タイトル:【駆馬】 ドレスコード(後編)
ファイル:ドレスコード2.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:3442 レス数:0
初投稿日時:2008/10/18-03:05:05修正日時:2008/10/18-03:05:05
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 ところが、2、3日してからあれほどかかわりたくなかった“ギャクタイ先生”からのファックスが手元に届い
てしまった。

 
 −関係者各位−

  来る10月13日(祝)午前5時より−−市駅前公園におきまして有志によります有害実装石の
  駆除活動 (市許可番号 H20-J3398号)を執り行うこととなりました。
  つきましては、皆様には奮って御参加頂けます様よろしくお願い申し上げます。
    
  駆除に必要な道具、処理袋等はこちらである程度準備しておりますが、各自使いやすい道具を
  持参いただいても差し支えありません。但し、他の参加者や近隣住民の方に迷惑となる物や
  違法な物については厳禁とさせて頂きます。
  また、当日は上着から下着まで総ての着替えと洗面具をお持ちになることをお薦めいたします。

  尚、当日の参加条件と致しまして男性はネクタイ着用程度、女性もこれに準ずる服装(もちろん
  汚れても構わない物)の着用をお願い致します。これを参加の必須条件とさせていただくことを
  付け加えておきます。

  以上、参加の申込、お問合せ等ございましたら穐動物病院(〇〇〇〇−〇〇-〇〇〇〇)逆代まで
  お気軽にご連絡ください。


 何だコリャ?ネクタイ締めて駆除に行けっての?そう思いながら規則的に吐き出されていくファックス用紙を見て
いると最後に手書きで
 “「」君へ。君は絶対参加だからね。それとロッソちゃんとパルタくんにも参加してもらえるようにヨロシク。
当日は朝早いし、ロッソちゃんとパルタくんの用意もあるから前の晩からウチに泊まってくれるといいよ。”
と書いてあった。あの先生何企んでるんだろ・・・・・




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 先生に言われたとうり前日から病院に泊り込むことになった。夕方遅くに着いたのだが他に先生の虐待仲間だと
いう人達が何人か居り。皆すでにデキあがっていた。

「へぇ〜この娘がロッソちゃん?可愛ィィ〜。デケェ〜」

「こっちのワンコもデケェ〜」

“可愛い”というキーワードは大好きだが酔っ払いは苦手なロッソが少々ヒキながら挨拶していると見かねた先生
の奥さんがロッソとパルタを奥へ連れて行ってくれた。それと入れ替わりに先生が僕に缶ビールを投げてよこすと
再びドンチャン騒ぎが始まった。

 アルコールが入っていたのでかなり無茶苦茶ではあったが、宴会の中で一応明日の駆除活動についてのミーティング
のようなことが行われた。不思議でしかなかったあの服装指定は言わば糞実装をおびき寄せるためのオトリらしい。
確かに作業服やジャージよりはヤツ等も喰いついてくるだろう。
 わざわざ祝日を選んだのも、小賢しいヤツが通勤のサイクルから曜日を理解している可能性を警戒してとのこと。
そこまで用心せにゃならんのか?とも思ったが、実装石に詳しい先生の言うことだから間違い無いのだろう。

 結局どこまでが宴会でどこまでが作戦会議なのか分からないまま適当にポジションが決められそのまま雑魚寝状態
で眠りに入った。明日ホントに大丈夫なのかな・・・・



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 あくる朝まだ日が昇る前に起きて本日の“戦闘服”に着替える。就職活動するときに買ってそのまま捨てるに忍びず
箪笥の肥やしにしていたスーツだが今回で天寿をまっとうさせてやろう。・・・ヨカッタ、そんなに腹は出ていない
みたいだ。
 他の人達も銘銘が幾分くたびれたスーツだったり学生服だったりに着替えている。昨日の酔っ払い顔からは想像も
できない精悍な顔付で眼を鋭く輝かせているあたりはさすが虐待派と言ったところか。




 集合場所になっている駐車場に行くと他にも結構人が集まっていた。予想していたよりはかなり大規模な駆除らしい。


 よく見ると知った顔もチラホラ見える。商店街の銭湯“実の湯”の親父さんに喫茶“hyahha!”のマスター、“魚実”
の大将は30年前のトラ〇ルタみたいな白いスーツに無理やり腹を詰め込んでいる。ついでに頭のてっぺんには天然の
ミラーボールまでのっけている。

