タイトル:【観?虐】 ニセモノの詩・ホンモノの唄 3
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初投稿日時:2008/11/07-16:24:25修正日時:2008/11/07-16:24:25
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ニセモノの詩(うた)、ホンモノの唄(うた)

第三幕 〜狂気に染まる唄〜 盲目なる狂想曲(ラプソディー)

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後片付けが大分終わった頃、いよいよ陽も暮れ始め、やや空の赤みが強くなっていた。

その時、バン!と激しい音が公園に響いた。

「デスゥ!?」 「テッチィ?」

コロとベスは同時に顔を上げた。


コロは、リンがボールを追いかけていった方から…。
それも割と近くから聞こえてきたような気がしたが、片付けに熱中して確信が持てなかった。


「何処かで誰かバンバン使っているテチ… お外のノラハンティング… まさにシンシのスポーツテチュ。
 生きた野良を追いかけてるテチ、羨ましいテチュー」

ベスがそんな事を口走ってしまったが為に、コロは嫌な予感を感じる前にベスを叱らねばならなかった。


「そんな事をうらやましがってはイケナイと何度言えば判るデス?
 オマエはセレブちゃんになるジカクが足りなさすぎデス。
 何をするにも乱暴デス、いつも蛆ちゃんをすぐに死なせるデス。 玩具も壊すデス。
 すぐに壊すのにミンナが持っているから、無いと恥ずかしいとねだるデス。
 ココロが乱暴だからそうなるデス!  とても、このワタシから生まれたとは思えないデス…。
 もっとリンちゃんやチコちゃんを見習うデス!」

「テェッ! テテッ、テッ、テェェェ!  ヒドイテチ… ママヒドイテチ…
 ワタチはママの仔テチュ! セレブちゃんテチュ!  セレブちゃんは何でも自由テチ!
 ワタチはセレブちゃんに恥ずかしくない様に考えて、おねだりしているテチ!
 イッチョウケンメイ考えてお贅沢しているテチュ!  それをママは怒るテチュー。  テェェェェェン。
 欲しいモノがないセレブちゃんなんて居ないハズテチュ!
 オトナリもゴキンジョの仔もミンナ持ってる物がないなんてセレブちゃんじゃないと考えたテチ!!
 そんなハズかしいのはセレブちゃんじゃないテチュゥゥゥゥ。
 なのにママは全部ガマンさせて、ワタチがママの仔じゃないって言うテチィ!  テェェェェェェェェェェェェェェェェェェェン」

そこまで…  我が仔である事まで否定されて、ベスは滝のように涙を流して天を仰ぎ泣いた。

なにより、玩具や蛆実装を貰えなくなってしまうかも知れないという事が悲しかった。


ベスの泣き言には、全く反省の色も、コロが言った事を理解している様子も見られない。

しかし、流石にそこまで大泣きする我が仔の姿に、コロは少し言い過ぎたと反省をして、
我が仔に駆け寄って抱きしめた。


その為、2発目のバンバンの轟音はコロ達には気にならなかった。
リンを助ける機会は失われてしまっていた。


「ベスちゃんゴメンデス…  ママが悪かったデス。 言い過ぎたデス。
 ベスちゃんはタイセツなワタシの仔デス。 泣きやむデス。
 ご主人様に頼んで新しい玩具を買って貰うデス。  だから泣きやむデス。
 ワタシもオマエタチも、もっともっとお勉強して真のセレブちゃんに近付けば、
 きっと、もっと贅沢が出来るご主人様ドレイが見初めてくれるデス! それまでミンナでガンバルデス」

「テェェェンテェェェン… テェェ… テチュン、テチュン 本当テチ?  もっとゼイタク出来るテチュ?
 ゴキンジョちゃんのエリザベスちゃん見たいにコジッソウでもデスーパーカー貰えるテチ?」

現金にも何事もなかったかのように泣きやむベス。


「今はガマンがタイセツデス。
 今のご主人様に贅沢を言いすぎたり、そんな事を知られたら、
 きっとワタシ達の賢さに嫉妬したり、ワタシ達が飼えなくなる事が嫌で何をするか判らないデス!
 これは他の仔達は経験できない真のセレブちゃんへの試練なのデス…。
 この試練を乗り越えてガマンと賢さを身につける為の道は他の仔にはそもそも用意されないのデス。
 大したニンゲンさんでもないゴシュジンサマに満足して、一見好き勝手している連中はそこで終わりなのデス。
 今の試練が与えられる事こそが、ワタシ達がカミサマに選ばれている証なのデスゥ♪」


仔を宥める為ではなく、コロ自身が本気でそれを信じて目指しているからこそ出る言葉であった。


「テチュ! ママ、セレブちゃん目指してガマンをガンバルテチ!  新しいオモチャ(ウジちゃん)も楽しみテチュ♪」


バン!バン!バン!

