして潰してやるぜ!」 3人目の少年は、「今回俺の出番なしか!じゃあ!俺、審判してやるよ!どちらが先に始末するのか!」 3人は、仔実装達から少し離れた場所に移動した。 「二......ニンゲンさん......どうして逃げるテチ?」 「お菓子頂戴テチ!」 再び2匹は、ニンゲンを追いかけて走り出した。 「行くぜ!」 一人は大きく振りかぶり、「ピッチャー牧田、第一球を投げました!」そう言って実装の首を狙い易い様に、アンダースローのフォームで石を投げた。 もう一人は、「さあ!セットプレーです本田、ゴール正面ペナルティキックです。」そう言いながら、小さい実装を狙って思い切りボールを蹴った。 ≪ビシュ—!ドバァ〜!≫ ≪ビシュ—!バシーィ〜!≫ 2人の少年達狙った仔実装にほぼ同時に石とサッカーボールは当たった。 少年の投げた石は、少しホップして仔実装の頭に当たった。 そして頭にあった偽石を「テッ!」砕いた。 サッカーボールは、ゴロになって素早い速度で仔実装の上を通過「テチャ!」押し潰した。 「どっちの勝ちだ!」 「引き分けだな!」 「嫌!俺だ!」 「そんな事ねぇ〜!俺だ!」 そんな、少年達のやり取りを公園のフェンスの外で見ていた親実装は、≪ポロ!ポロ!≫涙を流しながら どうして.......どうして、ママの!ママの言う事を聞いてくれないデスか?何故勝手な行動ばかりとるデスか?」 残った長女を連れて再び亜季の家に向かって進みだした。 長女が道端を見たら四葉のクローバー?が生えていた。 『あっ!四葉のクローバーテチ!これでママを元気付けてあげるテチ!』 そう思った長女は、急に進路変更をして道端に向かった。 そこへ「テッ!」≪ペチャ!≫「汚ったねぇ〜なぁ〜!」歩いていた青年に踏み潰されてしまった。 あと1cm伸びれば四葉のクローバー?に手が届いた。 しかし、それは四葉のクローバーでもない普通の草だった。単なる見間違いだったのだ。 「何でデス!......たった数時間で子供全員を失ってしまったデス!ワタシがどんな悪い事を下のデスか?」 子供を甘やかさず、もう少し厳しく育てていれば、少しは親の言葉を聞いて自重しただろう......。 まともに子供に向かって教育らしい教育もしていない親の注意等、誰も聞くはずが無い。 自分の子供を全部失っても未だ自分の愚かさに気付いていない、こいつの「子供が欲しい!」と言う言葉は全く似合わない。 子供が全部死んでしまったが、ミドリは再び亜季の自宅に向かって歩き出した。 捨てられたゴミステーションは、たった5kmだが、実装にとっては何十、何百kmにも感じているだろう。 全部の子供を失ってから傷心のミドリは、それでも必死になって亜季の家を目指した。 『ゴシュジンサマにもう1回、飼って貰いたい!』そう思って。 捨てられて何時間たっただろう、ミドリは、公園の傍を通りかかった、そこは実装達の巣がある所。 「仲間が居るデス!喉も乾いたし、お腹も減ったデス!少し食べる物が欲しいデス!」そう言って公園に屯している野良の所に餌を貰いに行った。 「すみませんデス!昨日から何も食べて無いデス!ワタシにご飯とお水を少し分けて欲しいデス!」 「何デス!お前は?」 「こいつ、飼いデス!」 「生意気な!ワタシ達は、餌を探すのにどれだけ苦労していると思っているデスか?」 「こんな、寒くて餌の無い時期に他石から餌を貰おうなんて!」 「舐めているデス!」 「こいつ痛めてつけてやるデス!」 そう言って屯していた実装達の一斉攻撃を受けた。 「デジャーァァァァァァァ〜!痛い!痛い!痛い!」 ミドリは、禿裸にされて、全身に殴る蹴る、噛みつかれる、の暴行を受けて公園から放り出された。 全身傷だらけ痣だらけになったものの、命を取られなかっただけでも未だましだったのか。 ふらふらになりながらミドリはその場を立ち去った。 「ゴ......ゴシュジンサマァ〜!」 夕方になったら大雨になった。 ミドリは動けなくなり目の前にあった薄暗い公園のベンチの下で雨宿りをした。 「や......やっぱり子供なんか、産むんじゃなかったデス!ゴシュジンサマの言う事を聞いていれば、こんな暗くて寒い所に居なくて済んだのに!寒いしお腹も減ってひもじいデス!」 夜中になって雨は止んだ。 ベンチの下で一休みしたミドリは、再び亜季の家を目指した。 次の日の早朝、ミドリは亜季の家のある町内まで来た。 「こ......此処は、ワタシが仔実装の時代に、ゴシュジンサマと散歩した場所デス!もう少ししたら、ゴシュジンサマの家に着くデス!」 そう言っている内に目の前に亜季の家が見えて来た。 「ゴ......ゴシュジンサマ!今いくデス!」 亜季が学校に行くために玄関から出てきた。 「ゴシュジンサマデス!」 ミドリは喜んで亜季の前に飛び出した......ところが......≪ベチャ!≫ 「デボウ!い......痛い……痛いデスゥ〜!」 左右を確認もせずに十字路に飛び出したものから、軽トラに下半身を踏み潰されてしまった。 急いでいる亜季は、その場を通りかかった。 「ゴ......ゴシュジンサマァ〜!」そう亜季の方に向かって呼びかけたが、内臓の飛び出していて、禿裸の薄汚い臭いニオイのする実装など、誰でも顔をそむけて早く立ち去りたい。 「き......気持ち悪い!」そう言いながら亜季はその場を通り過ぎてしまった。 「ミ......ミドリデス!ミドリデス!ゴシュジンサマァ〜!」 ミドリは這ってまで亜季を追いかけようとしたが、体が動かない。 「ど......どうしてデスゥ〜!何故助けてくれないデスゥ〜!見捨てないで欲しいデスゥ〜!」 亜季は、ミドリの視界から直ぐに消えてしまった。 『ゴシュジンサマに見捨てられた!ワタシは何の為に命がけで此処まで来たデス!』がっかりしたて絶望したミドリはそう言いながら目を瞑った。 仮に、禿裸でないミドリが帰って来たとしても、亜季はミドリを飼う事は無かっただろう。 ミドリの命運は既に尽きていたと言う事だ。 「数分後、潰れた実装が道路に転がっている!」と通報を受けた市の清掃員が、ミドリの死体回収をして行った。 FIN
1 Re: Name:匿名石 2017/09/18-02:04:46 No:00004875[申告] |
甘いところがあって大目にみつつも子供をしっかり教育してる飼い主親子と教育も何もない糞蟲の対比が見事な作品
後半はちょっと渡り系作品の野良親仔壊滅テンプレっぽかったけどそのベタさもいい |
2 Re: Name:匿名石 2023/06/25-01:41:23 No:00007343[申告] |
逃げるんだよぉ~ |
3 Re: Name:匿名石 2023/08/04-06:34:25 No:00007696[申告] |
全く愛護精神の疼かない馬鹿一家だな! |