タイトル:クリスマス責めから⑤D様すみません
ファイル:実装石のクリスマスイブ-side・B-クリスマスパーティー⑤.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:2696 レス数:4
初投稿日時:2008/07/11-02:26:59修正日時:2008/07/11-02:26:59
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投下が大変遅くなって申し訳ありません
まずはこの場を借りて『D様』にお詫び申し上げます。
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「おまえのせいで家の中がメチャメチャなんだよ!!」

「チリも残さず殺されて来い!!」

元飼い主から次々届く拒絶と罵倒のビデオレターに会場の実装石達は絶望の叫びを上げる。

「オロロオオオォォーーーン」
——自分達が一体何をしたと言うのだ。

「一体一日の食費がどれだけ掛かったと思ってやがる!!何が『無頭禿裸を食わせるデスゥ』だ!!」

「オロロオオオォォーーーン!!」
——オイシイ物を食べたかっただけデスゥ。

「来客用の布団を糞塗れにしやがって。お前達が1万匹集まってもあの布団の値打ちにもならねぇんだよ!!」

「オロロオオオォォーーーン!!」
——ワタシ達親仔にフサワシイ寝具はあれしか無かったデスゥ。

身の程を弁えぬ言動、そのツケの支払いは自分達の命。

赤い靴下に入った仔実装がバーから滑落した時点で『失格』。仔実装は自動的に首吊り、親実装には『罰ゲーム』が待っている。
会場の中心にある長方形の中から一歩でも外に出れば『失格』。
親仔で生きて会場から出るには、仔実装がパーティー終了まで耐えるか、マッチ売りの少女の格好をした親実装が人間に芸を見せて鞄の中の『マッチ』を全て受け取って貰うしかない。

開始から30分。既に数匹の実装石が『罰ゲーム』によってその命を散らしていた。

そんな中『7番』と『8番』の野良出身の2匹はその場に座り込んでビデオレターを眺めていた。
この二匹は特に姉妹とか言う訳でもない。出身公園すら違う赤の他実装であるが、同じ野良実装であることから何となく行動を供にしている。
「デェ…捨てられたデス?」
「アイツラは帰る所が無いデス…。」
野良実装である2匹には捨てられた飼い実装がどうなるか良く分かっていた。
『8番』は『7番』に言った。
「貴方は『棄権』するデス。ワタシの仔はあの仔だけデス。でも貴方はまだ公園に2匹も仔が居るデス?戻らないとその仔も死んじゃうデス?」
「デェ…」
『7番』は棒の上に居る我が仔を見上げた。
「ヂイイイイイイッッ!!クソムシババアッ!!何してるテチッ!!サッサとワタチを助けてゴチソウを食べさせるテチャアッッ!!」
「テエエエエエン…悪かったテチィ。もう好き嫌い言わないテチ。ナマゴミも食べるテチィ。」
隣りあわせで泣き叫ぶ『7番』『8番』の仔実装。

仔を諦めるのであれば『棄権』が認められる。親実装は別室に移され、パーティーの終了と同時にホテルから解放される。
しかし繁殖は実装石の本能的欲求の中でも上位に位置付けられる。どの実装石にしてもなるべくなら仔を失う事は避けたい。
ただ、野良実装と飼い実装では『仔を失う事』に対する認識が大きく違っている。
生存戦略として『間引き』を身に付けている野良実装は、『身の危険』と『仔実装の命』を天秤にかける事が出来る。仔はまた産めば良い。
しかし飼い実装、特にここに集められた所謂『糞蟲』はそうでは無い。
『仔』は全部『ニンゲン』が飼ってくれて当たり前、『ニンゲン』には自分と自分の仔だけのための『トクベツなラクエン』を提供する義務がある。『大切な仔』を失う事等考えた事も無い。
この期に及んでまだ元飼い実装達は本能に忠実に『我が仔』を取り戻そうと慌てふためいている。

「アイツラや棒の上の糞仔に付き合う事は無いデス。後の仔を大切にするデス。」
迷う『7番』に『8番』は言う。
「デェ…」
出来るならこんな仔でも助けてやりたい。しかしどれだけ歌っても踊ってもニンゲンは嘲笑うだけでマッチ1つ受け取ろうとはしない。
「マッチを…マッチをもらってデスゥ…もらって下さいデスゥ…」
母実装もいい加減疲れて来た。そこに…