 何か賑やかな方を見るとこれまた商店街の悪ガキ共が暇を持て余して遊んでいる。どこで手に入れたのか皆私立学校
の制服をきていた。しっかし似あわねぇな。ン、一人女の子も混じって・・・ってあれ和菓子屋のアキ君だよ・・・
御丁寧にツインテールのカツラまでかぶって妙に嬉しそうにスカートをひらひらさせている。しかも意外と似合って
いるから恐ろしい。彼はいろんな意味で将来有望かも知れない。

 数は少ないが女性も何人か見えた。僕の基準からすれば「それ汚していいの?」と聞きたくなるような高そうな
スーツをピシッと着こなしたモデルみたいな女性(Woo!Cool!)。制服姿の女子高生も2人・・3人・・あ、一人は
完全に男だ。アキハバラによくいるらしいねああいうの。

 鮮やかな緑色のウィンドブレーカーを着ている人も数人。どうやらいつも公園で餌撒きをしてはシルバー人材の
おじさん達と小競り合いを起こしている愛護派を真似た格好らしい。

「こっちも準備できましたよー。」逆代先生の奥さんが車から降りて来た。その後に続いて降りてきたのは実蒼石
と実装紅が数体ずつ。皆幼稚園児のスタイルだ。御丁寧に名札までつけている。遅れて降りて来たロッソは白い
ブラウスに赤いスカート姿でランドセルを背負っている。何かそのスジのマニアなら涎たらしそうな格好だ。
 最後に飛び出して来たのはパルタ・・・・思わずその場にいた全員が爆笑した。羽織袴姿で尻尾を振っている。
頭にはチョンマゲまでのせた“バカ殿”のコスプレだ。「これは流石に正装じゃないだろー。」と突っ込む声も
聞こえたが本人(犬)は喜んでいるみたいだからまぁいいだろう。

 最後に市役所の職員が数人やって来て逆代先生に公園の包囲が完了した旨を伝えると先生が徐に拡声器のスイッチ
を入れた。




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「えー、皆さん本日は朝早くにもかかわらずお集まり頂きマコトにありがとうございます。」
 場違いなほど呑気な口調で先生が今日の大まかな手順を説明した。今回の駆除作戦はこうだ。

 まず前日の夜半(僕達がドンチャン騒ぎしてた頃)から今し方までかけて市役所の職員さんが公園の周りの生垣を
完全に塞いで人間用の出入り口以外を完全に封鎖したそうだ。もちろん駅の方から始めて夜エサ漁りに行っていた
実装石達が戻って来たのを確認してから駅ビル側を塞いだのは言うまでも無いとのこと。

 僕達は数箇所ある入口から数人ずつ公園に入って行き、糞実装が現れたらしばらくは手を出さずに出現ポイント
からある程度離れたところで糞実装を潰す。ただこれだけらしい。
 それと、(虐待派の皆さんには特に)注意されたのだがダンボールハウスに潜んでいたりする明らかに“狩リ”に
参加していない実装石には原則として手を出さないようにとのこと。これは実装石の浅知恵で始めた“狩リ”ごとき
が成功するワケが無いと後世に伝える語り部が必要になるからだそうだ。


「おっ、糞実装達も用意できたみたいだぜ。」
 事前にカメラを仕掛けていたお兄さんの声に皆がモニターの前に集まる。実装石達は例のコンビニ袋をかぶると
数匹がまとまって一ケ所に糞を始めた。そしてその糞の山を互いのビニール服に塗りつければ糞実装の完成という
わけだ。よく見ると仔蟲も混じっている辺りヤツ等にとっては本当に危険の少ないお手軽なエサ集めなのだろう。


「じゃ、そろそろ始めますか。」
 先生の一声を合図に全員が持ち場に向かった。




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 最初の集団が公園に入ってから20分くらいしてから携帯に“「」君スタートして下さい”とメールが来た。
一応武器になる物を昨日捜したのだが生憎僕は普段からギャクタイをやってるわけではないのでバー(rなんて
物は持っていない。やむなく物置からスコップを持ってきたのだが先生曰く「今回はあくまでも通勤途中のリーマン
になりきること」が最大のミソだとかでそれは使用を禁止され、代わりに何やらズッシリ重い鞄を渡された。これ
を武器にしろってこと?


『デギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!』『デギュオアアアアアアアアア!!!!』
 遠くから実装石達の悲鳴が聞こえてくる。先発組はかなり派手にやっているらしい。ふと、これだけ景気良く同属
の悲鳴が聞こえたら糞実装共も今日はヤバイと判断して隠れるんじゃないの?と思った次の瞬間。

『デエエエエエッッッッスウウウウウウウウウウ!!』『デシャァァァァァァァ!!』
・・・完全な杞憂に終わった。コイツ等に他人の危機が自分にも降りかかるかも知れないと考えろというのが土台
無理なワケね。

『デジャァァァァ!(糞つけるデズよー!)』
『デジュアアアアアアァァァァッーーーー!!(さっさとアマアマ献上するデズーーッ!!)』
思い思いに威嚇しながら僕の周りを糞実装が回る。やはり思ったとおりコチラの手の(足か?)届く距離には入って
こない。無視を決め込んで20mほど歩くと早速ばて始めた糞実装達のスピードが鈍りやがて、
“ベチャッ・・・”  『デ?・・・・』
前を横切り損ねた糞実装の糞が僕のズボンにくっついた



「おんどりゃぁぁぁ!!何さらすんじゃぁぁぁぁぁ!!!!」
 今まで無言・無表情で歩いていた僕がいきなり叫んだ声に驚き糞実装達が固まった。
「ずうぉぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁ!!」
 端で見ていればマヌケとしか見えないであろう無理矢理作った憤怒の表情のまま一番糞をつけた
糞実装に踵落しをお見舞いする。続いてその他の糞実装達を吹っ飛ば・・そうとしたが当然屈まないと
当たらない。ええぃ、使いニクイ。
「中、何入ってんだよ?」いっそ中の物を直接使ったほうが楽かも知れないと鞄を開けると・・・
「六法と広辞苑?」確かに僕の商売道具だけど。これのどこが“君にふさわしい武器”なのよ逆代先生!?

 結局、六法と広辞苑を投げつけて一匹ずつ潰した後は直接踏み潰すことになった。こうなりゃ素手でやってやる。

 30分もすると糞実装達の威嚇の声は完全に聞こえなくなり、代わりに阿鼻叫喚の地獄絵図が展開されていた。



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『デビャ!、ディ!、デビョッ!』
 全く無駄の無い動作で傘を振り回す男性の動きに合わせ、音楽を奏でるかのようにテンポ良く実装石が空中で
ミンチと化す。あ、あの傘良く見ると柄がバー(rだ。ああいう改造はセーフなわけね。

『デ・デデデ・・・・』
 こちらでは一見すると一昔前の銀行員のようなスタイルで固めた男性に全身に鉛筆を突き刺された実装石が痛みと
恐怖に固まっている。
『テチャァァァァ!(オマタ痛いテチィーーーッ!)』
 その鉛筆の先に仔蟲を総排泄口から突き刺し盆栽状態にすると即席で作ったらしい柵の中の他の糞実装家族の前
にその盆栽を置き脳天に万年筆を突き立てると素早く下がった。
『デギュオアァァァ!(“ヒ〇ブ”デズゥッ!)』
 妙にサービス精神があった親蟲の爆発と共に仔蟲達が天に舞い次の瞬間地面のシミと化す。よく分からんが薬品
を仕込んだ万年筆があの人の武器らしい。
「けっ!汚ねー花火だ。」
 そう嘯くを柵の中で無駄なあがきをしている糞実装を新たに掴み出した。


「おらー、逃げろ逃げろ♪」「どした?もう命乞いのネタ切れか?♪」
 かなりヤバそうな歓声が聞こえる方を向くと“実の湯”の親父さんと“魚実”の大将が数体の糞実装を追い詰めて
いる。二人の手には薪割りの時に使う斧とマグロ掻っ捌く時に使う特大の包丁・・・確かに商売道具だけどあんなの
仕事行くリーマンが持ってる訳ねーよ。
『デデェ!!!デスデスゥ・・デッスーン♪(仕方ないデス。コノ美しいカラダを好きにさせてやるから助けるデス)』
『デデデ!デスデスデスゥゥゥ!(ワタシはコイツラに誑かされただけデス!どうか命だけはお助け下さいデスウゥゥ!)』
 親父さん達はにっこり笑うとそれぞれテンプレどうりの命乞いをする糞実装を掴み上げ・・・・

『デギャアアアアアアアア!!(何する気デス!?死んじゃうデス!!)』
 確かに“カラダを好きにされている”糞実装がそこにいた。いつの間にか出刃包丁に持ち替えた大将がベンチを
俎板にして糞実装の解体ショーを始めたのだ。観客はアナゴを捌くときに使う釘で逃げられないよう固定された
他の糞実装達と解体されている糞実装本石。
『デベギャベァァ@ak\ksiwolp@.;:\6%$#!!!!』
 もはや悲鳴ですらない声と共に解体実装が事切れると、今度は仔蟲を使ったイワシの手開きショーモドキが始まった。
しかし、鮮やかな物だねぇー。

