タイトル:【観?虐】 ニセモノの詩・ホンモノの唄 2
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作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:17203 レス数:1
初投稿日時:2008/11/04-12:51:00修正日時:2008/11/04-12:51:00
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ニセモノの詩(うた)、ホンモノの唄(うた)

第二幕 〜狂気を紡ぐ詩〜 盲目なる狂想曲(ラプソディー)

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コロは家族と共にボールを投げ合い楽しんだ。

いつもなら、そろそろ日が沈みはじめたこの時間になる前に、
チコは疲れた顔で、動き疲れてグッタリした蛆実装を抱えて、どこからともなく駆けてくるはずだった。

家族の中で一番、ペット蛆を大切に扱い長持ちさせているチコは、
いつも歩けなくなるまで散歩をさせ、蛆が動けなくなると、その場所から蛆を抱えて戻ってくる。

いい加減、蛆実装の疲れる散歩の距離感覚を学んで欲しかったのだが、
蛆の為に散歩させているのではなく、散歩させて面倒を見ている事を楽しんでいるのだから仕方のない事だった。


それだけに、コロはチコが戻ってくるのを家に帰る頃合として丁度よい時間の目安にしてしまい、
自身で帰るべき時間を確認しなくなっていた。


しかし、日が沈み始めたのを感じて、流石に帰りが遅すぎる事に不安を覚えた。


「お空が少し赤いデス… 流石にこれは遅すぎデス…」

ポーン…

「テチャァ!!   ママ、何しているテチ! ボールがソッチに行ったテチュ」

「ゴメンデス… チコちゃんが遅いデス… もうすぐお日様が沈む時間デス」

ぼーっとして跳ねて転がっていくボールを見送る事しかできないコロ。

ボールは芝生のなだらかな坂をポンポンと転がっていった。


「チコお姉ちゃんなら、ウジイチちゃん抱えて来るテチュ」

「ボールが無くなっちゃうテチッ、ワタシがボールを取ってくるテチュン♪」

ボール投げにノリノリのベスは、自分が投げた球を受け取らなかった母親に抗議をし、
リンは考え事をしている母親の為にボールを追いかけだした。

「もう帰るお時間デス…  お片付けをしているデス。
 もし、チコちゃんが見えたら急ぐように言うデスッ!
 リンちゃんもボールを拾ったらすぐに戻ってくるデスゥー!」

コロは、テチテチと駆けていくリンの背中にそう声を掛けた。


「ママ、わかっているテチュー! ワタシはセレブちゃんで、賢いちゃんテチュ♪」

リンは大きな声で元気にそう言い残した。


「もう終わりテチュ?  もっと遊びたかったテチィ…」

「明日もきっと晴れてお散歩出来るデス。 きっと出来るデス。
 だから、今日はこれでお散歩オシマイデスゥ。
 暗くなってしまう前に早く帰らないと、ご主人様が心配してしまうデス」

「テチャ、ご主人様を心配させちゃセレブちゃん失格テチィ!? 今日はワタシもお片付け手伝うテチュ!
 明日が楽しみテチュ♪ 一度、ノラハンティングして見たいテッチュー! 貰ったバンバン使ってみたいテチュ」

リンは、その身体に不釣り合いな大きいポーチから、鉄砲の玩具を取り出して構えてみせる。

不格好な銃の形に見えるそれは、安全装置を兼ねた中折れ式の折りたたみ銃身を開くと、
実装石にはやや大きな拳銃、小さな仔実装には一抱えはあるライフルの様である。

飼い主が買い与えた実装石の護身用具で、先端に突起の付いたゴムの鼓弾を、
無力な仔実装でも引き金を引くだけで使えるように圧縮ガスで打ち出す代物だ。

しかし、使うのが不器用な実装石だけに、実際には弾を当てて痛みを与えるより、
圧搾ガスを使って派手な発射音を鳴らし、弾”も”出るという事象で野良達を威嚇する事が目的である。


護身用3mm実装石撃退弾空気銃。 撃つときの音から 「バンバン」 の愛称で呼ばれている。


飛び道具を実装石に持たせると言うのは、かなり物議を醸したものではあるが、
それだけに、飼い実装を襲うニンゲン以外の様々な外敵に対して、
ソレは1度2度の襲撃を追い払うだけなら有効である事も物語っている。

