タイトル:【馬】 渇水期に降った物
ファイル:降る.txt
作者:防災双葉 総投稿数:18 総ダウンロード数:4007 レス数:0
初投稿日時:2008/08/10-19:42:26修正日時:2010/11/21-02:59:35
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-----------降る-----------

『こちらは・防災双葉です。水道事業部より・お知らせします。
 明日・午前十時より・渇水対策の為・一部の公共施設の給水を
 停止します。地域の皆さんも・節水に・ご協力を・お願いします。
 繰り返します・・・』

連日の猛暑。
ねっとりとした空気に張り付くようなゆっくりした
放送が流れて一週間程たったある日。

燦々と降り注ぐ太陽の光。
ある家の庭先に出されているビニルプール。
水と戯れる一人の少女。

夏休みの間、自由に使える筈の学校のプールが中止になり
そのフラストレーションを解消していた。

水中から勢い良く立ち上がる。
水滴が肩からごく僅かに膨らみかけた胸、腹を通り足へ、
或いは、ふとももの間にある縦のラインから雫としてプールに戻って行く。

その様子をブロック塀の風抜き穴から覗いている者がいた。
そのテの趣味を持った変態・・・
・・・ではなく、一匹の実装石。手には空のペットボトルを持っている。

そのオッドアイを釘付けにしているのは、少女の裸体ではなく、
その体に纏わり付いた、そしてプールに湛えられた水である。

ゴクリと喉を鳴らす。
「デェ・・・あんなにお水があるデスゥ・・・」

実装石の足で公園から30分程歩いた場所に水が汲める場所があった。
小学校の近くによくある文房具も置いてある駄菓子屋。
爺さん一人で切り盛りしている店舗兼住宅の裏にエアコンの室外機がある。
そのドレン(排水)を失敬していた。
今日もそこに行く途中だった。

少女の体がプルっと震える。きょろきょろと辺りを見回す。
背の高い塀の向こうを少女がこちらに歩いて来る。
「見付かったデス!?」
実装石は固まった。

モジモジと少し内股気味に歩いてきた少女は
実装石に気付いた風もなく、木の根元にしゃがみ込む。
一本の線だった股間が僅かに開く。その隙間から

しゅぅぅ・しゃぁぁっ・ぴしゃぴしゃ・・・

黄色い水飛沫が降り注いだ。
飛沫は地面に水溜りを作り、勢いに乗れなかった流れが雫となって落ちる。
その水音を実装石は塀のすぐ外で聞いていた。

少女はそっと立ち上がり、白く小さな尻をこちらに向け、
ゆっくりとプールの脇に戻ると、再びしゃがんで、ホースで下半身を洗い流した。
シャワーノズルのレバー握ると「プシッ!」という音と共に水の刺激が股間を襲った。
同時に体躯がピクンと反応した。

近くに出来た淡いアンモニア臭のする水溜りに手や舌を伸ばすが
塀に阻まれ届く筈も無い。


公園ではこの時期によくある光景が展開されていた。

「・・・やっぱり無いデス・・・」 噴水を覗き込み落胆する成体実装。
「ノドがカラカラテチ・・・」 親に水をねだる仔実装。
「もう・・・ダメ・・・デスゥ」 側溝で息絶える禿裸実装。
「これじゃ仔が産めないデス・・・」 公衆トイレに入り絶望する妊娠実装。

通りかかる人間に水を懇願した者は踏み潰された。
他のハウスに強奪に入った者は返り討ちに遭い禿裸にされた。
何もしない者は干からびて死んでいった。

公園の外に探しに出たあの実装石は誰にも教えていない。
多数の同属が殺到すればどうなるか解っていた。


遠くの空に煙のような黒雲がたちこめていた。
その面積が徐々に広がり風が吹き始める。

ゴロゴロゴロ・・・!

