タイトル:【観】 ある公園の真夏
ファイル:ある公園の真夏.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:6760 レス数:1
初投稿日時:2008/07/25-23:35:17修正日時:2008/07/25-23:35:17
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ある公園の真夏


夏の初め。蚊により睡眠不足に陥った実装石達がストレスにより同属で殺し合いをし大量死した事で保健所は自然公園内の
実装石に何かしらの疫病が発生したのかと判断し、人が立ち入らないよう封鎖して2週間。
公園の実装石は殺し合いで全滅したか、この封鎖により餌も取りに行けなければ水も止められて確保できないので全滅した
かと思われていたが、殺し合いに参加しなかった実装石が数家族だけしぶとく猛暑の中僅かな保存食食いつないでいた。
いや、過去形で語るべきだろう。2週間たった今では二家族以外は死に絶えていた。だが一家族だけは他の死に絶えた実装
石とうって変わって肌に張りがあり生気に溢れている。

「じゃママは今日のご飯を取ってくるデスー。いい子で留守番してるデス」
「ママ行ってらっしゃいテチー。今日はドロドロご飯が食べたいテチューン♪」
「普通のご飯が無かったら、それにするデス。じゃあ行ってくるデス」

夜、少し涼しくなってきたので親実装がダンボールハウスの中から何も入っていないかなり汚れたビニール袋を片手に姿を
現す。
この親実装は夏の初めの殺し合いにも参加せず、その後の保健所職員の一斉掃除に際しても公園の植木の中に上手くダンボ
ールハウスを作っていたお陰で難を逃れ、こうして今日まで生き延びていたのだ。

公園は封鎖され人も入ってこれないし実装石も餌を取りに出られないが、不心得者が時々夜になると封鎖された公園の中へ
ゴミを捨てて行くので、公園の出入り口に比較的近い場所に住んでいるこの親実装は夜になると、まだ生き残っている同属
の誰よりも早く現場に行っては食べられる物が捨てられていないか確認をしていた。
この家族以外は死に絶えたと言っていい今となっては、ほぼ独占状態なのだが未だに早くゴミが投げ捨てられる場所に赴い
ている。早く行く事でゴミを独占し、今まで何とか生き延びてこられた時の癖だろう。

「デェェェ。今日は食べられる物が入って無いデスゥ。今日はドロドロご飯で腹を満たすデスゥ」

今日もゴミが投げ捨てられていたが、袋の中を漁っても食べられる物は入っていなかったので親実装はトボトボと来た道を
引き返し、巣の前を通りすぎて草木が生い茂る公園の奥の方へ歩いていく。
公園の奥の方ではまだ何匹かの実装石が巧妙に草木で隠されたダンボールハウスの中で生き延びており、そうした実装石の
巣を前に探り出していた親実装は、巣の近くに差し掛かると、ゆっくりとした足取りで音を立てないように近づいて中の様
子を伺う。
ハウスの中から寝息が聞こえてきたので、親実装はそっとダンボールハウスの蓋を開けて直に中を確認する。巣の中には成
体実装の服の切れ端と血の海。親を食ったのであろう口の周りや前掛けを血で汚した三匹の仔実装が満足げに寝息を立てて
いた。
仔実装達に怪我の跡が無い事から、親実装は飢えた仔達に自分を食わせたのだろう。仔が無理やり親を食ったのであれば仔
実装などひとたまりも無い事からそう伺えた。
親実装は蒸し暑い巣の中からそっと一匹づつ起こさないように仔実装を取り出しては音を立てないよう、いつものように持
ってきた袋の中に入れていく。三匹とも袋の中に入れるとゆっくりと仔実装を入れた袋を手に持ちその場を離れる。