音の出る玩具や防犯ブザーが開発されたが、音だけでは不十分とされ、
議論と試行錯誤を重ねて作られたのが、この音で威嚇しつつ弾も出るバンバンである。

ニンゲンに対してのいたずら防止として、上向きに撃っても射程が延びないように弾は小さく軽く、
ホップアップ改造防止と同時に有効射程範囲内での威力の確保に鼓弾という形を取っている。


もっとも、建前はどうあれ、数少ない飛び道具として飼い実装や愛護派には旬なブームの玩具となった。

今一番話題の新しい玩具を買い与えてもらえている…。
それは自慢の種と同時に人気の品、故に誰よりも使いこなすことで自分達の方が早く持っていたと箔をつけたい。

仔実装の感情としては、どうしてもそちらに傾くのは仕方の無いことではあった。


「デデッ!! リンちゃん、言ったデス! そんな野蛮な事をしたらセレブちゃんにはなれないデス!」

「でも… お隣のオスギちゃんとピーコちゃんは、練習しないと心配だからって、
 ご主人様に”イキエ”とか言う野良クズを用意して貰って練習してたテチ…。
 ノラハンティングはシンシのタシナミテッチュ〜♪ と言っていたテチ。
 オスギちゃん、バンバン上手テチ。  ワタシ、一回も動いているの撃った事無いテチュー」

「デェ… 何度言えばわかるデスゥ…  こんなのは持ってても使わないのが本当のセレブちゃんデス。
 話し合いで全て解決できるのが、賢い真のセレブちゃんの証とビデオでも言っているデス。
 それに、汚い言葉は厳禁デスゥ! 野良クズなんてニンゲンさんやご近所さんに聴かれたら大変デス。
 ちゃんとセレブ語に”カワイソウなおナカマさん”と言う呼び方があるデス。 最低でもおナカマさんデスゥ。
 ワタシやご主人様が、毎日どんな教育をしているのかと影で笑われてしまうデス…」

コロは眉間を歪めて怒り出す。

別に手を上げる程の剣幕でも無いが、コロがそんな怒り方をするのは余程の事がないと無い為、
ベスにとっては殴られると感じるには充分で、慌てて玩具をポーチに仕舞う。

「テッテテテテテッ  も・もちろん言ってみただけテチュ〜♪ そんなヤバンな事これっぽっちも考えてないテチュ♪
 バンバンなんてヤバンなモノ、使いたくもないテッチュ〜ン♪」

「デスゥ… 安心したデス。  お隣のピーターさん親仔とのお付き合い方法を考え直すデス…」

コロはそう言い、運動と今の動揺で掻いた汗をごまかす為に、
服のポケットから香水スプレーを取り出してシュッシュッと首筋吹き付けると、
オヤツのために出した小皿や水筒をリュックに片付けはじめた。

その頃には、戻らないチコへの心配はおろか、ボールを追いかけたリンの事すら頭から抜け落ちていた。

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「作戦変更デス…  仔ブタが1匹でこちらに来るデス。
 デププププ、ますますワタシ達が有利になるデス〜♪  これぞまさにカミサマのコエデス!
 ガイアがワタシにもっと飼い実装になれと囁くデスゥ! デププ、デププ…」

そう笑いがこみ上げながらも、サザエは新しい作戦を仔実装達に耳打ちする。

「それはまた楽しそうテチュ〜♪」
「イッペン、ワタシ、やってみたかったテチュ♪」
「テチャチャ、あのお上品な顔がどんな風に醜く歪むテチュ?」
「テェー  テェー  テェー…」

相談が終わった4匹は捕虜1匹を引き連れてそれぞれの持ち場に着いた。

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「テチュー? ボールさん早すぎテチュ…  ベスちゃんは力の加減が出来ないテチュ」

僅かに坂になっていて、ボールは止まらずリンはかなり引き離されていた。

親に言われた”チコを見つけたら”声を掛けるというのを、
”チコを探して”ととらえたリンは、時折、立ち止まっては360度回って見回して居た為だ。

それが、サザエ達に準備の時間を与えた。


「ボールさんはコッチに転がったから間違えるはずはないテチ。
 チコお姉ちゃんもコッチに行ってたはずテチュ… ゼンゼン見えないテチュ。
 あっ、ボールさんあったテチュ♪」