連続した発射音が聞こえる。


しかし、ベスを宥める事に集中したコロには音の出所は気にならなくなっていた。

チコやリンの帰りが遅い事もである…。


新しい情報が入ると、古い情報が無視されるのは、野良も飼いも程度の違いだけで変わらない。


「まったく、ドコのダレデスゥ? ベスちゃんが変な事を吹き込まれるのも、
 元はと言えば、中途半端なクセに、セレブちゃんを名乗る飼いジッ…
 オナカマさん如きががウヨウヨするようになったからデス!」

コロは苦々しい顔になって公園を見渡す。


しかし、流石に日も暮れかけた時間帯ともなると飼い実装の姿はほとんど無い。

せいぜい、手を引いて公園の出口にいそいそと向かう親仔が1組見えた程度だ。


コロは自分達も帰る準備を急がねばと思った。

流石に暗くなって、ナカマが居なくなると自分達の身が危険であると気が付いた。


低俗な野良達がワタシ達だけなのを知ると動き出す… 何より虐待派人間も顔を出すようになる。
そのぐらいの危機感は持っていて、支度を急ごうとしたときに、ようやく大切な事を思い出した。


チコもリンも、一向に戻ってくる様子がない…。


自分が忘れていただけだが、流石に時間が経ちすぎている事にようやく気が付いた。


バン!バン!バン!

さらにバンバンの連射音が響く。


コロはハッと大げさに顔を上げる。

さっきから聞こえる発射音は、リンがボールを追いかけて言った方角で、
音もそんなに遠くないのでは?と今更ながらに思ったのだ。

周りを見れば、もうナカマと呼べる飼い実装の姿はない。

「デスッ! チコちゃんもリンちゃんもこんなに遅くなる様な不良な仔なんかじゃ無いデス!」

「テチィー   チコお姉ちゃん達なら心配ないテチュ」

「ひょっとしてさっきから鳴っているバンバンの音は、
 チコちゃんとリンちゃんがノラに追われているかも知れないデス!
 バンバンで助けを求めているのに、他におナカマが居ないから助けて貰えないデスゥ!!」

コロは慌てて残りの荷物を詰め込んだリュックを背負う。

「きっとそうデス! もう、お日様が無くなってココに居るのはワタシ達だけになっているデスッ!
 バンバンを持っているのはワタシ達だけになっているデス!!
 カワイソお… ノラなんかが持っているはず無いデス!
 チコちゃんがバンバンを使うなんて余程の事が起きているデス! コワイ思いをしているデスゥ!
 チコちゃん達を迎えに行くデス!  ベスもウジニちゃんとウジサンちゃんを抱いて急ぐデス!」

コロとベスは駆けだした。

コロは下げたポーチからバンバンを出して準備する。

しかし、ベスは、蛆実装1匹と死体1匹を抱えてしまった為そうする事は出来なかった。


コロには、2匹共が既に変わり果てた姿となっている事など想像すら出来なかった。

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そこには、1匹の薄汚れた身成の実装石と隣に同じ様な身成の1匹の仔実装が居て、
その仔実装の足下には、赤いリボンが目立つ仔実装が汚され倒れていた。


「テッテェッ… テェー…   ママ…ママ…ママ」

突っ伏した、赤い服で着飾った仔実装が、胸元に守るように抱えていた蛆実装を、
コロ達に向けるように差し出して助けを求めた。


その仔実装の先には、醜悪に汚れきり、濁った目で嘲るように笑う大きな腹の仔実装が、
「デヘッ、テベッ…」と薄笑いを浮かべて居た。


コロは瞬間的に叫んだ。

「チコ! どうしたデス!? 何でそんな酷い姿になっているデスゥー!!」

そして、その場で片手を差し出した…。


”倒れている仔実装の方”に向けて。


それを見た瞬間、サザエがニマリと口の端を歪めた。


感覚的に家族をある程度識別できるとは言え完全ではない。

精神状態が平静でない、瞬間的判断を要する等の時には、
やはり、判断材料は外観、それも目立つところにだけに寄ってしまう。


「オマエ達がやったデス! カワイイ、ワタシのチコちゃんをこんな目に…
 ご主人様から貰ったお洋服がダイナシデス… お顔もそんなに汚れきってデスゥ。
 どんなヒドイ事をされたデス! そんな不格好でクサクサなノラジッソウに近寄られただけでも苦痛デス。
 触られたデス? まさか叩かれたデスゥ!! まさかまさか、おウン…
 デデェスゥ!  セレブちゃんがそんなお口にも出せないヒドイ事をされるなんて信じられないデス!」

