タイトル:【虐】 カラーマジック
ファイル:カラーマジック.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:6613 レス数:3
初投稿日時:2008/10/10-05:30:13修正日時:2008/10/10-05:30:13
←戻る↓レスへ飛ぶ



 「ここまでひどいとはねぇ・・・」

 目の前で繰り広げられる実装石のサバトを目にしてそれ以外の言葉が出ない。ざっと
数えただけでも100個近い数のダンボールが軒を並べ、至る所からデスデステチテチと
不快音が聞こえて来る。噴水は言うに及ばず、トイレや水飲場も実装石の糞で汚染され悪臭
なんてものじゃない異臭を漂わせている。しかも、糞蟲の割合がかなり多いらしく喧嘩や仔喰い
は当たり前、最悪な奴に至ってはマラ蟲に襲われながら産んだばかりの自分の仔供を喰ってる
ヤツまで居る始末。


-------------------------------------------------------------------------------------


 事の始まりは昨日の僕の迂闊な発言だ。仕事の都合で丹児浦市にやって来たのだが一段落
して目を遣った方向に丹児浦市役所が目に入ったのがいけなかった・・・

 学生時代の悪友のとしあきが勤めているのを思い出して、久しぶりに顔を見ていこうとそちら
に足を向けたのだが、こちらの顔を見るなり面倒な相談事をもちかけられたのだ。


-------------------------------------------------------------------------------------


「なるほどねぇ〜」
 としあきの話を聞き終わって思わず溜息と一緒に言葉が漏れる。

 としあき曰く、市の中心部にある丹児浦公園での実装石の発生数と増長ぶりが半端ではなく、
近隣の民家や菜園にも様々な被害が出ているのだが、行政が何の対策も打たないため住民から
の苦情を一手に受ける中間管理職としては只頭を下げるしかなく、上に向かっては当然ナシの
礫でどうしようもない状態になってしまっているらしい。


「しかし、本格的な駆除をしないにしても、何らかのアクションをおこして仕事している
フリくらいはできるんじゃないの?」
 少し皮肉もこめてとしあきに訊ねると、

「それも無理なんだよ」と更に顔を曇らせた。

 なんでも、市議会の副議長(正確にはその嫁サン)が熱烈な愛護派で公園でエサ撒きを
するくらいでは飽き足りず、“虐待派から実装ちゃんを守ろう”と自警団まで作って公園の
周りをうろつき、あげくにゴミを荒らしていた糞蟲を蹴り飛ばしたサラリーマンの会社に
まで抗議と称して仕事の邪魔に行く始末。更には自分達が見ていなくても“実装ちゃん”が
被害を受けないようにと毎日自分の飼蟲に非常ベルを持たせて公園に放し、子供がボールを
投げても逐一報告させて虐待行為とみなしているらしい。
 おかげで最近では子供達も公園には近付かず、ましてや“虐待派”に至ってはこの町にすら
居辛くなってしまい、結果、糞蟲供は我が世の春を謳歌し、近隣住民はこの世の地獄を味わう
羽目になっているそうな。


「何とかできない?」
 そう聞かれても
「そこまで極端だと問題アリだね。」
 と言うことはできても法律上は違法性は無い。実質的な加害者は野良蟲だし、もし違法性を
問えるとしてもせいぜい業務妨害か迷惑防止条例くらいにしか問えない。良くても罰金程度、
プロ市民どもならナンダカンダと屁理屈をこねてそれにすら従わないことが多いし、まして
下手に手を出してこちらが訴えられる危険性があれば、お役所としてはことなかれ主義に則って
何もしないのが最善策と考えるだろう。とは言え、友人の頼みでもあるし個人的にも自分の権利
だけを主張する馬鹿は大嫌いである。


「何か対策を考えてみるよ。」
 そう言うととしあきの顔が少し明るくなり、
「何とか頼むよ。来月には例の副議長が議会に実装保護条例案を出すらしいんだ。それまでに
手を打たないと本当に大変なことになるだろうし。」
ってお前1番の問題を最後まで伝えないのは学生時代のまんまだね。
「報酬も何とかするから。予算からは出せないだろうけど、プールした金が幾らかあるから。」
って世間ではそれを裏金っていうのよ。

 とにかく、ややこしいことには巻き込んでくれるなよと念を押してから市役所を出たのだが、
これは色んな意味で厄介なことに巻き込まれたのかも知れないとその時初めて後悔してしまった。


-------------------------------------------------------------------------------------


 そして、今日改めて件の丹児浦公園にやって来たのだがここまでえげつないとは思っていなかった。


「これが“可愛い実装ちゃん”ねぇ・・・」
 やれ可愛がれだの、餌をよこせだのと寄って来る糞蟲どもを脇の排水路に蹴り飛ばしながら偵察
を続けるうちにふと「どうしてここの野良どもは飼主が一緒じゃない飼実装を襲わないんだ?」と
疑問が頭に浮かんだ。どんなに賢い野良でも飼蟲には少なからず嫉妬心を持つのが実装石の本能だし、
仮に護身用の武器を持たせていてもこれだけの数がいれば何の意味も無いだろうに。

 その考えが浮かんだ直後、公園の反対側から1台のデスパーカーが入ってきて、糞蟲どもが一斉に
そちらに向かって行ったので僕もそちらに向かってみた。


「糞蟲ドモ、エリザベート様の御成りデスッ。」
 いまどき相撲取りでももう少しスリムだぞと思うほどに肥大した実装石一家がわざわざベンチの
上に登って野良蟲達を見下ろしている。名前から判断するにあれが例の副議長婦人の飼実装か。

