放射性物質 ************************************************************************************************************************************** 「じゃ、危険だから近所の廃工場へいこうか?」 何が危険だというのだろう? 突然、敏明の家を訪ねてきたトシアキは開口一番にそう言った。 「はぁ?」 間抜けな声は敏明が漏らしたものである。 よく見ればトシアキは鈍く光を反射する金属製の筒を方に提げている。 べたべたと危険だの取り扱い最重要注意だの物騒な言葉が表記してある。 「利秋は先に行って待ってるんだよ」 「おい、あいつもいるのか?その前に事情を説明しろ!」 「向こうではなすよ」 トシアキは敏明を強引に外へ連れ出し、10分ほど歩いた先の廃工場へ向かった。 ************************************************************************************************************************************** デジャァァァァァ!!デスゥゥ!!デジャァァァァァァァ!!! 「で、早速説明を頼む。そこのケージでデスデス喚いてる汚物は虐待目的なのが明白だとして、ここで何をするんだ?」 熱い空気が停滞し、いたるところに錆の浮いた鉄骨や梯子などがある。 ここは元は金属加工の工場だったらしいのだが、数年前に廃業して以来、ほったらかしの建物である。 埃は舞い、黒ずんだ機械油がいたるところに付着しており、壁にはいくつもの穴があいている。 通路跡なのか、側溝だったのか、そこは水没している。 雨水や排水が流れたためである。薄い灰色に染まっている。 建物の外にはコンクリートの壁、そして申しわけに程度に雑草が茂っている場所がほとんどだ。 まあ、人目にはつかないし、出入りも苦労するだろう。 壁でも上らなければ。(事実壁を登って侵入した) 「ふふ、敏明。こいつが何かわかるかな?」 「あ?」 トシアキは例の金属筒を方から降ろし、工場の床に置く。 よく見れば放射性物質を示すマークがある。 「これはね、厚さ40ミリの鉛と20ミリのアルミの筒だよ。もちろん、中の品物に対する対策だね」 これだけで15キロ以上ある、とトシアキ。 「なあ、相当にやばい物が中に?」 「いや、単なる劣化ウランだよ?」 ぶふぁ!と、盛大に青い笑いを浮かべ冷や汗をかく敏明。 「はぁぁ?!!お前それ犯罪っつーか、黒!グレーじゃなく黒!間違いなくクライム!!」 「心配しないでよ?人間には使わないし、ばれなければOKでしょ? この劣化ウランはね、とある研究機関からうちの大学の教授が手に入れたものなんだけど、 始末に困ってね。じゃあ、虐待に使うからください、の二つ返事で入手したの。 まあ、ほんの小さな欠片だよ。小指の先の爪先くらいの塊」 「利秋ーー!始めるよー!」 工場の置くから、白衣を着た気弱そうな男が現れ、キャスターつきの作業台をもってきた。 「利秋・・・・・おめぇいつも辛気臭い顔してるなぁ・・・・・」 「ほ・ほっといて・・・・・・と、敏明ぃ」 トシアキがケージから一匹の成体実装を取り出した。 黒い服、綺麗に整えられた栗色の髪。 肥満極まりない膨れた腹。 見事な飼い実装だった。 「こいつは?」 「ああ、眠り薬を混ぜた餌で釣ってきた。公園でね。別に飼いでも問題ないでしょ?ばれないことが前提の虐待実験なんだし」 そういうと、トシアキは実装石の首輪と服を毟り取り、放り棄てた。 デジャァァァ!!デズゥゥゥゥ!!デズゥゥゥゥ!!!デェェェェン・・・・・・。 抵抗して喚いたが、敏明が軽く張ると泣き出しておとなしくなった。 「さて、始めましょうか」 ************************************************************************************************************************************** それからは手際よく進んだ。 まず、紐で拘束し、偽石を摘出。活性剤と栄養剤の混合物につけ、保存する。 抵抗すれば舌を数回切り刻んで黙らせながらの作業だった。 