「テェェェ… ママ、妹ちゃん、イタイテチ… タスケテテチ…  こんなのイヤテチ…」

「どうしてこんな事をするデス! ワタシ達を飼い実装と知っての無礼デスゥ!?
 野良のクセにワタシたちに手を出すとは、トンデモナイ事をしているという事がワカラナイデスゥ!?
 ワタシ達が何をしたというデス! ワタシはセレブちゃんデスゥ! 判ったらその仔を解放するデス。
 今ならワタシのご主人様もバツの軽減を聞き入れ殺さない様に言ってやるデスゥ!」

コロはバンバンを親実装に向け、威嚇しながら牽制距離まで接近する。

距離は約30cm程、バンバンが威嚇以上の攻撃力を持つ距離で、
どんなに慣れない実装石でも、相手が動いても初弾を外す確率は低い。

同時に、外す確率は低いが、外れれば次を撃つ動作をする前に相手に距離を詰められる。

これより近付けば、その1発目を撃つ前にすら飛びかかられる距離。
そのギリギリの距離で、懸命に我が仔に手を伸ばす。


それを野良の親は何も言わずに、牽制されても動じることなく見ている。


特に拘束されている様子はないが、チコはうずくまるような姿から顔を上げ、涙を流し蛆実装を差し出す。

その服は糞にまみれ、着方も乱れていた。

コロ達、飼い実装の中でもセレブを口にする物にとって、
そんな姿は絶対にあってはならない耐え難い姿であり、
そうならないためにこそ、幼き日々より積み重ねた欲望への我慢、厳しい掟、日々の苦労があると思っている。

コロは、その日々の苦痛を無にされた絶望でチコが動けないのは仕方ないと思ったし、
その姿に自分がそうされたときの想像で自身の心も引き裂かれそうであった。

外傷は見られないが、コロが口にしたとおりセレブを自負するコロ達にとっては、
野良にちょっかいを出す為、暢気に挨拶する為、どちらでも自分達が近付くのはかまわないが、
不潔な野良の方からは、勝手に触られる事だけでも、人間に怒られるに等しい苦痛に感じるものだからだ。


「デ… デッ… タイヘンデスゥ…  ご主人様に何て説明するデス。
 野良に触られたデス… それどころか服がこんなに汚れているデスッ…。
 高貴なオーラで、ノラはひれ伏し、ケンカにならないのがセレブちゃん…。
 野良如きに、こんな目に遭わされてしまったら、チコちゃんはセレブちゃんになれるデスゥ?
 デッ… 仔が資格を失ったら、ワタシも週間セレブちゃんのセレブちゃん免許が貰えないデスゥ?
 それより、こんな汚い仔になったらお家に入れて貰えるデスゥ?
 ご近所にも、ノラにウンチを付けられた仔なんて後ろ指さされてしまうデスゥ…。
 まさか、ワタシまで捨て…
 デスデスデス! そんな事はないデスゥ!    まだ洗えばバレないデス!
 チコちゃん、しっかりするデス! まだセレブちゃんになれるデス! ニンゲンにバレなきゃイイデスゥ!」