リンはまず、目的の1つ、ボールを取ってくると言うのを完了しようとした。

「テッチュ♪テッチュ♪ ボールさん、ボールさ…」


「レフー…レフー…」
ボールに触れようとしたとき、蛆実装の鳴く声が聞こえた。


「テテッ、あんな所にウジちゃんが居るテチュ?  あの尻尾のリボンはウジイチちゃんテチ!」

草むらの影からヒョコヒョコと身体をよじらせ歩いている蛆実装が見えた。
赤いリードに繋がれているのと、尻尾に巻かれた赤いリボンが遠くからもハッキリ見えた。

「あんな所にウジイチちゃんがいるテチュ… って事は、チコお姉ちゃんもソコに居るテッチュ♪
 チコお姉ちゃぁーん!!」

リンは、ボールを両手で頭の上に掲げ、目立つようにしてチコを呼び、その方向に駆け出した。


「テチュ?! お返事ないテッチュ…     わかったテチュ♪ これはかくれんぼテチュ♪
 チコお姉ちゃんは、かくれんぼでみんなが探しに来るのを待って脅かすつもりテチュ〜♪
 でも、もう見つけたテッチュ〜、ウジイチちゃんが歩いてバレバレテチュ!」

リンはなおも呼びかけながら駆ける。

近づくごとにリードの色が間違いなくチコの色、真っ赤であるのが確認できたし、
その先、リードが出ている草むらに何かが居るのが見えたし、
その頭の耳に付いている赤いリボンは間違いなくチコのリボンだと判った。


「もう、バレバレテチュ♪ チコお姉ちゃん、観念するテチュ! 本当にホントで居る場所判っているテッチュー」

すると、草むらのチコがガサガサと動き出す。

こっち、こっちと手招きしている… 様に見えた。


近づいたので判るが、チコは全身汚れきっていた… 汚れきっていたが確かにチコではあった。


「テチ、転んだテチ?   おベベを汚したから出られないテチュ?」

返事はなく、ただコッチ、コッチと手招きするだけだった。

転んだ汚れかと思ったが、近づくと周囲に得も言われぬ臭いが立ちこめていた。
それでもリンはチコに手招きされるままに近づいた。


「レフー、レフー、レフー」
蛆実装がリンを目指してやってくる。

リンはそれを抱き上げようとして少しおかしいと思った。

ウジイチちゃんは、チコが大切にして長く殺さずに飼えている蛆実装だ。
手間が掛からないように選別されたペット蛆は蛆実装の基準の中では知能が高い。

リンが飼っているウジニちゃんですらリン達姉妹を、服の色でなら区別して挨拶できるし、
より長く生きているウジイチちゃんは、その分だけより賢い。


リンに対して何の挨拶もなく、涎を垂らし、動く物に反応しているだけの様なマヌケな顔で歩くはずはない。


「ママも心配しているテチュー。   もう帰るお時か…」
あまりの蛆実装のマヌケ面に、抱くのを止めて立ち上がった。


その時だ。


どこからか「今デスゥ!!」という怒鳴り声が聞こえたかと思うと、
バン!と激しい音と共にボールが転がり落ち、リンはその場にしゃがみ込む。



「テェ!? テテェ?! テチュワァァァ…」
リンが痛みの走る膝を見ると、小さな鼓弾が皮を巻き込むようにして肉にめり込んでいた。

「テッテテッ? テチャァ!? テチャァァ? テチャ??」
何が起きたかさっぱり判らなくなっていた。

大した傷ではないが、飼い実装にとって全く経験した事のないほどの痛みで、
それだけで頭が真っ白になっていた。

ただ、チコの方から確かに轟音と何かが飛んできた事は判った。

そして、その轟音は、身を守る為にと飼い主から与えられ、飼い実装だけが持つ事を許された道具。
その人工的な激しい音は特徴的なので記憶されていた。


「テッテテェェェ    チコお姉…」

バン!