『デヘエェ・・デププ・・デッスーン♪(デェ、ヒドイ目にあったです。でもコイツのオ陰で助かったデス。このまま
コイツをメロメロにしてセレブな飼実装デッスーン♪)』
 只単に一匹隔離されただけなのだがそれだけで幸せ回路を全開にした糞実装が媚ポーズをとろうと右手を上げた
その瞬間、“ヒュッ”  『デッ?・・・』   斧の一振りで右手が地面に落ちた。
『デギャアアアアアアッー!ギュバァァアァ!!!』
 間髪入れず見事な斧捌きで左手、服、髪と削ぎ落としていく親父さん。こちらも毎日廃材や倒木なんかをバラして
いる腕は伊達じゃない。
『デ・デ・デヒヒヒヒ・・・。デッギャアアァァァァ・・・・・・』
 恐怖のあまりシリモチをついた糞実装の両足を最期に叩き切るとそのままゴルフのスイングのように斧を振って
噴水へ打ち込んでフィニッシュ。そのまま沈んで見えなくなったが、こちらも確かに“命だけ”は助けたよな。

 その後も二人は薄ら笑いを浮かべたまま糞実装の駆除を続けていた。確か二人とも婿養子だって聞いたことある
けどやっぱり人に言えないこと多いんだろうなぁ・・・・


「ヤッダー!ちょー気色ィ♪」
 女子高生の黄色い声と実装石の悲鳴が交叉する。女子高生の一人が携帯そのものより質量が有る無数のストラップ
をジャラジャラと振り回して糞実装の頭を石榴割りにしていた。もう一人は2個の携帯をヌンチャクのように繋いで
振り回している。なるほど、女子高生の必須アイテムは携帯電話というわけか。

「ヤッダー!ち゛ょー気色ィ゛♪」
 今度は声そのものが気色悪い同じ科白が聞こえた。先程のアキバくんが糞実装達にファイヤーダンスを踊らせて
いる。どうやらガソリンか何かを飲ませた後に上下の口に点火するらしい。口から火を噴きながら緑赤の目をギョロ
ギョロさせ、内側からの熱に熔けていく実装石は確かに気色悪いが、君も負けず劣らずで気色ィよ。


「どうしたの?もうお終いかしら?」
 モデルみたいなお姉さんが糞実装を踏みつけ、冷たく見下ろしている。あ、あのピンヒールが武器なんだ。
手にした偽石サーチャーで的確に偽石の位置を探りそこにジワジワと体重をかけている。
『デ・デ・デ・デ・デッ』
 糞実装は偽石を踏まれる痛みと恐怖で声も出ないようだ。
「駄目ねぇ、この程度の刺激で動けないなんて。それにその情けない声、まるで豚の悲鳴だわ。」
そう言いながらヒールをグリグリし始めた。
「ほら、もっと頑張って、少しは私を満足させなさい!この豚糞蟲!!」
お姉さんが脚に力を加えたその瞬間、
『デッ・・・』
パキンという小さな音と共に糞実装が事切れた。
 
 ふん、と小さく鼻を鳴らすと悠然と次の獲物を捜すお姉さん。今までそういう趣味はないと思っていたのだが、
・・・糞蟲チョット羨ましいかも・・・ナンカ・・・・あのヒールになら・・踏んで欲しい・・・・・・


『デギャアアアアアアアアアア!!!!!!!!』『デギュオアアアアアアアアア!!!!!』
『デェェェェン!デェェェェン!』『チャガアアアアアーーーー!!』
 一際景気良く悲鳴が響いているのは悪ガキ共とパルタの連合軍だ。いつも一緒に遊んでいるメンバーでもあるの
でお互いの連携もバッチリだ。
『デェェェェン!デギャァァァーーアア!(止めるデス!仔が死んじゃうデス!)』
 一人の男の子がバットで仔蟲をノックすると、タイミングよくパルタがそれを咥え嬉しそうに走って行く。親蟲
はそれを取り返そうと無駄な努力をしてパルタに踏み潰されている。良く見ると仔蟲は禿裸にひん剥いて首から下
をラップでくるんである。なるほど、あの子達もさすがに糞まみれのヤツを進んで触る気にはなれないか。
『ムギュゴボガバアァァァ!!』
 訳の分からない悲鳴がしたほうでは、鼻と口をガムテープで塞がれた実装石が総排泄口に縦笛を突っ込まれ手足
をバタバタさせている。
「いっくぞー。」
 一人が声を上げるとその笛に息を吹き込む。何度か息継ぎをしながらどんどんと実装石を膨らませ・・・
“パアァァン!”と豪快に破裂させた。そうそう、子供の頃はああいうのが楽しいんだよね。
「よし、行くぞパルタ!」
 仕舞いには地面一面に糞実装を固定し、その上で駆けっこが始まった。実にほのぼのとして良い風景だ・・・・