「今日もお前達に恵んでやるために奴隷からご飯を貢がせてやって来たデス。有難く頂戴しろデス。」
 そう言うと横に置いてあった実装フードの袋をぶちまけた。

 すると、待ってましたとばかりに一斉に群がり奪い合いを始める野良蟲達を見ながらこれでもかと
言わんばかりのお下品な顔と声で笑い転げるエリザベートちゃん御一家。

「デププ・・浅ましいデス、みすぼらしいデス。あんな安物を喰うなんて・・・」

「フランソワちゃんのママが言ってたテチ。あいつら馬鹿だからフードの袋にウンチしてばら撒いても
喜んで食べるって。」

「チププそれは当然テチ。あんな安物より高貴なワタチ達のウンチのほうが100倍美味しいテチ」

 リンガルで拾うと殺意を通り越したものを感じる科白を吐きながら右へ左へとフードをばら撒く
エリザベートちゃん御一家。
 と、その足元に1匹の仔蟲が這い出してきた。

「エリザベート様。アッチはオバチャン達がいっぱいでご飯がとれないテチ。こっちにもご飯を投げて
欲しいテチ」

 そう懇願する仔蟲を見下ろし
「いいデスよ。お前には特別なモノを恵んでやるデス。」
 そう言うと仔蟲を押さえ込んでいきなりその顔の上に脱糞し始めた。

「チギュォォーッ¥@−ブブッ」

 糞で窒息する仔蟲を見下ろし更に馬鹿笑いを加速するエリザベートちゃん。その子供達はと言うと
自分達の糞の中に金平糖を突っ込み、それを野良仔蟲に口で拾わせその尻を蹴飛ばす遊びの真っ最中。
 それに飽きると家族全員で周りにいる野良蟲達にデスタンガンを押し付けたり、服や髪を引きちぎっ
たりと1時間ばかりやりたい放題に暴れ、

「デププいい運動したデス。帰ってオヤツにするデス。」
 と何事もなっかたように帰って行った。


 「デエェェェェ・・・」嵐のような争奪戦が終わり、ノロノロと野良蟲達が散って行く。一匹が手に
したフードや踏み潰された同属の肉の入った袋を引きずりながら何かブツブツと言っているのが聞こえ
たのでマイクをそちらに向けてみると

「ムカツクデス。あんな奴ら飼実装じゃなければブッ殺してやるデス」
 と悪態をついているのが聞こえた。当然と言うかやはり野良蟲達と飼実装との関係は良くはないようだ。

「誰をブッ殺してやるデス?」

「決まってるデスあのクソ醜い飼実装を・・・」
 そう言いながら振り向いた野良が恐怖に顔を強張らせる。そこには別のこれまた悪趣味なほど派手な
フリル付きの実装服を着た実装石が飼主らしきオバハンの足元に立っていた。

 「デ・デ・・・」

冷汗を浮かべながら硬直する野良に、飼実装が厭らしい笑いを浮かべながら実装叩きを手に近付き

「お前は何か勘違いしているようデスネ?卑しいお前達がここで暮らせてあまつさえ餌まで恵んで
貰えるのは誰のおかげだと思ってるんデス?」
 そう耳元に吐き掛けると顔面蒼白の野良を砂場の方へ引きずって行く。

 飼主はというと
「あら〜エメラルドちゃんお友達と遊んでくるのね」と呑気な物である。

 ほどなく「デギャッ、ビギャッ!」と悲鳴があたりに響き、件の野良蟲がめった打ちにされ始めた。
他の野良蟲達はというと当然というか必然というかそれを遠巻きに見つめるだけ。それどころか例の
エメラルドちゃんの飼主さえも実装石と見紛うほど厭らしい顔でリンチを見守っている。

 
 何のことは無い。この町の愛護派にとって野良蟲は愛護の対象でも保護すべきものでも何でも無い。
ただ単に自分達の飼実装のオモチャでしかないのだ。
 野良達も少ない脳味噌で飼い蟲(とその飼主)が公園を占拠している限り虐待派(一般市民も含む)
が公園に近寄れないことを何となく理解し今の地位に甘んじているのであろう。

 それは別に僕の知ったことではないが、その為に公園を私物化しているのは許せない。恐らくは周り
に向けての過剰なまでの愛護アピールも単にこの公園でおこっていることを隠すための詭弁に過ぎない
のだろう。

 ならば、逆に公園内で飼実装が野良に襲われでもしたら一気にそれを口実に駆除をはじめさせること
も可能だろう。
 だが問題はどうやって野良に攻撃のチャンスを与えるか・・・一番単純にして難解な問題である。



 やがて、リンチに飽きたのかエメラルドちゃんが飼主のところに戻ってくると待ってましたとばかり
に半殺し状態の野良蟲が同属の胃袋に消えていく。それを見て飼主は満足したように砂場に向かって
金平糖を一掴み放り投げるとエメラルドちゃんを抱き上げ帰って行った。



-------------------------------------------------------------------------------------



「ったく、糞蟲みたいな人間は本物の糞蟲よりもタチ悪いかもな。」
 そうつぶやきながら一旦帰ろうと公園の入口に向かうと、土建屋さんらしい団体が街灯に梯子をかけ
て何やら作業の真似事をしているのが目に入った。