セレブちゃん免許とは、雑誌に付属しているシールポイントを貯めて、
アンケート葉書にある簡単な質問を記入して送ると読者抽選で当たるただの紙切れである。

飼い実装… コロ達は、それを普段から自分達の素行が人間に試されていると勘違いしているのだ。

只の飼いとセレブの区分けにセレブ免許と言うものが本当に存在していると。


「テッテテッチ… チコお姉ちゃん、今助け… テチャ! クサイテチュ!!  ガマンテチ、チコお姉ちゃんがタイヘンテチ…」

ベスも親のそばに蛆実装を降ろすと、親がバンバンで威嚇している隙に、チコのそばににじり寄っていく。
臭いに怯み、一旦、身を引くも、鼻を手で押さえながら手を伸ばす。


バンバンなる護身用具を野蛮な物と考え、飾りにしか考えていない不慣れなコロが銃を使う役割に、
最もバンバンを撃ちたがっているベスがチコを助ける役割に回った。

もしも、逆であったなら… 状況は大きく違っていたかもしれない…。


「チコお姉ちゃん… もう手が届くテチ… 引っ張ってあげるテチ」

「テチ テチィ… ママ… ”妹ちゃん”タスケテテチュ… ワタシの蛆ちゃんテチ… 次はワタシテチュ」
「レフゥ♪ レフレフレフ レフレフ プニフーレフ♪」

手が届き、ベスは渡されるまま蛆実装を預かり、鼻を押さえていた手もやむを得ず差し出しチコの手を取る。

一家の中でセレブで居たい願望は強いが、誰よりもセレブになる為の努力をしないチコは、
ニセモノを見抜く機会をまったく気にする事無く、目の前に居るのがチコと信用してしまっていた。

コロが助ける役目になって気を配れる状態でいれば… 言葉のおかしな点に速やかに気が付いていただろう。
一家は名前で呼び合うという事… 妹ちゃんというのは、自分たちの名前を知らないからだと言う事に。

だからと言って事態は好転するものでもないのだが…。


それが判っているからか、野良のサザエはニヤリと見下ろしなおも動かなかった。


ベスもコロも、サザエがバンバンを恐れていると思った。

しかし、サザエは何もしていない様で、本物のチコのケツを足で軽く蹴っていた。


「デッピョォォォォォォ…」

ケツを突かれるようにされた本物のチコが、反射的にそれを嫌がり、腹を抱えてのそりと立ち上がろうと動いた。

実にスローで迫力のない間抜けな動作と声であったが、
そのボロな服と糞の汚れに満ち、狂って締まりがなく視線もなく、表情が判らない顔の為に、
争いや危機を知らないベスとコロには、充分に攻撃的で威圧的な行動に見えた。

「テッ!!   ママァ」

ペタリと腰が抜けて動けなくなるベス。

「ベスちゃん! チコちゃん!  アブナイデスゥ!!」

コロは反射的に、そして闇雲に引き金を引いた。


バンバンバンバン!

「デチャァァ!!」
「ホベェ! ビギョォォォ! ジョベェ!!   テェェェェェェ…」

最初の1発が流れ弾として、ベスの耳に穴を開けた以外は、
距離も相当に近かった為か、見事に全弾が本物のチコの肉体にぶち当たった。

何度もムダに洗濯を重ねた挙げ句に、ここ最近は腐汁にまみれていた天然の実装服は、
もはや服としての役割を果たすことなく弾を肉体に通してしまっており、
至近距離なのも相まってか、本物のチコはもんどり打って倒れ、仰向けの大の字になり腹を抱えると。

「デッ テァァァァァ…デヒョォォォォォォ〜」 と奇声を上げて、
その股ぐらから糞尿と共に、形にすらなっていない赤と緑の細胞片である子種を、
やがては仔の保護膜となるはずのヌルヌルの胎盤と共に、ジョボジョボと勢いよく噴き出しはじめた。


「ホヒェェェェェェ  ホヒェェェェェェ ミルナ ミルナ ウンチマンナ ワタシノ スガタヲ ミルナテチ…」

仔実装の身で強制妊娠されられ、さらに肉体への衝撃と痛みで堕胎したのだ。

腹を抱え、腹の肉を握りつぶすかのように抱え、本能的に力んで止めようとするが、
数秒で仔は、全て胎外に出てしまっていた。


激しく衰弱したチコは、堕胎で弛んだ腹の肉を摘んだまま「ミルナ テェー… ミルナ テェー…」と呻いた。


「や、やったデス!!」

「テチャァァァァ… ママはやっぱりヘタクソテチ! ワタシのお耳に穴が空いたテチュ!!
 ワタシがバンバン撃てば百発百中だったテチ! あの気味が悪い野良クズ私の手でブッ殺したかったテチィ!!
 それより、イタイテチ、イタイテチ!  セレブちゃんになるワタシのお耳がキズモノテチ!」