『ナノダワーーッ!』『ボクゥーーッ!』
 こっちは実装紅と実蒼石が手際良く駆除を進めている。これは別に珍しい風景でもないのだが全員が幼稚園児の
格好をして走り周っているのがどこか愛らしい。少し脅かせば泣いて逃げる人間の幼児だとタカを括って近付いた
糞実装達はそれが天敵と分かりただ逃げ惑うだけ。
『ダワアァーーツッ!!』
 一際大きな声がする方にロッソがいた。どうやらロッソを中心にしたフォーメーションが出来上がっているらしい。
鋭い実装紅のツインテールや実蒼石のハサミに追い立てられた糞実装達が必死に逃れたその先にはロッソが待ち構え
ていて特大ツインテールをド〇ゴンご〇しのごとく振りかざしトドメをさしている。うぅ・・ロッソカッコイイよ。
まるで電〇男が間違えた某ブランド名モビルアーマーみたいだ(古くてスンマセン)。
 ロッソの傍らには何故か逆代先生の奥さんが立っていて楽しそうにタンバリンをたたいていた。別に意味は無い
のだろうが引率の幼稚園の先生の役か?そういや、あの奥さんも虐待派だって言ってたな。さすれば、あの心底嬉
しそうな笑顔も本物ってワケだ。

 
 その後も周りの人達の駆除方法に感心しながら僕も手当たりしだいに出くわす糞実装を潰していく。渡された
“武器”は役に立たないので素手での勝負だ。踏み潰すか、頭を掴んで握りつぶしながら他のヤツに叩きつけるかの
二択だけ。お陰で全身糞緑だ。周りをよく見ると僕と同じく“ハズレ”の武器を渡された人が結構多いみたいで糞緑
に染まりながら暴れているのが目に付く。これじゃどんな格好してても意味無いんじゃない?




『デガガァァーーッ!?デス、デシャァァッ!?(オカシイデス!?パリパリの服を着ているニンゲンはワタシ達が
ウンチまみれなら恐れおののいてエモノを献上するはずデス!?)』
『デスデスッ!デジャアアアアアアアアア(そもそもその考えがオカシカッタんデス!誰デス?こんなくだらない
ことを思いついたのは?禿裸にひん剥いてギッタンギッタンにしてやるデスゥ!!)』

 今までの自分のことはすべて棚に上げお互いを醜く非難しあう糞実装達。徐々に包囲網が狭まり駅の方へと追い
やられて行った。
『デ、デプププ、デスデシャァ。(あそこにバカ奴隷達がいるデス。アイツラにこの悪魔をやっつけさせるデス)』
 公園の出口、駅側の門の所で緑色のウィンドブレーカーを着た集団が何やら作業をしているのを見つけ、糞実装達
は助かったと言いたげに笑うとポテポテとそちらに走って行く。どうでもいいけどもう少し早く走れんのか・・・


『デギャア!!!!!! (か、髪・・・・・髪が・・・・・・ワタシの・・・・・髪がデスゥウウウウウウ!!!)』
「はーい、ニンゲンさんはね、実装ちゃんがウンコまみれで汚いと嫌いになるからキレイキレイしようねぇ♪」
 そう言って服と髪を毟り取られ熱湯の中に放り込まれる糞実装。
『デギャアアアアアアア!デデデギャゴギャギョベギャャギゴベギャァァァア゛ァア゛ア゛ア゛ァア゛ア゛!!!!(違うデス!!ヤメルデズゥゥ・・・)』
「あらー、実装ちゃんお腹空いてるのね。好きなだけ召し上がれ♪」
 抗議には一切耳を傾けてもらえぬまま、口に漏斗を突っ込まれ何やら煮え立つ白い物(澱粉糊を煮立てた物だった
らしい)を流し込まれ悶絶する糞実装。そう、彼らが最期のトラップにして糞実装達の希望を奪う真の地獄の使者
だったわけだ。
 愛護派と勘違いして駆け寄って言った糞実装達は“何故?、どうして?、そうじゃない!”と訴えているが生憎
彼らは愛護派だからリンガルなんか持っていない(笑)。あくまでも自己満足の為に“実装ちゃん”を可愛がるだけ
の存在だ。