「何されてるんですか?」単に好奇心から聞いたのだが相手はぶっきらぼうに

「あ゛?カメラの定期メンテだよ。」と雇用主の程度が良く分かる返事を返してくれた。

 入るときには気付かなかったのだが、公園の入口には監視カメラがつけられていて24時間出入する
者をチェックしているそうな。停まっている軽トラの荷台に書かれた名前は・・・やはり例の副議長と
同じ苗字ね・・・要は市民の血税の喰い潰しだ。大方公園に不審者が入らないようにとか適当な理由を
つけて無理やり仕事を作ってそれを落札したのだろう。
 話を聞くと公園の管理もこの会社が市から委託され(当然有料で)この会社が引き受けているとの
こと。地方都市では決して珍しいことではないとは言ってもここまで好き放題やっている例は珍しい。



 ますますもってこれは何とかせねば・・・と考えていると、ふと作業員が皆この晴天にもかかわらず
ビニール傘を持っているのが目に入った。

「あれで殴って追っ払うつもりか?そんなことしたら愛護派どもが五月蝿いだろうに。」と思っていた
らお約束通り糞蟲達がテンプレの科白を吐きながら作業員に近付き、無視されるとこれまたお約束通り
パンツの中に手を突っ込んで投擲・・・とその直前、慣れた手つきで開いた傘が糞蟲の眼前に突きつけ
られ、それに命中した糞の一部がオツリになって糞蟲の顔に糞の上塗りが出来上がった。

「デエェェェェンン」自分のものでもやはり臭いのか泣きながら糞蟲が逃げていくとまた何も無かった
かのように作業が再開された。

「なるほどあれは糞避けか。」つまり、実質的に実装石に手を出せない作業員達の唯一の自衛手段が
アレな訳だ。感心しながら作業を眺めていると年配の作業員が余所者が公園にいるのを訝しがって近付
いて来たので、ここは逆に印象付けておこうと名刺を出し、人と会うのだが時間潰しをしているのだと
適当にごまかしておいた。こういうときに肩書きつきの名刺は本当に便利である。


 しかし、監視カメラがあるのは正直想定外だった。適当な飼実装をこっそり痛めつけてそれを放置
しておけば後は野良蟲が仕上げてくれるだろうぐらいに考えていたが、この分では他の場所にもカメラ
があるかも知れない。


「一旦退却して作戦練り直すか。」
携帯を適当にいじるふりをしながら外に向かうと作業員達がモニターでテープのチェックをしていた
のが目に入った。

「あ、白黒なんですね。」モニターを覗きながら誰に聞くでもなく呟くと

「ああ。カラーだと録画時間が短くなるからね。」
と先ほどの年配の作業員が幾分丁寧に返事を返してきた。本当のことを言えば他のカメラの位置も聞き
出したかったのだが、これ以上ここに居ても怪しまれるだけのような気がしたのでここは引き上げる
ことにした。



-------------------------------------------------------------------------------------



「ただいまー。」都市部から電車で小一時間、絵に描いたような地方のベッドタウンの駅の裏手、初代
ウ〇トラマンと同い年のオンボロビルの一室が僕の事務所兼寝床だ。

「オカエリナサイなのダワ。」
 120㎝を超える大柄な実装紅のロッソがこれまた超のつく大型犬のパルタの背中にお姫様乗りした
まま向かえてくれる。本来なら事務所として貸し出されているビルでこんな大きなペット(?)を飼う
なんて立派な規約違反だろうが、少なくともこの町のこのビルにおいては特に問題にはならない。

 このロッソは僕の姉貴が単に物珍しさから方々手を尽くして手に入れたものの、世話の大変さに音を
上げて当時まだ学生だった僕に押し付けてきた(一応)血統書付の由緒正しい実装紅である。以来、場合に
よっては文字どうり懐にも入れて世話をした結果この大きさにまで成長してくれた。
 
 パルタの方はこれも学生時代からの僕の相棒である。実家を出る際に両親では散歩が無理だろうと
こいつがいても大丈夫な物件を捜してこのビルにたどり着いたのである。あまりの古さ故に他に入居者
がいないのが幸いし、またオーナーも「君たちのことは良く知ってるから。」とあっさりペット連れを
オーケーしてくれたのである。

 何せ小さな地方都市。こんな目立つ三人(?)組のことを知らない人のほうが少なかったと言う訳だ。
おかげで一人置いてけぼりをくらい実家で拗ねていたロッソも連れて来て仕事も少ないながらそれなり
に三人(?)のんびりやっているのが現状だ。



「どうしたの?珍しく考え込んでるような顔してるのダワ。」
 食後に紅茶を入れてくれたロッソが僕の顔を覗き込む。

「いや〜、ちょっとややこしい仕事でね。」
 本当ならこんなことは守備範囲外なのだろうが受けてしまった以上はやるしかない。あれこれ作戦が
思い浮かんでは消えていく。

 野良実装達に武器と作戦を与えても他と協力するという概念を最初から持ち合わせていない実装石
には無意味だろう。より強力な武器を持つ飼実装ではなく同じ野良同士でイザコザをおこすのに使う
のが関の山だ。

 飼実装にシビレかネムリを与えて・・・これも危険だろう。昼に見た限りでは飼実装達はどれもこの
暑い中かなり豪勢な服を着込んでいた。あれでは野良の歯や手ではとてもじゃないが喰いちぎることも
脱がすこともできないだろう。そうなれば残った屍骸から薬物の痕跡がでるだろうから人間がかかわって
いるのがばれてしまう・・・
 それに僕がシビレかネムリを与えているところがもしカメラに映ってしまえばそれこそ一巻の終わりだ。