「ヤッタですゥッ!!ヤッタですウゥッ!!」
実装石の歓喜の叫びが響き渡る。
「もうマッチは無いデスゥ♪空っぽでスウゥ♪」
空になった鞄を振り回しながら狂喜する『44番』の母実装。
「やったテチ♪スゴイテチィ♪」つられて『44番』の仔実装もはしゃぎ出した。
静まり返った会場の中、大喜びの『44番』親仔に『司会者』が近付いてゆく。
「さあ!ワタシの勝ちデス。さっさとゴチソウをヨコすデスゥ♪」
大喜びの『44番』は鼻息荒くまくし立てる。しかしそれを見る司会者の表情は冷たい。
「…飛び跳ねて下さい。」
『司会者』は笑顔のままで母実装に告げた。
「デ!!…ナ…ナニ言ってるデスゥ!!?」
しどろもどろになる母実装…
「…飛び跳ねて下さい。」
「ウルサイデスッ!!サッサとゴチソ…」
「いいから飛び跳ねろ!!」
「デヒッ!!」
『司会者』の怒声に驚いた母実装は軽く飛び跳ねた。
【…ぽふ…】
「もっと高く!!」
ええい、ままよとばかりに母実装は飛び跳ねた。
【…とん…かさ…】
軽い音と供に足元に転がり落ちる『マッチ箱』。
【…かさ…かさ…】
誰一人として『44番』のマッチを受け取った人間は居ない。彼女は服の中にマッチを隠していただけだった。

ポロポロと服の中から零れ落ちる『マッチ箱』、静まり返っていた会場がどよめき始める。
そしてそのどよめきが次第に怒りを含み、そして会場の怒りが頂点に達した。

「バ・ア・ル!!」「バ・ア・ル!!」
1人の招待客から声が上がった。
「「「バ・ア・ル!!」」」「「「バ・ア・ル!!」」」「「「バ・ア・ル!!」」」「「「バ・ア・ル!!」」」
実装石の不正に怒る会場に再びバールコールが響き渡る。
『司会者』が『バールの様な物』を受け取った。
「デ!!…」
このままでは『17番』の様に殺されてしまう。
『44番』は恐怖心のあまりその場にへたり込んだ。
無言のまま『バール』の構えを取る『司会者』、そこに…

「お待ちなさい。」

その一言で会場は静まり返った。
「その実装石はマッチを服の中に入れただけでしょう?」
その声の主は『会長』このクリスマスパーティーの主催者である。
「『司会者』君、『マッチを服の中に入れてはいけない』というルールは聞いていないのですが…これは?」
『会長』の問い掛けに『司会者』は『バールの様な物』を足元に置いた。
「その通りです『会長』。『マッチを服の中に入れてはいけない』というルールは有りません。」
「ではゲーム続行です。『人間』の皆様も『実装石』の皆様も引き続きお楽しみ下さい。」

「いやあ残念、今年はマッハバールを2回も見れるのかと…」
「全くですな、それにしても珍しい。会長が実装石の味方をするとは…御歳を召されたか…?」
「滅多な事を言うものではありません。たとえ西から日が昇る事が有ったとしても、丹璽浦家が糞蟲に甘い顔をするなど…。」
「それもそうですな。どれ、この先を楽しみにすることにしましょう。」
「「「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」」」

『司会者』は襟を正すと『44番』に笑顔を向けた。
「大変失礼いたしました。では…」
『司会者』は一礼をして会場の中心に戻ろうとする。命拾いをした『44番』も釣られて頭を下げる。
「デ…デスゥ…」

「あぁ、そうでした!」
『司会者』が何かを思い出したかのようにに振り返った。
「『実装石』の皆様に1つ伝え忘れていた事が有りました。命に関わる事なので一応聞いておいて下さい。」
「デ?」
「デスゥ?」
——一体何だろう?
実装石たちは『司会者』に注目した。
「皆様にお持ち頂いているこの『マッチ箱』ですが、決して『食べたり』『飲み込んだり』しないで下さい。」