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 気がつくと時計の針は9時前を指している。秋晴れの高い空が眩しい。

「では、これから清掃活動に入ります。分担を決めますので一旦集合して下さい。」
 自身も糞緑に染まった背広姿の逆代先生の声が広場に響いた。僕はパルタとガキ軍団、それに実蒼石を一匹引率
して公園西側の藪周りを掃除することになった。


「えーっ?空き缶はいいんじゃないの?」
 空き缶やペットボトル、タバコの吸殻まで拾う僕に弁当屋の一人息子のトシが不満を漏らす。

「ごちゃごちゃ言わない!これも“清掃活動”!」
 そう、今回の目的はあくまでも実装駆除だから実装石の残骸以外は片付ける義理はないだろう。だがついでに
この程度のゴミを拾うのがたいした労苦であろうはずがない。その僅かな労苦だけでたくさんの人が気持ち良く
公園を使えるのだ。黙って体を動かせ。

 本音をいえば“実装潰し”だけを楽しんでさっさと帰りたかったであろうガキ軍団は不満タラタラだったが、
最年長のオッサンであり、且つ自分達の両親より若いのにその両親が“先生”と呼ぶ(ホントはやめてほしい
んだけど)僕が黙々とゴミ拾いを続けるため渋々つき従う。教師諸氏よ子供は大人の背中を見て学ぶんだよ。
 それに、楽しみや権利を主張するにはそれ以上の労苦や義務を履行せねばならんのだ。権利だけ主張して、
義務の履行になれば屁理屈をこねて逃げようとするならそれは実装石やア〇公(おっとっとっと・・)と何ら
変わらんぞ。

「まっ、良い事をすればいつかはそれが自分に返って来るって。」
 不服そうなガキ共に全く説得力のない言い訳をしてなんとか丸め込んだ。


『テエエエエエエェェェ・・・』
 ジェノサイドをかろうじて逃げ切り藪の中に逃げ込んだ仔糞実装を実蒼石が手際良く見つけ追い立ててくれる。
それをガキンチョ共がひとしきりオモチャにしてから処理袋に叩き込んでいる。この分なら1時間も掛からずに
終わるだろう。と、
『テチュアアアアーッ!!』
やたら元気な仔糞実装が藪の中から追い立てられ、僕達の姿を見上げたまま固まった。

『テチュアァァァァアァ!テチュアテチュアァ!!(ニンゲンサン許してくださいテチ!ワタチは何も知らなかった
テチ!無理矢理ママにウンチついた服を着せられてニンゲンサンの前に連れて行かれただけテチ!可愛いワタチが
ニンゲンサンにウンチつけてアマアマ献上させようなんて考えるワケ無いテチ!可愛いワタチは無実テチ!!)』
 誠意のカケラも感じ取れない土下座を繰り返しながら、別に何も聞いていないのに洗いざらい自供してくれた仔蟲
ちゃんを摘みあげると、
『テッ!チィィィ・・・テチュ〜(ほら、ワタチはこんなに可愛い・・テチ・・だからひどい事なんかしちゃダメテチ・・悪い
のは全部ママとオネーチャ達テチ・・・ミンナ死んじゃったからもうイイテチ?ワタチはお前のお家に連れて帰って
ステー)。プツッ!』
 これ以上聞いてもリンガルの電池がもったいないだけなのでスイッチを切った。まだこちらが話しを聞いている
と思っているのか仔蟲は糞服のまま透明涙と鼻水でグチャグチャのままの顔で必死に媚びている。コイツが可愛い
と言うならハダカデバネズミは最高のセックスシンボルになれるぜ。

「「」さん。これ。」
 まだ女子小学生の格好をしたままのアキが僕に小袋を寄こしてきた。コロリにゲロリにドドンパねぇ・・・
『チププ・・』
 声を殺して笑ったつもりだろうがその場の全員がその声を聞いた。残念だったな。それさえ無けりゃ一思いに
逝かせてやったものを・・・

『テ?』   糞服(30円のスナック菓子の袋)を引ん剥く
『テテ?』  頭を摘んだまま軽く振り、パンコンで重くなったパンツを処理袋に落とす。
『テテテ?』 トシが持っていたラップで下半身を厳重にくるむ。