「久しぶりにお腹一杯…テッ!?テチャァァァァァ!!!ここは何処テチー!!!!」
「何でワタチ袋の中にいるテチー!?出してテチー!」
「ママー!助けてテチュー!」

袋に入れられていた仔実装達は袋の中で揺らされる事で目が覚めたのか悲鳴をあげる。中には自分達が親を食ったのに、そ
の親に助けを求める仔までいた。
袋の中で助けを求める仔実装達の悲鳴を無視して親実装は公園のシーソーまで駆けて行く。シーソーまでの道すがら、無駄
な事だと解っていても、親実装は他の実装石のダンボールハウスも覗いて行く。
覗いて行くダンボールハウスはどれも空で、公園にはもう親実装とその仔。そして袋の中の三匹の仔実装しか生き残っては
いなかった。
親実装が他の巣を確認しながらもシーソーにたどり着いた頃には、不安定な袋の中で激しく揺さぶられたせいか仔実装達の
泣き声も聞こえなくなっており、袋の中を覗いてみると全匹ゲロを吐いていた。
そんな事もお構いなしに親実装は盗んできた仔実装達の服を無造作に剥ぎ取っていく。

「テジャァァァァァ!何をするテチ!オバサン服を返せテチ!今ならコンペイトウで許してやるテチ!」
「うるさいデス!お前達にはもう服は必要無いんデス。あと髪も必要無いデス!」

親実装は仔実装の抗議を怒鳴って黙らせ、髪の毛も毟り取っていく。
数分後、袋の中には三匹の禿裸仔実装が突然の出来事に目と同色の涙を流しながら声を上げる事も出来ず呆然と立ちすくん
でいた。作業が終わると親実装は袋の持つ部分を縛って、袋をシーソーの下にセットするや、自らはシーソーに乗ってシー
ソーを勢いよく袋に叩きつける。

「テギャァァァァァァ!!!!!!痛いテチ!体のあちこちが痛いテチー!!!!!」
「美味しい美味しいご飯が出来るデス〜♪これは同属喰いじゃないデスー♪ただのドロドロご飯デス〜♪」

シーソーが叩きつけられる毎に、袋の中から仔実装達の悲鳴が上がり潰れていく。親実装は仔実装の悲鳴を無視しては歌い
ながらシーソーを袋にぶつけていく。
この親実装の親は元は飼い実装で同属喰いだけは絶対にするなと親から教えられていたが、公園が封鎖され餌を取りに行け
ないという非常事態に陥るや、お腹の空きには勝てず泣く泣く職員が掃除しわすれた同属の死体を口にしてしまったが、こ
のように同属を袋に入れてお粥みたいにドロドロになるまで叩き潰す事で、これはドロドロとした食べ物で自分は同属喰い
をしていないと思い込もうとしているのだ。
何回もシーソーを叩き付ける内に袋の中から仔実装達の悲鳴は消え、仔実装だった赤緑色したドロドロの液体だけが袋の中
に残された。
袋に入れてシーソーで叩き潰すのはしんどいが、同属が原形を留めていないので気分的に楽なのと、袋に入れて叩き潰す事
により肉や血を無駄にする事が無い。水を断たれた公園においては、同属の血は貴重な水分補給となるからだ。
親実装はシーソーから降りると、ドロドロご飯が入った袋と仔実装達から奪った服のうち、ゲロで汚れていない服を持ち巣
に帰って行く。
このように飢餓で弱っている他の実装石達から仔や、最終的には成体そのものを拉致しては袋に入れて叩き潰して食べてい
るので、この親実装家族だけが肌に張りがあり、生き生きと生き延びているのだ。

ドロドロご飯を手に親実装が巣に入るや、仔実装が駆け寄ってきて親に抱きつく。

「帰ったデスー。良い子に待っていたデスー?」
「ママお帰りテチー♪ちゃんと良い子にしていたテチー」
「さすが私の仔デスー。今日のご飯はお前が食べたがっていたドロドロご飯デスー」
「テチューン♪ドロドロご飯テチー♪」

抱きついている仔を離すや、ご飯入れに使っているラーメン容器を取り出して袋の中のドロドロご飯を零さないように入れ
ていく。仔実装はドロドロご飯が嬉しいのか顔を紅潮させ、鼻の穴をピスピス広げて興奮している。