 ならばいっそ音叉を手に入れて・・・・・・






 ・・」・・・「」。「」!どうやら考え事をしながら寝入ってしまっていたようだ。ロッソが僕を呼ぶ声
とパルタの馬鹿でかい鼻息が両方の耳から聞こえてくる。

「疲れてるのダワ。今日は早く寝たほうがいいのダワ。」ロッソの声にぼんやりと目を開けると手付かず
のままの紅茶のカップに琥珀色の心配そうなロッソの瞳が写っていた。そのまま無意識に頭を持ち上げる
と今度はサファイヤブルーの瞳が僕を見つめていた。


「琥珀色。碧色・・琥珀色。碧色・・・・・」

「「」、どうしたのダワ。」半分寝惚けながらブツブツ呟く僕に別の意味で心配になったロッソが声を
かける。だが正直その声は僕には聞こえていなかった。僕の中で一つの案が生まれかかっていたのだ。


「色・・・そうだよ!色でとっちめちまえばいいんだよ!」
 いきなり叫んだ僕に驚き、固まったままのパルタとロッソを抱きかかえ思わず頬擦りしながら喜んで
いると、

「汗臭いのダワ!抱っこするならお風呂に入ってからにして頂戴!」
 と久しぶりにツインテールビンタをお見舞いされてしまった。でも今日はちっとも痛くないぜ!


-------------------------------------------------------------------------------------


 翌日、早速下準備にとりかかった。わざわざ県外にまで買物に出たのは念の為だ。材料くらい簡単に
揃うだろうと考えていたのだが、これが甘かった。肝心のアイテムを手に入れるのにあちこちの店を
覗いて一日がかりでようやく今回のキーアイテムをゲットした。

 次の日の早朝、近所の公園から何匹か実装石を家族ごと拉致。日がのぼり目を覚ました実装石達を使い
実験。問題ない。
 これはいけると判断し、収集車が来る前に袋詰めした屍骸をゴミ置き場に捨て帰宅。この日は久しぶり
に本業に精を出す。
 その次の日は生憎の雨。いや、これはむしろ好都合だ。その日のうちにとしあきに連絡をとり今回の
作戦を説明。今回は彼の(と言うか丹児浦市である程度知られた人間の)協力が必要だ。



-------------------------------------------------------------------------------------


 そして作戦決行日。まるで成功を示唆するかのごとき晴天になった。昼前に丹児浦市に入った僕は
わざわざ受付を仲介してとしあきを丹児浦公園に呼び出し、件のエリザベートちゃん一家がお立ち台に
しているベンチに陣取り、糞蟲一家の御到着を待った。

「本当にうまくいくのか?」としあきが心配そうに尋ねてきたが

「まっ、失敗したらそのときはそのときだろうよ。」
 と返事をしてやった。僕がこういう受け答えをするときは自信があるときだと分かっているとしあき
は黙ってうなずく。

「さて、作戦開始だ。」
 僕がおもむろにとしあきが用意した書類に目を通し始めると程なくエリザベートちゃん一家がやって
来た。


「デスゥ!デスー!デスーッ!!(おいニンゲン!そこはワタシのお立ち台デス!今すぐどいて土下座
して詫びろデス!!)」

 因みにリンガルは用意していない。いや、というか持っていないことが今回は重要なのだ。足元で
エリザベートがデスデス喚いているが当然無視。としあきと僕はまるでどこかの会議室にいるかのごとく
黙々と書類をチェックしていく。



「デププ。デスー、デジャアアアアァァァ!!(デププ。どうやら痛い目に会いたいみたいデスね、覚悟
するデスうゥゥゥ!!)」

 目にも留まらぬ速さ(実装石基準)でデスゥタンガンをかまえ突進してくるエリザベートちゃん。だが
次の瞬間
 「デギャアアアアアアアア!!!!!!」
 僕が丁度脚を組み直したところに顔面から突っ込んできたもんでつま先に引っかかり2mばかり空を
飛ぶはめになった。因みにわざとではないよ(棒読み)


・・・・・・10分後・・・・・・


「デヒ、デヒデヒデヒヒヒヒ・・・」
 断末魔の豚の悲鳴のほうが100倍は愛らしいと思える耳障りな声で喘ぐエリザベートちゃんが其処に
居た。あれから幾度となく無策な突進を続け、その度に何故か丁度脚を組み直す僕かとしあきの靴にキス
をして空へ飛び立ちを繰り返し、気がつけば昨日の雨も手伝い自慢の実装服は泥だらけ、顔は血と鼻水と
涎でベトベトと野良蟲とたいして変わらない外見になりおまけに頼みの綱のデスゥタンガンも電池切れで
ウンともスンとも言わなくなっていた。

 太陽を背にしているので表情を読まれることの無い(まぁ、見られても問題はないだろうが)僕達は
「そろそろかな?」と笑いあった。


「テチュー、テチュテチュ!(ママ、コイツはギャクタイハテチ。ドレイを呼んでやっつけさせるテチ!)」
 他の姉妹よりは多少(悪)知恵がまわるらしい仔蟲がママに入れ知恵をする。
「デスー。デプププププ。(そうデスね。ドレイにこいつらをギッタンギッタンにさせるデス。)」
 もっと早く気付くべきであったであろう切り札に今頃気付いたエリザベートが歪みきった顔を更に歪め
笑いだした。だが他力本願は救われんぞ。