『デギャアアアアアアアア!!!!!』
 ガキ共とパルタにとって本日最後のオモチャが出来上がった。


『ボク!ボクゥー!!』
 先行していた実蒼石が藪の奥、木と木の陰になっている所にハサミを向けている。腹ばいになって覗くと奥に
ダンボールらしき物が見え中から押し殺したような実装石親仔の声がした。


『テチャァァァ・・・ テエエエエエエェェェェン!(もうイヤテチ・・怖いテチ!怖い声がイッパイ聞こえたテチ。ウジチャンもパキン
しちゃったテチ!)』
『デスーッ!デスデス!(静かにするデス!このお家はゼッタイニンゲンには見つからないデス。ニンゲンがいなくなる
までじっとしてるデス!』
 気配からして中に潜んでいるのは成体とその仔が数匹といったところか。
『デエ・・・デスデスゥ・・・(やはりアレは何かの間違いだったんデスね。どんな格好をしたってニンゲンがワタシ達を
恐れるなんてことがある訳が無かったんデスよ。現に今までもニンゲン達はミンナパリパリ服にウンチ付けても
コンペイトウ一つ寄こさなかったはずデス。それどころか怒ってワタシ達を踏み潰したくらいデス。それをバカ
な連中がカン違いしたからニンゲンが本気で怒ったデス。オ前タチも見たデス?今朝のニンゲン達はパリパリ服に
どんなにウンチつけられても怖がりもしなかったデショ?あれがニンゲンの恐ろしさデス。ママはそれを知っていた
から“狩リ”にはゼッタイ参加しなかったんデス・・・)』

 話の内容から察するに慎重派の賢い実装石か。コイツの話を聞いていて僕を含めた何人かが何故素手で駆除活動を
やらされたのかも何となく分かったような気がした。恐らく逆代先生は慎重派の実装石達に“ニンゲンは糞まみれ
になっても平気”と印象付けるためわざとそうならざるを得ない人間を駆除メンバーの中に混ぜたのだ。それは良い
考えなのだろうが、何も僕にその役あてがわなくても・・・

『ボクッ。ボクウーッ?(「」サン。追い出しますか?)』
 いつの間にか僕の名前を覚えてくれた実蒼石の頭を撫でながら、「いや、こいつ等は一応残しておかなければ
ならないんだよ」と説明してあげる。とはいえ“ニンゲンは恐ろしい”と刷り込む為にもう一押ししておくのも
悪くはないよな・・・・


「トシーッ。さっきの仔蟲まだ生きてるか?」
 後で遊んでいたガキ共が僕の前に仔蟲をぶら下げた。
『テェエエエエ…・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
 この短時間でよほど素敵な体験をしたのだろう。髪も服も無くし耳も片方どっかに忘れて来たみたいだ。後頭部
が真っ平らなのはどこかに擦りつけたからだろう。顔には恐怖の表情がこびりつき血涙を流している。持った感触
がグニャグニャしているのは全身の骨が砕けているからみたいだ。

『テ、テチューーン・・・』
 こんなになってまで媚びようとするのはある意味アッパレだが、悪いがそんなことで人の心は動かせない。

『ボクウーッ。』
 実蒼石に半分に切ってもらったペットボトルに仔蟲を押し込むとアキにドドンパを持ってきてもらう。全部で5粒か。

「「」さん。何するの?」
 集まってきたガキ共に順番に藪の奥を覗かせた後、仔蟲の前にドドンパをちらつかせてやる。とたんに目に光が
戻るのをみてコイツ等はつくづく救われんなぁと再確認する。

『ヂュグオオオッッッ!!!』
 ドドンパを全部直接喉の奥に押し込んでやると今迄で一番大きな声を上げた。なんだ、元気じゃないか。
『テ?テ・テ・テ・テテテテ・・・・』
 みるみる仔蟲の顔が青ざめ脂汗を浮かべ始めたのを確認してペットボトルを藪の中に向けると・・・・
『デヂャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
 大量の糞を推力に仔蟲がダンボールハウスに突っ込んで行った。ドドンパすげぇー。