「さ、食べていいデス。今日からもうドロドロご飯は食べられないから、ゆっくりと味わって零さないように食べるデスー」
「グチャグチャグチャ。美味しいテチー♪もう食べられないのは残念テチ。ママも食べるテチー」
「ゆっくりと味わうデス。じゃあママも食べるデス」

顔中血で汚しながら親仔は仲良くドロドロになった同属を口に運んでいく。ものの十分で食べ終わり親はタオルで自分の口
を拭いた後、仔の顔を優しくふき取ってやる。

「デフー。お腹一杯になった事だし、次は着替えデスー。今日も服が手に入ったから、それに着替えるデス」
「テフー。時々新しい服を持ってきてくれるのは嬉しいんテチが、少し大きかったり小さかったりでワタチ着替えたく無いテチー」
「それはダメデス。毎日服を着替えないとちっさい黒い蟲に刺されてしまうデス。だから着替えるデスー」

親実装は今日までの経験で、汗を吸い取り湿った服のままでいると蚊がよってきて刺されやすいと何となく感づいたので仔
実装を盗んでは服も取り上げて自分の仔に与えていたのだ。そしてその日着ていた服で体中の汗を拭きとっては、巣の外に
干して、蚊をそちらにおびき寄せて少しでも寝やすいようにしているのだ。
親に諭され少し大きめの服に身を包んだ仔実装は、直ぐにねっころがり体力を無駄に使わないように寝にはいる。
数分後仔実装が寝たのを確認すると、親実装も自分も別の成体実装から奪った服に着替えて二人の服を巣の外の木に引っか
けて干すと、仔実装の幸せそうな寝顔を見つめながら、もう公園に同属はいない。これからどうするかと親実装は不安に悩
まされたが、満腹感により睡魔が襲ってきたのか直ぐに横になり眠りについた。

次の日も夜にゴミが公園内に投げ捨てられていないか確認に行く親実装だったが、今日は捨てられていなかったのでお腹が
空いたと訴える仔を何とかなだめて二人そろって早めに床に着く。
空腹に悩まされながらも何とか眠りについている中、何やら公園の入り口の方で騒ぎ声が聞こえてきたので親実装は目を覚
まし、仔を起こさないようにそっと巣から抜け出し確認をしにいく。
人間だったら危険なので公園の出入り口近くの生垣の中に身を隠しながら親実装が伺うと、出入り口の所にピンクの服を着
た成体実装石と少し壊れたダンボールが捨てられていた。
身なりからして捨てられたのだろう飼い実装は何やら必死に叫びながら出入り口を塞ぐ板を叩いている。

「デジャァァァ!早くここから出すデスドレイ!今ならステーキにフォアグラで勘弁してやるデジャァァァァ!」
「テジャァァァァ!何で世界一可愛いワタチ達が捨てられないといけないんテチ!ドレイがあの家から出て行けばいいんテチ!」

ダンボールの中から仔実装の声が聞こえてくるので、どうやら親子そろって糞蟲化したので愛想を着かされ捨てられたのだ
ろう。
生垣の中から親実装は初めて見るピンクの飼い実装服に心を奪われ、何とかあの服を奪い着たい。成体があんな綺麗な服を
着ているのだからダンボールの中の仔実装も着ているに違いない。仔にも着させて幸せにしてやりたいと思った。また公園
には他に同属がもういないので、飼い実装親子が捨てられた事からまたドロドロご飯が食べられると心弾ませた。
しかし親実装は直ぐに行動には移さなかった。元飼い実装は今まで良い物をしこたま食べてきたのだろう。見るからに体格
が良いので、捨てられて直ぐの今の状態では返り討ちにあうと判断し、どうせこの公園からは出られないので元飼い実装が
弱るまでまとうと、その場を離れ巣に戻った。巣に戻ってからも自分があのピンクの服を着ている姿を想像しデププと笑い
ながら再び眠りについた。