「デ…デ…デエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッッ!!」

突然『29番』の実装石が悲鳴を上げた。会場の視線が彼女に集まり、司会者がそこに駆けて行く。
「どうしました?まさか…」
問いかける司会者に『29番』は涙目でしがみついた。
「ド!?どうなるデス??食べるとどうなるデス??」
マッチを人間の目から隠して脱出を図ったのは『44番』だけでは無かった。ゴチソウをせしめるために『29番』はマッチを腹の中に隠して居たのだ。
「言いましたよね?『命に関わる』って。」
「デデエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエェェェェェェエエエエェェエェェエェッッッッ!!!!!?!?」
『29番』はパニックに陥った。

…まさか、と思った『7番』が鞄の中のマッチ箱を1つ開けてみると、そこには…想像通り『コンペイトウの様な物』が入っていた。
「やっぱりデス…」
『実装コロリ』それは実装石にとって『甘い夢の皮を被ったニンゲンの悪意の結晶』だ。
——ここまでやるか…
『7番』はその場にがっくりと膝をついた。

「イヤデス!?イヤ!?死にたくないデス!!死にたくない!!死にたくない!!死にたくない!!死にたくない!!死にたく!??ピギィイイイイィイィイィイイイイイイイイイイイイイイイイイイ—————————————ッッッッ!!!!!!!!!」
豚の様な悲鳴を上げて仰け反りながら『29番』は後ろに倒れた。
「デギャッ!!デギギッ!!ギッギッギイイイィィィッ」
口から緑色の泡を吹き、仰向けのままグルグルと回りだす。もはやその声はリンガルを用いても翻訳する事は出来ない。
「ギョギギィッ!!」【プシャッ!!】
血飛沫と供に右目が吹き飛んだ。
「デグゲギャアァッ!!」【ギシギシィッ!!】
左右の足が別々の方向に歩き出す。
「ブギッ!!ブギッ!!」【メキメキメキメキ……】
体中の関節が反対方向へと曲がる。
「ブギッ!!ブギッ!!」【プシャップシャッ】
鼻血が噴水の様に噴出す。
「ブギッ!!ブギッ!!ブギッ!!」
やがて…。
「ブンギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!」
【バキン】
首が360度1回転して『29番』は絶命した。

「ええと、この様になりますので、実装石の皆様どうかお気をつけ下さい。」
司会者は襟を正すと再び会場の中心へと戻っていった。

元飼実装達は次第に自分達の置かれている状況を理解し始めた。
人間は自分達のドレイ等では無かったこと。
この場所では人間達がかくも簡単に自分達を殺してしまう事。
自分達の言動に怒った人間が、自分達をここへ捨ててしまった事。

こんな時どうすれば良いのだろう?どうすれば自分達は元の場所に戻れるのだろう?
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——ほら、自分を飼ってくれる人の事はどう呼ぶのかな?
——チププププ…ドレイに決まってるテチュ。
【バシ】
——ヂイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!
ブリーダーは電気ショック式の実装叩きで仔実装の頭を叩いた。
——ちがうだろ!!いいか…
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「ゴシュ…ゴシュジンサマァ…ゴシュジンサマアァ…」
追い詰められた状況が元飼実装達の記憶の中から『躾』を浮かび上がらせる。
「ゴシュジンサマァ…ゴシュジンサマアアアアァァッ!!!!」
何匹もの実装石が、かつての飼い主に助けを求め、叫ぶ。
「ゴシュジンサマアァ…ゴシュジンサマアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァ……」

「ホホホ、今年も始まりましたなぁ」
「フン、うわべだけの躾等こんな物でしょうな。」
「どれ、ここはひとつリンガルを切ってみましょうか。」

「オロロオォオオオ—————ン…オォロロオォオオオ—————ン…」
「オォロロオオオオ—————ン…オォロォロオオオオ—————ン…」
「オロロオオオオオオオオオオ—————ン…オォロロオオオオ—————ン…」
「オロロオオオオ—————ン…オォロロオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォ—————ン…」
会場に響き渡る実装石達の悲鳴はもはや元飼い主達に届く事は無く、招待客達の酒の肴となるだけ…