「デ?デスデス!デジャアアアアアアア!!!(デ?何故返事しないデスか!高貴なワタシの命令が
聞こえないデスか?返事しろデスこの糞奴隷!!!)」


 悪いが初めのほうで実装フォンは壊れちゃったよ。たまたま(ココ重要)そこに僕の安全靴が当たっちゃた
もんでね♪って聞いてねぇなコイツ。


「デジャアア!デジャデジャアアアアアアア!!」もう使い物にならなくなったものにいつまでも固執
するのも実装石の特徴ではあるのだが、実に醜い。仕舞には何を思ったのか実装フォンにデスゥタンガン
押し付け始めた。


「テチュ!テチュテチュ。(ママ!一度帰ってドレイを呼んでくるテチ。)」

「デシャァァァァ!デスーッ!(ウルサイデス!コイツラはママがぶっ殺すデス!)」仔蟲を殴り飛ばし
ながらエリザベートが喚き散らす。どうやら仔のほうが冷静な判断ができているようだが、そうでなけ
ればこちらも手順というものがある。


「デェ、デェ、デププ・・(コイツラに最高の屈辱を与えて奴隷にしてやるデス泣いて謝っても許さん
デス覚悟しやがれデス)」

「デス、デスデスゥ!(お前たちもコイツラに奴隷の屈辱を与えてやるデス!)」
 仔に向かって喚くと仔蟲達も親が何をしろと言っているのか理解したらしく顔を真っ赤にしていきみ
始める。すぐに辺り一面により濃い異臭が漂いだす。


「おっ、いよいよか?」囁くとしあきに僕が目で答える。ここからが本日のハイライトだ。



-------------------------------------------------------------------------------------




仁王立ちになったエリザベートと仔蟲達ががこちらを指(?)さしギャーギャー叫びだした。ここで初めて
その存在に気付いたかのように巣頓狂な声をあげて僕達は棒読みの三文芝居を始めた。


「あれ?何か臭わないか?」

「そう言えば・・うわっ実装石だよ。しっかし汚ねぇなぁ・・・」

「何か違う服着てるけど飼実装かな?」

「飼いならこんなに汚くねぇよ。大方捨て実装だろう。」

「あー、エサのオネダリってヤツ?やだねぇ。」


「デプププ・・デズォォォォアアアアアアアアア!!!!!(今からお前達は奴隷に成り下がるデス。禿裸に
なってワタシに詫びろデスゥゥゥゥ!!!)」

 両手にたっぷりと糞をつけてこちらに突進してくるエリザベートちゃん一家。どうでもいいが武器
持ってても触れることすらできなかった相手に糞つけが成功すると本気で思ってるのかね?



「うわっ!手にウ〇コつけてるよ。」僕が今更ながらに驚いた声をあげると

「あー大丈夫。こういうときの為にだなぁ。」



「デビャッ!」いきなり現れた透明な壁に顔から突っ込んだエリザベートがそのままひっくり返った。
仔蟲が1匹その下敷きになり悲鳴を上げる。ついでに両手に持っていた糞は後ろに飛んで行き、他の
仔蟲達に襲い掛かった。


「テチャァァァァ!!(重いテチー!痛いテチー!)」

「テチュアアアアーッ!!テェェェェーン!テェェェェーン!(臭いテチー!汚いテチー!)」

 何のことはない、エリザベート一家の捨て身の特攻はとしあきが広げたビニール傘の前にあえなく
散ったのだ。
 糞と血に塗れ、文字どうりの糞蟲一家となったエリザベート一家が態勢を立て直そうと必死にもがいて
いる。


「あー、なるほどね。その為に傘を持って来いって言った訳。」

「そっ。いくら実装石でもむやみな殺生は良くないからね(笑)足元に広げとけば糞避けになるよ。」

「そうか。では・・・」
 僕がおもむろに脇に立て掛けておいた傘を広げエリザベートちゃん一家に向けると・・・




-------------------------------------------------------------------------------------




「デ!デ・デ・デ・デ・デデデ・・・」

「テ!テ・テ・テ・テ・テテテ・・・」

 同じような間抜けな声を上げ固まるエリザベートとその仔蟲達。やがてパンツが異様に膨れ上がりその中
から
「・ッテレー♪・・ッテレー♪テッテレー♪」とくもぐった声が聞こえパンツが重みに耐えかねずり落ちた瞬間

「テッテレー♪」の大合唱とともに大量の蛆実装が糞とちもにこぼれ落ちた。もっともその大半はわずか
数センチの高さからのダイブにも耐えられず「レビャッ!」の声とともにあの世に強制送還されていったが。


「お前ねぇ。色付ビニール傘なんて趣味の悪いもの持ってくるなよ。」

「しょうがないだろ。捨ててもいい傘がこれしか無かったんだから。」



 そう、僕がエリザベート達の前に広げたのは真っ赤なビニール傘。これがなかなか売っていなくてアチコチ
捜す羽目になったのだが。これに燦燦と輝く太陽の光があたりエリザベート達の周りの世界は突然真っ赤に
なったわけだ。


 実装石の両目を赤く塗れば強制出産が始まるのは有名な話だが、実は直接赤く塗る必要はないことはあまり
知られていない。
 だが、要は実装石に両目が赤くなったと認識させればいいのだ。思い込みだけで生死すら左右されるこの
デタラメ生物は目の前が赤くなればそれが出産の合図だと勝手に認識する。
 話には聞いていたのだが本当の話だとは実際に実験するまで僕も信じられなかった。しかし現に目の前で
エリザベートとその仔蟲達はフィーバーがかかったかのように蛆と糞をひり出している。