 藪を覗くとダンボールハウスに仔蟲の頭1個分の穴が開き、中から実装親仔の悲鳴が聞こえる。2回ほどパキン
が聞こえたがまぁいいとしよう。

「よしっ。撤収ぅ♪」
 久しぶりに子供に戻ったような気分でガキ共に呼びかけた。




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 糞まみれの団体が跨線橋をゾロゾロ歩く様はかなり異様だったのだろう。改札口の駅員さんは完全に固まったまま
僕達を見ていた。あの後駆除メンバー全員が旧の駅前商店街にやって来たのは“実の湯”で体を洗うためだ。
 当然まだ暖簾は出ていないが、一足先に戻った親父さんがちゃんと準備をしていてくれた。

 まず、下駄箱の前で上着や靴下等特に脱いでも問題の無い物を総てゴミ袋に入れ男湯と女湯に分かれる。その際
当然のような顔をしてロッソについて行こうとしたパルタを無理矢理こっちに引っ張る。お前一人イイ思いさせて
なるものか・・・
 脱衣場に敷かれたビニールシートの上で服を脱ぎ、これもゴミ袋に放り込む。
 風呂の入口に特別に設えられたシャワーで全身を流して初めて湯船に近付くことが許された。これでやっとサッパリ
できると言うわけだ。

 一応1回洗えば問題無いはずなのだが、何故か実装糞の臭いがするような気がして誰もが洗い場と湯船を何往復
もした。親父さんには申し訳ないが今日は赤字だろう。



「まぁ、これで糞実装の出現は無くなるだろう。今回は「」君のお手柄だよ。」
 いつの間にか僕の隣でお湯に浸かっていた逆代先生が僕に話しかけてきた。
「これから冬になって高価なコートやブーツなんかを汚すヤツが出てたら、プロ市民なら公園ごと潰せと言いかね
ないからね。ある意味君はかけがえのない街のシンボルと自然を守ったんだよ。」

「先生達にとっては“自分達のかけがえのないオモチャを”でしょ?」
 と言いたかったが、周りの人達に話を持っていかれやり返すタイミングを逃してしまった。まっ、構わんか・・・
女湯のほうからは実装達の楽しげな歌声が聞こえ、天窓から見える抜けるような青空に消えていく・・・傍らでは
パルタとガキ共が水の掛け合いを始めた。少々やかましいが実に平和だ・・・・・・



「はいっ、お待たせー!」
 早起きしたせいでウトウトしていたが誰かの威勢のいい声で目が覚めた。見ると洗い場の入口にビールやジュース
の缶と氷の浮かんだタライが置かれ、いつの間にか脱衣場に置かれたテーブルにはあれこれと食べ物が並んでいる。


「と言うわけで本日は皆様お疲れ様でした。では只今より打上の会を執り行いたいと思います。皆様ごゆっくりお楽しみ
下さい。尚、本日の料理等の費用は総てこの「」君よりの奢りとなっておりまぁす。」

 って、ちょっと待て!マジで聞いてねぇぞ!??

「ははは、そういう意味じゃないよ。」
 マジで顔色を無くした僕の肩を叩きながら先生が笑った。



「ほら、「」君この間公園でおじいさん達助けたでしょ?あの二人俺のお客さんで更にいうと実鉄グループの役員
さんでもあるんだ。あの後公園で駆除があるって話をしたら糞実装達から助けてくれた人がいるって言ったので
ピンときて詳しく聞いてみたらやっぱり「」君だって分かってね。」
 先生が続けた。
「今回は君も参加する、いや、それどころか主要メンバーの一人だっていったら費用を全面負担するって言い出し
てね。この料理も風呂の燃料代もいわば君のズボンのクリーニング代ってわけよ。」
 そう言ってパンと僕の背中を叩くと同時に周りから「ゴチになりやす!!」と野太い大合唱が響いた。

 全く・・・・寿命が縮んだよ・・・


 ふと横を見るとテーブルに突進しそうなパルタを抑えながらガキ共が先程とは違う幾らか尊敬の念の混じった目
でこちらを見ているのを見て。軽く鼻を鳴らした。

 なっ、分かっただろ?良い事すりゃ必ず自分に返ってくるんだよ。


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 前編、後編に分けてお届けさせていただきました。お目汚し失礼します。

 正直、書いている間はこんなに長くなるとは思ってもみませんでしたが色々と説明を加えるうちにどんどん膨らんで
しまいました。文章を短くまとめるのは本当に難しいと感じます。

 今後はなるべく気楽に読めるサイズのスクを目指しますので(保障はできませんが)温かい目で見守ってやって
ください。

 最後にこんな長い駄文に最後までお付き合い下さった皆様に厚く御礼申し上げます


過去スク

sc1612. 二種混合 
sc1630. カラーマジック
sc1635. ドレスコード(前編)


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