タイトル:【観】 作物被害の結果
ファイル:作物被害の結果.txt
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初投稿日時:2008/07/11-16:25:56修正日時:2008/07/11-16:25:56
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作物被害の結果




山に囲まれた小さな二次村は数年前まで他の地方の市町村と同様に、村の過疎化に悩んでいたがマスメディアに村特産の二次
野菜が取り上げられるや、近年食物の安全と安心に人々の関心が高まった事もあいまって注目され始めた。
初めは隣の双葉市から少数の人が噂を聞きつけ買いに来ていただけであったが、今では村営朝市には双葉市のみならず他県か
らも買出しの人が訪れるようになり、村は活気付いてきた。
だが素直に喜んでいられない村の危機とも言える問題が存在した。

「デッスーン♪今日も一杯野菜を取って帰るデスゥ」
「今日は熟れたトマトを一杯取っていくデス。仔共達の喜ぶ顔が目に浮かぶデスー♪」
「ナスも旨いデッスーン♪ついついつまみ食いをしてしまったデス。でも一杯あるから平気デスー♪」

今まで村にいなかった実装石が現れ畑を荒らすようになったのだ。
二次村が注目され多くの人が村を訪れるようになったが、その時に飼い実装石が逃げたのか、はたまた飼いきれなくなり捨て
られたのか、もしくは野良か?だが隣の双葉市とはそこそこ離れているので野良実装石が歩いてこれる距離ではない。まぁ実
装石の来歴は不確かだが二次野菜が注目され人が訪れるようになったのと同じ頃に村で実装石による被害が発生しだした。

「ここは楽園デスー。取っても取っても減らない程野菜があるデスー」
「神様が世界一賢くて可愛い私達へ、ご褒美としてくれたんデス」
「山さえ行かなければ危ない事も無い、食べ物が豊富な場所デ!?みんなニンゲンがこっちに向って来るデス!気が付かれてい
ない内に逃げるデス!!」

農家の人が畑に現れるや見張りをしていた実装石の号令の元、野菜取りを辞め野菜を一杯詰め込んだ袋を担いで畑の隣にある
堤防まで駆け、後ろを振り返る事無く堤防を上りきり一目散に雑草が生い茂る河川敷に逃げて行く。
今日もこうして実装石は農家の人に気づかれる前に逃げおおせた。
実装石が去った後の畑は実装石が野菜を無理やり引っこ抜いて行くので無茶苦茶な状態で取られなかった野菜も所々齧られた
跡があり、もう売り物にはならない。畑のみならず田んぼも荒らされ稲は踏み潰されている。実装石がいた跡には農家をあざ
笑うかの様に大量の糞が置き土産として残されていた。
実装石が村に現れだした頃はまだ大した被害は無く、許容範囲であったが年を追う毎に被害は右肩上がりで増え続け、去年か
らは廃業に追い込まれる農家も現れだした。
もちろん農家も当初から対策はしてきたが、どうも二次村に現れた実装石は賢い集団のようで上手く罠などから逃げ、一向に
捕まらず被害は増える一方だった。

「デププ。今日も間抜けなニンゲンから逃げおおせたデス」
「全くニンゲンは馬鹿デスゥ。賢い私達がニンゲンごときの罠に引っかかるはずも無いデス」
「仔共達ー。今日も新鮮な野菜が一杯取れたデスよー」

今日も畑から無事に畑から一杯の野菜を盗み出して来た実装石達は、人間をあざ笑いながら住処にしている河川敷内の広場に
今日の収穫物を広げ、各家族に平等に分配していく。

「ママ達お帰りなさいテチー」
「今日もご飯がいっぱいテチューン♪」
「みんな今日も無事で何よりデスゥ。みんなが留守の間、仔共達はちゃんとお利口にしていたデス」

仔実装達は無事帰ってきた自分達の親に駆け寄り、今日も親実装達が一杯取ってきた野菜を目を輝かせて見つめ、早く食べたい
とばかりに鼻の穴をピクピク膨らませ、そんな仔達を微笑みながら見つめる親実装達。こんな幸せがこれからもずっと続いてい
くと、根拠は無いが確信している実装石達は今日も農家から盗んできた野菜で腹を満たしていく。
だが実装石達の幸せは長くは続かなかった。村が総力を上げ村で実装石が住処にしそうな所を一つ一つしらみつぶしに調べた結
果、やっとの事で実装石の集落を発見したからだ。

