『繭から孵った親指ちゃん♪』 ------------------------------------------------------------------------------------------------ 我が家の飼い蛆が繭を作った。 愛護されて育った蛆は繭を作るというけど、うちでは特別な飼い方をしたわけではない。 野菜の端切れなどの残飯を与えて気が向いたときだけ適当にプニプニ。 それで蛆自身は充分、幸せそうにしてたけど…… だから——なのかね? 蛆の主観で幸せでさえあれば繭化するのか? だったら頭からっぽ脳天気な世の中の蛆ちゃん全てが繭を作りそうなものだけど。 (親や同属に喰われたり人間に虐待されなければ、だが……) それはともかく、蛆が繭の中に籠もって数日後。 ぴきぴきと割れた繭の中から現れたのは実装人……なんてことはなく、ただの親指実装だった。 ま、そんなもんだな。 「レッチューン♪ やっと親指ちゃんになれたレチ♪」 ああ、ご苦労。 これからもよろしくな。 「ついては生まれ変わりのお祝いしてほしいレチ♪ お寿司とケーキと金平糖が食べたいレチ♪」 ……は? いま何て言ったオマエ? 「蛆ちゃんから親指ちゃんになったお祝いレチ♪ 飼い主なら当然のことレチ早く用意するレチ♪」 ——ぷちっ!(怒) ええ、速攻で潰してやりましたともさ。 蛆ちゃんの頃は残飯とプニプニで満足する可愛いヤツだったのになあ…… ------------------------------------------------------------------------------------------------ 【終わり】