夜が開け目を覚ました親実装は体力を温存する為にいつものように夜までもう一度寝ようとしたが、昨日の夜捨てられた飼
い実装の事を思い出し様子を見に行く事にした。
昼前だと言うのに既に暑く、少し動くだけで汗が噴出してくる。日を避けながら親実装は生垣沿いを公園の出入り口目指し
て歩いていき、まだ元飼い実装がいるか確認をする。
出入り口には成体実装の姿は見えなかったので、飼い主が連れ戻しにきたのか他の場所にでも行ったのかと焦ったが、元飼
い実装が一緒に捨てられたダンボールはまだその場に残っていたのと、照りつける日差しの中、ダンボールの中から元飼い
実装親子の声が聞こえてきたので、その場を離れず飼い主が戻ってくるのをダンボールの中で待っているようだ。

「デェェェェェェ。暑いデス。死にそうデス。ドレイ冷たい飲み物持って来いデス!」
「テチャァァァァ。ドレイ、今すぐワタチをクーラーのきいた部屋に連れ戻す許可をやるテチ。それとお腹が減ったからステーキ持って
来いテチ」

蓋が閉まっているダンボールの中から、まだ捨てられた事を自覚していない元飼い実装親子が居ない飼い主に向って普段か
らしていたのだろう横柄な言葉遣いで命令している声が聞こえる。
日差しを遮るものの無い場所でダンボールの蓋まで閉めているので、中はかなり蒸し暑いであろう。昨日の夜とはうって変
わって元飼い実装の声が弱っているのが伺える。
親実装は何かを思いついたのか、日差しが照りつけるのも気にせずダンボールまで歩いて行き、ダンボールの蓋を開けて元
飼い実装親子に声をかける。

「どうしたデス?こんな暑い中、家の蓋を閉めていたら死んでしまうデスー」
「デジャァァァァ!野良が飼い実装様に気安く声をかけるなデジャァァァァ!」
「野良の癖に気安いテチ!ボコボコにされたいんテチか!」

今までに体験した事も無い暑さの中、立ち上がる気力も無いのか何も入っていないダンボールの中で寝ながら威嚇だけはし
てくる元飼い実装親子。
見るからに脱水症状を起こしているので全然恐怖を感じない親実装は、それでも親切な同属を演じて話を続ける。

「飼い実装様に気安く声をかけたのは謝るデス。ですが飼い実装様。こんな暑い中、その様な服を着ていては死んでしまう
デス。それに蓋を閉めていたら飼い主さんが見つけられないデス。もちろん飼い実装様なら知っていて当然の事デスが、一
応声をかけたんデスー」
「も、もちろんそんな事は野良に言われるまでもなく知ってるデスー!野良がでしゃばるなデス!」

元飼い実装親子は焦りながらもそんな事は知っているとばかりに、急いで着ているピンクの服を脱いだ。

「あとこの場所を離れてもいけないデス。服を脱いで蓋を開けて待っていれば飼い主も見つけてくれるデス」
「うるさいデジャァァ!野良に言われる事じゃないデズァ!服を着ていなくても高貴オーラを漂わせる私をドレイは人目で
見抜くデス!野良が近くに居たらドレイも来ないからどっかいけデジャァァァァ!」
「野良臭いからどっかいけテチ!」

元飼い実装の罵声を聞き流し、親実装は元飼い実装に解らないようにデププと笑みをかみ締めながらその場を離れ巣に戻っ
ていく。

そして夜になると親実装はすぐさま大き目の袋を二つ持つと巣から飛び出し、元飼い実装親子の下へ向うと昼前に言ったよ
うにダンボールの蓋は開けっ放しだった。
馬鹿なのだろう親実装が言った事を信じきっていた元飼い実装親子は日差しが照りつける中ずっとダンボールの蓋を開けっ
放しで全裸で過ごしていたので、ダンボールの中を覗くと全身真っ赤にした元飼い実装親子は口から泡を噴いて仮死してい
た。

「デププププ。こいつら馬鹿すぎデスゥ。私の言った事をまんまと信じてたデス。こんな暑い中裸で一日中お日様にあたっ
ていたら、お肌が真っ赤になって倒れるのは当たり前デス」