二次村に現れた実装石達は村の中央を流れる二次川の河川敷の雑草に覆われた場所を住家としていた。二次川の河川敷はほとん
どが砂利に覆われて住むのに適していないが長さ約400m、幅12m程だけ雑草が生い茂る部分があり、そこに実石達は集落を築い
ていた。
集落は人間の腰程まで高さのある雑草のお陰で外から見つかる心配は無く、雑草が無数に生い茂るので人や動物が入ってくる事
は無い。また堤防を越えれば畑があり食物に困る心配は無く川も直ぐ横に流れているので飲み水にも困らない安全な場所なのだ
が、河川敷という本来なら実装石にとって住み難い場所を住処としているせいか、この集団の知性や結束力は高く実装石には珍
しく一致団結し、この生活を維持していた。
またこうした環境なので一匹でも糞蟲が混じれば生活が崩壊するので、間引きは徹底的に行われていたので実装基準だが賢く協
調性があると見なされた実装石しか集落では生存を許されなかった。

こうして人目に触れず外的の心配も無い、食料も近場で取れるので実装石の数は間引きをしていても増加し続け、人間に集落が
発見された時には成体42匹、仔106匹にまで膨らんでいた。


実装石の集落を発見した後の村の行動は早かった。
普段実装石は農家の人が畑に出るよりも早い時間に現れ野菜を盗んで行く事がパターン化していたので、実装石が寝静まった深
夜に、農家で昔田んぼを囲うのに使っていたトタン板を各自で持ち寄り、河川敷の雑草地帯を川側を残して取り囲むよう、実装
石が雑草地帯より外に出てこられないように速やかに設置された。川側も囲まなかったのは実装石が泳げないので必要ないと考
えられたのとトタン板が足りなかったのである。だが一応実装石が浅い部分を歩いて抜け出さないようにはトタン板は設置され
ているので十分と結論付けられた。
後は雑草に火をつけて実装石を焼き殺すだけなのだが、二次川河川敷は県の管轄なので本来ならばトタン板を設置するにも許可
が必要なのだが、そこは実装石に逃げられない為と独断で設置し、雑草を焼く許可だけは朝県庁が開いた時に求めに行く事とさ
れた。


まだ太陽が顔を覗かせる少し前に実装石達は目を覚まし今日も野菜を取りに行く為に広場に集まりだした。

「今日も一杯野菜を取ってくるデスー」
「そろそろ仔共達も大きくなってきたから、昨日よりも多く取るデスゥ」
「じゃあ留守番は任せたデス。帰りを楽しみに待っていて欲しいデス」
「気をつけるデスー。留守の間しっかりみんなの仔を守っているデスー」

広場に集まった餌を取りに行く係と留守番をする係は互いにしばしの別れを告げ、餌係の実装石達は意気揚々と堤防までの雑草
に囲まれた通路を歩いていく。今日は何を取ろう。また間抜けな人間の顔を見て笑ってやろう。各々色々な事を考えながら堤防
までの道のりを歩いている。だが、しばらくすると先頭を歩いていた実装石の足が止まったので後ろに続く実装石は次々にぶつ
かって顔を抑えた。

「痛たたたデスゥ。どうしたデスゥ?早く行かないと明るくなってしまうデスゥ」
「デ…どうもこうも無いデス!昨日まで無かった物が出入り口を塞いでいるんデス!」

実装石達の目の前には深夜の内に設置された高さ70cm程はあろうトタン板が行く手を阻んでいた。

「デェェェェ!?何デスー!誰がこんな事をしたんデス!!」
「こんな物私たちの手にかかれば直ぐに壊せるデス!」

実装石達は行く手を阻むトタン板を一斉に殴りつけたがビクともせず、殴るのに疲れた実装石はヒリヒリする手を撫でながら肩
で大きく息をし、目の前のトタン板を睨み付ける。

「ここは諦めて他の道から行くデス」

殴っても壊れないので、他にもまだ出入り口はあるという余裕から実装石達は余裕の表情を浮かべながら来た道を引き返した。

「デ!?ここも通れないデス!次デス次!!」

「デデッ!ここもデス!次で最後デスが大丈夫のはずデス!」

「デジャァァァァァ!!!!ここも塞がれているデス!!!!」

頼みの綱と思っていた最後の道も塞がれていたので実装石達はパンコンしながら足で地面を蹴り、わめき続けた。

「通路は諦めて他の場所から出られないか、手分けして探すデス!このままじゃ今日のご飯以前に外に出られなくなるデス!」

未だに通路の部分だけが塞がれていると思っている実装石達は手分けして草むらの中に足を踏み入れ、外に出られる場所が無い
か探し出す。だが、それは無駄な努力だと直ぐに気が付いた。