そして偽石の変わりに、トシアキが厳重に取り出してピンセットで摘んだ劣化ウランを偽石のあった胸部に埋め込む。 本当に小さな欠片だった。黒っぽい欠片。 そして、切り開いていた胸を縫合し、廃工場の敷地ににがす。 「で、ほったらかしか?」 「そうだよ。数日おきにどうなったかを確認にくるんだ。体内で被爆し続けるとどうなるか知りたいしね」 なんか、トシアキが薄ら寒く思えた。 「あ、隠しカメラくらいは設置していくからね!」 「あ、そう」 あ、と言い、敏明は裸の実装石を追い、蹴り転がすと、片目に雑草を刷り込んだ。 草の汁により両目が緑となった実装石の腹は急に膨れ、妊娠と相成った。 「へへ。生まれる前から放射線漬けの仔蟲がどうなるか知りたくないか?」 「さすが敏明。これは重要だ」 二人は利秋の元へいき、監視用のカメラの設置をしにいった。 ************************************************************************************************************************************** 急に膨れた腹に新たな命が宿った。 実装石はすぐに理解した。 正直、この実装石は「仔実装などは食物でしかない」と考えていたが、 やはり可愛いであろう我が仔はそう思わなかった。 むしろ愛を注いでやりたかった。 幸せ回路の暴走によって、これから始まる無残な生活の闇の部分が無きものとされ、幸福な将来しか見えなくなっていた。 しかし、異変は突然起こった。 人間たちが去ってから数日がたっていた。 食い物は工場の隅に詰まれた実装フードをいやな顔をして『わざわざ食ってやっていた』が、 味がよくない、と癇癪を起こしたときだった。 突然、ハラハラと数本の栗色の髪の毛が宙を舞った。 最初、何があったのか理解できなかった。 美しいはずの自慢の栗色の髪。 それが、 特に前髪だ。 抜け落ちた。 何本も。 いや、ほとんどだ。 デェェェーン?デェェェェ!!!!デェェェェェッェェェェェ!!!???? 凄まじい叫びだった。 髪は、再生しない。 二度と生えることは無く、伸びることも無い。 実装石が命、服と並んで極端に執着する存在である。 デァァァン?デァァァァァァ!! 後頭部にも手をやり、二房の髪を確認しようとした。 痛みも、感覚も無かった。 しかし、両手には何か握られている感覚はある。 恐る恐る、視界に映す。 くすんだ、白髪が混じった、乾ききった、 自慢の髪の変わり果てたモノが絡み付いていた。 デヒィッ!!!! ついには絶句した。 ************************************************************************************************************************************** 「毛髪の細胞が死滅したね。人間でも被爆するとああなるよ」 トシアキはカメラの映像を見ながら冷静に言った。 「発ガンとかは無いのか?」 「さぁ?こんな実験実装石にははじめてやるだろうし。なるんじゃない?」 画面の中の実装石は涙を流し、腹をさすりながら嗚咽を漏らしていた。 ************************************************************************************************************************************** ママは禿で裸デスゥ・・・・・・。 でも、産まれてくるお前たちはきっと幸福になるデスゥ! まったく根拠の無い幸福の予感。 きっとくるだろうと確信してやまない。 デヘェ・・・・・デエェ!!デヘェェ!! 声をあえがせ、痛む腹を抑えながら水場へと向かう実装石。 さらに数日がたったある日だった。 突如腰が砕けるような激痛が実装石を襲った。 ついに親蟲となるときが来たのである。 薄い灰色のような濁った水場。 かつての工場の側溝跡は雨水と排水で水没し、腰までの水位がある。 だが、それで十分だった。 側溝へ、足を沈め、ついには腰も沈め、疼く総排泄口を曝け出す。 デヒィン!! 水中から歓喜のテッテレーという声が聞こえたような気がした。 総排泄口周辺の水が汚液色に染まり、ニュルン、と粘膜というか粘液に包まれた緑の生き物がひり出された。 