顔を上げたリンに、再び圧縮空気が解放される轟音が響くと、
その眉間が歪んで、「テピャァァァァ!!」とリンの絶叫が響く。

「スゴイ音テチ! 今まで遠くからしか見た事無かったから驚きテチュ。 少しチビったテチ…」

「こんな音が鳴るとはちょっとビックリテチ…  でも、今度はちゃんとド真ん中テチュ♪」


「テピュゥゥゥゥ! テヒャァァァァ! チコお姉ちゃん何でテチュ!  イタイテチュゥゥゥゥゥ! 
 イタイテチ、イタイテチ、イタイテチュゥゥゥ!! どうしてワタシにバンバン使ったテチュ!!」

リンは転げ回りながら、何とか額に刺さった弾を抜く。
額にポッカリ小さく空いた穴からドロリと体液が流れ落ちる。

痛みのあまりにお漏らししているのが判る。


姉は…  リンが見る限り、汚れてはいたが見間違うことなく姉であった。

装飾品もあるが、仲が良く諍いの少ない飼い実装の家族同士は、多少は雰囲気的な物でもそれが判る。

しかし、初めて感じる苦痛に加え、実の姉に撃たれたという衝撃がリンの苦痛を強めていた。

同時に、聞こえてきた声がチコの声ではない事が、判断力を失った今は判らなくなっていた。

家族を雰囲気で”正しく”認識できるのは、特殊な状況で無い時だけである。


「醜い転がり方テチュ〜♪  もっと無様に転がって苦しんで許しを請うテチュン♪」

チコがムクリと立ち上がる。 勿論、その声はチコの物ではない。


全く感情のない顔の… それだけにリンには冷酷に笑っているように見えた。

笑った姉がカクカクと身体を揺らしながら近づいてくる。


その右脇には鉄砲型の玩具…バンバンが構えられているように見えた。


「テ・テ・テテテテテテ  チコお姉ちゃん、ヤメテテチュ… ワタシテチュ…  イモウトちゃんのリンちゃんテチュ」

生まれて以来、家族の中で口喧嘩すら一度もなかった。

実装石の家族は環境さえ良ければ、多少の差違は有っても、思考も嗜好も同一体であるために諍いは起きない。

諍いが起きる原因は、外的要因、生存競争に起因する(あるいはそう錯誤する)状況的な物が多いが、
それがほとんどない飼い実装は、満たされている程に不自然な位に姉妹の仲がよい。

野良ならば、諍いは親離れや住みやすい環境の相違を生み、生物的生息域の拡大に繋がる。
それが必要のない飼い実装は、成体になった後も姉妹が親と共に生活する事が当たり前になり、
その為に諍いを起こす事に普通は利点がないのだ。


「テッ、テテテテッ、テテッ ダ、ダメテチュ、ママはバンバンを人に向けて使っちゃダメって言ってたテチュ!」

そのケンカをした事のない姉に、突如撃たれ、その姉が笑いながら迫ってくる…。

懸命に思いつく言葉で制止しようと試みるも、向こうが近寄ってくるとプレッシャーが増大し、
脂汗が滝のように溢れ、ブビブビと下痢の糞が止まることなくパンツから溢れる。

倒れた仰向けの姿勢のまま、弾の当たった足を引きずり、手で懸命に後ずさりするしかない。

「テッ、テテェッ チッ、チコ、お・お姉ッ! テェッ、 テチ テッ  テチッ テ・テテェェェ」

血の気が引いた顔で口をパクパクと動かし、最初は声が出ていた物が、
姉の姿が追いついてくるともはや言葉にならなくなり、その声も途切れていく。

銃口が迫ってくると痛みが幾たびも脳内で再生され、現実の痛みと変わらない苦痛としてリンを苦しめる。


通常なら痛みを無視してでもこの場から逃げようなりの反応をするが、
飼い実装として、そんな経験のないリンの肉体は、そんな生存に必要な機能を鈍化させていた。


自分にも同じ力… 肩から提げた専用ポーチに同じモノが入っているのに、
今更ながらでも取り出して反撃を試みようと言う考えは脳のどの部分にも生まれ出ない。


姉に撃たれた… ただそれだけが衝撃として頭の中をグルグルと周り、思考を埋め尽くし何も出来なくさせた。


バン!バン!バン!バン!

「デヂュワ!!  ビベェ!!  ボゲェ!!」

次々と響く轟音がリンに激しい痛みを与え、意欲を奪い、絶望を与えた。

肩に、腹に、太腿に… 打ち込まれるたびにのたうち、跳ね上がった。

新しく丈夫な服があるお陰で刺さりはしなかったが、突起の形に皮膚が凹んで服に体液が滲む。

肉体的な損傷は再生力を持つ実装石にとって酷い物ではない。
だが、その激しい発射音が実際の衝撃以上に”あたったら痛いはず”という感覚を与える。

痛みを知らない飼い実装には特に耐えがたい痛みを長く感じさせる。

バン!バン!バン!