「すげえな・・。」としあきが素に戻ってつぶやいた。

 エリザベート達は脂汗を流しながら自分達では止められない出産に文字通り命まで削られている。
これでもかと肥え太っていた体は空気のぬけた風船のようにシワシワになって皮膚は地面に引きずらん
ばかりになっている。栄養分が無くなったせいか髪の毛も幾らか抜けはじめたようだ。


「デヒッ、デヒィーデヒィー・・デエエエゲエエエエエエン・・・(もう産まれて来ちゃ駄目デス。ママが
死んじゃうデスゥ・・・)」

血涙を流しながらも肉片とも蛆とも区別のつかない物をひりだし続けていたエリザベートだが、やがて、

「デッ」と短く悲鳴を上げると赤い玉・・ではなく最後の蛆モドキを排出すると同時にひっくり返って
動かなくなった。周りを見ると子蟲達も蛆にかこまれたミイラになっている。



「これで一丁あがりっと。」僕が書類をまとめ立ち上がると

「えっ?この後は?」ととしあきが尋ねてきた。


「これで終わりだよ。後の仕事はこの公園の野良にまかせればいい。」
 
 すでに周りに野良蟲が集まっている気配を感じながら僕が答える。もともと野良蟲達と飼実装との関係は
良くはない。単に飼実装が来ればエサにありつけるので媚諂っていただけだ。それどころか怨嗟の対象で
すらあったわけなのだからそいつが大量の蛆ちゃん(エサ)をひりだして死んでいるとなれば野良にとって
やることは一つしかない。 僕達がベンチを離れて1分もしないうちに野良蟲のサバトが始まった。


 その後、2ヶ所で同様の三文芝居をやった後、少々昼休みをとりすぎたとしあきと別れ僕も帰ることにした。
その際ビニール傘はもう使わないのでとしあきに持って帰ってもらい、丹児浦市役所に寄贈することにした。


-------------------------------------------------------------------------------------


 それから2週間ほどたってからとしあきから連絡が入った。あの後夕方になっても帰ってこない愛しの
エリザベート一家を捜しに公園に行った副議長婦人が見たものは、干乾びてミイラ化したエリザベートちゃん
とその周りで何やら得体の知れない肉片を奪い合う野良共だったらしい。

 さすがにダシガラと化したエリザベートちゃんの死体は喰えた物じゃなかったのか幾らか歯型はついて
いたもののほぼ完全な状態で回収されたそうだ。ただ、よほど野良蟲達の恨みを買っていたのか全身糞まみれ
で飼主でさえ素手で触ることを躊躇い誰かにビニール袋を持ってこさせたらしい。

 しかし、仔蟲の死体はスルメ代わりに喰われたらしくついに1匹も見つからなかったそうな。
 傑作だったのは何匹かの野良が仔蟲の服を自分の仔供にかぶせて(ボタンやファスナーが複雑で実装石の
手では脱がせられなかったらしい。)

「オマエの所の仔デス。さっさと連れて帰るデス。ついでにその親のワタシも飼うデス。」
 と無茶苦茶なことをぬかしてその場でミンチになったらしい。これは是非見てみたかった気がする。



 その日の夜のうちに市役所に副議長婦人が怒鳴り込んできてすぐに原因を調べろだとか、対策委員会を
作れだとか騒ぎまくりあげくに警察の御厄介になったとのこと。
 それでも懲りなかったようで翌日旦那を引っ張りながら市役所に再度現れ、昨日の続きとばかりに騒ぎ
続け、やれ公園の管理しているのは誰だ責任者を出せ賠償しろとキ印丸出しの発言を繰り返し遂に隣に
座っていた当の責任者に引きずられるようにして帰って行ったそうだ。

 それでも諦めきれなっかたのか当日の監視カメラのテープをくまなくチェックし、僕ととしあきの姿を
見つけた時は周りの人間が近づけないほど気味の悪い笑い声をあげたそうだ。



「と言うわけでお前の所にもそろそろガサ入るぜ。」電話口からとしあきの呑気な声が響く。

「ああ、分かった。もし連絡先聞かれたらこっちから行くって言っといてくれ。どうせそっちに行く用事が
できるし、何よりそんなマルキ印に来られたらロッソとパルタが怯える。」
 そう言って次の日ある場所に寄ってから丹児浦市役所に推参した。


 さぁいよいよ仕上げだ。


-------------------------------------------------------------------------------------


「ここに映っているのはあなたですね?」市役所の会議室に入ると実装さんと見間違うような悪趣味な緑色
のスーツを着たオバハン(モトイ副議長婦人)が犯人を目の前にしたような態度と口調で僕に質問してくる。
本人は隠しているつもりだろうが全身から怒りのオーラを立ち上げてこちらを睨む顔は失礼ながら間抜けと
しか言いようがない。


「ええそうですね。そして隣にいるのは彼ですね。」
 としあきと目を合わせながらわざと飄々と答えて相手の怒りを煽っておく。

「あの日公園で何を?」

「彼からあることで相談を受けましてね。その打ち合わせに。あ、因みに内容はお話できませんよ。僕にも
守秘義務がありますんで。」

「何故公園に?」コメカミに青筋をたてながら副議長婦人が続ける。

「こういう商売の人間が市役所の中で市の職員と話していると色々あらぬ噂もたつもんで。それに彼の
プライベートな話も有ったんでね。どっかの喫茶店でも良かったんでしょうけど天気も良かったんでじゃ
公園でって話になってね。」