「デジャァァァァァ!歩いても歩いても変なのが通せんぼしているデスー!!」
「草の周りを全部囲まれているようデスゥー!」
「このままじゃ何も出来ないデス!一旦広場に集まるデスー!」

ここの実装石達は普段なら人間に見つかるかもしれないので大声をあげないが、この時ばかりはそれを忘れ大きな声をあげ、連
絡を取り合っていた。
出口を探す無駄を悟った実装石は行きとはうって変わって、絶望の表情で広場に戻ってきた。住処に残っていた実装石達は餌係
が先程あげていた大声で大体何が起こったのか理解していたので、手には疲れた仲間を癒す為に水を入れた容器を持ち戻ってき
た実装石達に手渡す。

実装石達が住処に戻った時には既に太陽は昇りきっていた。

「大体の事はさっきこっちにも聞こえた大声で解ったデスが、本当に入り口を塞いでいたんデス?」
「嘘をついても何にもならないデスゥ。私達よりも大きな物が住処の周りを取り囲んでいて、出られる場所は何処にも無かった
デスゥ。それに殴っても全然びくともしなかったデス」
「このままじゃ外に出られなくて、ご飯を取りに行けないデス」

大人の実装石達は広場で円陣を組み色々な事を言い合っているが、何ら解決策は出てこず今後どうなるのかという不安が全匹の
脳裏をよぎった。
それでも何か解決策はあるはずだと話し合いをしている途中、一匹の実装石が空に変なものが浮いているのに気が付いた。

「デ?あれは何デス?横に細長い物が空に浮いていて、ゆっくりとこっちに向って来るデス」

一匹の声で全匹話し合いを中断し、視線を空に浮かぶ横長の棒に移した。その棒は何か水のような物を地面に撒き散らしならが
ゆっくりと実装石達の方に向って来る。

「何か水のような物が浮いているのから出ているデス」
「デデッ!かかったデス!何か変な匂いがする水デス」
「とおりすぎたデス。いったいあれは何デス?」

実装石は空に浮かぶ棒から出ている不快な匂いのする水を引っかけられたが、そのまま自分達の頭上を通り過ぎていく棒を不思
議そうな視線で眺めている。
実装石達が不思議そうな視線で眺めていた空に浮かぶ棒は、ようやく県庁が開き河川敷での草焼きの許可を得た村役場の職員が
農薬散布機を改良して作った灯油散布機で、実装石達は雑草地帯の中央に位置する広場にいたので気が付かなかったが、雑草地
帯沿いに職員が手分けして灯油を散布していたのだ。

「変な棒に匂いのする水をかけられたデスが、そんな事より出入り口の事が問題デス」
「そういえば川の方はまだ見てないデスゥ。川は危ないデスが、もしかしたら川沿いに出られるかもしれないデスゥ」

川沿いから出られるかもしれないという希望が沸いてきた実装石達の表情は明るくなり、早速確認しに行こうと各自手荷物を持
ち歩き出そうとした時、パチパチっと何かを焼く音が聞こえてきた。

「デ?何か音がしたデス」
「デデッ?私も聞こえたデスゥ。それに何か焦げ臭い匂いがしないデス?」

実装石達は突然聞きなれない音を聞いたのと、焦げ臭い匂いがしたので辺りを見回しはじめた。だが何も見えないので気のせい
かと誰しもが思った矢先、長年人間の目から実装石を隠し守ってきた雑草の壁が四方八方から大きな火の壁となり実装石達に襲
いかかってきた。

「デジャァァァァァ!草が燃えてるデスーーーー!」
「に、逃げるデスーーー!!!!」
「逃げるって何処にデス!?あたり一面火の壁デスー!!」

一瞬で火に取り囲まれた実装石達は混乱に陥り、各自別々の方向に逃げて行く。ある実装石は家に帰れば安全と仔の待つ家に飛
び込み、またある実装石は家から仔を出してまだ燃えていない草の中に走って逃げて行く。今まで糞蟲を排除し団結を維持して
きたが、極限状態に陥ったことで団結力は無くなったようだ。