醜い笑みを浮かべながら親実装は元飼い実装親子が入ったダンボールをシーソーまで引きずっていく。さすがに飼い実装は
いい物をたらふく食べていたから重かったが、かるく一時間ほどかけてダンボールをシーソーの所まで引きずっていくと、
親実装は全身汗だくで肩で大きく呼吸をする。

「デーデー。さすがに疲れたデスー。こいつらが目を覚まさないうちに服を奪っておくデス」

呼吸を整えてから親実装はダンボールの中に無造作に脱ぎ散らされたピンクの服を拾い始め、綺麗な袋に放り込んでいく。
早めに服を脱いでいたので綺麗なままだ。そうしている内に元飼い実装親子も目を覚ましたのか、デスデスわめき始めた。

「デーデー。野良実装。世界一高貴で美しい私に何か飲み物を持ってくるデスー」
「喉が渇いて死にそうテチー。野良、ワタチ達の服を何処にやったテチ」

捨てられ弱りきり、力関係が逆転した事に気づかない元飼い実装親子の戯言を無視して、親実装は元飼い実装の顔に唾を吐
きつける。

「デデッ!?野良の癖に飼い実装様に向って唾を吐きつけるとはいい度胸デス!私に無礼を働くと私のドレイがだま……デギ
ャァァ!」

元飼い実装が言い切る前に親実装はダンボールを蹴り、元飼い実装親子をダンボールの外に出す。そしてすぐさま成体実装
に対しマウントポジションを取り激しく殴りつける。

「デギャァァァァァ!止めるデス!私にこんな事をして、ただで済むと思っているデス!?今なら許してやるから、殴るのを
止めるデス!」
「デププ。何言ってるデス?お前は捨てられたんデス。お前の飼い主はもういないデス!だからお前なんか怖くないデス」
「そ、そんな事は無いデス!わ、私は…世界一高貴で…美しい……飼い実装…デ…」

脱水症状で弱りきっているのと、日差しで全身真っ赤にしまともに体が動かないのか、元飼い実装は親実装に殴られ続けた。
そして親実装は弱って動けない元飼い実装の髪の毛に手を伸ばし一気に引き抜く。

「デギャァァァァ!わ…私の美しい髪がぁああ……オロローン、オロロー…デギャッ!」
「お前にはもう必要無い物デス。さて、次は仔の番デス」
「テッ!ち、近寄るなテチー!今なら許してやるテチ!何なら世界一可愛いワタチを飼わせてやるテチ。お前は幸せ者テチ」

髪の毛を失い虚脱状態の元飼い実装に止めの一撃を食らわせるや、親実装は次のターゲットを仔実装に向けた。体が動かず
虚勢を張るが一歩も動けない仔実装はすぐさま親実装に抱えあげられ、髪の毛を毟り取られ袋の中にほうりこまれる。

「テチャァァァァァァ!髪を返してテチー!ここから出してテチー!悪かったテチ!謝るから出してテ…グボァ!」

仔実装が言い終わる前に同じ袋に元飼い実装も無理やり詰め込み袋を縛ったので仔実装は親に押し潰された。パンパンに膨
らんだ袋を、いつものようにシーソーの下に設置して、叩き潰し始める親実装。既に虫の息だったのか悲鳴は上がらず、数
十分後、袋の中は元飼い実装親子だった物へと変わり果てた。