すかさず、掴み上げ、粘膜を噛み千切り、唾液と鼻汁に濡れた舌で舐め取る。 蛆の様だった身体が成長し・・・・・・。 デッ・・・デヒィィ!! それは正常な仔実装には成らなかった。 顔の中央には黒ずんだ単眼の眼があり、口は頬まで大きく裂けていた。 髪はまばらに生え、四肢はそれぞれの長さがバラバラだった。 そうしてる間にも次々に仔が産まれた。 一匹目を、 微かに息をしているだけの一匹目を水辺周辺の乾いた床に降ろし、次の子へ移る。 同じように粘膜を噛み千切り・・・・・。 次の子は、いや。実装石ですらなかった。 粘膜の中には緑と赤が混じりあった液が入っていただけであった。 ブシャァ!と零れ落ち、水に流れてしまった。 三匹目に移った。 この仔は頭部が異常に大きく、目が大きくせり出ていた。 テチャァ!テチャァ!と声をあげ鳴く度に鼻と口から血の混じった粘液を滴らせていた。 四匹目は最初から仔実装の姿で生まれてきた。 しかし、胴体の服がなく、腹の皮も無かった。 体内から内臓がすべて零れ落ちたまま生まれてしまった。 五匹目は上半身はまともな実装石の姿をしていた。 しかし、胴が極端に長く、蛆実装の様な突起状の足が幾つか生えていた。 六匹目と七匹目は結合していた。 六匹目の胴体に七匹目は人面のような状態で埋没し、口をパクパクさせていた。 八匹目は粘膜の中に透明なカプセルのような殻を作っていて、その殻を満たした薄緑の液体の中にいた。 蛆実装の体が最も近い形状をしているだろうか? 太目の葉巻のような胴体に魚みたいな大きな目。 口は大きく縦に裂け、総排泄口に繋がっていた。 体の脇には細い無数の・・・・・・足か腕か不明な、繊毛だかヒレだかの様なモノが幾つも生え、 液面を動き回っていた。 こうして彼女たちは生まれたのだった。 ************************************************************************************************************************************** 「きめぇな。奇形かよ」 「まあ、放射線に胎仔の段階から晒されて被爆しまくりだからね。遺伝子だって傷つくさ」 「個人的にはあの結合したヤツが面白そうなんだが」 モニターの向こうの悲惨な状況をよそに割かし冷静にかつ楽しそうに二人は見ていた。 ************************************************************************************************************************************** さらに数日が経過した。 デェー?デェーン、デデーン♪ 何が楽しいのか、薄ら笑いを浮かべながらかつての親実装は工場の側溝の水辺のそばにいた。 この数日の間に親実装の知能は崩壊し、精神にも異常をきたしていた。 ただ、仔実装がいて、幸福な毎日が続いてる、としか脳は認識できていなかった。 側溝の水には腹部の皮が無かった四女が浮かんでいた。 時折、痙攣したかの様に四肢が動き、微かに生きていることを知らせている。 テチャァァ!!テチャァァ!!(ズルッ、ズルッ!) 五女が親の周りを這いずり回っていた。 胴は這う際に擦れ、ズタズタになり、血の跡が尾を引いている。 破れた皮膚からは血がシャワーのように吹き出ていた。 顔は苦痛にゆがみ、胸の辺りが壊死しかけていた。 遠からず、腐り落ちて体が千切、上半身だけとなるだろう。 結合実装はミイラと化していた。 涎を垂らした単眼の長女がそのミイラを弄び、テチュウテチュウと意味の無い鳴き声を上げていた。 殻に篭った奇形、八女は液面の中で腐り果てていた。 腐り、死ぬ前にこの仔は何を思っただろう? 頭部が肥大した三女はしゃがみこみ、血に視線を落としたまま動かなかった。 眼球が時折ぐるぐると回っているから生きてはいるのだろう。 さて、親蟲だ。 デヒヒヒ・・・・・・・デププププププ!! 汚い笑い声が響く。 親蟲の姿に以前の面影は無かった。 身体は黒ずみ、至る所に赤黒い反転が浮かんでいた。 この反転は皮下出血で、放射線で内蔵機能が破壊されたために起こった。 両足は以前に比べ驚くほど小さくなっていた。 筋肉が萎縮し、二度と動かすことは叶うまい。 両目はやや落ち窪み、涙を流し続けていた。 