なおも発射音が響く…。

弾は出ない。 既に6発、内蔵された弾は撃ち尽くしたが、圧縮空気が残っていて派手に発射音を響かせる。

でも、たったそれだけの事…。

それで、リンはもはや動く事すら出来ずに音を聞くだけで痙攣するだけにまで打ちのめされていた。

そして、姉に撃たれたショックで精神も崩壊が始まってしまっていた。


飼い実装特有の壮絶なまでの撃たれ弱さである。


「ヒヘッ… フペッ… テェッ… テェェェェェ」
突っ伏し、舌をだらしなく出して、眼前の姉を見上げる。

傷口を押さえる手は震え、それとは別に身体はヒクンヒクンと痙攣し、
糞はパンツを履いた尻をピンポン球大に膨れあがらせ、
なおも、ブチブチという音と共にほぼ液状化した糞が拡がっていく。

既に、そのリンの背後に1匹の仔実装と親実装がいる事など判らない。

「テチャチャチャチャ…」 「テピョピョピョピョ…」

姉が… グラリと揺れると、ガクンと糸の途切れた人形の様に崩れへたれ込んだ。

そして、その背後にニタニタと歪んだ笑顔の仔実装が立っていて、
さらにその後ろから玩具の銃を構えた仔実装が現れて同じ笑顔を見せる。

ウジイチに扮装させた蛆実装でリンの注意を引き、
チコの肉体を1匹が二人羽織の要領で動かしリンを誘い、向きを合わせ、
もう1匹が、さらに後ろに密着して玩具の銃の引き金を引く係になる。

2匹の腋と手で銃を挟んで固定し、銃手は銃の方向を微調整して引き金をスイッチの如くに押すだけ。

これなら、標的の方から真っ直ぐ至近距離まで接近してくれて、動かない大きな的を撃つような物。

特に玩具ではあるが、小さな仔実装にはライフルにも等しい代物を、長時間保持するのにも有効だ。


距離感は蛆実装のリード範囲で横から測り、仔実装と蛆実装が接触しそうな距離で合図を出す。


如何に不器用で、撃ち慣れていない実装石でも、これだけお膳立てをすれば弾を外す事はない。


「よくやったデス… 向こうの方から真っ正面にバカっ面を下げて近づいてくれたデス。
 ウジちゃんの紐が届くこの距離なら絶対に当たると思っていたデス…。
 もはやワタシは天才の域に達したデス!  知識が湯水のように沸き起こるのが感じられるデス!!」

自信満々にサザエが胸を張る。


「テチュー! ワタシの腕が良かったテチ、ひょっとしてワタシは天才テチュ〜ン♪」

「ワタシがこのクソ重たいブタを上手く動かしたからノコノコ来たテチュ! ワタシのお陰テッチュン!!」


仔達は仔達で、自分の手柄と自慢げに胸を張り合う。


「テァッ…  テッ もうヒドイ事しないでテチ… テェー もう逆らわないテチ、チコ様って呼ぶテチ。
 オヤツもゴハンも半分あげるテチ、毎日、チコ様の肩を揉むテチュ…   それから、それから…」

そんな中、リンは曇った目でキョロキョロとその実装石達を見回しながら、
媚びる声で、笑いにかき消される小さな音量で、ひたすらにブツブツと言葉を並べて助けを求め続けた。

ショックで判断力を失い、精神が崩壊をはじめたリンが痛みから逃げる為には、
もはや何も考えずに反射的に謝り、媚び、譲歩し、隷属する事しかなかった。


崩れ落ちて無言で腹をさする姉、怖い玩具を持ち笑うのも姉、指を指して笑っているのも姉、
ボールを持っているのも、ママと同じ大きさのも、涎を垂らしレフレフ鳴いているのも… 全てが姉に見えた。