「ママー!家が燃えて出られないテチー!助けてテチー!熱いテチー!」
「うるさいデジャァァァ!燃えた家に飛び込む馬鹿はいないデス!お前一人で焼け死ねデス!」

家が焼け中にまだ仔実装がいるのに、親実装は仔を見捨て一人まだ燃えてない草の中に逃げていく。

「デギャァァァァ!私の綺麗な髪が!服が!体が燃えているデズゥゥゥゥ!」

また先程灯油の雨を浴びせられたある実装石は火の粉で体に引火し、一瞬で火達磨になって地面をのた打ち回る。

「だ、誰か助けてデズゥゥゥ!熱いデズゥゥゥ!わ、私が燃えてしんで……」

だが誰も火達磨になった実装石を見向きもせず逃げ惑う。火達磨実装石は長い時間苦しみながら死んだ。

「デッス!デッス!お前達ママの手を離すんじゃ無いデス!ママが絶対に助けてあげるデス!」
「テッチ!テッチ!ママ、もう歩けないテチュ!おんぶしてテチュ」
「ママを困らせたらダメテチ。オネチャが手を繋いで引っ張ってあげるからがんばるテチ!」

まだ燃えていない草の中を行くあても無いのに歩き進む一組の実装親子。親は燃えてない場所を捜しながら、仔の手を離さない
ように力強く握り締める。そしてここなら少しは大丈夫だろうと、歩きつかれた下の仔の為に立ち止まり少し休憩を取る事にし
た。
仔実装達は一生懸命早歩きで歩いて来たので疲れたのか、地面に腰を下ろし大きく息をしている。親はその間も辺りを見回し逃
げ場は無いかと確認を怠らない。だがあたり一面火で覆い尽くされており、絶えず各地から焼かれ苦しむ同属の悲鳴が聞こえて
くる。
親実装は聞こえてくる悲鳴と火に恐怖する仔実装に微笑みかけ安心させる。そして仔を立ち上がらせ再び当ても無く歩き始める。
だが歩けども歩けども安全な場所は無く、とうとう雑草地帯を取り囲むトタン板に突き当たり立ち止まる。辺りを見回しても、
もう火に囲まれ逃げられる場所は無い。
親実装は必死に力強くトタン板を押し倒そうとするがビクともせず、反対に火に熱せられ熱くなったトタン板により親実装の手
はジュウジュウ音を立てながら焼かれていく。
自分の手などどうでもいいとばかりに、必死の形相で親実装はトタン板を押し続ける。

「テッ!?ママ!火がすぐそこまできたテチ!」
「ママ熱いテチュ!助けてテチュ!」

仔の叫び声を聞き、トタン板を押すのをやめ仔の方に振り返る親実装。火は直ぐそこにまで迫ってきていた。親実装はもうダメ
だと悟り、それでも仔だけでは助けようと決意し、姉の方を抱き上げる。

「いいデス?ここはもう火に囲まれ、ママよりも大きい物で塞がれて逃げ場は無いデス。でもママはお前達を絶対に逃がしてや
るデス。まずお前を向こう側に放り投げるデス。その後直ぐに妹も放り投げるから受け止めてあげるデス」
「そ、それだとママはどうするテチ?これはママよりも大きいんテチ?」
「嫌テチュ!ワタチはママと離れたくないテチュ!」
「ママだとここは飛び越えられないから無理デス。ママはもうダメデス。だからお前達だけでも逃げるんデス。これからは姉の
お前がママの変わりに妹の事をしっかり守ってやるんデス」
「マ、ママ…」

親実装は泣きじゃくる仔達をぎゅっと抱きしめ最後の別れをする。

「じゃあ投げるデス。最後に覚えておくデス。ここを出て斜めになっている地面を登ると、その先には一杯食べ物が生えている
場所があるデス。だからご飯はそこで取るデス。ニンゲンに見つからない朝の内に取りに行くデス。あと家はニンゲンに見つか
らない場所に作るんデス」
「わ、解ったテチ!ママの教えを守ってイモウトチャと二人で暮らしていくテチ!」

親実装は最後にもう一度姉を抱きしめると、トタンで焼かれた手の痛さをものともせず、力を振り絞って姉仔実装をトタン板の
向こう側に放り投げる。
高いトタン板を飛びぬけたのにも関らず姉仔実装は何とか芝生の部分に着地する事ができたので衝撃が和らぎ大きな怪我をする
事が無かった。そして直ぐに立ち上がりトタン越しに親に声をかける。