 すると見る見るうちに副議長婦人の顔が真っ赤になり梅干のように皺がより(あっ実装石みたい♪)

「ふざけないでちょうだい!あの日公園に入ったのはあんた達だけなのよ!!あんた達がエリザベートと
子供達を殺したのよ!そうに決まってるわ!そうでなけりゃ野良の糞蟲共にエリザベートちゃんが負ける訳
無いんだから!!!
 だいたいあのエリザベートちゃんには幾らかけたと思ってるの!さあ今すぐ全額弁償しなさい。今なら
実費だけで勘弁してあげるわ!」

 おいおい、エリザベートに愛情があったわけじゃなくて金かよ。それに愛護派は“糞蟲”じゃなくて
“実装ちゃん”じゃなかったっけ?どうやら副議長婦人にとってはエリザベートちゃんは可愛いペットでは
なく、単にキモカワ珍しい動くアクセサリーだったらしい。


 机を叩きながら絶叫し僕に掴みかかろうとする御婦人を慌てて旦那が抑える。法律屋に手を挙げるとどう
なるかくらいはこのオッサンにも理解できるらしい。


「いいかげんにしてもらえませんか?」
 あまりにこちらの書いたシナリオ通りにことが進むので思わず吹き出しかけたところでとしあきが割って
入ってくれた。

「確かにあの日公園に行ったのは事実です。でもそれとお宅の実装石が死んだことには何の関係も無いで
しょう?それに殺されたかどうかも疑わしいんでしょ?よしんば殺されたとして我々以外に誰かが公園に
入った可能性だってあるんだ。入口から入ったのは確かに我々だけみたいだが柵を越えればいくらでも入れる
んですから。」
 まるでサスペンス物の犯人役のような科白でとしあきが場を盛り上げてくれた。もっとも当のオバハンに
はその真意は伝わらなかったようで、

「いーえ、あんた達よ。あんた達に決まってるわ。観念しなさい、もうすぐ証拠が来るのよ。今獣医さんに
エリザベート達の検死をさせてるのよ。これであんた達もおしまいなのよ・・・」

どうやら副議長婦人の中では僕達とは別のシナリオが進行しているらしい。


 程なく同年代のオバハンが2人と獣医らしい初老の男性が書類を手に入ってきた。オバハンの内の1人は
確かエメラルドちゃんとかいった飼実装を連れていた奴だ。




「どういうことなの?あなた気は確か!?」

 今度は獣医さんに掴みかかろうとしている御婦人を旦那が抑えている。

 獣医の検死の結果外傷は一切ナシ。一番疑わしかった強制出産については特に徹底的に調べられたが、
目の表面、内部いずれからもインク、朱肉、血液、タバスコ、ケチャップetc.・・・一切の成分は検出
されることは無く、誰かが目を赤く染めて強制出産させたのではないという結論が出た。

 薬物の疑いもあるということで内臓もきっちり調べたらしいが当然ここからも何の異常も見つからない。
結果獣医の出した結論は自然死。つまり何らかの非人為的な原因で出産モードに入った実装石がその出産
を止めることができずに干乾びたということになったのだ。


「だったら傘よ。監視カメラに映ってたわ。晴れてたのに傘を持っていたなんて怪しすぎる。きっとあれで
エリザベートを驚かせて出産させたに違いないわ。傘をどこに隠したの?」
 誰の目から見てもすでに正気を失った目でこちらを睨みつけながら御婦人がまくし立てる。

「いや、あれは只の投糞除けで、現に管理事務所の人も持ってますしねぇ・・・。」
 少し困ったような顔を作って副議長(この場合は管理会社の役員さんと呼ぶべきか)の方を見る。少し
困った様子で頷く我が旦那の胸ぐらを掴みながら、

「いいこと、その傘に細工がしてあったの。そのせいでエリザベート達はこいつ等に殺されたのよ。今から
その証拠を見せてあげるわ。」
 もはや完全に正気を失い自分の世界に入り込んだ副議長婦人を先頭にとしあきのロッカーに向かう。あの
日としあきは自分の分と僕の分、2本の傘を両手に持って公園を後にした。それ以来傘はこのロッカーに
しまいっぱなしだそうで・・・

「早く開けなさい」御婦人はどうやら逆転の切り札を見つけたつもりらしいがそううまくいくのかねぇ・・・



-------------------------------------------------------------------------------------



「ちょっと!これはどういうことなの!?」としあきのロッカーから出てきたのは幾ばくかの私物に作業服
の替え、そして事件当日としあきが持っていた透明なビニール傘と僕が持っていた“青い”ビニール傘。

「おかしいわ、こんなはずないじゃない。私の考えが間違ってる訳ないじゃないの!」
 芸を覚えそこなったチンパンジーのような仕草で傘をバラバラに壊しながらオバハンも完全に壊れた
みたいだ。ここで赤いビニール傘が出てくれば誰かがこちらの作戦に気付いたであろうが生憎こちらもそこ
まで馬鹿じゃない。