「量が多くて思いデスが、今日は久しぶりにお腹一杯食べられるデスー♪それに綺麗な服もあるから仔も喜ぶデスー♪」

ドロドロご飯が入った袋と元飼い実装親子から奪った服を入れた袋を持って親実装は意気揚々と巣に帰っていく。

「テチャァァァァ♪今日のドロドロご飯はいつもより美味しいテチューン♪ワタチ幸せテチー♪」
「グチャグチャ。ほんと美味しいデスー♪量も多いから一杯食べるデスー♪」

元飼い実装親子は野良とは違い良い物を食べてきたのだろう、いつもより美味しいドロドロご飯に親子は満面の笑みを浮か
べながら食べつくした。

「今日は凄い物もあるんデスー。デジャーン♪」
「テェェェェェ!凄いテチ!ピンクの可愛い服テチー!ママ凄いテチー!」

ピンクの服を渡されるや、今まで来ていた服を脱ぎ捨て着替える仔実装。親実装も自分用のピンクの服に着替えて、親子で
見せ合いをする。

「テェェェ。綺麗な服テチー。でもママ?この綺麗な服は何処から持ってきたテチ?ワタチ達が着てもいいんテチ?」
「仔がそんな心配する事無いデスー。これは私達の服デス。何にも心配はいらないデス」
「そ、そうテチ。この綺麗な服はワタチ達のテチ♪ワタチ綺麗テチ。ママも綺麗テチ。ワタチ達親子は世界一綺麗テチー♪」
「私達は飼い実装にも負けない世界一美しい親子デスー♪」

親がこの綺麗な服を何処から持ってきたのか気になり心配した仔実装だが、親実装に言いくるめられるや気を取り直して今
まで着た事も無い服に身を包んだ高揚感からか、口元の血も拭く事を忘れて親子は巣の中で踊り狂う。
そんな中、公園の出入り口の方から何やら人間の声が聞こえてきたので、親子は踊るのを止め様子を伺う為親は巣の外に出
て行く。
生垣の中に身を潜めながら親実装は人間が何を言っているのか聞き耳を立てると、どうも人間は昨日捨てられ親実装親子に
喰われた飼い実装親子の飼い主で探しに来ているのだと解った。
親実装はこのまま隠れておこうと思ったが、ふと自分がピンクの服を着ているのを思い出した。今ピンクの服を着ているの
は自分達親子だ。だったらあの人間を騙せるんじゃないのか?そうしたら公園からも脱出でき、餌に困らない贅沢三昧の飼
い実装になれる。と一瞬で都合の良い考えに達した親実装は直ぐに巣に戻った。

「直ぐにここから出るデス!外にニンゲンがいるデス!ママ達は飼い実装になれるデス!こんな生活ともおさらばデス!こ
れからは贅沢三昧の生活デスー」
「テッ!?ワタチ達飼い実装になれるテチ?何でテチ?ママは前にニンゲンに近づくな、ニンゲンは野良実装を見ると酷いことをしてくる
と言っていたテチ」
「大丈夫デス!今私達は飼い実装の証である綺麗なピンクの服を着ているデス!さ、早く行くデス」

納得が行かない表情の仔実装をよそに、親実装は仔の手を引いて巣を飛び出し、人間の元に駆け寄る。

「ニンゲンー!お前の飼い実装は私達デスー!早く公園から連れて帰るデスー!」

人間の男は、なにやらデスデス騒いで駆け寄ってきて足に擦り寄る実装親子を見て、表情をいっぺんさせた。それもそのは
ず、親実装親子が着ている服は男の飼い実装親子に着せていた物で、名前も刺繍されている。だが、今その服を着ている実
装親子は服こそ綺麗だが、髪はベトベトで男の実装親子と似ても似つかない。たった一日でここまで変わるなんて事は無い
から、男は一目でこの実装親子が自分の飼い実装石では無い成りすましだと見抜いた。
そして何より親子の口元を汚している血の跡を見て、男は一日で何があったのか悟った。野良実装石は同属喰いを平気です
る。つまりこの親子は自分の飼い実装を喰って成りすましているのだと。
次の瞬間、男は足に擦り寄る親実装を蹴り飛ばした。

「デボァァ!な…何をするデス!私はお前の飼い実装デ、デギャァァァァァ!痛いデス!蹴らないで欲しいデス!」

男は親実装を蹴り続け、服を毟り取り、噴水まで蹴り飛ばして行く。その様子を見ていた仔実装は恐怖の余り腰を抜かした
のか、その場にへたり込んではパンコンしている。
男は親実装が虫の息になるまで蹴り続け、動かなくなると断水で水の無い噴水へ放り込んだ。次は仔実装の番だと動けない
仔実装を掴み上げようとした時、仔実装は震える手でピンクの服を脱いでは男に差し出し土下座をした。