「ママ!こっちは大丈夫テチー!」
「解ったデス!妹も今から投げるから受け止めてあげてデス!」
「嫌テチュ!ワタチはママから離れないテチュ!ママも一緒に行くテチューーーーー!」

妹仔実装を投げようと抱きかかえるが、妹仔実装は泣き暴れ必死に親といたいと訴える。だが、親はもう火が直ぐそこに迫って
猶予が無いので、泣きながら仔を放り投げる。

「ママ!イモウトチャを受け止めたテチ!イモウトチャは無事テチー!」
「いいデス?これからは二人仲良く力を合わせて暮らすんデスー!ママの言った教えを忘れるんじゃないデスー!そして大きく
なったら仔供を一杯産んで仲良く幸せに暮らすんデスーー!」

トタン板越しに親実装は必死に幸せになれと叫び続ける。泣きながらトタン板に走りよろうとする妹仔実装を姉仔実装は必死に
抱きとめ、トタン板で遮られもう見えない親実装の方を泣きながら見つめ続けた。

「ママ!これからはイモウトチャと二人で幸せに生きるテチー!」
「頑張るデス!ママはお星になってもお前達をずっと見守り続けるデ、デギャァァァァァ!火、火が!体が燃えるデズゥゥゥ!
熱いデジャァァァァァ!し、死にたく無いデジャァァァァァ!」
「ママァッ!」
「お前達何とかするデズゥゥゥ!今まで育ててやった恩を忘れたデズゥガァァァァァァ!私が死んだら世界の損失デズゥ!お前
達仔なんていくらでも産めるデズァァァァ!だずげろデズゥ・・・・」

最後の最後で親実装は今まで眠っていた本能が呼び覚まされたのか、先程まで仔を心配していたのとは正反対に自分を助けろ等
本能むき出しで仔達に焼け死ぬまで呪詛を浴びせ続けた。

「テチャッ!?オネチャ!ニンゲンテチュ!ニンゲンに命じてママを助けてもらうテチュ!」
「あ、イモウトチャ!?ニンゲンに近づいたら危険テチ!」

火が他に燃え広がっていないか確認をしにきた職員を見つけた妹仔実装は、職員の方へ必死に駆け出し親を助けろ。そして世界
で一番高貴な私に豪華な服と餌を持って来いと糞蟲全開でわめき散らす。
だが、リンガルなど持っていようはずもない職員は、足元でテチュテチュ叫んでいる仔実装と妹仔実装を助けようと走り寄って来るも
う一匹の仔実装を、どうやって逃げ出したんだ?と思いながらも、逃げないように二匹とも摘み上げ、他にも逃げ出した実装石
が居ないか辺りを見回す。

「もっと丁寧に扱うテチュ!そして早くワタチに豪華な服とご飯を進呈するテチュ!あとママを助けろテチュ!」
「イ、イモウトチャ。ニンゲンにそんな口の利き方をしたらダメテチ。でもニンゲン、ワタチ達のママをあそこから助けて欲しいテ」

他に逃げ出したのは見受けられなかったので職員は摘み上げた二匹の仔実装を、姉仔実装が何か言い終わる前に元いた火の中に
放り込んだ。

「テチュュュュ!熱いテチュ熱いテチュ!可愛いワタチが燃えるテチューーーー!クソニンゲンワタチを助け出せテチューーー!」
「テチャァァァァァァァ!ワタチ達は幸せになるんテチ!ママと約束したんテチ!死にたく無いテチーーーーー!」

燃え盛る炎の中で二匹が焼け死ぬのを確認する事も無く、職員は他に逃げたのはいないか。燃え移っていないか確認をする為に
その場を離れた。

火はその後4時間後に消え、河川敷の雑草地帯は黒い焼け跡だけを残して実装石達は全て今まで作物を盗まれ、田畑を荒らされ
た恨みとばかりに焼き殺された。その後トタン板は回収され、農家や村の人々は恨みを晴らせてすっきりとした表情で河川敷を
後にし、次の日から村は実装石に悩まされる事が無くなったそうな。


END


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第四段スクです。
前作、ある公園の夏に感想を下さった方に、この場を通してお礼申し上げます。
今回は地の文の説明が長いかなっと思ったので、今後はより良い文が書けるよう精進いたします。

では、最後まで読んで下さった方、ありがとうございました。

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