「デ?」

ダンボールハウスでグッタリしていた親実装がその音に気付く。
「お水の入物を持って外に出るデス!」
「ママ、どうしたんテス?」
中実装が尋ねる。
「よく聞くデス。今からお空にピカゴロが来るデス。
 それが来ると雨が降るデス」
「アメ・・・お水が降ってくるテチ?」
「お水テチ?お水テチ?」

暗雲が空を覆う。

ピシーッ!ゴロゴロゴロ!!

ボトル、空き缶、玩具のバケツ、アイスのカップ、カップラーメンの容器
どこから持って来たのか、工事用のヘルメットまであった。
公園中の実装石達があらゆる入物を手に外に出ていた。

ビカッ!!ガラガラガラ!!

いよいよ雷が近づいて来る。
仔実装達は口を大きく開け、上を向いている。

やがて・・・


ドンッ!!

親仔の後ろで大きな音が聞こえた。

「デ?」
「テス?」
「「テチ?」」
振り返ると、漬物石がハウスを潰していた・・・。

バラ・・・バラバラ・・・バラバラバラ・・・!

「デェェェェッ!何で石が降って来るデスゥ!」
雨の代わりに降ってきた礫(つぶて)
砂利程の大きさからボウリングの玉位の大きさまで様々だった。

「チュベッ!」
礫が一匹の仔実装を直撃した。
「デギャァァァ!」「レビッ!」
転んだ妊娠実装の背中に礫が落ち、胎児の蛆実装が噴出される。
その上にも容赦なく降り注いだ。

「早くオウチに入るデス!」
「テーッ!ママあけてテチ!あけてテチーッ!」
仔の手を引きハウスに連れ込む親。
仔を置き去りにし、自分だけ逃げ込む親。

それぞれの実装石が、それぞれの家に避難していく。
しかし、その家にも

ボスッ!ボスッ!
「デギャッ!」
小さな礫が天井を貫いた。
グシャッ!
「デビャッ!」
大きな礫がハウスごと実装石を潰した。

公園は逃げ惑う実装石達で阿鼻叫喚となった。


居間のソファで寝ていた少女が目覚めた。
目を擦りながら上半身を起こす。
ぺたんとした胸とつるりとしてだるさが残る腰から
タオルケットがするりと落ちた。

冷蔵庫を開ける。

『・・・次のニュースです。
 本日午後二時頃、関東地方の一部で集中的に雹が降り、
 家屋や農作物等に被害が出ている他、鉄道にも影響が出ています。
 これにより、壊れた店舗兼住宅の屋根を修理していた、白保敏昭さん(75歳)が
 二階の屋根から転落し、右足を捻挫した他、数名が軽い怪我で病院で手当てを受けています。
 現場から中継です』

『・・・はい、私は今、ある小学校の校庭に来ています。
 御覧のように辺り一面、白い玉砂利を捲いたようになっています。
 中には・・・このように人の頭程もある大きな塊も・・・』
 
少女はコップを口に付けたまま画面を見つめる。
映っていたのは紛れも無く自分が通っている学校だった。

ピリリリリ!ピリリリリ!

突如、電子音が鳴り響く。
びくっと体が震える。
口の端から零れた牛乳が顎を伝い落ち、平らな胸を流れ白い線を描いた。

電話は日帰り旅行に行っていた両親からだった。
少女の無事を確認し、土産の話をする。
帰りは夜になるらしい。

服を着るのも面倒なので、そのままエプロンを付け夕食の準備を始めた。
ふと、窓の外を眺めると、氷の塊がキラキラと光っていた。

塀の外では実装石が一匹、氷の塊に潰されていた。
道草せず、真っ直ぐ帰っていれば、仔の待つ公園に帰れたかもしれない。

付近には降った雹が溶け、水が流れていた。
しかし、文字通りそれを渇望していた実装石はもういない。

-----終わり-----



まとまりが無く、申し訳ありません。

爺さん(白保敏昭さん(75歳))の行水を少女のプールに変えたら
長くなってしまいました・・・
orz

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