「許してテチ!ママにもらった服はニンゲンさんのだったみたいだから返すテチ!ワタチは最初からおかしいと思っていたテチ。服は返
すからワタチを許して欲しいテチ!」

目と同色の涙を流しながら必死に土下座をして何かを訴える仔実装を見下ろしながら、男は仔実装が差し出したピンクの実
装服をグシャグシャに踏みつけてもう着られないようにした。
元はと言えば自分が飼い実装を捨てたからこんな事になったんだ。それに端から殺すつもりは無く痛めつけるだけが目的だ
った男は、土下座をしている仔実装の首元を摘み持ち上げどうしようか考え込む。

「テ?ニンゲンさん許してくれるテチ?ワタチのアピールが通じたテチ♪かるいもんテチ♪おまけにお愛想もしてやるテチ♪」

許されたと思った仔実装は手を口元へ持って行き首を傾げて実装石お得意の媚のポーズをする。それがいけなかった。男は
賢そうな実装石でも野良はこんなもんかと思い、服を自発的に返した事に免じて無傷のまま愛想を続ける仔実装を親と同じ
噴水の中へ入れる。

「テテッ!?ニンゲンさん、冗談はよすテチ!ワタチを飼ってくれるんじゃ無いんテチ?出してテチー!ここから出すテチー!」

仔実装の中では「ニンゲンが許してくれた。なら飼ってくれるんだ」と勝手に思い込んでいたので、自分が噴水の中に入れ
られた事に気づくと男に出せと訴えたが、男は既に立ち去った後だった。
その後一晩中仔実装は叫び続けたが、空しく公園に響き渡るだけだった。


「デー。暑いデスー。日差しが痛いデスー。このままじゃ死んじゃうデスー。ママが出してやるから頑張るデスー」
「お…おかしいテチ。あのニンゲンは何でワタチを飼ってくれないんテチー。許してくれたんだから飼ってもらえるはずテ…チ」パキン

一晩で傷は癒え目を覚ました親実装は、辺りが明るくなってきて太陽が昇り始めているのに気が付くや、噴水から抜け出そう
と必死によじ登ろうとしたが、噴水は深くとてもよじ登れなかった。
一晩中叫び続けて疲れたので眠っていた仔実装も目がさめたので、親実装は仔実装だけでも外にだそうとがんばったが、抜け
出せず、太陽がどんどん昇り気温が高くなり、日差しが容赦なく降り注いで肌を焼いて真っ赤になる中、とうとう仔実装は耐
え切れずに偽石が割れ死亡した。

「デデッ!?目を覚ますデス!もう直ぐ出られるデス!」

何度も仔実装の体を揺さぶったが生き返るはずも無く、力強く揺さぶりすぎたせいか、日差しで焼かれた体が脆くなっていた
ので仔実装の首が転げ落ちる。

「オロローンオロローン!仔が死んじゃったデスー。今まで大切に育てきて、一匹だけ残った大切な仔が……。何でデスー。
私達はただ幸せになりたかっただけデスー。何でこうなるんデスー!」

水の無い噴水の中で仔実装の死体を抱きしめながら親実装は延々泣き続けた。だがそんな親実装の声もセミの鳴き声にかき消
され誰に聞かれる事もなかった。

実装石をあざ笑うかのように太陽は今日も燦々と輝いていた。


END


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第六段スクです。
前作、体臭に感想を下された方に、この場を通してお礼申し上げます。
今回は第三弾スクある公園の夏の続編として書いてみたのですが、いかがだったでしょう。
相変わらず文は精進がたりませんが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
今後はもっと良い文が書けるよう精進いたします。

では、最後まで読んで下さった方、ありがとうございました。

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1 Re: Name:匿名石 2023/09/25-19:59:00 No:00008024[申告]
なんだこの糞人間!?
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