コロは弾がうまく当たった事に喜び、相手が派手に吹き飛びあられもない姿になった威力に、
体の芯が熱くなる快感に満たされ喜んで舞い上がった。

ベスもズキズキ痛む耳の心配をしながらも、その目線は吹き飛んだ野良クズの醜態を見つめていた。

どちらも、初めて自らが体験する武器の破壊力、一方的な力に、
積み上げてきた物、家族の事…他の事など、一瞬どうでも良くなっていた。


そう、ベスがまさに手を取り合っていた、チコと思っている相手の事すら視界に入らず舞い上がったとき。

今まで死にそうな程に伏していたその偽物のチコ、タラコが素早くその死角に這って回り込み立ち上がった。


「テチ!?  テヒュッ!! フヘッ!   チコおね… テェェッ… な・なにするテッ テギィィィィィ!!」

ベスが自ら抱える蛆実装に付いたリードを首に掛けて締め上げ、動きを奪うのに何の造作もなかった。


弱い仔実装の力だけに、呼吸を完全に止め続けられる程には締まる事はないが、
締められる方も仔実装だけに、細い紐がその脂肪のように柔い肉体に食い込むと、
簡単に気道が圧迫され、自身の肉が覆い隠してしまった紐を探して手を喉に這わせ苦しむ。

「レフレッフレフ♪ プニフレ…  レェェェ レェェェェ」
タラコが締め上げる両手の一方から紐の末端の蛆実装が、
不格好に大きな携帯ストラップのマスコットの様に暢気に揺られては吐き戻していた。


「デスゥ?!  チコちゃん何をして… それはベスちゃんデス。
 コワイ野良クズはママが撃ち殺して横に転がっているデスゥ。 それにママはコッチデス…」


「ママ、やったテチ!! ワタシはやっぱり天才テチュ!!」

ベスの首をリードで絞め、後ろを取ったタラコが、猫なで声でサザエににじり寄っていく。


「クゲェェェ… チッ コッ お姉、オネェ… テベッ… テヒュゥゥゥゥゥゥ」

コロには、チコがベスを羽交い締めにして、薄汚い野良実装にすり寄っているようにしか見えず、
唖然と口を開けたまま、それを見送る事しかできなかった。


「デププププ…   何を驚いているデス?
 まぁ、オマエ達みたいに、何かの手違いでニンゲンに飼われているバカには理解できなくても仕方がないデス」

「バカだから理解できなくても仕方ないテッチュン♪」

「テヒュゥゥゥゥゥ… ママ… クサイテチ、クルチイテチ…」

勝ち誇ったかのように顔を緩ませたサザエが、タラコの頭の上に手を置き撫でる。

ここまで来ても状況の把握が出来ずに混乱するコロに、サザエは追撃の一言を放った。


「オマエは見た目だけでしか家族の区別も出来ないバカなのを証明したデス…。
 コッチは賢い賢いワタシの仔、タラコちゃんデスゥ♪
 ソコで無様にブッ転がっている醜い白ブタが、オマエの大事な チコ とやらデス。
 間違いで飼われた低脳クズのウンコ野郎に相応しい末路デス…。
 そして、トドメを刺したのは、誰でもない、親であるオマエデス!
 可哀想に〜デス♪ アレはもう2度と立ち直れなくなったデス。
 狂って居るどころか、実の親に暴力されて動く事すらままならないデスゥン♪
 親が我が仔を殺すなんて、まさに野良らしい所業デスゥ♪  野良の仕業以外考えられないデッスゥ♪」

我が仔を苛める敵を自らの力で滅茶苦茶にしてやったと有頂天になった直後の衝撃…。

人間の上げ落としにも等しい精神的な攻撃が、コロの全身を貫いていた。


「ウ…ウソデス… そ、ソンナコト アルワケナイデス… ワ、ワタシガ チ、チコチャンヲ ア、アンナメニ…」

コロは、薄汚い親に身体をすり寄せ、頭を撫でられ喜ぶ我が仔と思ったモノと、
どう見ても野良クズにしか見えない、醜く狂って、身じろぎせず鳴くだけのモノを交互に見やって呟いた。

その顔は血の気が引いたのか、興奮気味の紅潮から一気に血色が悪い蒼白になり、
素早く少量ずつ垂れ落ちていた汗は、にじみ出た後も重い脂汗に変わり、
大粒の汗として見た目に判る程全身に浮かび上がっていた。

何をどう考えを繋げても、チコと思ったモノが、あの野良実装の仔である事は間違いなく。
そうなれば、消去法で無様に仰向けになった仔は、面影も残っていない姿だがチコという事になる。