そして、脳は萎縮の結果、常に快楽物質を流すだけとなっていた。 「お、相変わらず気持ち悪いな」 親は何も考えられなくなった頭で声のしたほうを見る。 まるで蛆のように総排泄口から何べんが深いな音を立ててあふれ出る。 「君たちを観察して一週間が過ぎたからね。もう用は無くなったんだ」 「最後に偽石を返すぞ。こいつを身体に戻したらお前は多分元の思考回路をとりもどすんじゃないかな?」 敏明はカッターナイフで肌色の汚物の腹を切り、中に偽石を埋め込んだ。 デ?デgyァァァァァァァ・・・・・・・・・!!!!!!!!!!!!!!!!!!ヒジャァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!! 瞬間親の体が飛びはね、弛んだ皮膚が波を打つ。 目の奥は点滅を繰り返し、脳が仮死と蘇生を繰り返した。 すべてが理解され、脳が異常をきたす。そしてまた立ち直る。 それは繰り返す地獄だった。 鼻と耳からは茶色の溶けた脳と脳液が流れおち、 やがて、偽石が黒く濁り、グズグズになり、溶けてしまった・・・。 これが、彼女の最期だった。 ************************************************************************************************************************************** この後始末が面倒だった、と敏明は後に思い浮かべた。 まず、回収した親蟲と仔蟲どもをあつめ、 生きていようが死んでいようが区別せずにコンクリートで固めた。 こうなれば放射線は遮断できるとのことだ。 そして土中に埋設することにした。 それは、こういうことである。 この廃工場は数日後に取り壊され、愛護派のマンションが建つことになった。 その基礎工事の際に、地中深くに埋設することにしてもらうのだ。軽く30メートルくらい深くである。 これはトシアキが業者にコネがあるおかげだった。 「なあ、トシアキ。半減期ってのがあるんだろ?」 「らしいね。まあ、気の遠くなる年数が要るから、あの実装親子が死体でも日の目を見ることは二度とないね」 「で、俺たちへの放射線の影響は?」 「心配いらないんじゃない?」 ずいぶん都合がいいな、と敏明は言い放ち今回の虐待観察は終わったのだった。 ************************************************************************************************************************************** 余談だが、この親蟲の首輪にはマリアーナという刻印があったが、それはもう過去のことである。 親蟲が記憶を失ったと同時に意味を持たぬものになってしまったからである。 ちなみに、彼女の飼い主も、今は別な実装石を飼い、マリアーナのことなど忘れてしまった。 ************************************************************************************************************************************** 駄文最後まで読んでいただけたらうれしいです。 なんか凄いもの虐待に使っちゃいましたw 劣化ウランてw 知識も無いですがノリでなんとかなったかもです。 変に長い文になったかな? いちおうマリアーナのたどった末路です。 最初登場したときはご満悦だった糞蟲マリアーナも母になり、そして無残で誰の記憶からも消えてしまいました。 これで一応のマリアーナの決着でしょうかね? それでは今回も駄文を読んでいただき感謝です。 byレーザーメスの人 過去の文↓ レーザーメスで焼くこと 研究生活・親蛆 火遊び 食用白仔実装のつくりかた 公園浄化7月 過去、敏明学生時代 箱はサウナ
1 Re: Name:匿名石 2017/03/24-20:13:55 No:00004562[申告] |
おっかねえなあ
愛誤派マンションってことはたぶん愛誤派とその実装も… |
2 Re: Name:匿名石 2019/10/29-04:00:48 No:00006128[申告] |
液面遊泳くんはカプセル壊せてたらええ感じのおぞましモンスターになれたろう |