タイトル:【謎】 たった一人の行進曲あるいはあまりにも長い旅の始まり.txt
ファイル:【謎】たった一人の行進曲あるいはあまりにも長い旅の始まり.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:1969 レス数:0
初投稿日時:2008/07/28-20:52:49修正日時:2008/07/28-20:52:49
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実装石が目が覚まし立ち上がるとそこは長い川に挟まれた長い道でした
「テェ……!? ここは……」
実装石はぼんやりとしながら周囲を見回します
川と道と灰色の空以外はとくに何も見えないし誰もいないようです

実装石は落胆と困惑となぜかかすかな安堵を覚えながらまた道に横たわります
「……もっかい寝てから身の振り方を考えるデス」
目の前に見える空は相変わらず煙のような灰色です
「眠りたい……もう眠りたい……全部……テスゥ……テー……」
まさしく実装石は眠りにつこうとしていたのです

そんな時、何かの音が地面を伝わってきました

”テッ テッ テッ テッテテッ テッテテッ ……” 

「テテテテテッ!? テテテッ!?」
慌てて実装石は跳ね起き実装弐式の構えを取ります
錬金術師の言によると実装石は七つの構えと数の優位によって危険な野生動物とも対等に渡り合うそうです
残念ながらそれがかなわない強敵も存在し敗北を喫した苦々しい記憶も実装石の遺伝子の中に眠っていますが
それは別の話にしておきましょう

しばらくすると物音の正体がわかりました
見知らぬ仲間たちが古くから実装界に伝わる行進曲を歌いながらこちらに向かってくるのです

『デー デー デー デーデデース デーデデース』

「テッ! 仲間デスゥ!」
実装石は安堵すると共に構えを解きました
憂鬱だった実装石の心に光が差し込みはじめた瞬間です
そして実装石は仲間たちの最後列に付き行進を始めました

『デー デー デー デーデデース デーデデース』

そして実装石は見知らぬ仲間たちと共に川辺の道を歩いていくと
角の生えた巨大なニンゲンらしき人(以下角ニンゲンさん)が立っていました
彼の後ろを見ると道が二つに分かれています

仲間たちは角ニンゲンさんの姿を確認するや否や駆け寄って行き
「ニンゲンさん! 地元名産ゴハンをくれデス!」
「テッチューン! テッチューン!」
「コンペイトウはあるデス?」
「ニンゲンさんのリッパな角でおなかツンツンしてほしいデス」
などなど口々に言いはじめました

角ニンゲンさんはため息を一つつくと
「じゃあまずこっちに並んでもらおうか?」 
左の道の方を指し示しました

テッチューン! わかったデスゥ!
実装石たちは一様に歓喜に満ちた表情を浮かべそして列を作り……
そのまま物凄い勢いで行進していきました

角ニンゲンさんはやれやれといった風に肩をすくめます

「テッ!? みんなどこデスか!?」

例の実装石は一人で立ちぼうけていました
実装石はなぜか右の道に気を取られてしまって周りの状況に気付いていなかったのです
気がつくと仲間たちは地平線の向こうを走っていました

「テェ……どんくさい奴がおいてけぼりを食らうってわけデスか……」

角ニンゲンさんはしょげきってしまった実装石を見ると考え込むように腕を組み
右足だけの軽い屈伸を繰り返しながら唸り出しました

そのうちに『チーン』という音が天と地に鳴り響きました
実装石は顔を上げます
なぜ、角ニンゲンさんの頭上の辺りから音が発生したのか? と実装石はぼんやりと思いました
角ニンゲンさんが重々しく口を開きました
「よし……お前は……右の道を行ってくれ……」

「テテッ!? あっちじゃないんデスか?」
実装石は疑問に思い左側の道を指して質問しました
「ああ、そういう決まりになっている」
「でもワタシの仲間はあっちに行ってるデス、なんだってまたなんデス?」
実装石は納得しかね、また質問してみました
「とにかくそういう決まりになっている」
「でもワタシの仲間はあっちに言ってるデス、なんだってまたなんデス?」
やはり実装石は納得しかね、質問してみました
「なんというかそういう決まりになっている」
しばらくその繰り返しをしている内に角ニンゲンさんはなんだかくたびれてきました

「そろそろ勘弁してくれ、お前の相手を続けていたら将来無理がたたって消えてなくなりそうな気すらしてくる」
「それは申し訳ないことをしたデス ごめんなさいデス」
残念ではあるものの、実装石はそれ以上の質問を諦めました
「すまんな、ともかく右の道を行ってくれ」
「わかりましたデス」

置いてきぼりになってしまった事でまたもや心細くなってきた実装石は
それでもテチテチと道を歩き始めました
角ニンゲンさんの幸運を、という声が聞こえました
もしかしたら気のせいだったのかもしれません
でも一応返事をしておきました

「アリガトデス アナタにも幸運の加護があらんことをデス」

そして実装石は二度と振り返りませんでした
実装石の長い旅が今、始まったのです……

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