そして、そんなリンに待ち受けているのは、当然の如く、仕上げの仕打ちである。


彼らは何も判らないようでいて、本能的には自分達の事を良く知っている。

まだ、リンの精神崩壊は浅く、痛みや認めたくない現実から逃避する為に、
脳が自然に壊れたフリをしているだけの初期段階である事を判っている。

それだけに、自分にだけ尊大な実装石は、自分以外の者には容赦はない。


「ママ、ママ、もうガマン出来ないテチュ、やっちゃってイイテチュン♪」

「デプププ… 大きい音をさせたから時間がないデス… 手早くハンゴロシでブタに現実を教えてやるデスゥ♪」


「テェー…  チコお姉ちゃんイッパイテチ…」

そう白く濁った目で見上げるリンに、1匹の仔実装が近づいていた。

チコを動かす役割でもなく、バンバンを撃つ役割でもない。
ただ、ボールを回収して親と共に待っているだけだった仔実装… 末娘タイコに最後の締めの役割が与えられた。


「いつもいつも、お前達のオモチャでオモチャにされていた恨みを返すテチィィィィィィ!!!」

キョロキョロと頭を振る仔実装の後頭部に手にしていたボールを思いっきり至近距離で叩き付ける。

「おね… ビギャ!!」

ベチッっと激しい音と共に、リンは顔面を地面に叩き付けられる。

柔らかいビニールと空気のボールで、仔実装の力がたかが知れているとは言え、
至近距離の死角から、しかも、反射的な防御すら出来ないリンは、
ボールの直撃で首が折れたかと思う程の勢いで、瞬間、上げていた頭が地面に向かって曲がり叩き付けられた。

ブビブビ…
それまでも漏らしては居たが、その糞を抱えたパンツがさらに膨らむ。

「いつもいつも、何様気取りテッチュ! ワタシ達が何をしたテチュ! 好き勝手にワタシ達の幸せを奪ったテチ!!
 自分達のオモチャでワタシ達の苦しみ味わうテッチュゥゥゥゥ!!!」

再び、顔を上げようとしたリンの後頭部を蹴り、踏みつけ、ケツを蹴り上げ、ボールを叩き付ける。

サザエはその度に投げつけられ転がったボールを拾ってはタイコに渡し、
タイコは再び、それを仔実装の背中に叩き付ける。


サザエは司令塔として脇役に徹していた。

実行部隊となる仔達に役割を持たせ、1匹ずつに仕事をこなす事が快感であると味合わせ、
着実に命令を聞く兵士に仕上げようとしていた。


執念、怨念…抑圧された反動がそうした力となってサザエを優秀な指揮官にしようとしていた。


仔達もまた、初めて味わう快感に酔い、母親の命令に心酔する兵士となりつつあった。

自分達の幸せを奪い、勝てないと諦めていた相手が、今は小汚く自分の足下なのだ。
それも、一度ならず二度までも…。


「ボヘェ!!   ビギャッ!!   パピョッ!!   ゲバァ!!!」

リンは、無防備に顔面を地面に叩き付け、さらにそのまま蹴られ踏まれた事で額を割り、
前歯が折れ、その歯は舌を切り口内に刺さった。

さらに、反射的に顔を上げようとした瞬間に蹴りが後頭部を襲い、後頭部を靴形に歪め、
片目が飛び出し、再び、その目が飛び出たままの顔面を地面に叩き付けられた。

そのまま踏みつけられた為に、飛び出した片目は頬に埋まりつぶれ、
舌は完全に千切れ、地面に打ち付けられてさらに数本の歯が折れたのが口内で頬などに刺さった。

ケツを蹴られパンコンが破裂した水風船のように潰され、服の中に飛び散った。

背中にボールを叩き落とされ、身体をくの字に曲げて口に溜まった血反吐を吐いた。


「ワタシもバンバン撃ちたかったテチュ! オマエのセイテチュ! ちね!ちね! ちんじゃえテチュ!!
 これは汚れたワタシの服の恨みテチ、これは誰か知らないけどナカマの恨みテチ…」

抑圧どころか完全な逆恨みの域に達して、なおもリンの大きなポーチを奪い去ると、
仰向けにしたリンに馬乗りとなりポーチを振りかざしてバンバンと叩く。

仔実装同士なのでソコまでしても命を奪ってしまうまでにはなかなか行かないが、
それだけに、まさにリンが受けるのは完全に精神を破壊する拷問に他ならない。
サザエは、それが行き過ぎないようにニマニマと顔を醜悪に歪めながら見守った。