境界線の外側では人間達が料理に舌鼓を打っている。その光景は実装石達にとって拷問以外の何物でもない。
バーの上の仔実装達は生命の危機に絶叫しながらもゴチソウから目が離せないでいた。
「ほぉら、おいしいぞぅ…」
招待客の1人が棒の上の仔実装に向けてケーキの刺さったフォークを差し出す。
「テ!?…アマアマテチュッ♪」
目の前に差し出されたゴチソウに、仔実装の頭の中は真白になった。
「食べたいか?じゃあもっとこっちへおいで。」
仔実装はバーから滑落しないギリギリの所まで体を乗り出したが、ケーキには届きそうに無い。
「二、ニンゲン!!もっとこっちに来るテチッ!!」
命令口調の仔実装に招待客は告げる。
「ダメだね。これ以上そっちに行ったら境界線の内側だ。僕は失格になってしまう。ケーキを食べたければもっと体を乗り出すんだ。」
なんとかしてケーキにありつこうと仔実装は必死にバーから体を乗り出し、さらに足りない分は舌を伸ばす。開いた口からタラタラと涎が流れ落ちた。
その仔実装の足元では『38番』の実装石が叫んでいる。仔実装が棒から落ちれば自分は殺される。
「オチビちゃん!!ダマされちゃダメデス!!ニンゲンッ!!ムスメから離れるデシャアアアアッッ!!!!」
母実装は男を追い払おうと必死に叫ぶ。しかし男が立っているのは境界線のさらに数十㎝向こう側。境界線を『踏み』越えても自分は殺される。そこへ…

「申し訳ありません…。」
司会者が現れて男に告げた。
「恐れながら、この会場にはルールとは別にマナーと言う物も存在しております。」
「フム…」
司会者の言葉に男は頷いた。
「その通りだ。私とした事がつい会場の雰囲気に飲まれてしまっていた様だ。」
男は仔実装に差し出していたフォークを戻す。ところが…
「テ!?テチッ!!?アマアマッ!?アマアマァッ!!!!」
遠ざかるケーキに釣られて仔実装はさらにバーから体を乗り出した。
「デデエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエェェェエエエエエェェェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッッッ!!!!!!」
母の絶叫も空しく仔実装はバーから滑落し、首吊りの死骸となる。
「はい、『38番』のお母さん、『失格』です。では『38番』のカードをお持ちの方…」
「いや、それが私なんだよ…」
男は決まり悪そうに司会者にカードを手渡した。
「では罰ゲームを決めてください。」
「マ、待つデス!!反則デス」
男と司会者の間に母実装が割って入った。
「インチキデス!!デタラメデス!!ワタシは死なないデス!!ムスメを返すデス!!」
母実装が叫んでいるのは『司会者』でも『男』でも無い。上段にある特別席から会場を見下ろす『会長』に向かってだ。
『会長』はさっき『44番』を助けてくれた。ならきっと自分も助けてくれるはず。母実装の表情には何時の間にか余裕を含んだ笑みが浮かんでいた。
「反則デス!!オマエ達の反則負けデス!!さっさとゴチソウを寄越すデス!!」
だが会長は何も答えない。まくし立てる母実装に『司会者』は告げた。
「この方は貴方の仔に指一本触っていませんよ。よって反則では有りません。」

男は『38番』の母実装に目を向けて告げた。
「すまなかったな……せめて君のバールで楽に送ってやってくれ。」
「かしこまりました、では『38番』の罰ゲームは『バール』です。」

「デギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア……」


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毎度駄文にお付き合い頂き有難う御座います。

投下のペースがかなり遅れていて大変申し訳ありません。

過去スク
託児?①②③④⑤番外編①②
早朝
夏の蛆実装
遊びの時間は終わらない 前,中,後編
飼育用親指実装石 
死神絵師
破滅の足音
あんしんママ
命拾い
実装石のクリスマスイブ(執筆中)
糞除け
教育
帰って来た仔実装セレブ


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1 Re: Name:匿名石 2014/12/09-21:02:59 No:00001589[申告]
 真っ当にして盛大な上げ落としのカタルシス、読んでいてザマミロ&スカッとさわやかな気持ちになれるスクですね
 結構前の作品ですが、二組の実装親子の運命も気になりますし、今年もそろそろシーズンですし、続編を読んでみたいです

 
2 Re: Name:匿名石 2014/12/21-19:42:48 No:00001596[申告]
助けてやった理由、どんな仕掛けがあるかは見てみたいな
3 Re: Name:匿名石 2016/11/06-00:44:16 No:00002708[申告]
いっそあのとき…って末路になるんだろうな
4 Re: Name:匿名石 2016/11/06-02:43:14 No:00002712[申告]
パーティもクライマックスってところで未完か…
古い良作が発掘されても未完だとつらいな
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