 御存知の方も多いと思うが白黒の映像の中では赤も青もどちらも黒っぽく映る。それを利用したごく単純
なトリックだった訳だ。あの日公園を出てすぐに僕の車の中から何年か前から入れっぱなしになっていた
この“青い”ビニール傘と件の凶器をすり替え、としあきにそれを市役所まで持っていってもらい、凶器の
方は僕が持ち帰って処分したという訳。


 未だにブツブツと呟きながら大事な証拠をバラバラに壊した副議長婦人を一瞥してから今度は副議長の方
を向いて

「そろそろ失礼させてもらってもいいですかね?僕もこう見えてそれなりに忙しいもんで。」
 と言ってやった。

 もはや完全に手詰まりなのは分かっているらしく渋々ながら解放してくれた。もしまだ何か屁理屈をこねる
ようならボイスレコーダーを突きつけて目の前で脅迫やら名誉毀損やらの訴状を書いてやるつもりだったが。


「さて、と。」軽く伸びをしてから今日の本来の目的である向かいの丹児浦地裁に足を向けた。


-------------------------------------------------------------------------------------


 それから1ヶ月ほどしてから新聞の地方欄の片隅にあの副議長の名前を見つけることができた。あの日
としあきに持ってきてもらった書類は総て公開されている決算書やら何やらだったのだが、よくよく見れば
穴がある。その穴をほじくり返せば色々と知られて困るであろうネタも出てきたわけで・・・それをまとめ
上げて市と公園の管理会社との随意契約のほとんどが不正支出であるとさる市民の方から訴えてもらった
のだ。

 当然副議長は知らぬ存ぜぬで逃げようとしたがこのご時世、無駄遣いには昔ほど甘くは無い。結局、議員
職は辞することになったみたいだ。

 副議長にとってはとんだトバッチリだろうが今まで血税で私腹を肥やしてきた分の報いは受けてもらう
ことにした。僕にとってはこれも報酬の内だから。


それと、これとは別件でもう一つ解決したことがあった。一番最初に丹児浦市にやって来たのは街金相手の
債務整理だったのだが、ほどなくこの街金がアゲられた際にばれた金主の中にあのオバハン・・もとい
副議長婦人の名前があったのだ。
 これは旦那のほうにも相当なダメージになったようでホトボリが冷めたら市議会に再挑戦という目論見は
完全に崩れ去りそれどころか夫婦揃って吊るし上げをくらい遂には丹児浦市から去る羽目になったらしい。

 天網恢恢なんとやらというのは案外本当かもね。




「という訳でこの土日で公園の実装駆除だ。どうしてくれるんだよ、お前のせいで休日出勤だぜ。」
電話の向こうからとしあきの嬉しそうな声が聞こえる。あの事件の後、丹児浦公園には実装石に悪影響がある
菌か何かが存在すると妙な噂がたち、愛護派(?)達は飼実装を絶対に丹児浦公園には近づけず(ついでに
自分もよりつかず)、更には公園の野良蟲はその危険な菌のキャリアに違いないから即刻駆除しろと身勝手
きわまりない要望書を市に届けてきたらしい。

 いずれにせよ、これで丹児浦公園近隣の実装石被害は無くなるだろう。後はあのオバハン以外のあの町の
愛護派(?)共を処分できれば言うことナシなのだが・・・


「ったく、糞蟲みたいな人間は本物の糞蟲よりもタチ悪いかもな。」
 以前呟いた科白を繰り返し僕は今週末の実装駆除がうまくいくことと、愛護派のオバサン達が少しは良識
を持ってくれることを何にたいしてということも無く祈った。




=====================================================

お目汚しスク2作目デス。ダラダラした文章になってしまいましたが最後まで読んで下さってありがとう
ございます。

このスクはもちろんフィクションですが市議会議員の家族が街金の金主だった事件は某地方都市で実際に
あったことです。この議員は今でも椅子にかじりついてますけどね。
まさしく「ったく、糞蟲みたいな人間は本物の糞蟲よりもタチ悪いかもな。」ってやつです


過去スク

sc1612. 【虐【馬】二種混合 





■感想(またはスクの続き)を投稿する
名前:
コメント:
画像ファイル:
削除キー:スクの続きを追加
スパムチェック:スパム防止のため9926を入力してください
1 Re: Name:匿名石 2014/09/14-13:13:15 No:00001346[申告]
「デ!デ・デ・デ・デ・デデデ・・・」

「テ!テ・テ・テ・テ・テテテ・・・」

 同じような間抜けな声を上げ固まるエリザベートとその仔蟲達。やがてパンツが異様に膨れ上がりその中
から
「・ッテレー♪・・ッテレー♪テッテレー♪」とくもぐった声が聞こえパンツが重みに耐えかねずり落ちた瞬間

「テッテレー♪」の大合唱とともに大量の蛆実装が糞とちもにこぼれ落ちた。もっともその大半はわずか
数センチの高さからのダイブにも耐えられず「レビャッ!」の声とともにあの世に強制送還されていったが。


「お前ねぇ。色付ビニール傘なんて趣味の悪いもの持ってくるなよ。」

「しょうがないだろ。捨ててもいい傘がこれしか無かったんだから。」
■この画像に関連するリンク[画像掲示板 ]■
2 Re: Name:匿名石 2014/09/24-01:29:35 No:00001375[申告]
市役所VS糞市民ネタも好きだったけど
もう6年前のネタか
3 Re: Name:匿名石 2014/10/30-20:16:22 No:00001524[申告]
デタラメ生態で自滅しただけですよ

それにしても愛護議員-愛護派-糞蟲の関係ってまるでサヨク議員とざいに
戻る