「服だけは破ってはイケナイデス!」


その間に、残りのタラコとイクラは、いそいそと次の作戦の為の準備に取りかかっていた。

既に放心状態で無反応なチコの装飾品を取り、頭巾を取り、服を取り、靴も取り去る。
そして、タラコが服を脱ぐと、そのすっかり糞まみれとなったデザイン実装服を身に纏う。

「テチィー… ウンコまみれでクサクサ、イヤテッチュ…」

程度で言えば、何日も洗うことなく、あのゴミ溜の腐敗臭が芯まで染みきったボロ服と、
他人の糞まみれの服では、普段良いものを食べているこちらの糞服の方がマシではある。

「テッテテッ、チョットサイズがツライ気がするテチ…  糞ブタの服は気が利かないテチュ」

「テリャ… お姉ちゃん動かないでテチ。  この靴に付いていた布が履かせられないテチュ」

流石に、初めて見る規格外の服は見た感じでどうするものか判っては居ても、
実際に身につけるのに一苦労する。

しかし、時間かに余裕がないながら、靴下を裏表逆に履いたりしながらも、
なんとかパット見には着られて居るぐらいまでにはなった。


それが終われば、今度はタラコのボロ服をチコに着せる。

目の前で虐待される妹のリンをリンと認識できず、
膨らんだ腹をさすりながら「デベッ… デベベッ」と笑うだけのチコに服を着せるのは脱がせる以上の手間だ。


「デスッ… ヤツら、こちらに来るデス! タラコもイクラも用意できたデス? タイコも準備をするデス!!」

「これはワタシの食べたウジちゃんの恨みテッ…   テチー、もう時間テチ?」


「テチ… ママ、この玩具壊れたテチ…  途中から弾が出なくなったテチュ」

イクラがバンバンをつまらなさそうにサザエの前に投げ捨てる。

「サクセンにシショウはないデスゥ… 2匹目のブタのポーチにも同じ物が入っているデス♪
 まだ、音が出るから、コッチはタイコが持つデス」

サザエは、的確に弾切れしたバンバンをタイコに預け、イクラはリンのポーチから新品を抜き取る。


「テチャチャチャチャ… コイツまさにボコボコのボコになっているテチ♪」

タイコに担ぎ起こされたリンは、顔面が判別不能というか、
実装石独特の丸い顔が、おたふくの面のような形に頬が腫れ上がり、歯は歯抜けになり、
片目は抜け落ち、その抜けた目が潰れて腫れた頬にめり込んでいた。

イクラは、そのリンを笑い、同時に、そこまでしたタイコを褒めるような言葉の抑揚を込めた。


タイコは、そのイクラの言葉に、ニマーっと笑って返し、
リンの耳穴に細い木の枝を突っ込み、入ったところから更に力を入れて突き刺す。

「ヒョヘッ!」
リンが鼻や口から体液を出しピクンと身体を痙攣させ、一瞬支えなしで起立すると、またペタリと崩れた。

「テピピピピ!  ママー準備OKテチュン♪」

タイコがその様子を見て、満面の笑みでサザエの方を見る。


その隣に、チコを連れてタラコがやってくる。

タラコはチコの服を身に纏い、ウジイチの装飾品とリードを付けた蛆実装を抱えて、
傍目から見れば、ほぼチコそのままになっている。

そして、イクラは新しいバンバンを持ち、ガサガサと背後の草むらに身を隠すと、
大回りをして何処かに消えた。


「イイデス? このサクセンはタラコ、”サイショ”のオマエの演技にかかっているデス」

「判っているテチュ♪  それより、ワタシはさっきからコイツらいたぶってないテチュ…。
 イクラは玩具をイチバンに撃てて気持ちよさそうテチ。  タイコはブタをボコボコに殴って楽しそうテチ。
 ワタシは最初のブタのクサイウンコをクサイ穴にぶち込んでやっただけテチ。
 順番で行けば、残り1匹はお姉ちゃんなワタシがボロボロにする番テチュ、忘れちゃイヤテチュ♪」

サザエ達の迎撃準備は整った。

狂気の詩を紡ぎ出す準備が…。

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つづく

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1 Re: Name:匿名石 2023/07/31-15:26:04 No:00007673[申告]
こいつら凶悪すぎる…
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