駅の主（原作：2chイベント板実装石を語るスレ【3デス】767氏)

昔、実装石が居座っていた駅があった
駅の利用客はその実装石を気味悪く思い極力関わらないようにしていた
だがいつの頃だったろうか？　実装石の頭を撫でたり金平糖を与える人々が現れた

そして実装石は目に見えて調子付き始めた

始めは通行人に餌をねだる媚びを売るなどの行動をとる程度だったが
その行動は次第にエスカレートし
利用客へのつきまといなどのあからさまな迷惑行為に発展していった
駅の利用者は実装石を疎ましく思い始めていたが
実装石は相も変わらず駅の主気取りのまま好き勝手な行動を取り続けていた
酷い日には駅の壁や床に汚物が叩きつけられていた、などという事もあった
とうとう鉄道会社に苦情が入るようになったが目立って状況が変わる様子もなかった

ある深夜のことだった
警察に『駅で男達が騒ぎを起こしている』との匿名の通報が入った
事件らしい事件も起きないこの街で一体何がと思いつつも
警察官は現場へと急いだ

人気のない夜の駅には背広姿の中年男性やTシャツにジーンズといった格好の青年、ジャージ姿の年配者等等
どこにでもいそうな背格好の男達が集まっていた
彼らの誰を見ても別段異様な雰囲気は感じ取れない

「駅で騒ぎが、との通報がありましたので参りました」
警察官はやや困惑つつも男達の陰に『駅の主』がいたことに気付く
『駅の主』は再三に渡る暴行を受けたのだろう、あざだらけになり気絶していた

なるほど、警察官は首を振りため息を付く
自分もこの駅の利用者だ
『駅の主』についてはよく知っている
思えばいつかこういった事件が起こってもおかしくはない状況だった

「おおよその察しはつきましたが」
彼らは無言のまま諦念と無気力さがない交ぜになった表情で警察官を見る
「一応、違法行為ですので…どうか、御協力願います」
男達は警察官に逆らうようなこともなく静かに付き従った
実装石への暴行は違法行為ではあるものの状況が状況だった
実質的に彼らが咎められるような事もないだろう

なんにせよ、事件は無事収束した

そして事件が起こった後、『駅の主』は駅から姿を消した
ようやく重い腰を上げた駅側が駆除業者にでも引き渡したのだろうというのが大方の意見だ

あれから数年経った
今でも実装石がこの駅に訪れる様子はない
もっとも、来た所で餌一つもらえるわけでもない
実装石への餌やりにはやや手厳しい罰則が付くようになり
そういった行為はまず行われなくなったからだ

ともあれ、実装石はもうここの駅には居座れない
彼は改めて安堵するかのようにため息をついた