「どんな理由を付けても、実の親が我が仔を自分のオモチャでボコボコのギタギタにした結果は明らかデス。
 服が違うから判らなかったデスゥ?  そんな言い訳が飼われている身で通用すると思うデッスゥ?
 デピャピャピャピャ!! 通用するのは飼い実装失格で野良に落とされる物の言い訳デッスゥ〜♪
 オマエが超低脳でキチ○イだから、コロして楽しみたかっただけなのデスゥン♪
 セレブちゃんが我が仔をオモチャで面白半分に撃ってハンゴロシでウチョウテンなんて、
 ニンゲンが知ったら大事件で晒し者デスゥ♪  認めるデッス! オマエ達は野良が性に合うデス〜♪」

「デ デ デ…  チガウデスゥゥゥゥゥ!!!
 そんな事があるわけがないデス!ワタシが間違えるはずがないデスゥー!!
 ソレはニセモノデス! オマエタチの用意したニセモノデス!
 どちらもチコちゃんのニセモノデス!  誤魔化されないデスゥ!!
 ワタシのチコちゃんが汚れるハズはないデス! よく見れば服の形が違う気がするデス。
 リボンの色が少し違う気がするデス! チコちゃんはオマエ達に捕まってないハズデス!
 きっと何処かでピンピンしているハズなんデッスゥゥゥゥゥゥゥ!!
 だから、コレはきっと夢なんデスゥ、悪い夢なんデスゥ、
 甘いものを食べすぎると悪い夢を見るとゴシュジンさまが言っていたデス。
 昨日、食後のフルーツ食べ過ぎた所為デス!! だから悪い夢デスゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」

もはや、コロは自分の会話レベルが理論的でなく、整合性を欠いているのを知りながらも喚くしかなかった。

他人の意見を認めてはならない。  自分の理論が絶対通らなければならないという。
実装石本来の習性に沿った”ウソでもより大きな声でより多く喚いた方の勝ち”というレベルの会話で…。

話に統合性が取れなくなり情緒不安定な言葉の起伏を見せるが、それでも、まだ気が狂うにはほど遠い…。
狭く不安定だが、それでも他人よりは常に高い場所にいる… 居続けてきたという自負が、
より必死に、その場に居続ける為に熱を発して否定理論を展開さているだけなのだ。

「ウソではないデスゥ〜♪  それはオマエがイチバン良く判っているデスゥ♪
 なら、そのドコカに居るというホンモノはドコにいるデ… デスゥ〜ン、居られると言うのデス?
 仔実装が! この時間の! この公園で! 1匹で! ほっつき歩いていられると抜かすデスゥ?
 デププ… そんな与太、ヘソが茶で沸いちゃうほどおかしな話デスゥ〜♪
 もしそうなら、今頃、オマエの仔ブタは、そこに転がっているウンチ大王と同じ姿になっているデッスゥ。
 オマエは認めたくないだけデ… それともそんな事も考えられないノータリンだからそんな事が言えるデスゥ?
 デププププ… ソッチの方が余程、現実的デスゥ〜♪ デププ… オマエ、ノータリンと宣伝したデスゥ♪」

「チガウデス!! チガウデス!   ここじゃないトコロデッスゥー!!
 きっと、家にいるデス! 1人でお家に帰れたデス! 優しいニンゲンさんに連れてってもらえたデス!
 ワタシ達は、スッゴイセレブちゃんだから、どんなニンゲンも助けてくれるデス!
 そもそも、チコちゃんはずっとお家に居るんデスゥー! そうデス! ワタシ達はお家デス!!
 デェェェェ… これは夢デス… 食べ過ぎデス… 夢デス… 夢過ぎの所為で食べたんデス…。
 ワタシは間違えるハズなんかないのデス… ワタシはセレブちゃんなコロちゃんデス。
 お家に免許があるデス…きっと、もう届いているデス…ニンゲンに認めさせた免許…免許… セレブの免許」

だが、サザエは、そうしてお互いに理論や現実すら無視した喚き合いになる事を判っていたかのように、
余裕の顔で口の端を歪ませる。


サザエが貶し続け、コロが全てを理論も無視で否定する。
ただそれだけの泥沼の千日手になるはずが、そうならないようにサザエは初めから全てを用意していた。


「なら、オマエは我が仔を絶対に間違えないデスゥ?
 それならば、次のゲームが用意してあるデッスゥ〜ン♪」

サザエは手を前に伸ばし、コロに後ろを見るように指示をした…。

ドクンドクンとコロの心臓の音が… 狂気の唄が響きだしていた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

つづく

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